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エクストリーム死んだふり

林檎転生 ~禁断の果実は今日もコロコロと無双する~ — novelup.plus · All chapters

エクストリーム死んだふり

よーし。狙うはレア物だ!「きっと、すっごい貴重な品がいっぱい出てくるのよぉ、この箱! フレッサちゃんがごっそりいただいちゃうわぁ!」 おお?! やる気だな、フレッサ。それじゃさっそく、その金貨を投入しちゃってくださいッ!「フレッサさん! ……と、たぶん、リンゴさんもっ! 今はそんな事してる場合じゃないでしょう?!」 チッ! 気づかれたか。カンが良いな、ダティル……! グリダが〝 硬貨生成 ( こうかせいせい ) 〟で作った〝 死蔵抽選 ( しぞうちゅうせん ) 〟用の金貨は、普通のアリ700匹分が7枚と、女王側近の親衛隊アリ5匹だけで出た1枚の、合計8枚。『ほかのを入れても、ダメだったね、お兄ちゃん』 そうだな。ある程度の〝強敵〟じゃなきゃ、ダメなんだろう。 ……ちなみに、不要なガラクタや、弱い魔物の死骸を〝 硬貨生成 ( こうかせいせい ) 〟用の箱に入れても、ブザー音と共に、排出されてしまうようだ。 もちろん、ガラクタ以外のアイテムは、試していない。勿体無いからな。「……ダティルぅ、こういうのって、流れが大事じゃない? すっごいアイテムが出た、今がチャンスなのよぅ?」 ダティルが装備しようとしている〝ロガの 革鎧 ( かわよろい ) 〟は、見た目はごく一般的な革製の鎧だが、実は恐ろしく高性能なレア・アイテムだった。いわゆる〝大当たり〟だ。「気持ちは分かりますが、急がないと……下層がどうなっているかも心配ですし。えっと、リンゴさん、これ頼みます」 ダティルの言っている事はもっともだ。アリが全滅したとはいっても、下層に避難したメンバーが無事である保証はない。 ……グリダ、ダティルの着ていた 鎧 ( よろい ) を収納してやってくれ。あと、今日 拾 ( ひろ ) った物の中に〝剣〟がいくつかあったよな。 鞘 ( さや ) の付いたやつを、ぜんぶ出してくれないか?『……けん? ダティルさん、じぶんのけんを持ってるのに?』 ああ。いまダティルが腰に下げているのは、 素人目 ( しろうとめ ) には何の変哲もない剣だけど、剣士で頭のいい〝ザンバラウ〟や、元・同僚の〝エルミチャ〟が見たら、あれが〝ホルマーの剣〟だって、すぐに気づかれるだろうからな。『えー、そんなの、分かっちゃうの?』 いいかグリダ。人間ってのは、自分の得意分野に関してだけは、妙にカンが働くというか、不思議といろいろ、分かってしまうんだぜ?『へぇー! それじゃ、気をつけなきゃ!』 ダティルの足元にあった鉄製の 鎧 ( よろい ) が消えて、代わりに6振りの剣が並べられた。「おお! リンゴさん、分かってるなあ!」 自分の剣を腰から外し、足元の剣を選び始めるダティル。「えぇ? リンゴさん、なんで剣なのぉ?」「たぶん〝エルミチャ〟や〝ザンバラウ〟が、そっちの剣を見たら、絶対に〝ホルマーの剣〟だって分かっちゃいますからね」 ……な?『お兄ちゃん、すごーい!』 σσσ  σσ  σ  アリの死骸を回収しながら、ぐるぐると、 螺旋階段 ( らせんかいだん ) を降りる。「もしかしてぇ、みんな、もう地上に戻っちゃったとか、ないかしら?」「いや、それはあり得ません。〝エルミチャ〟がついていますから。こういう時は、安全だと確認できるまで、じっと動かないのがセオリーです」 それに、まさかこんな短時間で、あのアリの大群を 殲滅 ( せんめつ ) するとは思わないだろうし、きっとこの先で、安全な場所を見つけて、隠れているだろう。「……念のため、復習しときますよ? 僕はダティル。フレッサさんに偶然助けられた、記憶喪失の剣士です。名前以外、何も覚えていません」「この世紀の大リンゴ魔法使いフレッサちゃんと、ダティルの活躍で、アリは敗走。でもぉ、巣の奥には、すでに食べられてしまったであろう、ホルマーさんの〝ギルド員証〟が落ちていた! ……ここまで説明した所で、泣き崩れる私!」 多く居ると思っていたアリは、実は大した数ではなく〝5匹ほど倒したら、5匹逃げた〟ぐらいに言っておけば、ギリでフレッサが〝救国の英雄〟扱いをされることもないだろう。何せ、何百ものアリの死骸は、すでに金貨に替えちゃってるから、証拠もないし、目撃者も居ない。「あとは、僕の言葉使いと、フレッサさんの演技力次第ですよ」「そこは任せてぇ! 子どもの頃は、劇団で売れっ子スターだったんだからぁ!」「知ってます……お、やっと第4層ですね。って、あの丸く焦げた地面は何ですか?!」 