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果実の本分

林檎転生 ~禁断の果実は今日もコロコロと無双する~ — novelup.plus · All chapters

果実の本分

『ピロリロリン! 〝未知の呪文〟と〝魔法の発動〟を検知しました。〝魔術師のカード〟に登録します』 火の魔法の時のように〝魔術師のカード〟が!『ホルマーさんが使ったまほうをおぼえたの?』 ああ。だいたい分かったぞ。呪文を聞き、魔法の効果を直接受けることによって〝魔術師のカード〟に登録されるんだな?『ピロリロリン! 登録に成功しました。使用者を〝フルツ〟及び〝グリダ〟に設定。デフォルト出力〝100%〟に設定。安全設定は不要』 しかも…… 『ピロリロリン! 呪文の解析に成功しました。効率化、圧縮完了。圧縮後の呪文は〝水の封切る盗人〟。効率化による威力増加のため、対象への悪影響の恐れが発生。デフォルト出力を〝フルツ20%〟〝グリダ2%〟に変更。安全設定〝使用者〟〝接触者〟』 ほらね。解析されてパワーアップ! ……って、回復魔法で〝悪影響の恐れ〟って、どんだけだよ?! あと、前回のときもそうだったけど…… 『おにいちゃん、いま、わたしの名前も!』 それなんだ。前にも〝使用者〟として、俺とグリダの名前を呼ばれた気がしてたんだけど、今回で確信したよ。『わたしも……まほうが使えるの?』 そうだな。しかも、悪影響の恐れがあるといって出力を〝下げられた〟パーセンテージが、俺とグリダで違う。俺が〝20%〟で、グリダ〝2%〟ということは、グリダの魔法の威力は俺の10倍ぐらいだと思っていいだろう。『……わたしが、お兄ちゃんよりスゴいまほうを?』 ああ。だってお前〝魔法の杖〟にされちまうぐらいだもんな。きっと魔法と相性が良いんだぜ。『……お兄ちゃん、わたしがホルマーさんに、水のまほう、使ってあげていい?』 もちろんだ。さあ、治してやってくれ!『うん! いくよ! 〝水のふうきるぬすびと〟!』『ピロリン。呪文確認。魔法を発動します。〝出力2%〟』 俺を通して、グリダから、冷たい……いや、とても温かい? 不思議な感覚の何かが、ホルマーに向けて放たれた。 ホルマーの体が、優しくて眩しい、真っ青な光に包まれていく……!「リ、リンゴさん……? ホルマーさんに回復魔法を?!」 俺じゃないぜ? 霊験あらたかな、世界樹じきじきの魔法だ。俺の10倍はご利益があるからな!『わたし、まほう使えたよ! お兄ちゃん!』 ああ、良かったな、グリダ!『うれしい! これでわたしも、お兄ちゃんの役に立てるんだよね!』 おいおい。今まででも、ずいぶん助かってたんだぜ? でも……そうだな。グリダは俺の相棒で、スゴい魔法使いだ!『まほうつかい……!』 そうさ。俺たちはパーティーだからな。『フルツお兄ちゃんと……パーティー! きゃあああっ! うれしいっ!』 そこまで喜んでくれると、俺も嬉しいぜ。『……お兄ちゃん、ホルマーさんが!』 お、青い光が消えていくな……  さすがに、切られた腕までは再生できないか。「……ホルマーさん! 良かった! 良かったよおおぉ!」「フレッサ……これは? まさか、これもリンゴ魔法なのか?」 ホルマーの腕……血は止まっているが、痛々しい。 俺なら、手足どころか首がモゲても、元通りなんだけどな。あ、首ないけど。『ピロリロリン! 日頃は 祝福 ( しゅくふく ) のカードをお使い頂きまして、誠に有難うございます』 なんかまた来た! 〝運命のカード〟のアナウンスだ。 〝祝福のカード〟からは、初めてだな。 ちなみに〝祝福のカード〟は、自動的に俺を回復してくれる。手足が切り取られようが、首をはねられようが、元に戻る。だったよな。『 祝福 ( しゅくふく ) のカードご利用者様限定の、大変便利なご利用方法に関するご案内です』 ……なんだろ? カード会社から送られてくる〝親展〟とか書かれたダイレクトメールっぽいフレーズだな。『〝ご自身が 食物 ( しょくもつ ) 〟という、大変めずらしい、[ フ ル ツ ]様だけにお知らせする、お得なご利用方法です。ぜひこの機会をお見逃しなく! 数日中に、担当者から直接ご連絡させて頂きます』 胡散臭 ( うさんくさ ) いな! なんで俺の名前のところだけ、後で付け足したみたいになってんだよ? っていうか〝担当者〟って誰だよ?!