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137.市役所攻防戦 その5

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137.市役所攻防戦 その5

「―――ルォォオオオオオ……」

突如現れたその巨体に、市役所に残っていた人々は瞠目する。

叫び声を聞いて、建物の中に居た人々がぞろぞろと外へ出てくる。

その巨体を見上げ、誰もが震えあがった。

ここは市役所――モンスターが入って来れない『安全地帯』。

頭ではそう理解していても、震えが止まらない。

一体何をしに現れたのか? 誰もがそう考えた。

「ルゥゥォォオオオオ……」

ゆっくりとゴーレムは前進する。

「こ、こっちに向かって来るぞ……」

「嘘、まさかここに入って来るんじゃないでしょうね?」

「だ、大丈夫だろ……だってここはモンスターが入って来れないって藤田さんたちが言ってたし……」

「でもアイツ、真っ直ぐこっちに来てるよ……」

市役所に残されたのは殆どがスキルや職業を持たない非戦闘員だ。

一歩、一歩、ゴーレムが進むごとに地面が揺れ、その度に彼らの顔に不安と怯えが広がってゆく。

そして一つの疑問が鎌首をもたげるのだ。

―――本当に、ここは安全なのか、と?

その疑問に答えるかのようにゴーレムは前進し、そして市役所の手前百メートル付近まで来たところで、『ソレ』は起こった。

バチィィンッ! と、『見えない何か』に弾かれたようにゴーレムがその身をのけ反らせたのだ。

「おぉ」とそれを見ていた避難民たちが声を上げる。

そこは市長のスキル『町づくり』によって区切られた領域。

市役所を中心とした半径百メートルの、モンスターが入って来れない絶対の境界線だ。

「ルォォォ……」

もう一度、ゴーレムはゆっくりと手を伸ばす。

またしても『見えない壁』がゴーレムの手を弾き返した。

「――ルゥゥ……」

苛立たしげに声を上げたゴーレムが次に取ったのは、その拳を振り上げる事。

その巨大な手で見えない壁を叩いた。

ズズンッ! と凄まじい衝撃が巻き起こり、その揺れは市役所まで届いた。

短い悲鳴が上がり、誰もがその場にしゃがみ込んだ。

そして土煙が晴れ、見えたのは、一歩も前に進む事が出来ないゴーレムの姿だ。

「ルオオオオオオオオオオオオオオッッ!」

何度も、何度もゴーレムは拳を見えない壁に叩きつけるが、その全てが阻まれる。

その姿に誰もが恐れおののきながらも確信した。

――アイツはここに入って来れない。

市長の言ってた通りだ。

モンスターが入って来れない『安全地帯』なのだ。

やがてゴーレムはこれ以上は無駄だと判断したのか、ゆっくりと後退を始めた。

去ってゆくゴーレムの姿を見て、歓声が上がる。

安堵に湧く避難民たち。

その場にへたり込み、涙を流すも者さえ居た。

そんな中で、

「……おい、アイツ何やってんだ?」

最初に気付いたのは、バリケード付近で見張りをしていた初老の男性だった。

一昨日の探索の負傷で、今回の決戦メンバーから外された人物だ。

彼の視線の先には、ゴーレムがしゃがみこみ、その巨大な手をスコップのようにして地面を掬う姿があった。

「ルゥゥゥ……」

舗装されたアスファルトがまるで薄氷のように剥がれ、剥き出しの地面があらわになる。

大きく陥没した地面の傍で、ゴーレムは掘り起こした岩や土を持ちぐっと体を捻った。