第4層にたどり着いた。 先ほど、俺の魔法が焼いた黒い地面の上に立って、辺りを見回すダティル。 さて、うちのパーティーメンバーは、どこへ行ったかな? ……グリダ、なにか見えるか?『ううん。近くには何もいないのよ?』 そうか。まあ、そんなに奥までは行ってないだろうけど……なにか見えたら、教えてくれな?『はーい!』 念のために警戒しつつ、道なりに進む。 ここの作りは、第3層までと同じく、ほぼ一本道だ。『お兄ちゃん、いたよ! そこの奥!』 おっと、どこだ? ……なるほど、うまく通路を塞いでいるな。壁にしか見えない。 フレッサとダティルも、気づかずに通り過ぎようとしているし。「……あ、リンゴさん?」 俺は、フレッサの手から離れ、壁に体当たりをお見舞いする。 ……ボロボロと崩れる壁。その奥から、聞き覚えのある声が聞こえてきた。「月を引き合いに語り、風の戒めを解く。見えざるもの沸き立ち、微塵となりて、水泡に帰す。〝風の魔法〟」 うわっ! あぶねえ、ちょっと切れちまった! さすが〝ザンバラウ〟の風魔法…… 『ピロリロリン! 〝未知の呪文〟と〝魔法の発動〟を検知しました。〝魔術師のカード〟に登録します』 お、ラッキー! 風の魔法、ゲットだな。『ピロリロリン! 登録に成功しました。使用者を〝フルツ〟及び〝グリダ〟に設定。デフォルト出力〝50%〟に設定。安全設定は〝使用者〟〝接触者〟〝登録リスト[002]名〟』『ピロリロリン! 呪文の解析に成功しました。効率化、圧縮完了。圧縮後の呪文は〝風の戒め解く月語り〟。効率化による威力増加のため、デフォルト出力を〝3%〟に変更しました』 そしてさらに、新しく手に入れた、あの機能も…… 『ピロリロリン! 外皮の損傷を検知しました。風系魔法に対する耐性を6%獲得 [6/100]』 ……よし、思ったとおりだ。〝 耐性外皮 ( たいせいがいひ ) 〟ってヤツだな。ダメージを受ければ受けるほど、その系統のダメージに耐性がついていくんだ。そして耐性が100%になれば、キズひとつつかなくなる。「……リンゴ? フレッサか?! すまん、魔物かと思って撃ってしまった!」 仕方ないさ、こんな状況だ。メンバーの顔つきを見れば分かる。「ううん。大丈夫! ……みんなは無事?」 憔悴 ( しょうすい ) し切った、暗い顔つき。きっとここに来るまでに、色々とひどい目に遭ったんだろう。「ああ。アリ以外の魔物が結構居てな。何とか全員生きてるが〝シルエラ〟が、ひどい怪我で……」「ホルマーさん!」 奥で、ケガを負った〝シルエラ〟の手当をしていた〝エルミチャ〟が、駆け寄ってくる。「……じゃない? えっと、あなたは?」 エルミチャの 安堵 ( あんど ) の笑顔が、みるみる不安に 彩 ( いろど ) られていく。「僕はダティル。アリの群れに襲われていた所を、フレッサさんに助けて頂いた者です。えっと、実は、それ以外、何も覚えていないのですが……」 ナイス演技だダティル。おっさん臭が微塵もない。「……そ、そうでしたか。それは大変でしたね。えっと、フレッサさん……その……ホルマーさんは?」 黙ってうつむき、首を左右に振るフレッサ。涙が地面に落ちる。マジかよフレッサ、すごい演技力じゃないか。「ホルマーさん、私の目の前で、何匹ものアリに……」 肩を震わせながら、 嗚咽 ( おえつ ) を押し殺している。 ……フレッサからエルミチャに、そっと、血染めのギルド員証が手渡される。ちなみにこの血は、ホルマー本人の物だ。「そ、そんな……?!」 肩を落とすエルミチャと、とうとう耐えられなくなり、泣き出すフレッサ。大粒の涙が、止めどなく頬を伝う。 ……待て待て待て! ちょっと俺までホロッと来ちまったじゃねえか!『フレッサさん、すごい……!』 グリダも驚いている。なんだろう、この引き込まれるような演技力は……?「……ゴホ! ケフッ!」 部屋の奥から、大きく咳き込む声が聞こえてきた。そうだ、シルエラが怪我をしていたんだった。「……悲しんでいても、ホルマーさんは帰ってきません……シルエラさんを治します。リンゴ魔法!」 俺を頭上に掲げて、フレッサが叫ぶ。そうだな。ダティルが水魔法で治せば、ホルマーの面影を、誰かが連想するかも知れない。 ……グリダ、頼む。『はーい! 〝水のふうきるぬすびと〟!』『ピロリン。呪文確認。魔法を発動します。〝出力2%〟 』「すごい……こんなに回復するなんて!」 驚くべき速さで傷が治っていくシルエラを見て、誰もが息を呑む。「……でも、ホルマーさんにはもう、効かなかった……ごめんなさい、ホルマーさん、ごめんなさいぃぃぃっ!! うわあああぁぁぁああん!」 泣き崩れるフレッサと、その肩に手を差し伸べるダティル。 ……いやちげぇし! 俺、泣いてねぇし! これ100%リンゴジュースだし!