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千鳥

林檎転生 ~禁断の果実は今日もコロコロと無双する~ — novelup.plus · All chapters

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違和感の正体は、あまりにも自然に行われていた〝魔法の無効化〟と〝魔法による回復〟の両立。 ……魔法が効かないはずの五匹のアリに、なぜ女王の回復魔法が効くのだろう。「ね、へんなのよ?」 そういえばあの時、女王アリは〝攻撃魔法〟を無効化と言っていた気がする。 えらいぞグリダ。よく気付いたな!「うふふ。よく分からないけど、うれしい!」 ……さて、と。それじゃ実験してみるか。そんなに、のんびりしている暇はなさそうだし。「じっけん?」 ああ。まずは俺がやるから、見ててくれ。「はぁーい!」 グリダの本気モードで〝失敗しました〟とか、ましてや〝逆効果でした〟じゃ、済まないからな。慎重に検証していこう。 まず試すのは、俺の全力だ。これが効けば〝危ない橋〟を渡る必要は無いんだが…… 〝出力100%〟で〝火の 枷外 ( かせはず ) せ 旅人 ( たびびと ) 〟!『ピロリン。呪文確認。魔法を発動します。〝出力100%〟』 テストなので、一発だけ撃ってみる。目標は、ダティルに一番近いアリ。『な、何じゃ、あの魔法は?!』 巨大な炎。これが、いま俺が撃てる最大級の魔法だ。 凄まじい熱量だが……これでも、グリダの魔法の10%ぐらいの威力しかない。「おお! リンゴさんが、スゴいのを出したぞ?」 妙にテンションが上っているダティル。分かるなあ! 想像を超えた〝真の実力〟を見た時の、言いしれぬ高揚感ったら無いよな! 燃えさかる巨大な炎は、アリに向かって飛ぶ。よし、命中した!「ピロピロピロ! 警告! 対象物に、魔法効果をレジストされました」 そうか、この威力でも弾くか。『おーっほっほっほっほっほ! 効かないわ! 効かないわねえ!』 よし。火の魔法の実験はここまでだぜ。「今のでもだめなの?! お兄ちゃん、わたしのまほうで!」 待ってくれグリダ。それは危ない。 確かに、もしかしたら、俺の全力を超えるような出力……つまり、グリダの〝10パーセント超え〟の魔法なら、勝てるのかもしれない。だが。「そんな……! あの威力の魔法でも、効かないのかよ!」 ダティルは、信じられないといった表情だ。 パラパラと天井から小石が落ちてきている。これはさっき俺が撃った〝100%の火の魔法〟が与えた、この巣穴へのダメージによるものだろう。 ……もし万が一、グリダの魔法の余波で、この巣穴が崩壊すれば、俺たちは生き埋めだ。頼みの綱の〝 覆水可収 ( ふくすいかしゅう ) 〟も、グリダの魔法には使えないから、取り返しがつかなくなる。「お兄ちゃん、どうしよう!」 大丈夫だグリダ。今のは、ちょっとした確認だからな。 さあ、それじゃ、本命のほう、行ってみようか! 〝出力50%〟で〝水の 封 ( ふう ) 切る盗人〟『ピロリン。呪文確認。魔法を発動します。〝出力50%〟』「えっ? お兄ちゃん、その魔法は?!」 回復魔法の青い光が、ダティルに一番近い、剣を持ったアリに命中した。 よし! 思った通りだ!「リ、リンゴさん! なんで敵を回復するのぉ?!」 フレッサが慌てている。だが、ポイントはそこじゃない。「いや、そんな事より! 魔法が弾かれずに、当たった?!」 お、ダティルは気付いたか。「なんで? まほうが当たった! お兄ちゃん、どうなってるの?」 最初に女王が使ったのは〝攻撃魔法〟だけを無効にする魔法だったんだ。 ……たぶん、支援や回復の魔法を邪魔することは無いんだぜ。