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それぞれの実力

林檎転生 ~禁断の果実は今日もコロコロと無双する~ — novelup.plus · All chapters

それぞれの実力

ほらね。あいつやっぱ、スゴいじゃんか。『フレッサさん、つよいねえ』 グリダも感心している。 〝近接戦闘〟の試験が始まり、フレッサは訓練用の〝木の棒〟を 巧 ( たく ) みに使い、試験官と普通に打ち合っていた。「ほう? そこそこ動けるな……」「スタミナもありそうだ。あいつ、魔法使いだよな? 鍛えれば 前衛職 ( ぜんえいしょく ) でもいけるんじゃないか」 残る二人の試験官も、なかなか好評価のようだ。『でも、なんでお兄ちゃん、フレッサさんがつよいって分かったの?』 いや、強いかどうかは知らなかったけどさ。あいつ、ゴブリンに追い掛けられてただろ?『うん。ひめいをあげながら、逃げてたよね』 俺、人間の時と違って、かなり遠くまで見渡せるんだけどな? その俺の視界に入ってからずっと、あのすばしっこそうなゴブリンに追われ続けても、あいつは捕まらなかったんだ。だから、かなりの身体能力だとは思ってたんだよ。『そっか、さすがお兄ちゃん』 かと言って、あの時のゴブリンに勝てるほど、強いって訳でもないのだろう。試験官の〝ラナナス〟は、汗もかかず顔色も変えず、フレッサの攻撃を軽く受け流し続けている。「……うん、私はこれで」「そうだな。俺の方もいいぞ」 座って戦いを見ていた二人の試験官が声を掛けた途端〝ラナナス〟の木刀が見えなくなった。速い!『ひゃあ! スゴぉ……!』 グリダが 感嘆 ( かんたん ) の声を上げる。強いな、さすが試験官だぜ。 〝ラナナス〟の木刀は、一瞬にしてフレッサの持つ木の棒をクルリと巻き取るように奪い、地面に転がした。「記録! フレッサ、32ポイント」 右手を振り上げて〝ラナナス〟が叫ぶ。「記録。21ポイントだ」「お前ら、やさしーな。記録、21ポイント!」 残り2人の試験官も、それぞれにポイントを叫ぶ。確かに優しい採点だ。よほどフレッサの近接戦闘が良かったのだろう。『お兄ちゃん、何がやさしいの?』 あの試験官たちは〝遅刻〟と、俺の〝コロコロ分〟の減点を、チャラにしてくれたんだ。『あ……! それでポイントがハンパなのね!』 合計74ポイント。スゴいじゃないかフレッサ。「はぁ……はぁ……ありがとうございました!」 ペコリとお辞儀をして、にっこり微笑むフレッサ。周囲から拍手が贈られる。 このあと、何人もの戦闘を見たが、やはり〝前衛職〟志望者の戦いは、恐ろしく高度なものだった。餅は餅屋ってやつだな。 σσσ  σσ  σ 「それでは〝遠隔支援〟の試験を始める」 場所を屋外に移して、次の試験がスタートした。「よーしぃ! 本領発揮ですよぉ!」 〝魔法使い〟であるフレッサは、腕の見せ所と言わんばかりに腕をぐるぐる回している。俺を 鷲掴 ( わしづか ) みにしたまま。 ちょ、やめてくれ! 自分で転がるのと違って、目が回るんだぞ、それ!「よし、ではルールを説明する。〝遠隔支援〟は、各々が持つ、遠隔系の武器や魔法による攻撃、もしくは、回復系やサポート系の道具、魔法を見せてもらう事になる」 なるほど……弓矢とか投げナイフとかも対象なんだな。「あの目標に向けて、自分の〝遠隔支援〟を使ったアクションをしてもらう」 試験官の指さした先には、雑な顔が描かれた 案山子 ( かかし ) が、ポツンと立っている。「 試技 ( しぎ ) は3回まで。どんな支援も、命中すれば10ポイント。命中せずに地面に触れたアクションは、0ポイントとする」 威力は関係なしに、当たれば30ポイントはもらえるわけだ。あとは、評価点だろうな。「それでは、名前を呼ばれたものから前に出ろ。一人目は〝ザンバラウ〟」「お? さっそくかよ!」 ちょっと格好つけた口調の、明らかに前衛職装備を身にまとった男が、試験官の前に立った。「評価は、私と、向こうにいる二人がおこなう。ポイントに異議は認めない」 標的の左右、少し離れて、ローブ姿の二人が立っている。あの二人も試験官か…… 「ああ、了解した。まずは……〝ポーションスロー〟!」 〝ザンバラウ〟は、腰のポーチから取り出した 小瓶 ( こびん ) を、標的に向かって投げた。 ……結構な距離だが、小瓶は見事に命中。中に入った液体が、キラキラと空中を舞う。「ヒット! 10ポイント!」「オッケー! じゃあ、次はこいつかな」 パチンコか、子供のころ遊んだけど、なかなか的に当てるの、難しいんだよ…… 「ヒット! 10ポイント!」 簡単に当てやがって。 まあこいつら、これで飯食おうってんだから、当てて当然なんだろうな。「よっし! 