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371話

裏切られた俺と魔紋の奴隷の異世界冒険譚【コミカライズ】 — novelba.com · All chapters

371話

「リキ様。ご飯の用意が出来ました。」

…気づけばもう夕食の時間となっていたようだ。

今日はさっきまでアリアも一緒にいたから、呼びに来たのは食事係の村人みたいだな。

「あぁ、すぐ向かうから先に行っててくれ。ありがとな。」

「はい。」

朝の訓練後は昼寝でもしようと思っていたはずなんだが、ニアがドルーゴから得た情報を聞き終えて解散したときには空が夕陽色になり始めていたから寝る時間がなかった。そのせいかなんか疲れた気がするな。

まぁ、多少は部屋で休んだし、飯が終われば寝れるんだから、グダグダいってないで食堂に向かうか。

夕食が終わり、今日はとっとと寝ようと食堂を出ようとしたところで、カリンたちに声をかけているアリアが目に入り、ふと顔を向けたら目が合った。

…………あぁ、鑑定対策のアクセサリーを渡したんだからスキルを教えたりするんだったな。カリンたち全員がウチのよくわからない宗教に入信したとは思いたくなかったのか、首から下げてるネックレスを無意識に視界から除外していたみたいだ。

アリアの視線はおそらくどうするかって聞いてる感じだろうから、さすがに今回は俺が仕切ってるんだから一応参加しておくか。

アリアたちが集まってるテーブルに向かうとカリンたちも俺が近づいてきたことに気づいたようで振り向いた。

「リキさん!みんなと話し合ってリキさんたちのレベル上げに連れていってもらうことにしました!よろしくお願いします!」

さっきまで眠そうな顔で飯を食っていたカリンがやけにいい笑顔を向けてから頭を下げてきた。

その際にただでさえ嫌に目につくネックレスが存在を激しく主張するように勢いよく揺れた。

……まぁ、宗教は心の支えみたいなもんだから、女神教から破門されて悩んでいたカリンが入信するのは仕方ない部分もあるんだろう。

「もう決めたのか。じゃあ今後の訓練についても話し合っておくか。」

「はい!」

念のため本当に話し合ったのかの確認を込めて他のカリンパーティーに目を向けたら全員が頷いたから、カリンが勝手に決めたわけではないみたいだな。

食事係が急いで片付けてくれたテーブルに俺とアリアが横並びに席につき、対面にカリンたちが座った。

今回はアリア以外は参加しないようで、片付けをしている食事係を除けば食堂にいるのは8人だけとなった。

「全員『鑑定反撃の加護』のネックレスをしているみたいだから、スキルについての話から始めるか。」

俺が話を始めるとなぜかカリンたちが緊張したように姿勢を正した。

スキルを知ったら殺される可能性があるとか脅したせいか?まぁ事実だし、もう一度念押ししておくか。

「先にいっておくが、これから話すことも含めて訓練中に知ったことは他の奴らには話すなよ?せっかく鑑定対策をしても他のやつに話したせいで命を狙われたら馬鹿らしいからな。」

「もちろん誰にも話しません!」

代表するようにカリンが元気よく返事をし、他の奴らは真面目な顔で頷いた。

「それじゃあ、まずはSPでのスキル取得の仕方を確認しておきたいんだが、カリンはどうやってスキルを取得してる?」

「どうやってっていうのはどういう意味ですか?普通に欲しいスキルを本とかで調べてから取得可能か確認してますが、そういう意味で合ってますか?……あっ!たまにですが、こういう感じのスキルがあったらいいなって思ったときにそれに近いスキルを取れたりする時もありますね。」

「ラスケルたちも同じか?」

「僕は本ではなくて人から聞いたスキルが主ですが、それ以外は同じです。」

他の奴らはどうかと視線を向けると頷かれたから同じような感じなんだろうけど、横山もそっち側なのは少し意外だった。おそらくゲームをやることがあまりなかったとかで取得可能スキルを一覧で見るとかの発想自体がなかったのかもな。

