あなたとランデブー
あなたとランデブー
※Attention!!
英国産高級車JaguarのCMから、キャラを捏造しています。
ご存じない方はぜひ、YouTubeでCMをご覧になってください。
CMに登場する役者さんのお姿をお借りしたキャラ捏造遊びです。
弊アカウントのマイ設定満載です。
ほぼほぼ、創作です。
なんでもこい!という方は、スクロールでどうぞ。
設定(※キャラ名を創作しています)
悪の組織(とは?)、Jaguar。
義賊的なことをしつつ、たまにMI6やKingsmanの人々の対立したり、獲物をかすめ取ったり。
国のために動いているのか、それとももっと別の視点で動いているのか……(特にスパイ任務描写はありません)
トMヒ=トム・アシュフォード
イメージは、英国高級車JaguarのCM出演時のトム・Hドルストン。Kingsmanの顧客。
高貴な出で、洗練された身のこなし。何台ものJaguarを乗りこなすが、どちらかというとクラシカルなものを好む。リヒトに恋心を抱く。他の人間とリヒトが親密にしていると、内心で機嫌が悪くなる。
ニCラス・Hルト=ニコラス・ホッジズ
イメージは、英国高級車JaguarのCM出演時のNコラス・ホルト。
組織のメカニック。フィールドにはあまり出ず、機械いじりを担当。好きな車のタイプはスポーツタイプ。やや引っ込み思案。
トム・アシュフォードの弟的存在で可愛がられているが、本人はアッシュフォードの尻拭い役を押し付けられているな……と思っている。
リヒトへの感情は「他組織(Kingsman)の半エージェント?テイラー?あやしいな……」という気持ち。リヒト=知人程度の認識。
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あなたとランデブー
サヴィルロゥのテイラーの前に一台の車が止まる。ボンネットマスコットが禁止されてから随分経つが、それがなくとも磨き上げられたボディと滑らかな駆動で一目でそれが高級車であることがわかる。
「やあ」
「こんにちは、トム様」
颯爽と降りてきた人物の姿に地下の工房から外階段をあがってきたリヒトは微笑んだ。上得意客であるトム・アシュフォードの来店に、いささかの緊張と嬉しさがこみ上げる。
リヒトの姿に細面の男はキュ、と口の端をあげて笑みを返した。男を下ろした車は音もなく発進する。
「スポーツタイプもお持ちなんですね」
「あれはニックの趣味さ。彼は新しいもの好きでね色々試すために今日はあれを乗り回すそうだ」
「ああ、ニコラス様の」
くすんだオレンジ色をした車体の低いスポーツ車は男と結びつかない。リヒトが珍しいものをみたとばかりに尋ると、男は笑みを浮かべる。
ニコラスとは車の運転席にいた眼鏡の男の名だ。関係は仕事仲間らしいが、どうにも彼らは兄弟のような親しさと遠慮のなさがあるように感じた。
「どうぞ」
「ありがとう。ショウウィンドウのディスプレイを変えたね?素敵だ」
「わ、本当ですか?実は僕の案も採用されて、飾り付けたんです」
扉を開けて、男を招きながら会話する。顧客からの褒め言葉は嬉しいものだ。
「今日はいかがなさいますか?」
「冬用に何着か欲しいと思ってね」
何かいい生地はあるかなと尋ねる男のために、反物の見本を取ろうと棚へ向かうが、そこではたと気がついて歩きかけた体を戻した。
「紅茶、召し上がりますか?」
「ああ、是非」
「かしこまりました。茶葉は……イングリッシュブレックファスト?」
「大好きな茶葉だ」
「少々お待ちを」
顔を綻ばせたトムはいつもよりも少しだけ幼く見える。彼のような得意客が買い物に来るときのため、必ず数種類の茶葉を切らさないようにしていた。
革張りのソファを勧めて、お湯を沸かすために店の奥へと入る。
紅茶を傍らに、生地やボタン、カフスを見ている内にあっという間に時間が経った。結局その日はスーツを二着、シャツを三着オーダーすることにした。
「今日は作業が遅くなりそうかな?」
「そうですね。お陰様でご注文も頂いてますし、僕自身まだまだ修行中ですから」
「そうか。職人さん、ランガムでのディナーを予約したけどどうかな?」
慣れた動作でリヒトの手を取ると、トムは爪先にチュ、とひとつ口づけを落とした。
