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巣の深部へ

林檎転生 ~禁断の果実は今日もコロコロと無双する~ — novelup.plus · All chapters

巣の深部へ

小部屋に通じる通路から、ワラワラとアリが 這 ( は ) い出てくる。「〝火のリンゴ魔法〟!」 フレッサが、俺を高々と 掲 ( かか ) げて叫ぶ。 あー、はいよろこんでー。「〝1%〟で〝火のかせはずせたびびと〟」「ピロリン。呪文確認。複数対象に対して魔法を発動します。〝出力1%〟」 轟音 ( ごうおん ) と共に、グリダの魔法が屈強なアリを倒していく。 ちなみに俺は〝魔力の残量が20パーセントを切りました〟というアナウンスが流れたので、休憩中だ。「……この部屋には、もう居ないみたいねぇ」「フレッサさん、あまり先行しすぎないでくださいよ?」 フレッサとダティルの〝逆転した会話〟も、なかなか板についてきたな。『うふふ。フレッサさんとダティルさん、すごくいい感じよねぇ』 そうだな。とっさの連携も取れているし、良いコンビだ。『えー! ちがうのよ、お兄ちゃん。そうじゃなくって……』 おっと、グリダ。後ろからも来たぞ!『……ふう。まあ、いっか。りょうかーい!』 俺たちは、この騒ぎのもととなった、あの〝ガラの悪かった3人組〟が見つけた通路から侵入し、奥へ奥へと進んでいる。 途中の小部屋をシラミ潰しにしながら。『お兄ちゃん、ぜーんぶ、回しゅうしたよ?』 よし、じゃあ次いってみよう! ……って俺の声なんか、フレッサとダティルには聞こえてないんだけどな。 あ、グリダ、1匹忘れてるぞ。『あー、ほんとだ! よいしょっと!』 アリの犠牲になった人たちの遺品、アリの死骸、そして、奥に進めば進むほど増える〝さまざまな鉱石〟などを、片っ端から〝倉庫のカード〟に詰め込んでいく。「んー? リンゴさんがさっきから吸い込んでる、キラキラした石は何なんだろぉ?」 フレッサが不思議そうに首を 傾 ( かし ) げる。「お前はそんな事も知らないのか……おっと。フレッサさん、そんな事も知らないんですか?」「ダティルぅ? 言い直したら2回バカにされた気分になるからぁ、間違えずに一発でキめなさい」「……フレッサさん、そんな事も知らないんですか?」「なんでもう一回言ったのよぉ!」 ……イチャついてないで、早く説明しろダティル。「あの石は、何かの〝鉱石〟ですよ。僕は専門家じゃないから詳しいことは分かりませんが、巣を作る時に掘り出した物を、ああやってひとまとめにしてあるんでしょう」「へぇ? 鉱石……かぁ」 きっと、掘り進めている内に、鉱脈を掘り当てたのだろう。結構な量の鉱石が、部屋のあちこちに積み上げられている。ああやって積んでおくのは、このアリの習性なのかもしれないな。「見た感じ、レアな物もあるみたいですので、持って帰れるならどんどん集めて持って帰りましょう」 正直、これらが役に立つかどうか分からないんだけどな。特に、アリの死骸。『えー? それじゃ、なんでもっていくの?』 ここに大量のアリが死んでる イコール、それだけのアリを、フレッサが全部倒したことになっちまうからだ。それは、悪目立ちが過ぎる。『いいんじゃないの? フレッサさんがスゴいって、みんな思ってくれるよ?』 いや、それじゃスゴすぎるんだ。 ……ここのアリは、国をひとつ潰したんだぜ? それを全滅させちまったら、フレッサは、ひとりで国を潰せるぐらい強いって思われるだろう?『ああっ! それはだめなのよ!』 そうだな、駄目だ。国を滅ぼせる〝リンゴ魔法〟の使い手を、世間は放っておかないだろう。その上、同行したダティルや〝リンゴ魔法〟の正体である俺まで、注目される事になるぜ。『そっかー、だから、おそうじしているのね!』 ああ。それにな? 