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11回死ぬ罠

林檎転生 ~禁断の果実は今日もコロコロと無双する~ — novelup.plus · All chapters

11回死ぬ罠

〝魔法使いが持っている 杖 ( つえ ) 〟 と聞いて、どんな形状の杖を想像するかは、人によって 様々 ( さまざま ) だろう。 茶色くてゴツゴツした、白ひげの魔法使いが持っていそうな木製の杖。 オーケストラの指揮者が振っていそうな、細くて短い杖。 奇術師が鳩を出す時に、シルクハットをトントンする、黒くてツヤのある杖。『うふふ。わたしみたいな杖もあるねえ』 そうそう。てっぺんに、宝石や水晶玉があしらわれた杖もあるよな。 その中でもグリダは、一番きれいで神秘的な杖だと思う。『うれしい! お兄ちゃんも、世界で一番カッコいいリンゴよ!』 ははは! そうかそうか、俺も嬉しいよ、グリダ。 ……おっと、話がそれた。杖の話だったな。 目の前に現れたアリは、手に〝茶色でゴツゴツした杖〟を持っていた。「あれは〝棍棒〟って感じじゃないですよね」「棍棒でもビックリなんだけどぉ……あれは間違いなく〝魔法の杖〟よねぇ」 これまでに倒したアリは、一匹たりとも、武装などしていなかった。棒切れを手に持って襲って来ただけでも、かなりの警戒レベルだが……あのアリは、もっともっと厄介そうだ。『お兄ちゃん〝レジスト〟ってなあに?』 そうだな。レジストっていうのは〝抵抗する〟とか〝反抗する〟って意味だ。「……フレッサさん、リンゴ魔法、たしかに当たりましたよね?」「うん。命中したはずよ? なのに無傷という事は、効かなかったのぉ?!」 俺の知識では、魔法の効果を無効にすることを〝レジストする〟って言うんだ。 あ、いや。知識っていうか、小説やゲーム用語だ。まさか現実に〝レジストされる〟状況なんて、あると思わなかったぜ。『わたしのまほう〝無し〟になっちゃったの?』 しょんぼりした声のグリダ。 いやいや、気に 病 ( や ) む必要はないぞ? 今のは、たった1%の力だったからな。 ……かといって、油断もできない。グリダの1%という事は、俺の10%ぐらいの力って事だもんな。『あ、そっか! じゃあ、もっと強めにうてばいいんだ! やってみるの!』 あーあーあー! ちょっと待った! グリダ、ストップ!『えー? なんで?』 グリダの魔法は強力で、スゴい威力なんだ。もし万が一、壁とか天井に当たったりしたら、崩れて生き埋めになるかもしれないだろ? 『そっかー! だから〝1%の出力で〟って言ったんだね! お兄ちゃんはやっぱりスゴいなあ』 あの〝杖を持ったアリ〟に、はたして何%の出力で通用するのかは分からないけど、俺やグリダの魔法は、それを試すには強力過ぎる。『こわいねえ。だいさんじになっちゃうのよ』 そうだな。これ以上、出力を上げれば、フレッサとダティルは生き埋め。俺は土の下で、発芽を待つことになる。実がなる頃には、地上の人間は食い尽くされちまってるぜ。 ……さて、どう戦うのがベストなんだろう。やっぱ肉弾戦かな?『ギギ、少し遅かったか……』 ……ん?『起こす前に、全滅させられるとは……! もしや、この部屋以外の兵士も……? 急いで女王様に報告せねば』 ……んん?『……いや、まてよ? この二匹だけなら、私ひとりで充分だな。被害が広がる前に、さっさと片付けてから、報告するとしよう』 ……グリダ。いまの声、聞こえたか?『こえ? ……んーん? アリさんなら〝ぎちぎちぎち〟って、鳴いてるけど……』 ……俺にだけ聞こえている?『それにしてもこいつら、どうやってここまで入り込んだ? 兵は交代で待機させてあるのだがな』『あ、ほらね? また〝ぎちぎちぎち〟って……』 ……グリダには鳴き声としか聞こえていない? そうか! 