最後は……」 〝ザンバラウ〟は、両手を正面に向けた。おお? もしかしてこれは……!『月を引き合いに語り、風の戒めを解く。見えざるもの沸き立ち、微塵となりて、水泡に帰す。〝風の魔法〟』 金属音にも似た甲高い音が鳴り響き、 案山子 ( かかし ) の首が切り落とされた。「ヒット! 10ポイント!」 スゴい魔法だ。こいつ前衛だろ? フレッサ完全に負けてるじゃないか!「記録! 3ヒット30ポイント! そして、私の採点だ。ポーションの気化具合、スリングショットの命中箇所、そして魔法の精度、どれも、とても良かった。記録! 30ポイント!」 さっそく高得点だなオイ……!「記録! 30ポイント!」「記録! 35ポイント!」 案山子 ( かかし ) の首を修復しながら、手を上げてポイントを告げる試験官たち。125ポイントか、ほぼ満点ってスゲぇな!「ふふん。まあ、こんなもんだろ」 ニヤリと笑い、去っていく〝ザンバラウ〟。 いけ好かないやつだが、かなりの実力者だ。『フルツお兄ちゃんのほうがカッコイイけどね』 俺の何を見て、そう言ってくれているのかな。赤さとかツヤだったらイヤだな。『うふふ。ぜーんぶ!』 そっか! ありがとな、グリダ。「よし、次は……〝フレッサ〟前へ!」 お、もう出番か。頑張れよ、フレッサ!『ちがうよ? がんばるのはお兄ちゃんなの』 ああ、そうだ。こいつ、魔法使えなかったんだっけ…… 「は、はい、いきます!」 大事そうに俺を抱えて登場したフレッサに向けて、あちこちからクスクスと笑いがおこる。 ……リンゴ、だもんな。「お願いリンゴちゃん! あのマトを撃ち抜いて!」 俺を手に持ったまま、 案山子 ( かかし ) を睨みつけるフレッサ。 仕方無いな。さくっとキメてくるか! 俺は、フレッサの手を離れ、地面に着地した。「試技失敗! 0ポイント!」 ……は?「えええぇ?! どうして? 何でですかぁ?」「最初に説明したが、目標に命中せず地面に触れた場合、そのアクションは、0ポイントだ」 そういえば言ってたな!「あははは! 何だよアレ! さっきもあいつ、リンゴ転がしてたよな?」 〝ザンバラウ〟が、腹を抱えて笑っている。 クソ! やっぱ俺、あいつキライだわ。 ……しかしマズいぞ。手に持ったまま、直接体当たりを放ったりしたら、反動でフレッサが弾け飛ぶ!「ああん。リンゴちゃん、もう一度! 地面に落ちずにお願いぃ!」 俺を拾い上げて、涙目で 懇願 ( こんがん ) して来るフレッサ。 待て待て! そんな事したら、大変な事になるんだぞ?「どうした? 早く二回目の試技を始めなさい。失格になるぞ?」「えええ!? リンゴちゃん! お願いよぉ!」 やだよ! ざんねんだけど、今回はあきらめろ! な?「仕方がないな。キミはここで失格……」「待ってぇ! 待ってください! やります!」 フレッサは、俺を手に持ったまま、両手を差し出し、呪文を唱え始めた。『見知らぬ旅人、火の枷を解く。見えざるもの解き放たれ、焼け果てては、地に帰す。〝火の魔法!〟』 赤い光が、フレッサの手に集まっていく。 お? お? 出るのか、魔法! あ、あちッ 熱ぃ! 意外と熱は出てるんじゃん! 熱っ! プスン…… 「魔法の発動失敗! 0ポイント!」 やっぱりダメか…… 『ピロリロリン! 〝未知の呪文〟と〝魔法の発動〟を検知しました。〝魔術師のカード〟に登録します』 ん?! こ、これは〝運命のカード〟のアナウンス!『ピロリロリン! 登録に成功しました。使用者を〝フルツ〟及び〝グリダ〟に設定。デフォルト出力〝20%〟に設定。安全設定は〝使用者〟〝接触者〟』 ……なんだ? 何が起きた?!『ピロリロリン! 呪文の解析に成功しました。効率化、圧縮完了。圧縮後の呪文は〝火の枷外せ旅人〟。効率化による威力増加のため、デフォルト出力を〝3%〟に変更しました』 いや、だから! 何なんだよこれ! 何が〝出力3%〟だ? 〝火の枷外せ旅人〟って何の事だ?! 『ピロリン。呪文確認。魔法を発動します。〝出力3%〟』 キュ……  ……は?! グワッ!! 突然、視界が真っ赤になった。「ええええっ?! 出たぁ! 出ました、魔法!」 俺から放たれた炎の玉は、恐ろしいスピードで 案山子 ( かかし ) を 穿 ( つらぬ ) いた。「す、すげぇ魔法だ……」 〝ザンバラウ〟がボソリと呟く。俺もそう思うぜ。 案山子 ( かかし ) は、軸だけを残して消し飛び、さらに、そのはるか向こうにあったレンガの 塀 ( へい ) には、大きな穴が空いている。「……ひ、ヒット! 10ポイント!」 引きつった顔の試験官。「やった! やった! やっぱり私の〝リンゴ魔法〟はスゴいよぉ!」『お兄ちゃん……今の……!』 ああ。俺が撃ったんだ。 ……しかも、聞き間違いじゃなければ、いまので〝出力3%〟の威力だ。