Episode 3
Episode 3
007ことジェームズ・ボンド、彼はロンドン市内のとあるスポーツ・ジムが麻薬売買取引の現場になっているとの情報から捜査に訪れていた。
アジアや南米、北アメリカと世界中へ飛ばされる彼にとってみては今回の現場は実に身近でなんとも気の抜けるものだった。まずはスタッフの調査だ。内部と仲良くなるには女性から絆ていくのが定石―と考えるボンドは軽く運動をしたあと、会員登録を済ませ受付の女性と談笑しシャワーを浴びにロッカールームへ戻る。
脱衣所に足を踏み入れた時、目の前の光景に思わず身を固くした。
そこが麻薬取引の現場だった、というわけではない。
青年が―奇妙な下着を履いて、シャワールームの小さな戸棚の傍をうろついていたからだ。
薄い筋肉のついたまだ成熟しきっていない青年の身体―背筋が少々浮き出た後ろ姿、そしてすぐ下の臀部は上部にぽっかり穴のあいた所謂Oバックの下着を身につけていた。尻の狭間上部数センチだけが外に晒されている状態だ。
女性が付けるセクシー下着とは違う、露出が少なめのそれだが過激なデザインであることには変わりない。彼はオンレジ色ののそれ一枚だけで伸び上がったり、しゃがみこんで四つん這いになって探し物をしていた。動くたびに、真白い尻がブリーフの隙間から見え隠れしている。思わず掴んで揉みしだいてしまいたくなる光景だ。
彼は誰かパートナーを誘うためにあんな格好をしているのだろうか。スポーツ・ジムのスタッフか会員と『そういう』関係というのも考えられる。
「アー、誰か、待っているのか?」
「あ、いえ、僕の服が――ミスタ・ボンド?」
「君は―」
「すごい偶然。あなたも此処の会員?」
まさかね、と言いたそうな瞳にボンドは渋々頷き、下着を指差した。
「随分個性的なブリーフだ」
「ああ、これ?僕の趣味じゃないんだけど…ねぇ服一式が消えちゃったんだけど、知らない?」
「消えた?盗まれたのか」
「誰か間違えて着ていったのかも、と思ったんだけど―パンツ一枚と服一式なんて間違えないよね?どこに消えちゃったのかな」
もってきた服の代わりに、このブリーフだけが置いてあった、と説明する彼にボンドはめまいを覚えた。故意に盗まれたとは考えていないようで、不思議だなぁと首をひねっている。
「君、このジムで仲良くなったスタッフや客はいるかい?」
「スーザン、メアリー、くらいかな」
「女性じゃなくて、男は?」
「スティーブ、レオ、アラン、オリバー、ダニー、ジョージそれから…」
「ああ、いい。もういい」
「どうしたの」
「その中の誰かが君にそれを贈った、と考えてはみなかったのか」
カタリ、と縦長のロッカーが音を立てた。はじめから室内には二つの気配があった。
ひとつはこの鈍い青年、そうしてもう一つは――
「とりあえず、バスタオルを腰に巻いて―、僕のTシャツを着なさい」
徐ろにシャツを脱ぎだしたボンドに、リヒトはぎょっとする。
「い、いいよ。いらない」
「僕の言うことをきけ」
「――はい」
気迫におされて、思わず肯けば、いいこだ、と頬を撫でられてTシャツを渡された。胸囲も丈も余るそれはボンドの汗と香水・体臭が染み付いて、なんだか妙な気分だ。
「それで、その格好でロッカールームで座って待っていなさい。五分経ったら僕も行くから」
「わ、かった」
肩ごしにちらりと振り向いて、リヒトはシャワールームを出た。
残ったボンドはハーフパンツ一枚で鍛え抜かれた上半身を晒し、ロッカーに潜む影に呼びかけた。口元には不敵な微笑みが浮かぶ。
「さぁ、出てきてもらおうかパンツの送り主さん?」
「あ、僕の服!――あれ、でもなんかくさいー?」
五分後、ボンドが戻ってくるとそこには彼の服一式が小さなトートバッグに入って戻ってきた。それを受け取ろうとするが、嗅いだことのある青臭さが漂ってきてリヒトは眉をしかめた。
「大事なものかい?ならランドリーで洗うといいが―僕は捨てることをおすすめする」
「ううん、GAPで買ったものだしクタクタになっていたからー」
「では捨てよう」
ぽい、とダストボックスにそれを放るとボンドは上半身裸のまま受付へ趣いて新しいTシャツと長いスウェットを買ってきた。
「さ、これに着替えて」
「あ、お金を――でも今はそんなに手持ちがないから、その―」
「いいよ。いいものを見せてくれたお礼だ」
言いながらボンドはバスタオルの上から丁度Oバックの開いた部分を指でなぞった。セクシャルな指先の動きにぞわりと背筋に鳥肌が立った。そこでようやく、先ほどの青臭さとシャワールームで自身の服が『盗まれ』『セクシー下着に交換』されたことに気がついた。
「アッ、ぱ、ぱんつも、欲しいんだけど!」
「今のでいいじゃないか」
「や、やだよぉ」
「じゃ僕のフラットにくるかい?」
「へ」
「真新しいボクサーが数着常備してある」
「あ、う…」
「さあ、どうする?僕がシャワーを浴びている間に考えておいてくれよ」
ぽんぽんと頭を優しく叩かれて、リヒトは歯ぎしりした。