それは丁度、陸上選手の砲丸投げのようなフォームに似ていた。

「お……おい、おい」

まさか、まさか、まさか―――。

そこでようやく、初老の男性は理解する。

ゴーレムが、何をするつもりなのかを。

「全員、建物内へ避難しろおおおおおおおおおおおおおおおお!」

その叫びをかき消すように、大量の土砂の雨が市役所へと降り注いだ。

「―――そもそも市役所の『安全地帯』は完璧じゃない」

昨日の晩。

そう前置きして『彼』は話し始めた。

「いくつかの抜け道があるんだ。少なくとも私が調べた限りでは三つ程はある」

ぴっと彼は指を一本立てる。

「まず一つ目、そのモンスターが人間とパーティーを組んでいた場合だ。この場合、モンスターは仲間扱いとなり市役所に出入りする事が出来る。ただ入った後、中でスキルが制限されるかどうかまでは分からない。……とはいえ、この方法は君には無理だろう。あれだけ人間を恨んでいる君だ。慣れ合うつもりなど毛頭ないだろう?」

「……」

少しだけ、彼の立つ足元が苛立たしげに揺れる。

更にもう一本指を立てる。

「次に二つ目。外で受けた 傷 ( ダメージ ) やスキルの効果は、例え『安全地帯』に入っても治る事はない。打撲や骨折、麻痺や毒、それに――洗脳なんかもね。外に出た人間を適当に洗脳して暴動を起こさせれば、連中は勝手に自滅する。……まあ、私も君も洗脳系のスキルは持っていないから、この方法も使えないけどさ」

「……」

彼の足元がぐらぐらと揺れる。

前置きはいいから、結論から言え、と急かしているのだろう。

「ああ、そう急かさないでくれ。結論や結果だけを急ぐような話し方はあまり好まないんだ。出来るだけ長く会話がしたいんだよ。とはいえ、君に嫌われては本末転倒か……」

やれやれと彼は溜め息をつき、三本目の指を立てる。

「三つ目の抜け道。それは――『安全地帯』の外からの遠距離攻撃を行う事だ」

ぴたりと、揺れが収まった。

話を聞く気になったのだろう。

「初めに言っておくが、『安全地帯』の外から攻撃しても中に居る人間を傷つける事は出来ない。例えば、中に居る人間に向けて石を投げても、『安全地帯』に入った瞬間、石は威力を失いそのまま落ちる。『影』や『咆哮』なんかも同じだ。『影』を中まで伸ばす事は出来ないし、『咆哮』も威力を失い、ただの叫び声になってしまう」

「……?」

再び揺れが強まる。

それは先ほどの発言と矛盾していないか、と。

『安全地帯』の外からの遠距離攻撃を行ったとしても、中の人間を仕留められないのでは何の意味もないではないか。

「そんな事はない。さっきも言っただろう? 石は『威力』を失うだけで、中に入る事――それ自体は出来るんだよ」

つまり、と。

「君の力で、それを更に大規模に行えば――どうなると思う?」

突如として発生した土砂とコンクリートの雨。

それは市役所へ降り注いだ瞬間、威力を失い人々を傷つける事無く地面へと降り注いだ。

「ルゥゥゥオオオオオオッ!」

だがそれだけでは終わらない。

次にゴーレムは近くにあったビルを掴んで投げた。

巨大なビルや建造物を、まるで大根やニンジンを収穫するように簡単に引っこ抜き、次々に市役所へ向けて投げ続ける。

それらも『安全地帯』に入った瞬間、威力を失いその場に崩れ落ちる。

ビル、線路、道路に、車。とにかく周辺に在るものを片っ端から投げ続ける。

するとどうなるか?

