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375話

裏切られた俺と魔紋の奴隷の異世界冒険譚【コミカライズ】 — novelba.com · All chapters

375話

さっきのゴブリンキングは雑魚だったけど、前にヒトミが戦ったオーガキングは弱くはなかったからもしかしたらなんて少しだけ期待してたんだが、オークキングもその他オーク集団もさっきのゴブリンキングたちと大差ない程度だった。だからオークキングはカリンたちに相手をさせて、その他オークたちはカリンたちに近づかせないようにだけ気をつけてチャチャっと俺たちで片付けた。

見た感じカリンたちじゃオークキングと1対1だとまだ微妙かもしれないが、パーティーでならよほど変なことをしなければ負けることはないだろう程度の敵でしかない。それでもカリンたちは油断せずにちゃんと連携をとって戦っていたから、時間はかかったが危なげなく倒すことが出来ていた。

倒した後もオークキングが確実に死んでいることを確認したりと最後まで油断しないのは凄えな。いや、まぁそれが普通なんだろう。俺が確認を怠ってるだけで。

「終わりました!」

確認を終えたらしく、カリンが俺らに振り返って報告してきた。

俺らはその他オークたちを皆殺しにしてから暇でカリンたちの戦闘を見ていたから終わったのはわかっていたが。

「あぁ、お疲れ。」

「もしかして、けっこう待たせちゃいましたか?」

カリンパーティーはオークキングと戦いながらもちゃんと周りの警戒もしていたから、その他オークたちが先に全滅したことには気づいていたと思う。だが、オークキング以外がいなくなってからどのくらい経ったかまでは把握していないらしい。それだけ集中していたんだろう。

「いや、たいして待ってないから気にしなくていい。むしろ時間でいうならまだ昼前だから予定よりかなり早いくらいだ。」

魔王っていうくらいだからもっと強いだろうと思っていたから夕方までに3体は厳しいかもなんて考えていたが、急げば昼までに3体いけたかもしれないとか相手の強さを過大評価していたみたいだ。まぁ、早く終わる分には問題ないんだが。

「時間に余裕もあるし、もう1体倒してから町に行って昼飯にするか。今回のオークキングは誰が食うんだ?」

「私がいただきたく思います。」

今回もドライアドが食べるみたいだ。見覚えがなくもないが、ドライアドは代表みたいなやつ以外はうろ覚えだ。魔族は強さで序列みたいなのをつけてるっぽいし、強いやつを優先してる気がするから、おそらくドライアドの中で2番目に強いやつなんだろう。知らんけど。

俺が顎でオークキングの方へ促すとドライアドがオークキングに近づいて、さっきのゴブリンキングと同じように吸収した。

枯れる速度がさっきの代表っぽいやつがやったときより少し遅かったっぽいから、やっぱり代表っぽいドライアドは他より強いのかもな。

オークキング以外の雑魚は既にイーラとサーシャが処理済みだから、ドライアドの吸収が終わって進化したのを確認したところで来た道を戻ることにした。

「ちょっと遠いが前にオーガキングがいたところよりさらに奥に行ったところの魔王にするか。あそこが1番町から離れていて、他の魔王の場所とも離れているっぽいから、明日以降に回すと面倒そうだしな。」

軽く全員を見回しても反対意見はないようだからと歩き出すとセリナが俺の隣に並び、アリアたちも後ろについてきた。

最初の街道付近の場所まで歩いて戻ってきたところで『超級魔法:扉』を使えばよかったなと気づいたが、アリアたちは何も思っていなさそうだし、時間に余裕もあるんだから問題ねぇか。

前にオーガキングがいたところまでなら一応覚えているから魔法で行けなくはないが、ここまでわざわざ歩いて戻ってきたのに今さら魔法を使うのもなんか微妙だし、時間もあるからこのまま歩くことにした。

歩いている間にアリアが教えてくれた情報によると次の相手はトロールキングという魔王らしい。

トロールはアリアも直接見たことはないから本に載ってた情報らしいが、再生のスキルを持っている可能性の高い魔物で、オーガ並みに体が丈夫なうえに力と体力もオーガと同程度はあるらしい。だからカリンたちだとパーティーでもトロールキングどころか普通のトロールすら倒し切るのは難しいかもしれないとのことだ。