「どうやらその方法が一般的らしいな。だが、それだと取得可能なのに気づけないスキルがあるかもしれないから、今後は見るようにした方がいい。スキル取得一覧やステータスは見ることもできるからな。」

「見る?……っ!?」

最初は意味がわからなかったようで首を傾げていたカリンたちだったが、ほぼ同時に全員が理解したように驚いた顔をした。

「理解出来たようだな。スキルの使用とかは見て選ぶより今まで通りの方が速く使えるだろうが、スキル選びとかは一覧で見た方が全てを確認できるから便利だぞ。」

俺の話よりもスキル一覧に興味があるようで全員が真剣な顔で空中を目で追っていた。

ただ、横山だけが途中で困った顔になり、他のカリンパーティーメンバーを見てから俺に苦笑を向けてきた。

「覚えられるスキルってこんなにいっぱいあるんだね。こんなにいっぱいあると持ってるSPで選ぶのが大変そう。それにどんな効果かわからないのも多いしね。でも名前がわかるから調べるのも今より楽になるのは凄く助かるな。ありがとう。」

「え?」

カリンたちがスキル一覧の確認に真剣になっているからか、横山が感想を述べたところでなぜかカリンが驚いたように横山を見た。

「どうしたの?」

「カナデちゃんはスキルの効果がわからないの?」

「名前で想像つくのもあるけど、わからないのもけっこうあるかな。カリンは全部わかるの?」

「頭の中で確認できるスキルは効果もなんとなくわかると思うんだけど……。」

カリンが自信なさげにラスケルたちを見ると頷かれたから、今度は俺に「ですよね?」と確認をとってきた。

取得前のスキルについては聞いてなかった気がするが、アリアたちは鑑定がなくても持ってるスキルの効果がなんとなくわかるといっていたな。最初から見るようにしていた俺だけでなくカリンたちと同じ感覚でスキルを使っていた横山もわからないのなら、もしかしたら召喚された人間は全員その機能がないのかもしれん。

……ん?そういやこの前リスミナがジョブ取得とセカンドジョブは取得しないとよくわからないようなことをいっていたよな?なんとなくでは実際の効果がよくわからなかったってことか?……いや、そもそもなんとなくわかるという感覚が俺にはわからないのだから、気にするだけ無駄だな。

「悪いが俺も横山と同じでスキルは鑑定しないと効果がわからない。だから横山も取れるなら鑑定は取っておくといちいち他のやつに聞いたり調べたりしないですむから楽だぞ。ただ、興味本位で他人を鑑定するのはやめておけよ。『鑑定反撃の加護』を持ってるやつに使うと最悪死ぬらしいからな。」

俺の返答を聞いたカリンはそういう人もいるんだと納得した顔をしていたが、意外にもピリカールが何かに気づいたような反応をしたから視線を向けたら目を逸らされた。

そういやピリカールは女神教の聖女がいる国の生まれだったな。だから勇者について他よりも詳しい情報を持っているのかもしれないが、ここで口を噤んだということは予想を誰かに話す気はないということだろうし、気にする必要はないか。

「……え?それは怖いね……。でもないと不便そうだから取得して、自分以外には使わないように気をつけるよ。」

横山はSPで取得できるスキルに鑑定があるのか。やっぱり転移者は才能に関係なくSPで取得出来るスキルの種類が多いのかもな。

「そういや……話が逸れて悪いんだが、ピリカールは女神教だったよな?そのネックレスを受け入れて大丈夫だったのか?」

さっきピリカールと目が合ったことでふと気になったことを聞いただけなんだが、その前に何かに気づいた反応をしてしまったところに声をかけられたせいかピリカールが肩を跳ねさせて驚いた。

