LNCrawler

380話 ダンジョンじゃない洞窟

裏切られた俺と魔紋の奴隷の異世界冒険譚【コミカライズ】 — novelba.com · All chapters

380話 ダンジョンじゃない洞窟

午前中にコボルトキングとキングリザードマンを倒し、既に全員が魔王になれたドライアドたち5人はこの町で他にすることもないからと『超級魔法:扉』で先にカンノ村に帰した後、最後の魔王討伐の前に少し早めの昼食を取っているんだが、一晩経ったにもかかわらず周りの奴らが昨日のことを話しているせいで微妙に気まずい。

昨日の『超級魔法:隕石』の音と衝撃は町まで届いていたらしく、昨晩の飯時の話題も音と振動の話ばかりで、バレる前にまた町から離れようかと迷ったほどだ。

だが、周りの話を聞いた限りでは音はけっこうなやつが聞いていたが揺れを感じたのは少数っぽいうえに、一晩経った今も音がどこから聞こえたかを正確に把握できているやつはいないようだから、素知らぬ顔をしておけば問題ないだろう。

「最後はリッチキングだったと思うが、アリアたちは一緒には行かないんだっけか?」

「…はい。リッチキングがいるところはダンジョンではない洞窟のため、暗闇を見通せない私たちは邪魔にしかなりませんので、別行動をしたいと思います。」

「前に行ったときはイーラが『上級魔法:光』を強めに使ってくれたからアリアたちでも見えてはいたみたいだけど眩しくてけっこう邪魔だったし、火は使っちゃいけにゃい場所らしいから、明かりがにゃくても普通に見えるメンバーだけの方がいいって結論ににゃったんだよ。それに道が狭いけど全体的にはとても広いみたいだから、少人数でリッチキングが見つかるまで走り続けるのが1番早いと思うんだよね。」

アリアとセリナがいうにはダンジョンではない迷路のような洞窟らしく、ダンジョンと違って不思議な光がないから真っ暗らしい。

前に俺とヒトミがアクセサリー探しをしていたときに行ったらしいが、奥がどこまであるのかセリナの感知能力でも把握できず、戻るにもダンジョンではないためリスタートが使えないからと少しだけ探索して帰ることになったんだとさ。

だから中のことはほとんどわからないのに走り回って探すって提案するんだから驚きだわ。

まぁそういう提案をするってことは出現する魔物は不意打ちされても対応できる程度のたいしたことないのしかいないんだろうけど。

前にユリアとクレハの訓練時にダンジョン最深階にいたボスがリッチだったらしい。

リッチは魔法が得意な魔物なために前回は強さが見ただけでわからなかったようだ。

本来魔物は魔法が使えないから、魔法が使えなければ進化することが出来ないリッチが生まれることは基本ないらしい。

以前会ったリッチはダンジョン最深階のボスだからこその特殊な個体なのだろうが、今回のリッチキングはもう一つの例外だ。

もともと人間だったやつがMPを保持した状態で魔物になったってやつだな。

まぁここは冒険者がポンポン死ぬらしいから、それがスケルトンになって、さらにそのスケルトンに別の冒険者が殺されてを繰り返してリッチまで進化したとかだろう。

ここは全員が暗視持ちでもなければ火以外の明かりが必須でMPの多いやつがパーティーに1人はいるはずだから、リッチになる可能性のあるアンデッドが生まれやすかったのかもな。

そんでリッチキングが生まれるほどにリッチに進化した個体が増えたんだろう。

過去に最奥にあったお宝の一部を持ち帰っただけでしばらく遊んで暮らせる金が手に入ったとかいう話があるせいで、自分なら残りを手に入れられるって考える命知らずの若い冒険者が跡を絶たないとか。

少し考えれば、最初に手に入れたやつらが残りの宝を取りに行かなかった時点で軽い気持ちで入っていい場所じゃないってわかると思うんだがな。

まぁ俺らはそこにマップもなしに軽い気持ちで入っていくから、他人のことを馬鹿には出来ねぇけど。

「じゃあ今回は俺とイーラとセリナとテンコとヒトミとサーシャと仙狐の6人+テンコの1パーティーでの探索だな。カリンたちはアリアに任せる。」

「…はい。」

俺らがリッチキング探しをする間、残りのメンバーは北門のところのダンジョンでカリンたちのレベル上げを手伝うことになっている。

早めの昼飯を食い終え、食堂前で別れようとしたときにカリンが何かを期待するように俺を見ていた。

何を期待しているのかわからんから、てきとうに声をかけておくか。

「カリンたちはレベル上げ頑張れよ。」

「「「「「「はい。」」」」」」

北門方向に向かうアリアたちを見送りながら、俺らは西門へと足を向けた。

西門から出てから軽く走って10分くらいで洞窟の入り口に着いた。

歩いたら2時間くらいかかりそうな、そこそこ離れたところにある山をくり抜いたような洞窟みたいだ。

入り口から見える範囲はしっかりと木枠で固定されてるっぽいし、鉱山跡とかか?

