LNCrawler

神と果実の独り言

林檎転生 ~禁断の果実は今日もコロコロと無双する~ — novelup.plus · All chapters

神と果実の独り言

マズいぞ。俺が、リンゴのくせに自由に動けて、いつか、倉庫の中身を取り出せるようになる可能性が少しでもあると、神様たちにバレてしまったら……〝世界樹〟が危ない!『コホン。 古津 ( ふるつ ) さん……?』 は、はいっ?!『あなたが、自分の意志で、コロコロと転がる事ができるのは分かりました』 そ、そうですね……おっしゃる通りです、はい。『ですが、それだけです。私は、何も見ていませんし、聞いていません』 あわわわ! いえ! ぜんぜんです! 俺なんてホント、転がるだけで何もできない、ただのリンゴで……はい?!『あなたは、そちらの女性にも、死んでいる魔物にも、まったく何もしていません。そうですね?』 え? あ、はい! そうです。知りません、何なんでしょうね、この状況は!『では、あと数日、私があなたと一緒にいる間〝何の力もないリンゴ〟のあなたは、ただ、コロコロと転がっていますよね? あなたはそれだけしかできない、ただのリンゴなのですから、ね?』 え? ああ! なるほど……そういう事か! えっと、でも……だ、大丈夫なんですか? 神様の立場とか……その…… 『クスクス。古津さん、私の部下が、あなたを死なせてしまった理由、覚えておられますでしょうか』 ああ。忘れようにも、あまりにインパクトが強すぎて……たしか〝居眠り〟でしたよね。 ……あ、そうか!『そうかって……お兄ちゃん、なんのこと?』 えーっと、つまりだな。神様たちだって、疲れるし、眠くもなるし、よそ見もするって事だ。 もしかしたら神様って、全ての人間を、常に見ているわけでは、無いんじゃないかな?『それにつきましては、私は何も言えません……』 ちょっと間を空けて、少し小さな、気持ちがこもっていない声で、神様は続ける。『ので、ここから先は、私の独り言です』 了解だ。俺も、何も聞いてないぞ。『神が見守るべきは、人間だけではなく〝全ての動物〟です。圧倒的な〝労働力不足〟なんですよ。そのうえ、管理下に置ききれない〝一定の霊格以下の動物〟と〝植物〟の運命管理は〝世界樹に丸投げ〟なのです』 ……なるほど。やっぱりね。『だから、この広い世界のどこかに、万が一存在するかもしれない〝自我を持つリンゴ〟や〝棒切れに加工されて倉庫から取り出せないような木の枝〟を監視する神は、いません』『ねえ、お兄ちゃん、それって私たちのこ……』 ゴホン! ゴホン! あーあーあー! しらないなー。なーんも聞こえないなー! ……世界樹。これは神様の独り言なんだ。わかるよな?『え……あ、ああ! そうね、そうそう! わ、私もなにも聞こえなーい!』 よしよし、頭のいい子だ。『特に〝植物に属する者の件〟に関しては、よほど、目立つような事をしなければ、気付かれすらしないでしょう。それこそ〝世界をいくつか崩壊させてしまったり〟しなければ……ね?』 つまり神様は、俺と世界樹を信頼して〝任せる〟と、言ってくれているんだ。『……ありがとう、神さま!』 ありがとう神様。 ……世界樹も、そう言ってます。 あ、えっと、これは俺の独り言です!『クスクス。今日は、ふしぎな声が聞こえてきますね。気のせいでしょうけど』 よし、世界樹! 神様に迷惑を掛けないように、頑張ろうぜ!『うん! でも、どうすればいいの?』 そうだな。今のところ、お前は〝倉庫〟から出てこれないから、問題ないんだけど……  いつかは、そこから出してやりたいし、俺も、その中の物を、好きに使いたいよなあ。『でも、私がお外に出ると、この世界が危ないんだよ?』 ……よし、決めた! 世界樹! 俺はお前を、安全にそこから出す方法を見つけるぞ!『ええ?! そんなことができるの?』 分からん!『そんな自信たっぷりに?!』 分からん! ……が、少なくとも、リンゴの俺が、自由に動けるようになったんだ。お前がそこから出られないなんて、決めつけるのはおかしいだろ?『うふふ……そうね! そうよね! 私、お外に出たい! そして、お兄ちゃんといっしょに、ぼうけんするのよ?』 おう! やってやろうじゃないか。俺に任せとけ!『独り言をお聞きしていましたので、それに関する独り言を、私もひとつ』 お? 俺は何も聞いてないぞ? 早 ( は ) よ! 神様、早よ!『この世界の〝世界樹〟なら、何か知っているかもしれませんね』『この世界の……世界樹さん?』 なるほど。世界樹の事は、世界樹に聞けばいいんだ。さすが神様! ……っと、違った。さすが神様の、独り言だぜ!『いえいえ。古津さん、頑張って下さいね! ……独り言、おわりです』 ああ! 頑張るぜ! 独り言、おわりだ。 ……えっと、そこでちょっと思ったんだが、世界樹。『なあに? お兄ちゃん』 お前を呼ぶのに〝世界樹〟とか〝お前〟じゃ、ちょっと呼びにくいと言うか、味気ないからさ……名前は無いのか?『うーん。杖としての名前ならあるんだけど……』〝グリダヴォル〟か。 ……それは、もっと味気ない気がするぞ。 なんかこう、完全に〝 物扱 ( ものあつか ) い〟みたいでイヤだ。『……やさしいね、お兄ちゃん』 いや、あはは。その……俺がイヤなだけっていうか……  あ、それじゃさ〝グリダ〟っていうのはどうだ? ……まんまだけどな!『グリダ……? いい! すっごくいいよ! かわいい名前!』 よーし! じゃあ、グリダ! 改めてよろしくな! ガチャ。『うん、こちらこそよろしくね! フルツお兄ちゃん!』 ガチャ。 ……ん? いま何か、妙な音が聞こえたような?『うん。なんだろね?』 はて? 辺りには何も無いし……金属音だった気がするけど、それらしき物も見当たらないな。『古津さん、古津さん、見て下さい!』 え、神様、どうかしましたか?『〝あなたとは無関係〟の〝まったく知らない女性〟が、目を覚ましましたよ!』 あ、本当だ。〝ぜんぜん見たこともない〟〝こんな所で、なぜか気を失っていた女性〟が、キョロキョロと慎重に、周囲を確認しているぞ。『うふふ。ふたりともおもしろいねぇ! うふふふ。しらないひとなのねぇ?』 そうだぞ? なぜ笑ってるんだ、グリダ? ぜんぜん知らない人だぞ? 面白くも何ともないじゃないか?『ふふふ。はいはいそうね。でも、その人、お兄ちゃんのこと、つかもうとしてるよ?』 まあ、俺ぐらいに美味しそうなリンゴが落ちてたら、誰だって拾うんじゃないか? ……ってあああ! やめて! ちょっと待って! なんで俺を拾うの?『お兄ちゃんが、おいしそうだからじゃないの?』