簡単だ。

埋まってゆく。

市役所が、その周辺のエリアが、瞬く間に瓦礫の山に埋もれてゆくのだ。

『―――入れないのならば、そのまま閉じ込めてしまえばいい』

彼はそう言っていた。

直接手を下す必要なんてない。

このまま奴らを瓦礫の下に生き埋めにしてしまえば、やがて勝手に死ぬ。

よしんば逃げようものなら、それこそこちらの思うつぼ。

『安全地帯』から出た瞬間、潰してしまえばいい。

まさしくビル程の巨体と桁外れの膂力を持つゴーレムだからこそ出来る反則的な力技であった。

「う、嘘だろ……?」

「ちょ、ちょっと……このままじゃ私達生き埋めになっちゃうんじゃない?」

「し、市長は? 市長はどうしたのさ?」

「知らないわよ! 執務室にこもったまま出てこないもの!」

繰り返すが、ここに残っているのはその殆どがスキルを持たない者達だ。

この世界において圧倒的な弱者である彼らでは、この瓦礫の山を抜け出す事など出来ないだろう。

混乱と恐怖は瞬く間に広がってゆく。

瓦礫の山は着々と構成され、『安全地帯』という名の牢獄が完成されようとしていた。

「ルゥオオオオオオオオ!」

ゴーレムは再びビルを投げる。

だが、

「―― 反射 ( リフレクション ) 」

まばゆい光がビルを包み込み、その直後――ビルが跳ね返った。

「ッ!?」

予想外の出来事に一瞬体が硬直する。

ゴーレムは即座に腕を前にかざしてガード。

ビリビリと衝撃が伝わるが、それだけだ。

片手で投げたのだから、片手で防げる。

当たり前の事だ。

「……ルゥゥゥ……」

それよりも、だ。

今の現象には見覚えがある。

忌々しくも真新しい記憶が蘇る。

不快にも一時的とはいえ、自分の片腕を失わせたあの忌まわしいスキルだ。

どこだ?

どこに居る?

すると、市役所から少し離れたビルの屋上。

そこに何者かが立っているのが見えた。

女だ。

吹けば飛ぶようなか細い女が自分を見ている。

その肩には、あの忌々しい雌狐の姿もあった。

「ルゥゥゥ……」

標的を変更。

先ずはあの人間が先だ。

ビルを砕き、その破片を握りしめる。

今度は単体ではなく、数での投石だ。

単純な反射対策だが、これならば有効だろう。

「……ルォ?」

だが投げる直前、ゴーレムは見た。

女の影が異様に広がり、そこから巨大な『何か』が姿を現すのを。

なんだ、アレは? ……武器?

いや、何であろうと問題ない。

矮小な人間の兵器が何だというのか。

その程度で自分を止められるはずなどない。

「―――ぇ」

かすかに声が聞こえた気がした。

直後、何かが割れる様な音が響き渡り――そして。

凄まじい衝撃と共に、ゴーレムの額に大きなヒビが入ったのだった。

「ルォォオオオオオオオオオオオッ!?」

何だッ!? 何が起こったッ!?

信じられないとでも言うように、ゴーレムは体を震わせる。

己の額から崩れ落ちる破片。

まさか、傷を負ったのか? あんな豆鉄砲の様な小さな銃弾で?

だが、その直後。

更なる混乱がゴーレムを襲う。

―――居ない!?

