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孤軍奮闘

林檎転生 ~禁断の果実は今日もコロコロと無双する~ — novelup.plus · All chapters

孤軍奮闘

少し、身をよじる……と言っても、果汁は出ないから安心してくれ。 勝手にぐにゃりと動いた俺に驚いて、思わず手を離すフレッサ。 俺は、地面に落ちてコロコロと転がった。 そこから、ザンバラウの〝胸当て〟めがけて、軽く体当たり。できる限り、弱い力で!「ガンッ!」 よし。ちから加減は完璧だったな。「な……! リンゴ魔法?! フレッサ、キミは!」 フレッサから手が離れ、数歩後ずさるザンバラウ。「リ……リンゴさん?!」 よし、次はフレッサだ。狙うはバックパック。さっきよりも弱い力で……えい!「きゃあっ?!」 バックパックに命中した俺の体当たりに引っ張られて、階段の方にすっ飛ぶフレッサ。今だ! 〝出力1%〟で、狙うはザンバラウとフレッサのちょうど中間地点。〝火の枷外せ旅人〟!『ピロリン。呪文確認。魔法を発動します。〝出力1%〟』「グワァッ!」 燃えさかる炎が、フレッサと他のメンバーとの間の地面を焼き、大きな穴をあける。「な、何をするんだ、フレッサ!」 ……さあ、あとはお前の妄想と演技力次第だぜ?「来ないで! お願い! 来ないで下さいぃ!」 俺を手に取り、頭上高く掲げて、口を真一文字に結ぶフレッサ。「勝手なことをしてごめんなさい。でも、私なら、ホルマーさんを救えます!」 スゴいな。どこから来る自信なんだろう?「ば、馬鹿なことを言うな! いくらなんでも、あんな奴らに敵うわけ無いだろ! 早くこっちに来るんだ!」「1パーセント……」「……は?」 ……は?「いまので、1パーセントの威力です! 私が本気でリンゴを使えば、いまの100倍の威力が出せます!」「何を言ってるんだ?!」 何で知ってるんだ?!『お兄ちゃん、なんで?! なんでフレッサさん、まほうのこと知ってるの?!』 グリダが本気で驚いている。いや、俺も驚いたんだけどさ。 ……たぶん、妄想と思い込みとハッタリが〝偶然〟俺の力を言い当てたんだろうけどね。「……炎のリンゴ魔法! 5パーセント!」 オーダー入りました! 〝5%〟で、目標、さっきの地面! 〝火の枷外せ旅人〟「ブワァアアッ!」 俺から放たれた炎が地面の穴を更に大きく広げ、フレッサのつま先からザンバラウのつま先までを、まっ黒に焼く。 ……スゴいなフレッサ。これ、計ってやっても無理だぞ?!「いまの魔法、私は〝無限〟に撃てます!」 ……いや、それはさすがに無理かもしんない。「すごい……! リンゴ魔法が、これほどまでとは……!」「お、恐ろしい……さすがは〝地獄の土〟で育てられた〝禁断の果実〟だ」 ……もう、何が真実かなんて、どうでも良くなってきたなあ。「みなさん。どうか先に進んで下さい。私はあのアリを殲滅してきます!」 殲滅って! 話が変わってるぞフレッサ、ホルマーを助けてやってくれ!「……分かった」 分かったのかよ! せめて発声できるお前らがツッコめよ!「必ず生きて戻れよ! 試験官殿を連れてな!」「はい! ありがとう、班長!」 ふう。話は 纏 ( まと ) まったようだな。 俺を握りしめて、螺旋階段を駆け上がるフレッサ。「どうか無事で居て……ホルマーさん!」 σσσ  σσ  σ  3匹目のアリの頭を、魔法で撃ち抜く。『お兄ちゃん、あっちにも!』 おっと、4匹目! よし、もう少しで第3階層だ。「ホルマーさん! どこ?!」 階段を登りきり、キョロキョロと辺りを見回すフレッサ。 気づけ。足元だ。「……あ……ああ……!」 大量の血痕。それが、引きずられたように、通路の先へと続いている。「リ、リンゴさん! ホルマーさんと、私を、どうか……」 ……もちろん守るさ。