こんな時どうして財布に小銭しか入れてこなかったのか。帰りにアイスクリームを買って帰ろうくらいしか考えていなかった自分が憎らしい。もう少し手持ちがあれば衣料品店で買って帰れたのにと思う。
触れられた尻の狭間は、先ほどよりもずっと意識してしまって、これで買ってもらったスウェット(しかもスリムなものだ。ひょっとすると下着のラインが出てしまうかもしれない)を着て家に帰るのも苦しい。
ボンドがシャワーを浴びて戻ってくるまで時間がない。
リヒトがどんな答えを出したのか、それは翌日ポーカーフェイスに機嫌のよさを隠しきれなかったボンドを見て、推してはかって頂きたい。
【ご注意】次頁からR展開です。
青年は男のベッドの上で喘いでいた。
快楽から逃げようと暴れたため、腕は彼の上等なシルクのタイでまとめられていた。
男はといえば、青年の下腹を包んでいたOバックの下着の上から彼の尻を堪能し、尻の割れ目をなぞり上げ十分に楽しんでいた。青年は男のキスと愛撫によって蕩けてしまい、最早言葉もまともに紡げない状態だ。
「いい格好だな」
笑い混じりに下着の開いた穴から舌が差し込まれ、尻の狭間を舐められる。ぞくぞくと走る快感に、青年は身を捩らせるしか為すすべがない。
「はぁ、ん、みすた、ボンド…ん、も、前、くるひ…ひゃあああん!」
「ん?前が?なんだって?」
勢いよく後ろに差し込まれた指先には、たっぷりとローションがつけられており、男の予想よりすんなりと受け入れられた。
「随分遊んでいるようだな」
下着の穴からでは可動範囲が狭まるため、巧いこと指が動かせない。じれたボンドは一度指を引き抜くと、青年の下着を下ろし、それから再び可愛がってやることにした。
「ひっ、あん!ああっ、そっ、やめてぇ!」
「ん?ここか?」
ボンドの指が前立腺をとらえたようだ。ボンドはにやりと笑うと、青年が過剰に反応する場所を集中的に触れることにする。
「はぁ、っそこっ、もっあっ、いっちゃ、いきたいぃっ!」
目の前でチカチカと星が瞬く。
青年の分身も頭をもたげ、解放したいと望むように白濁混じりの液を滴らせている。
「独りでイくなよ。すこしまてっ」
青年の手が前に回ったことに気がつき、ボンドがそれを遮る。タイで括られた両手を片手で頭の上にぬいつけ、深く口付ける。
それと同時に己の下着からとりだしたものを扱き、青年の尻にひたりと当てた。
「はぁ、あっ、いれ、る、の」
「ああ、入りたい、いいか?」
ピクリと太腿を揺らし、少し躊躇するような仕草を見せた青年に、安心させるように触れるだけの口付けを落とす。
「ん、あ、僕の、なかに、はいりたいの、みすた、ボンド…」
「ジェームズだ。そうだ、いいか?」
「あ、ジェームズ…ん、はぁ、いい、ですよ」
どうぞ、と丁寧に促されて、なんだか場違いな言葉遣いに笑ってしまう。ふ、と息を吹き出すような笑い声は、しかし興奮の吐息の中に飲み込まれる。
解した中へ己の屹立を押し進めると、青年は苦しそうに胸をそらし、喘いだ。
「アッ、ふあッ」
「息を吐け、ゆっくり、そうだ」
「あっはあっ、んっ、、おっき、のが、ボンドのが、はいってくるぅ」
「ジェームズと呼べと言ったろうっ」
言いながら、些か乱暴に腰を突き出す。奥の奥までねじ込んでしまうと、青年は一瞬息を詰め、そのあと体を震わせて達した。
「は、はぁ…なんだ、いれただけでイッたのか」
青年の腹には、白濁が散っている。それをすくい上げ、ボンドは彼の顔に塗りつけた。
「だらしのないここには、枷が必要だな?ん?」
そう言うと、ボンドは指でリングを作って青年の萎えた中心を握り込む。明らかな意図を持って力を込めるボンドに青年は声にならない悲鳴をあげる。
「リボンをつけてやろうか?」
「や、いや、やだぁ!」
「やだ、じゃないだろう?お漏らしは困るものな?」
いやいやと力なく首をふるが、ボンドの手は止まらない。青年の手首を拘束していたネクタイをほどき、今度はそれを屹立に巻き付けた。
青年はそれを見下ろし、あまりに情けない光景に目眩がしそうになる。
「あ、あ、」
ボンドが普段使っているタイーそれがいま、己の恥ずかしい所を包んでいると思うと、羞恥と快感がわいてくる。
「汚すなよ、それ、気に入っているんだから」
悪戯に指先ではじかれて、青年はビクリと痙攣した。気に入っている、という言葉が頭の中でぐるぐると回る。気に入っている、つまり、このネクタイを今後も使う予定があるということだろうか。己を苛んだ、このタイをー体の中で一番デリケートな部分に結んだ、それを、ボンドは再び纏い仕事にーつこうというのか?素知らぬ顔で、タイを締める姿を想像して、その背徳感に青年は後孔を締め付けた。ぎゅうぎゅうとボンド自身を包み込むと、彼の脈動が感じられる。ボンド自身も大きくなり、さらなる律動を始める。
「そんなに、しめるなっ、うごけないだろう?」
ぬろり、と首から顎まで舐め上げられる。
いい子だから、大きく息をはいて、と指図され、その通りにすると後ろが緩みボンドは青年の腰を抱えなおした。
「さぁ、ゆっくり楽しもうか」
「ふぁ、あ」
青年の見つめた先では、ブルーの瞳が楽しげに歪み、色を濃くしていくのだった。