今日も死にたがりの冒険者がいるらしく、これから入るための準備をしているやつらが数人いる。

「そういや仙狐は魔王を食べるために強制参加になったけど、この中は見えるのか?」

洞窟の中に目を向けると太陽の光が届かないところはマジで真っ暗だ。でもなぜか見えるんだよな。

おそらく観察眼のおかげだろうが不思議でならん。

「『暗視』のスキルもありますし、この種族になってからは地形や生き物を把握出来るようになったので、暗闇でも問題なく動けると思います。それよりもリキ様たちの速度についていけるかの方が心配です。」

「さすがに初めての場所で本気で走ることはないだろうから大丈夫だろ。……一応セリナもある程度速度を抑えて走るようにしてくれ。」

「はい。」

よくよく考えたらセリナに本気で走られたら俺もついていけねぇじゃねぇか。

仙狐がいってくれたおかげでむしろ助かったわ。

「じゃあ行くか。とりあえず第一目標はリッチキングの討伐で、ついでに時間があれば最奥の宝とやらも探してくれ。」

「え?あ、はい。」

セリナが一瞬何かに驚いたような顔をしたが、すぐに苦笑いに変わって洞窟の中へと進んでいった。

俺らもセリナに続いて洞窟の中に入るとすぐに太陽の光が届かなくなり、視界に入る景色が白黒へと切り替わった。

セリナが徐々に速度を上げていくのについて行くと、俺らより先に入っていた別のパーティーが発しているだろう光が遠くにわずかに見えた。

俺に見えたくらいだからセリナが気づかないわけもなく、迷いなく道を曲がって進んでいくのについていく。

途中で武器を持ったスケルトンが現れたりしたが、たいした経験値になりそうにないからと邪魔な場合だけ壁際に吹き飛ばし、あとは無視してひたすら奥に向かって走り続けた。

わりと弱い魔物しかいないから楽なんだが、終わりが見えないマラソンは地味に辛いな。

ダンジョンと違って階層移動という区切りがないからいつも以上に時間感覚がおかしくなる。

走りながらガントレットを外すわけにもいかないから腕時計で時間を確認することもできない。

そんな状態で感覚的にはけっこうな時間走った気がするんだが、実際には何時間くらい経ったんだろうか。

既に数時間は走ってる気がするんだが、俺の勘違いか?

とっくに集中力も切れて無駄な考え事をしながら走っていたら、セリナが細い尻尾を膨らませて立ち止まったから、ぶつからないように俺も慌てて止まった。

尻尾を膨らませるとかずいぶん器用なことするな。

「……たぶんリッチキングだと思うのを見つけたから向かってたんだけど、それとは別のヤバい気配を見つけちゃった。どうする?」

「どうするっていわれてもな……そのヤバいってのはどうヤバいんだ?」

「たぶんリキ様と同じくらい強い。」

セリナたちは俺を過剰評価している節がある。そのセリナたちの中の俺と同じくらい強いってのは本当にヤバいヤツじゃねぇか。

「その強いヤツがリッチキングじゃないならわざわざ戦う必要はねぇだろ。もしかしてリッチキングと同じ場所にいるのか?」

「場所は離れてるよ。まだ通ってにゃい場所だからわからにゃいけど、たぶん回り道はできると思う。ただ、リキ様が探してほしいっていった宝の場所がこのヤバいのがいる場所にゃ気がすると思ってさ。」

あぁ、この洞窟がダンジョンと違って探索しづらいってのはあるが、出てくる魔物はたいしたことがないから強いやつからしたら奥まで行くのはそこまで難しいことではないはずなのに誰も宝を持ち帰ってこないって考えれば、異常に強い魔物が宝を守ってる可能性があるわけか。