ただ、物理無効というわけでもなく、再生スキルを持っていたとしてもイーラと違って脳という再生できない明確な弱点があるうえにイーラみたいに前もって蓄えていた肉体を使って一瞬で元通りなんてことも出来ないから、ヴェルくらいの力があれば余裕で倒せる相手らしい。

というかイーラが肉体をストックして再生に充てていたなんてのは初耳だと思うんだが……まぁこんな当たり前のようにいわれると既に説明されていた可能性もあるし、べつに今知ったから特に問題はないから聞き返したりする気はない。

トロールは人型で一般的な大人の倍くらいはあるから間合いだけは気をつけた方がいいが、動きは少し遅めだから勝てないと判断してからでも一般的な冒険者程度の実力があれば逃げるのは難しくない魔物らしい。だから俺らにとっては大した脅威ではないだろうとのことだ。

アリアからトロールの話を聞き終わり、まだしばらくかかるだろうから他の魔王についても聞いておこうかなと思ったところでセリナが止まり、腕で俺の進行方向を塞ぐようにして止まれと合図をしてきた。

「血の臭いがする。打撃音や叫ぶ声も聞こえるから誰かが戦ってるみたい。」

黙って耳を澄ませてみるが、葉が風で揺れて擦れる音以外は俺には何も聞こえない。

「それはトロールキングとってことか?」

「わかんにゃい。場所はたぶん地図にあったトロールキングのところより手前だと思うけど、まだ遠いからにゃんともいえにゃいかにゃ。それにトロールキングが地図の場所から移動してる可能性もあるからね。」

「じゃあトロールキングは明日に回して、今日はもう町に行くか。昼飯食って宿決めて時間に余裕があれば他の魔王を先に倒しに行ってもいいしな。」

「助けないんですか!?」

俺がセリナと話しているとカリンが会話に割り込んできた。

こいつは何をいってるんだ?

「助ける?」

「だって戦っていて血の臭いがしてるんですよね?それって助けが必要な状態ってことじゃないんですか?」

カリンは血の臭いが人間側の血だと判断したわけか。

戦闘中の他人に関わる気がなかったから、どっちの血とか考えてもいなかったわ。

「さすがに血の臭いで人間かどうかにゃんてわからにゃいし、ここからじゃ会話の内容までは聞こえにゃいから人間側が劣勢にゃのかもわからにゃいよ。そもそも今戦っているのが人間と魔物にゃのか人間同士にゃのかもわからにゃいしね。微かに言葉を喋ってるっぽいのが聞こえるから人間だと思うけど、魔族かもしれにゃいしね。」

一応俺もスキルで確認しておこうと気配察知を最大まで薄く広げてみたが何もわからなかった。生物の有無程度がギリギリわかる精度まで落とせばけっこうな範囲がわかるはずなんだが、それで何もわからないってことはかなり遠くで起きていることなんだろう。さすがにセリナでもその距離だと正確にはわからないらしい。いや、その距離の音と匂いをわずかでも拾えてる時点で異常なまでに凄いわな。

「仮に人間が魔物に蹂躙されているんだとしても依頼でもねぇのに助ける気はねぇよ。悪いがカリンたちにも今は関わらせる気はねぇから諦めろ。」

「なんでですか!?」

困っているやつを無償で助けようとする心意気は嫌いじゃないが、相手が必ずしも話が通じる生き物とは限らない。同じ言語を話すのと会話が通じるは別問題だからな。

どんな状況になっても解決する力があって、助けることで自己満足したいのが目的なうえにその後の相手の反応とかはどうでもいいくらいに思えるんなら好きにすればいいと思うが、カリンたちじゃ相手によっては食い物にされる可能性もあるし、これだけ関わったやつらがこんなことで殺されたりでもしたらさすがに気分が悪いからな。

「カリンの困ってるやつを助けたいって思う気持ちは悪いことじゃねぇけど、相手が助けを求めているかも助ける価値があるかもわからねぇのに関わるのはやめておけ。こんな魔物がいるところの奥地まで足を運んでる時点で大量の魔物に囲まれる可能性は考慮して当たり前だし、下手に手を出せば獲物を横取りしたと思われるからな。仮に助けてくれといわれたから助けたとしても戦闘が終わった後に難癖つけてくるやつはいるから、相手を最終的には力でねじ伏せられるくらいの実力がない限りは知ってる相手以外の戦闘には近づかねぇ方がいい。少なくとも俺と行動を共にしてるときは行かせるつもりはない。ここまで聞いたうえで俺がいない時に助けたいってなったら俺には止めようがねぇけど、そんときは自分や仲間が殺される覚悟は持っておけよ。」