〝倉庫のカード〟の容量は無制限だ。しかも、中に入れたものは劣化しない。このアリも、一気にじゃなく、一匹二匹ずつ出せば、そう違和感もなく買い取ってもらえるだろ。『かいとってもらう?』 おう。魔物の死骸から採れる素材は、高く売れる場合もあるらしいからな。このアリにどれほどの価値があるのか知らないが、全部回収していこう。 ……申し訳ないけど、人骨はパスだ。本当ならここから持ち帰って、手厚く葬るべきなのかもしれないが、何せ恐ろしいほどの数で、とてもじゃないけど俺の手には負えない。『かわいそうなのよ……』 グリダは優しいな。 まあ、アリがいなくなれば、ここも少しは居心地が良くなるだろう。 あ、そこの奥に、もうひと部屋あるな。フレッサたち、気付いてないみたいだから、一発撃ってやってくれ。『はーい!』 σσσ  σσ  σ  ダティルが、小声で言った。「……あ、この部屋も、まだ寝てます」 かなり地下深くまで降りてきたせいだろう。小部屋によっては、まだ〝眠り〟についたままのアリもいた。「ちょっと待ってて下さいね」  剣を抜いて、眠っているアリに近付いていくダティル。 この状態のアリは、ダティルの剣で 眉間 ( みけん ) をひと突きすれば倒せる。 ……やはり、巣の 殲滅 ( せんめつ ) のために、迅速に動いて正解だったな。 いささか卑怯だけど、アリ相手に〝騎士道精神〟とか〝スポーツマンシップ〟を持ち出す必要もないだろう。『うふふ。お兄ちゃんも、リンゴだし、ね!』 そうだったな。こりゃ都合がいい。〝リンゴ対アリ〟に、ルールなど無用だ。「しかし、こいつらどうやって眠ってるんだ? ……でしょう」 ダティルは、まだ少し、言葉がぎこちないな。「魔法……かなぁ?」 フレッサは、ダティルに対して完全にタメ口だ。 ……どちらかと言うと、素に戻ったというか、こっちが本来の口調というか、全然違和感がない。「魔法だとしたら、厄介かもしれませんね」 あんな虫みたいなやつらが魔法を? あり得ないんですけど…… 『うふふ。わたしとお兄ちゃんも、ちょっとありえないのよ?』 ああ。〝杖〟と〝リンゴ〟だからな。 ……そういう事なら〝虫の化け物〟が魔法を使っても文句は言えないな。「よし……と。これで全部です。回収してください、フレッサさん」 ダティルによって、目と目の間に穴をあけられたアリの死骸が、何体も床に転がっている。 ……こいつらなぜか、直接さわらなければ、仲間が断末魔の叫びをあげても、どれだけ床をガサガサのた打ち回っても目を覚まさない。『やっぱり、まほうで眠っているのかな』 そうだろうな……となると、眠らせたり起こしたりするアリも居るはずよな。『お兄ちゃん! いっぴき、そとから来るよ!』 敵か! グリダ、やっちまえ!『はーい! 〝1%〟で〝火のかせはずせたびびと〟』「ピロリン。呪文確認。魔法を発動します。〝出力1%〟」 ゴゥ! という、炎が飛んでいく音に、フレッサとダティルが振り返る。「リンゴさん?!」「敵か!」  ボム! という命中音が鳴りひびき、暗い通路の向こうを、魔法の光が明るく照らす。よし、やったな。「ピロピロピロ! 警告! 魔法効果をレジストされました」「……え?」 魔法を〝レジスト〟だって? ……防がれたのか? グリダの魔法が?!『お兄ちゃん……見て! あれ!』 おいおい。マジかよ。いや、居るとは思ってたけどさ。 「やっぱり、出ましたか。さがって下さい!」 剣を構えてフレッサの前に立ち、姿勢を低くするダティル。「あ、あいつが、アリの……?」 ダティルに 庇 ( かば ) われながらも、 携行照明 ( カンテラ ) の光を向けて、敵の姿を確認しようとするフレッサ。『お兄ちゃん……あんなの見たことないのよ!』 〝杖〟を持ったアリが一体、こちらを見ている。 アリの魔法使いだろう。なかなか 様 ( さま ) になってるじゃないか。