まぁ聞いたのが関係ない内容だったから一瞬ビクついただけだったが。

「改宗したわけではないので問題はないですね〜。サラさんから話を聞いて私もそういう大人になりたいな〜と共感したので自分の意思で入信させてもらいました〜。」

女神教と掛け持ちさせたとかで女神教から文句をいわれたら面倒だと思ったが、問題ないならいいか。

俺を崇める宗教の何に共感したのかは意味不明だがな。

「……そうか。……話を戻すが、SPで取得可能なスキルの中に『ジョブ取得』と『ジョブ設定』と『セカンドジョブ』はあるか?あったら取得してくれ。」

全員が頷いたから大丈夫そうだな。

「『ジョブ取得』は取得条件を満たしてるジョブを得ることが出来て、『ジョブ設定』で自分の持ってるジョブに好きなタイミングで変えることが出来る。『セカンドジョブ』は2つ目のジョブを設定できるようになるが、ステータスに影響があるのはファーストジョブに設定されている方になるから気をつけろよ。ただ、セカンドジョブに設定したジョブのスキルは使えるようになるし、レベル上げも出来るからSPが余ってるなら『テンスジョブ』まで取った方がいい。スキルの効果がなんとなくわかるなら問題ないと思うが、『テンスジョブ』までとる順番がわからない場合は横山に聞いてくれ。」

「……え!?冒険者以外のジョブのステータスを維持したままアイテムボックスが使えるじゃないですか!?凄い!これからは誰かに冒険者になってもらったり、荷物を最低限にする努力をする必要がなくなるので嬉しいです!」

やっぱり最初に喜ばれるのはアイテムボックスが使えることなんだな。気持ちはわからなくないが。

「あとは『PP回復倍速』と『成長補強』はあるなら取っておいた方がいいと思うが……他になんかあったか?」

「…残りは自身で選んでもらった方がいいと思います。」

すぐに思いつかなかったからアリアに確認を取ったら予想と違う返答がきたが、たしかに自分で考える余地は残しておかないと却って成長の妨げになる可能性もあるか。

「そうだな。それじゃあ、残りは自分で好きなのを取ってくれ。取得可能スキル一覧で見れるようになったから、自分の戦闘スタイルに合いそうなのを考えて取った方がいいしな。」

「ありがとうございます。」

カリンたちに礼をされたときにリッシーを見て思い出した。そういや魔導師のジョブを得る方法を教えるんだったな。

「リッシーは今のジョブは魔術師なんだったっけか?」

「は、はい!」

「なら既に初級魔法と中級魔法は全て使ったことがあるってことだな?」

「そ、そうですね。……もしかしてそれがジョブの取得条件なんですか?そしたら上級魔法を全て使えば魔導師になれるってことですか!?」

「さすがに理解が早いな。ジョブを得るってだけならその通りだ。上級魔法を全て使用した後にジョブ取得で取得すれば設定出来るようになる。ただ、魔導師は魔術師のステータスの一部を、魔術師は魔法使いのステータスの一部を引き継ぐらしいから、先に魔法使いと魔術師のジョブのレベルを最大にしておいた方がいいらしいぞ。」

「あ、ありがとうございます!」

「とりあえず話しておくのはこのくらいか。訓練はしばらく今朝と似たようなことを続けてからレベル上げに行く予定だから、学校の方はキリがいいところで止めておいてくれ。もし通いたかったら帰ってきてからにしてくれ。あとは訓練時はサラから渡された靴とベルトを着用するのを忘れるなよ。……アリアからは何かあるか?」

「…いえ、リキ様が全て伝えてくれたので特にありません。」

「そしたら解散だ。明日も朝早いから早めに寝とけよ。」

「はい。ありがとうございました。」

カリンたちが座ったまま揃って頭を下げて礼をしてきた。

これは俺が先に去る流れっぽいから「おやすみ」とだけ伝えて先に食堂を出て部屋へと向かったんだが、アリアは席を立たなかったみたいだ。

さっきは特にないといっていたから別件で話があったんだろう。

話があるならさっきいっておけば良かったと思うが、もしかしたら俺がいると話しづらい内容だったのかもな。……もしかして宗教の話か?まぁだとしたら俺は関係ないし、先に寝るとしよう。