なんで魔物が宝を守るのかはわからんが。

「まぁもともとの予定はリッチキング討伐なんだし、宝は………………時間もないのにわざわざヤバいヤツがいるところに近づくのも馬鹿らしいから無視でいい。」

そもそも本当にその強い魔物のところに宝とやらがあるかもわからんしな。

宝がなくて異常な強さの相手と戦闘だけするってなったら馬鹿らしい。

せめてフルメンバーなら経験値のためにと考えられたかもだが……いや、セリナのイメージする俺と同等の強さの相手ってなるとヘタしたら人狼皇帝レベルかもしれねぇからフルメンバーでも今はまだ無謀だわ。

「はい。」

俺の意見を聞いたセリナはとくに反論することなく再び走り始め、それについて行くこと数分、ふいに直線通路の奥から黒い塊が飛んできた。

黒い塊は俺らに気づいたからか俺らから見て右上の方に上昇してから回り込むように近づいてきた。

コウモリか?

というかセリナが気づいていないように見えるんだが、気のせいか?

まだ距離があるときに視界の隅に避けられたうえに暗い中だから黒い魔物は見えづらいかもしれないが、セリナは視力以外でも気配を察知出来るはずだし、弱そうだから無視してるだけか?

そういや前にコウモリみたいな魔物を見たことある気がするな。

なんだったか……あぁ、サーシャの眷属……。

「セリナ避けろ!」

俺の声を聞いたセリナが横に跳ぶわけではなく、姿勢を低くして前に急加速した。

おそらく後ろからの奇襲だと考えて既に視覚で安全を確認できている前に進む選択をしたのだろう。

実際コウモリの進行方向から逃れられたから問題ない。

セリナが避けたことでコウモリが再浮上しようとしたところを一息に距離を詰め、上から殴りつけた。

あまり殴った感触がなく、地面に叩きつけられたコウモリが潰れてドロっとした何かを撒き散らした。

光がないせいで色まではわからないが、飛び散ったのは血や臓物ではなさそうだ。

殴った感触もおかしかった気がするし、サーシャの眷属とは違うコウモリ型の魔物か?

潰れたコウモリは既にほぼ地面に染みるようになくなっていたが、わずかに残っていた破片を近づいてきたサーシャが摘み上げた。

「これは我の眷属と似ておるが、実態はあっても血は流れていないようじゃな。吸血鬼からシャドウのような血の流れていない魔物に進化した者の眷属もしくは特殊なスキルで生み出された何かといったところかのぅ。もし眷属だった場合、他の者の血も吸っていないということは我らへの攻撃を目的として生み出されたのかもしれぬな。」

なんかサーシャが珍しくまともな事をいっている気がする。

サーシャがちゃんと推測している姿は違和感しかないが、いってることは参考にはなりそうだ。

警戒しながら戻って来たセリナにこの眷属の主と思われる魔物が察知範囲内にいるかを確認しようとしたら、隣に並んだ仙狐が声をかけてきた。

「暗闇に紛れさせるつもりだったにしても眷属1体では攻撃目的にしては少なすぎると思います。奥にいる魔物が近づいてくる私たちを確認するために眷属を送ってきたのではないでしょうか?」

だとしたら既にセリナがヤバいと判断するほどの相手に俺らの存在が気づかれてるってことじゃねぇか。

「たぶんね。」

奥のヤツやリッチキングとは別の魔物が近くにいるだけの可能性がまだ否定されてはいないからとセリナに目を向けたんだが、仙狐の考えが正しいだろうとセリナが同意してしまった。

「その魔物は近づいてきてるのか?」

「最初にいた場所から動いてにゃいよ。」

安全を最優先にするなら今すぐ俺の魔法で帰るのが間違いないんだが、ここまで来たらリッチキングは倒しておきたいし、ヤバいヤツが最奥から動いてないなら行けるか?

だが、既に相手に気づかれているならリッチキングとの戦闘中に来る可能性があるし、セリナがヤバいっていうほど強いヤツに不意打ちなんてくらったら逃げることすら出来ずに死ぬ可能性もある。

せめて相手に気づかれる前に俺が気配察知出来る範囲に近づけていれば、どの程度の強さかがわかるから判断しやすかったんだが……。

…………どうすっかな。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ノベルバで読んでくださっている読者の方々、今まで本当にありがとうございました。

ノベルバのサイトがなくなってしまうということなので、ノベルバでの投稿はこの話が最後となります。

小説家になろうとカクヨムでも投稿しているため、別サイトのため読みづらいとは思いますが、今後も読んでいただけたら嬉しいです。

ノベルバに投稿していたおかげでコミカライズもされ、7月3日には単行本1巻が発売されることとなりました。

これも皆様が読んでくれたおかげです。

ありがとうございました。