9日目
9日目
⚠️注意⚠️
・オリキャラが出てくるよ!
・口調崩壊、キャラ崩壊注意!
・ハロウィン文化がギリシャにあるかどうか、どう過ごすのか分からないなど、いろいろとガバガバだよ!
・解釈違い注意!
いい人はどうぞ!
【ハロウィン】
いつも真っ黒なベールで包まれたような夜は、今夜だけ明るい光が灯る。そう、ハロウィンだ。子供が夜に出歩き、「トリックオアトリート」という合言葉と共に菓子を貰いに他人の家に突撃できる日。
死者の国の王であるハデスはこの風習が嫌いではなかった。この日にあの合言葉を言うだけで相手が菓子を持ってなければ悪戯をすることを許されるのだから。だが、配られる甘すぎる菓子はハデスの趣味ではなかったし、そう遊べる時間もここにはなかった。イベントごとも所詮、浮かれたやつらのバカ騒ぎだ。そう思いながらハデスは仕事に勤しんだ。
「ぼ、ボス〜…」
恐る恐る自分を呼んだ部下。それにハデスは眉をひそめた。ただでさえ忙しいのだ、つまらないことでそう軽々しく呼んでほしくなかった。だが目の前にいる悪魔たちを見てより一層眉間の皺が深くなる。部下はかぼちゃのような帽子にパンツを身に纏っていた。随分と浮かれた服装である。
「と、トリックオアトリート〜…なんちって」
「お前ら…」
ハデスの頭の炎からパチパチと火の粉が小さく爆ぜる。明らかに苛立っている証拠だった。
「仕事はどうした仕事は、え?」
「俺らだけじゃないですって!ほら!」
そうペインが指差す先を見るとそこにはシーツを被っただけの質素な仮装のヴァゼルがいた。被っただけのシーツからはしっかりと黒い翼がはみ出している。
「嘘だろお前もかよ…」
溜息混じりにそう文句を言い、頭を抱えた。お祭り気分な3人の部下に呆れるしかなかった。だがハデスはふとヴァゼルが乗るとは意外だと思う。そう思うのはヴァゼルの性格がよくも悪くも真面目だったからだ。それが何故素直に仮装したのか気になるところもあった。
「ボス、報告書です」
「え?あ、うん」
今まで無言だった部下から突然の報告書。ヴァゼルが仕事の話を始めた途端にペインとパニックは部屋を出ていった。この虫ケラ共が、と文句を言いたい気分だったが、すんでのところで飲み込んだ。ハデスは渡された報告書をペラペラとめくり、あらかた目を通したところでヴァゼルをちらりと見る。目の前のヴァゼルはシーツおばけ姿で直立不動、だいぶシュールな絵面だった。
「んで、どうだった?雷坊やのパーティーのお手伝いは」
そう、ヴァゼルは今まで全知全能の神であるゼウスのパーティーの裏方を務めていた。ゼウスがハロウィンパーティーをしてみたいと言ったはいいものの、パーティー準備の人手が微妙に足らなかった。そこで冥界で黙々と仕事をするヴァゼルを見つけ、強制的に裏方に回したのだ。
あの時のゼウスときたら、とまた苛立ってきたので慌てて気持ちを落ち着かせた。ハデスも別にOKしたわけではなかったのだ。ただでさえ人手不足なウチ(冥界)から部下を取っていく事に対して殺意さえ湧いていた。
「全員頭お花畑でした」
疲れたように被っていたシーツを脱ぎ、そう生気の宿らない声で答えるヴァゼル。目にハイライトがない。
「あーやっぱり?」
「バカどもの相手って疲れるよな」とハデスも頷く。文句も何も言わないヴァゼルだが、心の内にドス黒い殺意を秘めているに違いない。仕事はこなすが、自分の信仰神に刃向かうものなら同じ天使でも神でも迷わず刺し殺す。ヴァゼルはそういう奴だ。長期休暇でもやりたいと思ったが、そんな余裕はハデスにはなかった。なんなら自分が欲しかった。
「まぁ適当に休んどけ」
ハデスは仕事に戻ろうとしたが、目の前の部下がまだ動かないことに違和感を覚えた。
「どったの」
「…トリックオアトリート」
「はい?」
思わずハデスは聞き返す。堅物であるヴァゼルの口から出る言葉とは思えなかったからだ。元々そういうイベントに自分から入ってく性格ではなかった。俺が言ってそれに軽く同調するくらいならまだしも、アイツから言ってくることはまずなかった。
「…言ってみたかっただけです、失礼します」
ヴァゼルはそう言うと顔を背けて踵を返した。
「待って、ちょいタイムタイム」
そんな部下を引き止めずにはいられなかった。ハデスが手でT字サインを作ると、ヴァゼルはピタリと止まってこちらを向いた。天使の頃の名残なのか、素直なやつだ。そう思いながら引き出しに手を突っ込んでゴソゴソと中を探る。
するとハデスは何かを引っ掴んでぽいっとパスした。飛んできた何かをヴァゼルは綺麗にキャッチする。ヴァゼルの手の中には青い包み紙のキャンディ。満身創痍なヴァゼルに対するせめてもの労りだった。
「それしかなかったけど菓子は菓子だからな。悪戯はよしてくれよ?」
引き出しを閉じてヴァゼルに目線を戻す。目の前の部下の顔にハデスは目を丸くした。こそばゆいような喜びが滲む、綻んだ笑顔。いつものポーカーフェイスからは想像できない表情だった。唖然とするハデスをよそに、ヴァゼルはそのキャンディを大事そうに握りしめた。
「大切にします」
「いや食えよ」
そうツッコむ頃にはヴァゼルの顔は引き締まった真顔に戻っていた。ヴァゼルが部屋を出ていくとハデスはまた仕事に戻る。ヴァゼルの笑いといえば営業スマイルを教えた時とかの引きつった笑いしか知らなかった。サインを書く手を止めて机に突っ伏した。
「普通に笑えんじゃん…」