その証拠に、さっきからずっと、女王は〝魔法で〟5体のアリを回復していただろう?「……そっか! まほうをぜーんぶ〝なし〟にしちゃうのなら、かいふくも出来ないもんね!」 そうだな。だから、俺の 最大出力 ( 100% ) の火の魔法ですら弾いてしまうのに、回復魔法は普通に当たったんだ。「……あれ? でもお兄ちゃん。かいふくのまほうじゃ、ダメなんじゃない?」 ふっふっふ。まあ、見ててみな? 俺の考えが正しければ…… 「な、何だ? こいつ……急に!」 ダティルの目の前のアリは、今までの 俊敏 ( しゅんびん ) で洗練された動きとは打って変わり、足取りはフラフラし始め、ぐねぐねと不規則に剣を振り回し始めた。俺でも分かるぞ。あれがいわゆる〝隙きだらけ〟の状態だ。『ば、バカな! わが子が受けた今の魔法は?!』「えー? なんであのアリさん、フラフラなの?」 グリダ。何にでも〝 適量 ( てきりょう ) 〟……つまり、ちょうど良い量があるんだよ。 ……薬だって、飲みすぎれば逆に体を壊す。あのアリは、必要以上に回復魔法を浴びたせいで、フラフラになってしまったんだ。「うりゃああっ!」 おっと、さすがに抜かりがないな! ダティルの剣が、フラつくアリを一閃。ギィという断末魔と共に、首が床に転がる。『そ、そんな事が……? わらわの子が 酩酊 ( めいてい ) するほどの回復魔法など、人の子に使えるわけがない!』 まあ、俺もう〝人の子〟じゃないけど、せっかく勘違いしてるみたいだから、もうひと驚き、してもらうかな。 ……よーし! グリダ、30%の力で、残りの4匹に回復魔法をかけてやれ!「はーい! 〝出力30%〟で〝水のふうきるぬすびと〟!」 グリダの30%という事は、俺の魔法換算だと300%の威力だ。これは強烈だぜー?「ピロリン。呪文確認。複数対象に対して魔法を発動します。〝出力30%〟 』 俺の魔法より、さらに 濃 ( こ ) くて青い光……グリダの魔法が、4匹のアリを包む。 とたんに、手足をバタバタさせて、転げ回ったり、グルグルと走り回ったりを始めるアリたち。効いてる効いてる!「わぁ! わたしのまほうも、あたったよ、お兄ちゃん!」 ずいぶん嬉しそうだなあ。良かったな、グリダ。『お、おのれっ……うぐぐぐ……!』 助けたくても、助けられないだろう。何せ、アレに回復魔法なんか掛けたら、逆効果だからな!「そういう事か。すごいぞリンゴさん!」 ニヤリとこちらを見て笑うダティル。どうやら俺の魔法の意図に気付いたようだ。「ねえぇ? 何なのよ? 何が起きてるのぉ?!」 ……未だに不思議がっているフレッサ。まあ、今回はおとなしくそこで見ててくれ。「ギギッ! ギチギチ! ガガギッ!」 じたばたと転げ回るアリの手から、武器を蹴り飛ばして奪い、慎重にとどめを刺してゆくダティル。見た目は若くても、落ち着いた対応は、まさに熟練の冒険者だ。 よし、それじゃ俺は、グニャグニャと〝見たこともないダンス〟を踊っている、槍を持ったアリを…… 「パァン!」 頭部を失ったアリは、膝をついて、ピクピクと 痙攣 ( けいれん ) する。ふう、やっと攻撃が通ってスカッとしたぜ!『おのれぇえっ! おのれおのれおのれっ! 許さぬぅぅぐぐぐっ! 許さぬぞぉぉ!』 ……怒りに顔を歪める女王。大気まで震えている。「お兄ちゃん、もしかして、女王アリさん、すごく怒ってる……?」 アリの言葉が分からないグリダでも気づいたか。 ……まあ、あれだけのオーラを放たれたら、誰にだって分かるだろうな。「ふう。これで5匹とも……なっ? 何だ! あの波動は……?」「ひいぃ?! 何なのよぉ、あれ!」 女王アリの周囲を覆っていた白いオーラがどす黒く変わっていく。 ……とうとうラスボス戦だな。