376話 勇者パーティーメンバーのことか
376話 勇者パーティーメンバーのことか
アリアと雑談を交わしながら歩いて最初の街道のところまで戻り、あとは街道沿いに町の方に歩き出したところでアリアが言葉を止めた。
もしかして反対方向だったか?
「…セリナさんが参戦の許可がほしいとのことです。」
あぁ、セリナから連絡がきたから雑談を終わらせただけか。べつに進む方向が間違っていたわけではないみたいだ。
「それは俺じゃなくて向こうに確認した方がいいんじゃねぇか?相手が助けてくれと依頼してきてセリナがどうにか出来る状況なら、セリナの判断で好きにしろ。」
「…はい。」
「セリナが助けることにしたってことはやっぱり勇者パーティーのヒーラーだったのか?」
「…はい。他には騎士団と思われる格好の方々が一緒とのことです。オーガとトロールに囲まれて対応できず死者も複数出ているようです。ひとまず金貨10枚の報酬は確約してくれたようです。」
「金貨10枚?勇者パーティーメンバーと騎士団の命にしては安くねぇか?」
「…現場にいる中で1番偉い人の独断での依頼なので、本人が確実に支払える金額での依頼かと思います。それとは別で国から褒賞が出るとは思いますが、そちらは確約はできないとのことらしいです。」
まぁセリナ的には勇者パーティーのヒーラーを死なせたくないだけだろうし、ついでで金貨10枚もの金が入るならむしろラッキーか。
「とくに苦もなく確実に金貨10枚手に入るなら悪くはねぇな。」
「…今セリナさんが倒したトロールの中にトロールキングと思われる個体はいなかったようです。また、今倒したトロール以外は騎士団の方々は会っていないという確認も取れたので、無駄ではなかったかと思います。」
どうやらアリアは俺と話しながらもセリナと以心伝心の加護で話すという器用なことをしてるみたいだ。
最初にセリナから連絡があった時はアリアは一度言葉を止めていたけど、同時進行も出来るんだな。やっぱり俺らとは頭の出来が違うんだろう。まぁ今さらか。
……アリアの頭の良さに感心して聞き流しかけたが、騎士団に死者まででてるのに相手は魔王じゃなかったのかよ。
「普通のトロールに負けたのか?騎士団が?」
「…イデレクーダの乗っ取り計画による配置換えのせいで北門専属以外の騎士は弱い方々しか残っていないので仕方ないと思います。」
仕方なくはねぇと思うが。
いや、だからこそ早急に鍛えようとして無茶して今の状況なのかもしれねぇな。
「まぁ俺らには関係ねぇか。」
アリアと話しながら街道沿いに歩いていたらそろそろ森から抜けそうなんだが、セリナは俺らが町に入るまでに間に合うのか?
「…神薬を使う許可もほしいそうです。」
森の出口に近づいたことで視界が広がり、森から町までの草原にある街道を歩いてこっちに向かってきてるやつらが見えたんだが、あれって勇者パーティーじゃ……ん?神薬?
「なんで勇者パーティーのヒーラーがいるのに神薬が必要なんだ?」
「…そのヒーラーが死にかけているそうです。」
嘘だろ……。
「さすがに神薬を無償や口約束で使ってやるのはな……。というかセリナはそもそも神薬を持ってるのか?」
「…はい。リキ様自身が使えない状況でわたしがそばにいない場合でも対応できるよう、奴隷と使い魔全員に1本持たせています。もちろんリキ様の許可なしにリキ様以外に使用することは禁止しています。」
「さすがに自分に使うことは許可してやれよ。」
苦笑しながらアリアを見たらキョトンとした顔で首を傾げられた。
本気でなぜ?とか思ってそうだわ。
まぁ金額だけ見るなら1番高かったセリナで金貨5枚、実際払ってはいないがサーシャのオークション予定額の金貨50枚でも神薬の半額でしかないから神薬を使う価値はないとか思ってるのかもしれないな。
「俺がアリアたちに死なれたくねぇんだよ。金貨100枚で助かるなら俺が払うから使ってくれ。」
「…………はい。」
前に向き直りつつ、いざという時は神薬を自分に使うことは許すように頼んだんだが、返事にだいぶ間があった。だからあらためてアリアを見たんだが、俯いていて顔が見えない。