俺の〝自動翻訳〟で、アリの言葉が、日本語に変換されてるんだな?『麦の根・雨音・星の海に紛れた三十六の鍵』 ……何だ? 急に、言ってる事が分からなくなったぞ?『山の主は居りませぬ・里の主は居りませぬ』 何だ何だ? さっぱり意味が分からない。 ……ん? いや、この感じ……  意味の分からない言葉の羅列……もしかしてこれは……!『奈落の壁に爪立てて・急ぎ来たれ・闇の主』 次の瞬間、アリの持つ杖の先に、黒い煙のような物が集まり始めた。 やっぱり! いまあいつが喋っていたのは、魔法の呪文か!『闇の魔法・ねむり』 杖の先から放たれた黒い波動が辺りを包む!「うわあっ!」「きゃああぁ?!」 マズい! 俺もフレッサもダティルも、魔法をまともに食らってしまった! 「こ……これは 催眠系 ( さいみんけい ) の魔法か」「意識がぁ……遠のい、て……」 駄目だ! このままでは全員 眠 ( ねむ ) ってしまうぞ?! なんてこった……もう少し早く、あの言葉が〝呪文〟だと気付いていればこんな事には…… 『お兄ちゃん……』 フレッサが 膝 ( ひざ ) をついて倒れ、続いてダティルも崩れ落ちた。俺はフレッサの手を離れて壁際に転がり……やがて二人は寝息をたて始める。『ねえ、お兄ちゃん……』 グリダ……眠っちゃ駄目だ……寝たら、さい、ご…… 『お兄ちゃん。わたしたち、植物だから、ねむらないのよ?』 ……あ、そっか。そう言われれば、全然眠くないぜ。あははは!『もー、お兄ちゃんたら』『ピロリロリン! 〝未知の呪文〟と〝魔法の発動〟を検知しました。〝魔術師のカード〟に登録します』 ……なに?! まさか!『ブッブー! エラーを検出しました。解析を開始します』 ですよねー。さすがに魔物の魔法までは、覚えられないだろ。 そんな事より、この状況を何とかしなければ! 寝てしまった二人は……眠っているアリと同じで、 触 ( さわ ) れば起きるのか? よし、ならば俺の必殺……いや、殺しちゃダメだ。〝超手加減・体当たり〟で起こしてやろう。それ、コロコロコロ…… 『んー、何だ? 何が転がって……果実?』 チッ! さすがに気付かれたか? まあいい。とにかく二人を起こして逃がさなければ! コロコロコロコロ……  起きろフレッサ! 〝超手加減・体当たり〟!「ポフッ」『……お兄ちゃん、フレッサさんおきないよ? なんで?!』 ただの寝ぼすけだろ? ダティル、起きてくれ! 〝超手加減・体当たり〟!「ドボフッ」 あ、ちょっと強めに決まっちまった。 ……って、おや? それでも目を覚まさないぞ。なんで二人とも起きない?『果実が勝手に動くだと? どうなっているんだ?』 ……もしかして、魔法が違う? アリたちを眠らせている魔法と、二人を眠らせた魔法は別モノなのか!『この果実、何やら、意思のようなものを感じるな。先に破壊しておくか』 くそっ! カンの良いやつめ! ……マズいな、近付いてくるぞ。どうする? イチかバチか、強めの魔法を試してみるか?『ピロリロリン! 〝未知の呪文〟の解析が完了しました。エラーの原因となった〝呪術的ないくつかの問題〟が検出されました』 ……って〝魔術師のカード〟? まだ解析してたのか?! いまはそれどころじゃ…… 『ピロリロリン! エラーを修正する準備が完了しました』『ピロン! 〝発声のアクセントと強弱による誤作動誘発トラップ〟3個』『ピロン! 〝文字と単語の並びによる施術者への呪殺トラップ〟4個』『ピロン! 〝術作用点の意図的且つ禁忌的配置による魔力過流入トラップ〟4個』『ピロリロリン! 合計11個の、詠唱者に対する悪意のあるオブジェクトが検出されました。修正しますか? Y/N』 これはたぶん〝致命的な〟〝悪意のある〟罠だらけの呪文。 ちょっと怖いけど……覚えられるのか〝魔物の魔法〟!