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禁断の魔法

林檎転生 ~禁断の果実は今日もコロコロと無双する~ — novelup.plus · All chapters

禁断の魔法

俺たちが、ここ〝カラブーヤの町〟まで移動するのに、まる3日掛かった。 ……つまり、神様とは今日でお別れだ。『そうですね。間もなく、私との会話はできなくなります。これからは、 古津 ( ふるつ ) さんご自身の力で、生きて行かなければなりません』 ああ、色々助かったよ、神様。 寂しくはなるけど、俺には心強い相棒もいるし、大丈夫だぜ!『わたし、こころ強いあいぼー? うふふ、うれしいな』『そうでした。古津さんは、一人じゃなかったですね。今後、私は何もして差し上げられませんが、お二人の事は、ずっと見守っていますから』 おう! 俺たちの、あっと驚くような活躍、楽しみにしててくれよ!『はい、頑張って下さいね! ……それでは、私はこれで』『ありがとうございます! 神さま!』 ありがとう、神様! グリダも俺も、本当に感謝してるぜ! σσσ  σσ  σ  ……で? 何なんだ、この状況は?「私、とうとう目覚めてしまったんですよぉ!」 ちがう。お前は目覚めてなんかいない。 ……いや、むしろ目を覚ませ!「いよいよゴブリンに食べられちゃう! そう思った時ですぅ! 私の〝魔法〟が炸裂したんですよぉ!」 気付いたか? そうだよ。こいつ、俺があの時、ゴブリンから助けてやった…… 「……この私、大魔法使いフレッサちゃんの、リンゴ魔法が!」 自称〝リンゴ魔法〟の使い手、フレッサちゃんだ。「どこからともなく召喚されたリンゴが、ゴブリンを一撃で粉砕しちゃったんです!」 ……そんな魔法は無い。 ゴブリンを倒したのは、俺の〝超〟みなぎった、体当たりによる〝物理攻撃〟だ。 さらには、俺を〝召喚した〟と思い込んでいるみたいだが、フレッサちゃんの頭上には、54個の兄弟たちが居たんだぞ?「いきなりですよ? 何もない場所に、リンゴが現れるなんて、これはもう、魔法としか思えませんよぉ」 どうやら〝リンゴの木〟ごと、まるまる見えていなかったらしい。 ……なんて思い込みの激しい 娘 ( こ ) なんだ。「この魔法は、私がピンチの時に発動するのです! それが証拠に、私がゴブリンを倒したあと、ここに帰ってくる道中、たった一度だけ、発動したのですが……」 そうなんだよ。このフレッサちゃんに拾われた俺は、食われる事もなく大切に、この町まで連れて来られたんだ。「驚かずに聞いてくださいね? 昨日のことです。私、なんとあの、悪名高い人食い大アリ〝セデル〟に襲われちゃったんです!」 へぇ! あれ、アリだったんだ。デカいし手足が長かったから、カマキリだと思ってたよ。「フレッサ! 〝セデル〟って、確か〝Bクラス 名札 ( タグ ) 〟付きのヤツだろ? よく生きて帰れたな!」 フレッサちゃんの前には、口髭を生やした、 鎧 ( よろい ) 姿の男。えっと名前は…… 「フフフ……そこで私の〝リンゴ魔法〟の出番ですよぉ、ホルマーさん!」 そうそう。〝ホルマー〟だったな。「土煙を上げて迫り来る〝セデル〟! さすがにもうダメ! って思ったその時です。いきなり、このリンゴが私の手から勝手に離れて、地面をコロコロと転がって行ったかと思うと……」 まったく。神様が見てる前で、まさかあんなに派手に、動く羽目になるとは思わなかったぜ。「次の瞬間です。リンゴは、今まで見たどんな魔法よりも速く飛んで〝セデル〟の頭を粉々に撃ち抜いたのですよぉ!」 ……ラッキーな事に、ちょうど、偶然、たまたま、運良く、神様は〝よそ見〟をしてたみたいで、助かったんだけどな。 さすがに、虫の体は硬くて、ちょっとヒビが入っちまった。『うふふ。神さま、ほんとうにやさしいね』 いやいや、違うぞグリダ。神様は、本当にいいタイミングで、俺の〝リンゴ離れした攻撃〟は、見てなかったんだ。ラッキーだったぜ。『うんうん。そうだよね。そういうお兄ちゃんも、ちょっと足がすべって、ぐうぜん、あのかいぶつを、やっつけたんだもんね?』 お? さすがグリダ。分かってるじゃないか。 まあ、そんなわけで、このフレッサちゃんは、俺の事を〝リンゴ魔法〟だと思い込んでるんだ。「ふん。 眉唾 ( まゆつば ) だな。フレッサ、お前以外に、その〝リンゴ魔法〟を見たやつは居ないんだろ? 証拠がないじゃないか」「フフフフ……! そう来ると思ってましたよ、ホルマーさん! これを見て下さい!」 フレッサちゃんは、俺を高々と 掲 ( かか ) げた。「さあ、出ておいで!」 ……やれやれ。 グリダ、出してやってくれるか?『はーい!』 フレッサの眼の前に、でかい虫の死骸が現れた。「こ、これは!」 そう。〝セデル〟だ。 俺の持つ〝倉庫〟のカードに入っている〝過去の所有者が収蔵した物品〟を取り出すには、自らの手を使って、引っ張り出す必要がある。だから、手のない俺には、文字通り手をつけることができない。「そんな……リンゴの中から死骸が!」「ホルマーさん、これで信じる気になりましたぁ? これが! 〝リンゴ魔法〟なのです!」 だから、ちがうって。これは俺の〝倉庫〟のカードの能力だ。 神様も驚いていたが、いつの間にか〝倉庫〟のカードは、所有者である俺の身体に合わせた〝変化〟を果たしたようだ。手を使わずに、アイテムを出し入れできるようになったのだ。 ……ありがとう、グリダ。『いえいえ、どういたしまして!』 しかも不思議なことに、出し入れの操作やアイテムの管理をするのは、俺ではなくグリダだ。 俺の身体の特殊性から、カードが自動的に変化したのだろうと、神様は言っていた。 つまりグリダはもう、俺にとって、かけがえのない存在というわけだ。『やーん! おにいちゃんったら、いがいとグイグイ来ちゃうのね?』 ……はて。なにやらグリダが喜んでいるようだが?『もぉー! 分かってるくせにー! おにいちゃんの、い・じ・わ・る』 えーっと? ……よく分からないので、そっとしておこう。 ……と、まあ、そういうわけで、グリダを含む〝過去の収蔵品〟は取り出せないけど、それ以外はこうやって、自由自在に出し入れできるようになったんだ。 ああ、そういえば〝力のカード〟が、俺の〝細胞分裂による運動〟に対応したのも、相当なイレギュラーだったみたいだよな。もしかしたら〝運命のカード〟には神様も知らないような能力や秘密が、隠されているのかもしれない。「どうですかぁ、ホルマーさん! これ、私が倒したんですよぉ?」「うーん。どうやら、嘘じゃないようだな。しかし、このバケモノを、そんなリンゴでねぇ?」 おっと、どうやら〝リンゴ魔法〟が実在するという事になりそうだぞ。「よし、それではフレッサ。約束通り、お前が〝冒険者ギルド〟に加入することを許可しよう。まあ、試験に合格すれば、だけどな!」「やったぁ! これで私も、晴れて冒険者の仲間入りねぇ!」「だから! 〝合格すれば〟だと言ってるだろう? 試験は、明日の日の出スタートだ。遅れるなよ?」 冒険者ギルドか。さすがトラックで異世界に来ると、定番はキッチリ押さえてくるなあ! ……しかしフレッサちゃん、実在しない〝リンゴ魔法〟で、試験を受けて大丈夫なのか?