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植物系トーク

林檎転生 ~禁断の果実は今日もコロコロと無双する~ — novelup.plus · All chapters

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とにかく、急いで現状を 把握 ( はあく ) しなければならない。 俺はいま、五感がまったく無い状態で身動きひとつ取れないという、とても悲劇的な状況下にある。 幸いなことに神様と会話ができるので、第三者の視点から、俺の状況を教えてもらえるのがせめてもの救いだ。 ……で、神様。いまの俺ってどんな状況?『木に……』 木に?『実っています。たわわに』 収穫前かよ、俺!『大きなリンゴの木に、たくさんの実が 生 ( な ) っています。その内の一個が、あなたです』 一個って。 まさか〝個数〟で呼ばれる日が来るとは、思わなかったなぁ。『数十個の兄弟たちが、風に揺られていますよ。のどかな風景ですね』 まさか〝個数〟で呼ばれる兄弟ができるとも、思わなかったなぁ。『私と会話できるのは、3日間だけです。その間に、できる限りの事をやっておきましょう』 できる限りって……俺、まったく動けないし。『いえ。物品に転生するよりも、リンゴの方が、まだ望みがありますよ。生活スタイルは違いますが、植物も生き物ですから』 はあ、なるほど。そう言われてみればそうかも! なんか、やる気が出てきたぞ!『クスクス……やっと古津さんらしくなって来ましたね』 よし! じゃあさっそく〝倉庫〟のカードの中に、何か役に立つものが入っていないか、見てみよう。どうやればいいのかな?『なるほど。良いアイデアです! もしかしたら、リンゴでも使えるアイテムが入っているかもしれませんからね。それでは、頭の中で先程のカードに書かれた〝箱〟をイメージして、中をのぞき込んで下さい』 あー、なるほどね。どれどれ? うっわ、すごい! 脳裏にカードの中身が、リストアップされて浮かんでくるぞ。 ……えっと、なになに? きずぐすりに、金貨、宝石、食料、寝袋。『リンゴには、必要のないものばかりですね』 あー、うん、そだね。 ん? これなんかどうだろう。魔法の巻物……おお! 説明も出てくるのか。 〝魔法:火球〟 この巻物を開封した者は〝火球の魔法〟を使えるようになる。 ・消費MP 10~ ・必要適性 火 ふむふむ。さっそく試してみよう。神さま、これ、どうやって箱から取り出すの?『簡単ですよ。取り出したい物を選ぶと、目の前に〝箱〟が現れますので、手を突っ込んで取り出して下さい』 俺〝手〟ないんですけど…… 『……え?』 俺、いまリンゴです。『……あああっ! そうでした!』 うわわーん! 〝倉庫〟のカード、使えねえ! スゴいアイテムがいっぱい入ってるのに、取り出すこともできないぞ!『お、落ち着いて下さい! きっと、何か方法が……』 ダメだよ! もう俺、このまま木にブラ下がって、一生を過ごすんだ! 終わった! 俺の転生チートハーレムストーリー、完結だ! うええええん!『お兄ちゃん?』 いやだああ! 下手すれば収穫されたり、鳥に突かれたり……あわわわ! 食べられたくないよ! うわあああん!『お兄ちゃん、なんで泣いてるの?』 ひいぃぃぃん! なんでって、これが泣かずにいられますかって……  え? 神さま、いま何か言った?『……はい? 古津さん、何をおっしゃってるのですか?』 あれえ? さっきの声……神さまじゃないのか? そういえば、声色が違うというか、聞こえ方自体が全然別モノだぞ。いったい誰だ?『古津さん。私以外に、今の状態のあなたと会話できる者など、いるはずが……』『お兄ちゃん、フルツさんっていうの? わたしは〝世界樹〟。よろしくね』 世界樹? それって確か、よくゲームとか物語に出てくる……えっと、何だっけ?『……世界樹? 古津さん、もしかして、この世界を支える〝世界樹〟の声が聞こえているのですか?』 あれ? 神さまには聞こえないんですか?『はい、まったく聞こえません……! 驚きました。ビックリです……まさか〝世界樹〟と会話できるなんて!』 神さまにも聞こえない声なのか。 ……もしかして、俺が〝植物〟に転生したから、同じ植物である〝世界樹〟の声が聞けるようになったのか?『スゴいですよ古津さん! 〝世界樹〟と会話できるという事は、この世界と会話できるという事なんですよ!』 この世界と会話? そう言われると、確かにスゴい気がしてきたぞ。『ううん、わたし、この世界の木じゃないの』 ……神さま、なんか、違うって言ってますけど。この世界の木じゃないって。『それでは、別の世界の……? おかしいですね……どういう事でしょう。いくら世界樹でも、異なる世界から、古津さんに声が届くとは思えませんし』 はっきりクッキリ聞こえるよ? むしろ直接、耳元で喋ってるぐらいの声だ。『うふふ。わたしはここよ? フルツお兄ちゃん、ここ!』 声でかっ! ちょっ、耳元で叫ばないでくれよ! ……って、あれ? 俺、耳が無い筈なんだけど? まるで、頭の中に誰かが居て、大声で叫ばれたぐらいの音量だ。 ……ん? そうか、頭の中!『お兄ちゃん、こっち! こっちにいるの!』 やっぱりそうか。 声は、脳裏にある〝倉庫〟のカードから、響いている。 俺は急いで箱の中をのぞき込んだ。『……わたしが、わかる?』 おう、見つけたぞ! やっぱり〝倉庫のカード〟の中だ!『ええっ?! まさか、世界樹が……〝倉庫〟の中に?!』 間違いないよ。これがそうだろ? 〝グリダヴォル〟 悪しき巨人を滅ぼすため、世界樹の若い枝を使って作られた杖。 ・攻[物理]+5660  ・攻[魔法]+2887820  ・HP自動回復 ・MP自動回復 声の主は〝杖〟に加工された〝世界樹〟だったんだな。『うふふ。お兄ちゃん、変わってるのね。わたしとお話できる人なんて、はじめて! ……でも、どうしてこんな所に、ぶら下がってるの?』 あはは。好きでこんな事してるんじゃないぞ? ……実は、俺、もともと人間だったんだ。『人間? ほんとに?』 ああ。本当だぜ。『えー! そうなんだ……!』 転生して、この世界に来たのはいいんだけど、この姿になってしまってね。動くことはもちろん、見ることも聞くことも……なーんにも、できないんだよ。『ああ、そっか……そうだよね。だって、わたしたちと動物さんでは、からだのしくみが、ぜんぜんちがうもん』 そうなんだよ。おかげでこの通り、ピクリとも動けないし、キミのいる、その箱の中の物も取り出せない。本当、困ったなあ。『……こまったねえ。あ! それじゃあ、からだの動かしかた、わたしが教えてあげようか?』