『わたくしです。ただいま、少々お時間よろしいでしょうか?』 うわっ! ビックリした! 担当者キターーー!『失礼ですが、フルツ様は居られますでしょうか』 ……本人ですが、なにか?『ご本人様でしたか! 平素は当社のカードをご利用頂きまして、誠に有難うございます!』 当社って何だよ?! え、何これ、何かの勧誘?!『いえいえ、めっそうも御座いません。えー、そ、れ、ではですね……念のためご本人様確認ということで、生年月日とご住所、お電話番号をお聞かせ頂きたいのですが、よろしいでしょうか?』 あ、これ、この時点で切っちゃうヤツだ。なんでそっちから掛けて来てるのに電話番号聞くんだよ! って怒鳴っちゃうアレだ。『お客様?』 はいはい。 ……もうちょい考えた方がいいぞ、まったく。 えーっと……誕生日は、19……いや違う。転生したんだから、5日前かな?  住所も電話番号も、無いです。『はい、確認させて頂きました』 その情報で何が確認できたんだ?『フルツ様……ああ、リンゴでらっしゃる! 珍しいんですよね、現役リンゴのお客様』 現役リンゴ、他にも居るの?!『あ、他のお客様のプライバシーに関わる事はちょっと……』 じゃあ言うなやッ! あとついでに〝現役リンゴ〟って何だよおおッ?! ……はぁ、はぁ、えっと、それで、何ですか?『あ、はい。実は〝祝福のカード〟をご利用中の、ご自身が〝食される側〟でらっしゃる皆様に、大変便利なプランがございまして』 〝食される側〟って。それ、気を使った言い回しなのか知らんが、逆に腹立つぞ?『プランの内容をお伝えしますね。お客様は〝食物〟と言う事ですので、捕食対象となられるリスクが常にございます。特にリンゴの方の場合ですと、死亡原因の86パーセント以上が、なんと〝食されてしまう事〟という残念な調査結果が出ております』 いや、リンゴだから食われるのは残念じゃないだろ。 で、それがどうかしたの?『あ、これからご説明するプランは、いまのお話とは 余 ( あま ) り関係ございません』 関係ない話でリンゴを不安にさせないでくれよ! ぜんぜん話が進まないな! ……要件を端的にお願いします!『あ、こほん。失礼致しました。単刀直入に申しますと〝祝福のカード〟のオプションサービスと致しまして、お客様の、再生能力などを、捕食者に分け与える機能をプラスする事が可能なのです』 ……なんだと?『お客様が〝祝福を与える〟と宣言したあとで、ご自身の一部を対象者が体内に取り込めば、一時的にですが、捕食者側にも〝完全治癒〟〝欠損部位の修復〟〝病毒除去〟〝魔力回復〟〝滋養強壮〟〝家内安全〟〝商売繁盛〟〝学業成就〟〝安産祈願〟など、ありとあらゆる祝福がもたらされます』 最後の方の効果は初めて知ったんだが? ……一番最後に至っては語尾が〝祈願〟になってるし。『ただし、分け与えた部位は、対象者が〝消化〟〝吸収〟を終えるまで、いかなる方法でも回復しません。お客様の場合ですと、某有名コンピューターメーカーのシンボルマークのようになったままですので、著作権などの問題も……』 あーあー、やめろ! ストップ! 余計なことは心配しなくていいよ! また書籍化とかコミカライズする時にでも、担当さんと話し合うからね?『しょせ? コミカラ?』 いや、グリダ。何でもないんだ。 ……そんな事より! 消化するまでの間は、かじられた状態のままなのか。『はい。 痛覚 ( つうかく ) がお有りのお客様の場合は、痛みも持続いたします』 きっつい! それは痛い! かなりイヤだなあ……  けど、仕方ない。〝守る〟って言っちゃったしなあ。『聞いてたのは、わたしだけだけどね。うふふ』 俺が嘘つきだと思われるのが一番イヤなのはグリダだよ。一番の相棒なんだからな。『はわわわ! お、お兄ちゃん……』『フルツ様。この機能を〝祝福のカード〟に追加してもよろしいですか?』おう、頼む。『かしこまりました。今後とも〝祝福のカード〟を、末永く、よろしくお願い致します』『ピロリロリン! 〝祝福のカード〟に機能〝譲与〟を追加しました。ご利用は計画的に』 なんかこう、終始イヤな気分になるんだけど、どういう事なんだ〝祝福のカード〟のアナウンスは。 ……というわけで、もう一肌、脱いでやるとするか! 俺は、フレッサの手から離れ、ピョンとホルマーの手に飛び乗った。