「ホルマーさん……生きていて!」 フレッサは血の跡をたどり、通路を走る。『お兄ちゃん! その向こうにいる!』 マジか! やっぱお前、俺より色々見えてるんだな。 3%の魔法で壁を 穿 ( つらぬ ) いて、向こう側のアリを焼く。 うお、ほんとうに居た! えらいぞグリダ!『うふふ。ほめられちゃった。あ! お兄ちゃん、うしろ!』 不意打ちだ。死んだと思っていたアリの腕が、フレッサの肩を 抉 ( えぐ ) る。「いやああぁぁっ!」 ……しまった! こいつめ! 今度は、確実に頭を撃ち抜く。昆虫って本当にタフだな。「くっ……ほ、ホルマーさん……!」 肩から流れる大量の血を気にもとめず、通路を進むフレッサ。 しくじった……この怪我、浅くないぞ?「……居た!」  広めの部屋の中央には、ホルマー。そしてアリは……多いな! でも数えるの得意だから分かるぞ。 27匹ものアリが、血まみれで横たわるホルマーを取り囲んでいる。 これは……遅かったか。「いやあああああぁぁぁ! ホルマーさん! 死んじゃやだあああっ!」 クソっ! こいつら許さん! 〝全部〟駆除してやる!『ピロリロリン! 複数のターゲットを指定しようとしたため、エラーが発生しました。エラーを修正します』 これは〝運命のカード〟からのアナウンス?!『ピロリロリン! 修正の準備ができました。〝複数対象〟への魔法の使用を可能にします。よろしいですか? Y/N』 そんな事できるの?! 本当に優秀だな〝運命のカード〟は! もちろん〝はい〟だ! 〝はい〟!『ピロリロリン! 〝魔術師のカード〟に、追加機能〝複数対象〟を構築。3、2、1、導入に成功しました。〝ターゲット〟した〝視界内〟の対象すべてに〝同時〟に魔法効果を与えることができます』 眼の前の、すべてのアリに、赤いチェックマークが付けられた。これが〝ターゲット〟するって事なのか?『お兄ちゃん、気をつけて! ホルマーさんにも、赤いのがついてる!』 うわあ、あぶなっ! これ、どうやって外せば……ふう、良かった。なんとなく気を 逸 ( そ ) らせば外れたよ。 食らえ! 〝出力2%〟で〝火の枷外せ旅人〟!『ピロリン。呪文確認。複数対象に対して魔法を発動します。〝出力2%〟』「キュキュキュキュキュキュキュキュ……」 赤い光が辺りを染める。俺から発せられた炎は、部屋に居たすべてのアリを一瞬にして打ち抜いた。複数攻撃スゲェ!「ホルマーさん! しっかりして!」 おっと、そうだった……! あまりに絶望的な状況だったから、つい〝 仇討 ( あだう ) ちモード〟だったぜ。 しかし、さすがにこの状況では……くそッ! もうちょっと早く来れていれば!「フ、フレッ、サ……? な……ぜ、ここに?! ゴホッ!」「しゃべらないで、ホルマーさん!」 生きてた! ごめんホルマー。俺はてっきり…… 「お……お前、ケガしてるじゃないか」 息も絶え絶えに、片手をフレッサに向けるホルマー。「盗人来たりて、水の封を切る。見えざるもの溢れ、甘露となりて、虚空に満つ。〝水の魔法〟」 フレッサの体が、青い光に包まれ……肩の傷が治っていく!「ホルマーさん! 私の事より、自分のケガを!」「は……はは。見ての、通り、俺の魔法で、ゴフッ! な、治せる、ほど……軽いケガじゃなくってね……」 ……重症だ。しゃべれているのが……いや。生きているのが不思議なくらいのケガ。「逃げろ……お前の〝リンゴ魔法〟が強い、のは、良く分かった……から……早く、逃げ、ろ……」「いやあっ! ホルマーさん! いっしょに行こう、ねえぇ! ホルマーさん!」 フレッサ。どう見ても彼は手遅れだ。残念だがもう…… 『ピロリロリン! 〝未知の呪文〟と〝魔法の発動〟を検知しました。〝魔術師のカード〟に登録します』 ……いや、何とかなるかもしれないぞ。