「……ぇ。」

「襲われてるフリして、助けに入ってきたやつらが魔物と戦ってる時に後ろから襲うやつらだっているかもしれねぇしな。」

「冒険者か賊かにゃんて見ただけじゃわからにゃいしね〜。」

俺がカリンにいい聞かせていたら、セリナも賛同してきた。

カリンは得られる可能性のあったものを得られなくなるかもしれないとなった時の人間の醜さを見たはずなんだが、忘れたのか?

たしか旅に出ようとしたときにそんな醜い相手に絶縁を突きつけられたんじゃなかったか?

それと同じだと思うんだが、助けてもらわなきゃ死んでただろうに本来は全部手に入ったものを奪われたと思い込む馬鹿とは出会ったことがないから思いつかないだけか?

まぁカリンは納得したのかは知らんが反論する気はないみたいだからいいか。

「ん?……あぁ〜…………ちょっと私だけで見てきてもいい?リキ様たちは先に町に向かってて大丈夫だから。」

あらためて町に行くと告げようとしたところでセリナが若干困ったようななんともいえない顔で俺に確認をとってきた。

べつにセリナなら1人でも死ぬことはないだろうからかまわないが、なんで急に意見を変えたんだ?

「べつにかまわないけど、なんでだ?」

「ちょっと嗅いだことある匂いが混ざってる気がするんだよね……。それにトロールキングが倒されたかどうかは確認しておきたいじゃん?」

トロールキングの確認は俺が許可を出しやすいように取ってつけた感じだが、確かに知ってはおきたいな。

ただ、セリナ的にはそれよりも嗅いだことある匂いってのが気になってるっぽいけど、この国の知り合いはそんなに多くないはずなんだが。

「知り合いってことか?」

「気のせいかもしれにゃいけど、ユリリンさん……じゃにゃくて、この国の勇者パーティーのヒーラーの人がいるっぽいんだよね。でも他の勇者パーティーの人の匂いはしにゃいから気のせいかもしれにゃいし、リキ様たちは先に帰ってて大丈夫だよ。もし勇者パーティーの人だったら、リキ様との約束を守って頑張ってるみたいだから見殺しにするのも嫌だし、念のため確認しておきたいにゃって。違ったら確認だけしてすぐに帰るし!」

聞いた覚えのない名前が出て眉間に皺を寄せたら、察したセリナがすぐにわかりやすくいい直した。だが、この国の勇者パーティーのメンバーは勇者と黒ずくめのやつ以外はほとんど覚えていない。まぁヒーラーっぽい見た目のやつはいたような気がしないでもないが。もちろん名前は誰も覚えていないしそもそも聞いた記憶もない。

それに勇者とは約束というか脅しただけなんだが、結果頑張っているならここで1人死なれてメンバー補充となって士気が下がるのももったいないか。

なんでヒーラーだけ別行動をとってるのかはわからないし、そもそも劣勢ではない可能性もあるが、確認するだけなら問題はないだろう。

「1人で大丈夫か?」

「むしろ1人の方がいいかにゃ?何もにゃければ気づかれにゃいようにするつもりだからね。1人にゃらリキ様たちが町に着く前に合流できると思うし!あっ、リキ様たちがここから歩いて帰るにゃらだけどね!」

「なら歩いて向かうからさっさと確認して戻ってこい。セリナなら大丈夫だとは思うが無理はするなよ。」

「はい!」

なぜか嬉しそうにニコッと笑った後に森の奥へと駆けて行った。

整備されていない森だから普通なら歩くのも大変なはずなんだが、あっという間に目視できないほど奥へと進んでいっちまった。

「そんじゃ俺らは町に向かうか。」

とりあえず森から出るために来た方向に戻ろうとしたらカリンが何かをいいたそうに俺を見ていた。

たぶんさっきは助けないし助けに行かせないっていってたのにセリナが助けに行くのはいいのかとかを聞きたいんだろうけど、セリナとカリンじゃ実力が違うとか努力し始めた勇者パーティーの欠員はない方がいいだろうとかの説明をカリンが納得するようにわざわざするのが面倒だから無視して歩き始めた。