ビルの屋上。

そこに居る筈の人間の女が、忽然とその姿を消したのだ。

そして、次の瞬間――今度は真後ろからあの衝撃が襲ってきた。

ここで視点は一之瀬へと移る。

「ふぅー……」

深く深呼吸をし、ゴーレムを見つめる。

「多分、こっちにもう気付いたよね」

「きゅぅー」

先程の現象が『反射』だと、おそらくは向こうも気付いているだろう。

いや、そうでなくては困る。

先程の『反射』は市役所への攻撃を防ぐという為でもあるが、それ以上に『自分達』へ目を向けさせるために放ったのだから。

「ッ……こ、こっちを見た」

ゴーレムはこちらに気付いた。

第一段階はクリア。

ならば次だ。

「モモちゃん、お願い」

「わんっ」

後ろに控えていたモモが一之瀬の『影』を踏む。

すると、その影が後ろに向かって大きく伸びた。

そこから一丁の狙撃銃が現れる。

いや、それは狙撃銃と呼ぶには余りに長く常識離れした形状をしていた。

その全長は二メートルを優に超え、ゴツゴツとしたパーツがいくつも取り付けられている。

それは今まで彼女が使用していた狙撃銃とは明らかに異なっていた。

数日前、彼女はガチャによって新たな職業とスキルを得た。

職業は『武器職人』、そのスキルは『武器強化』。

文字のごとく武器を強化することが出来るスキルだ。

『狙撃銃』を強化するには、大量の魔石や素材、そしてMPを必要としたが、それを彼女達はこの二日間でやり遂げた。

一心不乱にモンスターたちを狩り続け、必要な素材を入手し、銃の強化に成功したのだ。

これがその成果。

対ゴーレム決戦兵器――『一之瀬スペシャルver2.0』。

ちなみにver2.0という数字に特に意味はない。なんとなく響きがカッコいいから彼女がそう名付けただけだ。

背負っていたリュックから銃弾を取り出す。

これもスキル『銃弾作成』によって創られた特別製だ。

殴れば人を殺せそうな武器になる程馬鹿でかい銃弾を手慣れた手つきで装填する。

「……(ふるふる)」

最後にアカの分身体が銃身を支える銃座に変化する。

準備は整った。

膝立ちになって銃を構え、呼吸を整える。

ゆっくりと、彼女は引き金を引く。

「くらえっ!」

そして凄まじい爆発音と共に、一発の銃弾がゴーレムに向かって放たれた。

銃弾が与えた運動エネルギーは正に圧巻の一言。

ゴーレムの額には大きなヒビが入っていた。

「ルォォオオオオオオオオオオオオオッ!!」

元々持っていた狙撃銃でさえ、スキルによって強化され対物ライフル並みの威力を誇っていたのだ。

それが更に強化されれば、一体どれほどの威力になるか。それはもはや『対物ライフル』の域に留まらない。いうなれば――これは『対城ライフル』であった。

「次ッ!」

だが、そこで気を緩めるのは三流以下だ。

すぐさま次弾を装填する。

よく見れば、その手は僅かに震えていた。

(凄い衝撃……アカちゃんでガードしてるのに)

銃の反動。

それだけで一之瀬の全身は悲鳴を上げていた。

もともと一之瀬のステータスは『引き籠り』によって大幅に弱体化している。

それを『身体強化』によって、ようやくまともに動ける程度にカバーしているのだ。

――強化した銃のスペックに彼女自身が追い付いていない。

まともに撃てるのは、果たしてあと何発か?

額に汗をにじませながら、『それでも』と彼女は不敵に笑う。

――みんなが頑張っているのに、私だけが情けない姿を見せるわけにはいかない。

「モモちゃんっ!」

「わんっ」

銃弾は効いた。

ならば次は作戦を『第二段階』へ移行する。

モモの『影』が広がる。

それはモモと一之瀬を包み込み、沈み始めた。

体感時間にすれば数秒ほどだろうか?

再び光の下へと現れた彼女たちをアカの分裂体がお出迎えをする。

そこはゴーレムの背後にあるビルであった。

狙い通りだ。

銃を構え、引き金を引く。

「ルゥオオオオオオオオオッ!?」

隙だらけの後頭部に大きなヒビが入った。

「次ッ!」

「わんっ!」

再び『影』が彼女達を覆い尽くし、飲み込んでゆく。

そして次に現れたのは、今度はゴーレムの真横のビルだ。

(何度も検証はしたけど……やっぱり凄いなぁ、このスキル)

額に脂汗を浮かべながら、一之瀬はモモのスキルの凄まじさを実感する。

モモの新たな能力――『影渡り』。

度重なるレベルアップを経て、モモの『影』も確実にその性能を上げていた。

以前はカズトの影からしか潜る事が出来なかったが、今は自分だけでなく、仲間も影の中へ連れ込むことが出来る。

更に潜り込む影も、出る影もパーティーメンバーであれば誰でも可能になった。

又、カズトのアイテムボックスには及ばないが、多少であれば道具も収納しておくことが出来る。

そしてこのスキルは、アカが仲間に居る事で絶大な相乗効果を発揮した。

なにせ分裂したアカが居る場所に好きなように移動する事が出来るのだ。

彼女達は事前にこの市役所周辺――十四か所にアカの分裂体を配置している。

無数の『出入口』を得たモモの『影渡り』と一之瀬の狙撃の合わせ技。

『一撃離脱の超高出力連続射撃』。

これが彼女達が生み出した対ゴーレム用の必殺戦術であった。

(回復する隙は与えない。撤退もさせない。このまま撃ち続ける)