突然出てきた高級ホテル兼レストランの名前に驚けばいいのか、それともまるで御伽噺の王子様のような所作に慌てればいいのかリヒトは混乱してしまう。
俺は男なのでおててにちゅーはどうでしょう、とか、ランガムってあの、三ツ星になったレストランですか、すごく人気だから予約取るのも大変ってききましたけど、とか、それより手を優しく撫でてくるのくすぐったいので、はずかしいのでやめてほしいですとか、頭の中には色々浮かぶのに口にすることが出来ない。
「あ、は、えっと」
「迎えに来るよ。またあとでね」
名残惜しげに手の甲をするりと撫でると、トムは自分で扉を開け店を出て行った。彼との接触は手だけだったというのに、何故だか体中にキスをされた後のような不思議な感覚が残った。リヒトは後からやってきた心地良さと焦燥感に、思わず身震いしてしまう。
トムの悪戯っぽく笑う緑の瞳は、いくらのぞき込んでも彼の真意がわからない。接客中も肩がふれ合うまで近づくのはよくあることで、今日も意味ありげに手に触れてきたのだって、友人へのスキンシップなのかそれとも、お誘いだったのかわかりかねる。なんだか自分だけ煽られてしまったようで悔しい。
店の外を見れば、夕闇の中に先ほどと同じオレンジのジャガーが待っていた。後部座席にトムが乗り込んだ後、ゆっくりとその身を滑らせる。
ぼんやりとその姿を見送ったリヒトは、我に返ると慌てて仕事に取りかかるのだった。
Special Present
「ディナー、ですか」
クリスマス当日の日曜日、午後二時を過ぎた頃──
定休日だが、縫い物の作業を抱えていたリヒトが一仕事終えた所へ見計らったかのように電話が鳴った。
相手は上顧客の一人、トム・アッシュフォード。先日パーティ用のタキシードを新しくあつらえ、届けたばかりの人物だった。
今日はクリスマスだ。てっきり、そのパーティの最中だと思っていたが、そうではなかったらしい。
「もし用事がなかったらどうだい?」
「ええ、用事は、ありませんけど」
ハリー・ハートは暦関係なく入った仕事のせいで出かけているし、彼の愛弟子であるエグジーもしかりである。リヒトはちょっとばかりマーケットを覗いて帰ろうかな、と思っていたので快く招待を受けることにした。
約束をしたその日の夕暮れのこと。
電話では特に待ち合わせの場所や時間の指定をされなかった。トムがいつもの柔らかな声で「じゃあ、あとでね」と言ったのを思い出す。
もしかして、キャンセルかな?確認の連絡をすべきだろうか、と思いながら、すっかり暗くなった冬の道を歩いていると、するすると近づいてくる高級車があった。リヒトが建物側に寄ってそれをやり過ごそうとすると、運転席から細面の男が微笑んだ。
「リヒト、上がりの時間に間に合うつもりだったんだ。遅れて、すまないね」
「トム様!」
「さぁ、乗って」
今日はニコラスではなく自分でステアリングを握っていた。リヒトは突然の出迎えに驚きながら、全く彼は本当に王子のようだと思ってしまう。
暖かな車内、助手席に滑り込むとリヒトはほう、と息をついた。
「今日も仕事を?」
「ええ、大晦日に間に合うように仕立てが必要なものがあって」
「それは大変だ。少しドライブするけどいいかな」
「はい」
ブオン、とエンジンを吹かせトムは車を発進させた。
ロンドン市内を南へ、ディナーと言うからにはどこかレストランに行くのだろうと考えていたが、車はハムステッドヒースへ向かっている様子だ。
ロンドンの中でも高級住宅街と言われるハムステッドヒースは小高い丘に豪華な邸宅が立ち並ぶ。石畳のでこぼことした道を、車は坂道にすいつくようにあがっていく。
大きな庭園とそこに立ち並ぶ芸術品、そしてカントリーハウスを売りとして観光地ともなっているそこへ着くと、トムはエンジンを止めた。一般にも開放されるその建物はとっくに閉館時間になっているはずだ。リヒトは首を傾げながら、トムに続き車を降りる。
閉じられた門扉の奥にはライトアップされた緑の芝生や木々が、凍えるような空気の中美しさを放っていた。
エスコートをするように腕を差し出してきたトムに、どうすればいいのか躊躇していると彼は口角をきゅ、とあげてリヒトの手を自らの腕に絡ませた。肘の内側に手のひらを置くと、コートごしに彼の体温を近く感じた。十二月の冷気に体半分をさらされ、もう半分はトムの体温にふんわりとあたためられ心地よい。