声色が基本変化しないから実際どんな感情で返事をしたのかはわからんが、渋々だとしても了承したならいいか。
というか神薬を勇者パーティーのヒーラーに使う許可だったな。
勇者パーティーのヒーラーが死にかけているって話だったが、アリアは返事を急かす様子もないからまだ大丈夫だろう。たぶん。
「話が脱線したな。神薬についてはちょうどいいからあいつらに確認するか。さすがに勇者なら金貨100枚くらい持ってるだろ。」
俺らが森から抜けたことで向こうも気づいたようで露骨に嫌そうな顔をしやがった。
そりゃそうか。暴力で脅してくるやつなんて抗える力をつけるまでは会いたくはねぇよな。
まぁ俺の知ったことじゃねぇけど。
勇者パーティーは森に用があるのか、露骨に嫌な顔はしつつも逃げることなく真っ直ぐ近づいてきた。
俺らも歩き続けているからすぐに声の届くところまで近づき、挨拶しつつ右手を挙げた。
「よぉ、久しぶりだな。」
「あ、あぁ。」
ぎこちないながらも勇者も右手を挙げて返事をしてきた。
どうやら勇者はあんまり俺と会話をしたくない雰囲気だから、単刀直入に要件だけ伝えるか。
「お前らのパーティーのヒーラーが死にかけてるらしいぞ。俺の仲間がその場にいるから、お前らが金貨100枚払うなら神薬を使ってやってもいいが、どうする?」
「……っ!? ユリリンのことかーーっ!!!」
「うるせぇな。」
「あ、いや、……す、すまない。」
遅れて理解したのかいきなりどこかで聞いたようなセリフを叫んできやがった。
しかも俺の文句には普通に返してきたところを見るにまだ何かのキャラクターを演じようとしてるのか?……もしかして俺が脅したせいで精神を保つためにより悪化したとかか?
まぁ勇者の役目は果たそうとしてるっぽいし、それ以外は俺に迷惑さえかけなければ好きにすればいい。
「それで、金貨100枚は払えるのか?べつに急いで使わずお前らが見て確認してからでもかまわないが、間に合わなかったとかの文句は受け付けねぇからな。」
「ちょっと待ってくれ!」
勇者が制止をかけるように右手の平を向けてきた。いちいち動作がうるせぇな。
よく見ると右手薬指にしている指輪に魔力が流れているっぽいから、誰かと連絡をとっているみたいだ。それを俺に見せた……わけではないか。普通は魔力とか見れないらしいし。
「確認できた!必ず払うから使ってほしい!頼む!!!」
勇者が腰を90度曲げる勢いで頭を下げてきた。
使うのは代金をもらってからだというつもりだったが、まぁいいか。
「セリナに使うようにいってくれ。」
「…はい。………………間に合ったようです。」
「ありがとう!!!まだお金を支払っていないのに申し訳ないんだが、俺たちはユリリンのところに向かってもいいだろうか?お金はすぐに持ってきてくれるとのことだから、東門のところで待っていてくれると助かる!」
ユリリンはヒーラーの名前か。
そういやセリナもそんなこといってたな。覚える気がなかったから忘れてた。
まぁこの勇者なら俺を騙すようなマネはおそらくしないだろうから、行かせてやるか。
「わかったわかった。行ってやれ。」
「ありがとう!!!」
デカい声であらためて礼をいった勇者が走って俺らの横を抜け、他のパーティーメンバーは俺と目を合わせはしなかったが感謝はしているようで、全員が頭を下げてから勇者の後を追っていった。
俺らにヒーラーの場所を確認せずに行ったってことはもともと合流予定だったのかもな。
「…良かったのですか?」
なにがだ?
金をもらってないのに行かせたことか?
「勇者は俺を騙すほどの度胸はねぇだろうし、どうせセリナが来るまで門の外で待ってなきゃならねぇんだからかまわねぇよ。」
「…勇者様がお金に関わる連絡を取る相手はおそらく王族かと思いますが、良かったのでしょうか?」
……そういや前回は城に呼ばれるのが嫌で逃げるように帰ったんだったな。
向こうも人を呼び出すには準備に時間がかかるだろうから、さすがに金を支払いした場でいきなり城に来いとかはいわれないはずだ。
「……まぁ大丈夫だろう。」
今さら考えたって仕方がないからと諦めて、門のところで待つことにした。