二発、三発とゴーレムの体に銃弾が撃ち込まれ、そのひび割れは大きくなってゆく。

ゴーレムが狙撃手である一之瀬を発見しようとも、その時には既に新たな 座標 ( ポイント ) に移動した後だ。

「ルゥゥ……ゥゥオオオオオオオオオオオオオオンンンン!!」

「なっ……!?」

だが、ここでゴーレムが戦術を変えた。

手に持った破片をさらに細かく砕き、周囲一帯にぶちまけたのだ。

ゴーレムからすれば極小の破片。

だが、人を死に至らしめるには十分な殺傷能力を持っていた。

周辺の建物は破壊され、ビルが次々に倒壊してゆく。

それに巻き込まれアカの分身体の反応も消えた。

(しまった、気付かれたッ……!)

一之瀬は内心歯噛みする。

ヤツはこちらの移動先を根元から潰す気だ。

(一気に半分近くの 座標 ( ポイント ) を潰された……。たった一撃でこんな……)

どこまでも力技でこちらをねじ伏せるつもりらしい。

手が震える。

銃の反動? それとも恐怖? あるいはその両方か。

だとしても、もう止まる事は出来ない。

「モモちゃんっ!」

「わんっ!」

再びポイントに移動する。

銃を構えると、激痛に全身が悲鳴を上げた。

「ッ……くらえっ!」

それでも渾身の力を込めて一之瀬は引き金を引く。

ゴーレムの体にひびが入る。

「ルォォォオオオオオオ!」

それを気にする事無く、ゴーレムは周辺に破片をぶちまけた。

再びアカの分身体が消滅する気配が伝わってくる。

残された 座標 ( ポイント ) は……ゼロだ。

「ハァ……ハァ……」

汗をにじませながら、一之瀬は迫りくるゴーレムを睨み付ける。

ゴーレムは警戒しているのか、必要以上に近づいてこない。

「ははっ……随分警戒してくれてるみたいだけど……いいの?」

「ルォ……?」

自分の声が届いたのか、ゴーレムがその動きを止める。

「私にばっかり、気を取られて」

んべっと舌を出して、一之瀬は不敵に笑う。

最後の抵抗かとも思ったが、そこでふと気づく。

そう言えば―――あの肩に居た雌狐はどこに行った?

その直後、

「―――ええ、ナイスです、一之瀬さん」

彼女の最も信頼する男の声が、ゴーレムの背後から響いた。

突如として後ろから聞こえた声。

その声に、ゴーレムは聞き覚えがあった。

そうだ、この声だ。

昨日、自分に傷を負わせたあの人間の―――。

「ルゥウウウウオオオオオオオオオオオオン!」

叫ぶ。

ぐるんと体をねじり、その視界にその姿を映しこむ。

ビキリと、体の一部が崩れた。

「……ルォ?」

そしてその男の姿を目にした瞬間、ゴーレムの頭に浮かんだのは純粋な疑問だった。

アレは――ナンダ?

姿かたちは昨日見たあの人間だ。

だが、その右腕だけが異常なまでに巨大化していた。

肘から先が巨大なパイプのようなモノに覆われ、直径数十センチはあろう開口部からは巨大な金属の先端部分が剣呑な光を放っていた。

そう、それはまるで超巨大な『釘』の様な――。

ざわりと、ゴーレムはある筈のない悪寒に襲われた。

アレは―――マズイ!

「喰らえ、ティタンッ!コイツが俺たちの切り札―― 破城鎚 ( パイルバンカー ) だ!」

その直後――ズンッ!!と。

凄まじい『衝撃』が、ゴーレムの体を襲い、その体を飛散させた。