しかし、いかにせこれでは女性扱いの体勢だ。
辺りをさっと見渡す限り、しんと静まりかえり人に見られることはなさそうだが恥ずかしいことには変わりない。
「あの、これはちょっと」
「嫌かな?それじゃ手を」
「へぇえ?」
腕を解いたと思うと、トムはリヒトと手を合わせ、指を絡ませてきた。今度は反対意見を言う暇すら与えず、トムは施錠してあるはずの格子戸を押して、庭園へ入った。
楽しげに案内するトムの姿に、手を解くことを早々に諦め彼の後に続く。
見事な緑の芝生、完璧に配置された樹木、ところどころを照らす橙の照明が二人を迎える。
夜闇の中に幻想的に浮かび上がる広い空間が二人だけのものである。時折きゅ、と握る力を強めてくるので、そのたびに顔を見上げればトムはにっこり微笑んできた。その笑顔には好意と慈愛がたっぷり詰まっているように感じられて、リヒトはどう受け止めればいいのやらと曖昧な笑みを返してしまう。鼻先はつんと冷たいのに、頬と手のひらだけがじんと熱を持っている。
手を繋いだまま、緩い坂道を登りきると、建物のポーチに二客の椅子とテーブル、それから真っ白なクロスにワイングラス、食器と食事の用意が整っていて目が零れ落ちんばかり見開く。
「まさか」
「さぁ、おなかもぺこぺこだろう。寒くないように膝にケットをかけて」
「あ、あの、ここ、ここレストランじゃないですよね?」
「昼はアフタヌーンティを振る舞っているって聞いたよ」
「し、しってます。けど夜は、その」
「食前酒は僕の好みでいいかな」
「トム様っ」
「あ、今日は友人同士ということにしたいから敬称はなしだよ。Sirもだめ」
いいね、といってパチンとウィンクする緑の瞳が実にチャーミングで、思わず頷いてしまう。彼の一挙一動に動揺し、加えてカントリーハウスを完全な貸し切り状態で使っていることにリヒトは目を回す寸前だ。
ハリー・ハートとも高級レストランへ足を運ぶことは年に数度あるが、それは料理を提供する場であり、こんな風に貸し切りの場で食事なんてしたことがない。初めての体験である。
慌てふためくリヒトをさしおいて、トムは椅子を引き、その膝に暖かなブランケットをかける。そして、彼が自分の席につくときにはいつの間にかブラックスーツを身につけた給仕が傍におり、世話をしていた。
「この前のランガムもいいけれど、周りの人を気にせず食事がしたくてね」
「はぁ……そう、ですね?」
たしかに、クリスマスに男と食事をしているところをみられたら、いくら友人(のような存在)といえど彼はまずいのかもしれない。そもそも彼がどんな立場の人間で、社交界でどれほど顔が知れ渡っているのかリヒトは知らないのだが。
ぼんやりしていると背の高いフルートグラスが準備されていた。静かな庭園では、黄金色のそれがパチパチと泡を弾く音がよく耳に届く。
「メリー・クリスマス、リヒト」
「メリー・クリスマス……トム、様」
「あー!敬称はいらないと言ったのに!」
ぶう、と眉間にしわを寄せて不機嫌を露わにする男に、従順なるテイラーは困ったようにナフキンをたぐりよせ、その後きちんと言い直した。
「メリー、クリスマス、トム」
「うん」
満足げに笑みを見せた男がグラスを掲げた。キン、とグラスが高い音を立てて重なり合う。
二人だけの特別なディナーの時間は、静かに穏やかに過ぎていく。
コース料理とデザートも済んだ頃、満腹になったテイラーは室内のソファでこっくり船をこぎ始めていた。腕の中に抱いた彼を見おろし、トムはにっこり微笑む。
「これは最高のクリスマスプレゼント、ということでいいかな?」
起きていたら、彼をまっすぐハート邸にまで送り届けてやるつもりだったが気持ちはすっかり変わってしまった。
傍に控えていた従者たちに車の用意をさせると、トムはリヒトの体にブランケットを巻き付けて抱き上げる。ゆらゆら揺れる感覚にリヒトは目を覚ますどころか、トムの首元に抱きついてくる。
翌朝、彼がどんな顔をして目を覚ますだろうかと想像するだけで愉快だ。トムはアルコールでそまった頬に優しくキスを落とし、今度は愛車の後部座席にリヒトを抱いたまま滑り込むのだった。