LNCrawler

398. 撃退戦2

お気楽領主の楽しい領地防衛 〜生産系魔術で名もなき村を最強の城塞都市に〜 — ncode.syosetu.com · All chapters

撃退戦2

「だ、大丈夫ですか?」

「……撤退しますか?」

アルテとカムシンにそう言われて、首を左右に振る。

「いや、本気を出す。これまでも本気だったけど、本当の本気。全力を出すよ」

自分に言い聞かせるようにそう言ってから、立ち上がる。本当なら安全第一の精神で撤退するところだが、今回は命を助けてくれたリルダへの恩返しである。逃げることは出来ない。

ならば、生存闘争だ。これはどちらが生き残るかという戦争である。諸君、武器を取れ。自らが生き残る為には敵を倒すしかないのだ。

砦はかなり頑丈に作った。壁なんて厚さ五十センチはある。化け物鯨が上で飛び跳ねても簡単には壊れないだろう。なので、冷静に対策を練ることが出来る。

「皆に危ない時は砦の中に避難するように伝えてくれる?」

「は、はい!」

声を掛けると、カムシンが慌てて屋上へ走っていった。それを見送る暇もなく、次の指示を出す。

「アルテの人形だけど、今回はちょっと形状を変えて良いかな?」

「え? 形状、ですか?」

不思議そうな顔をするアルテに、少し申し訳ない気持ちで頷いて答える。

「うん。多分、あれを相手にしていたらウッドブロック製で頑丈に作ってもすぐに壊れちゃうから、最初から相手のかく乱の為に動きやすいようにだけ作ろうと思って……可愛くはないんだけど」

そう告げると、アルテは眉を八の字にして苦笑した。

「それは、仕方ないと思います。ただ、出来るだけ壊さないようにしたいと思います」

アルテは胸の前で両手で拳を作ってそう口にする。本人は真剣なのだろうが、可愛らしい様子に思わず微笑んでしまう。

「じゃあ、すぐに作っちゃうね。多分、出番があるから」

「は、はい」

アルテの返事を聞き、すぐにティルに声を掛けた。

「ティル、ウッドブロックを頂戴」

「はーい!」

ティルはパタパタと走っていき、作り置きしていたウッドブロックを運んでくる。ティルが運ぶのを見て、オルト達もウッドブロックを持ってきてくれた。

「へい! ここらで良いですかい?」

クサラが両手にウッドブロックを持ってきたので、頷いてから返事をする。

「うん、ありがとう。あ、クサラさん」

「なんですかい?」

名前を呼ぶと、クサラは笑顔で振り返った。

「ちょっと、ヒュドラの注意を引いてきてくれる?」

「へい、分かりやした、って……えぇっ!? そんなん無理でがしょ!?」

「がしょ?」

クサラは驚き過ぎて新しい語尾を発した。ちょっと面白い。

「がしょって面白いね」

「いや、そんなことはどうでも良いんでさぁ! がしょを褒められてもあっしは嬉しくありませんぜ!?」

と、中々良いリアクションをする。やはり面白い。

「クサラさんが亡くなってしまうのは惜しいんだけど……」

「あっしがお亡くなりになること前提……!?」

クサラは弄れば弄るほど味が出る。スルメのようだ。

そんなことを思っていると、オルトが心配そうに口を開いた。

「あ、あの、ヴァン様……多分、俺らでもあの魔獣を相手に接近戦は難しいですよ。まぁ、クサラなら試す価値はありますが、ギリってとこですかね?」

「旦那ぁ!? ギリでダメなんでさぁ! ねぇ、旦那ぁ!?」

オルトの曖昧な台詞にも興奮した様子で文句を言うクサラ。三人のやり取りを見て、屋上から降りてきたプルリエルが腕を組んで唸った。

「何をするかによります。でも、遠距離から投げナイフとか投げたところで、多分傷一つつかないと思いますけど……」

プルリエルがそう言うと、クサラが大きく何度も頷く。だが、今回のヴァン君は本気なのだ。表情を引き締めて、オルト達を見ながら口を開いた。

「大丈夫。遠距離から注意を引けるようにするよ。だから、クサラさんはオルトさんと一緒にヒュドラの注意を引いてね」

「え……? 俺も……?」

「あっはっはっは! 残念でしたねぇ、旦那ぁ! あっしと一緒に死地へ行きましょうや!」

仲間を見つけたクサラが、愕然とするオルトを指差して笑った。仲が良い二人である。

そんな様子に笑いながら、受け取ったウッドブロックを使って新たな武器を作る。それを見て、オルトとクサラが目を丸くした。

「こ、これは……?」

「ちょっと特殊なクロスボウかな?」

質問に答えながら、細部を仕上げていく。出来上がったのは和弓に相当する長さのクロスボウだ。幅は二メートルにもなり、縦も同等の長さだ。弦を引くのは大変だろうが、その分、発射すれば威力も飛距離も十分だ。

「重いと思うけど、これなら遠くから移動しながら攻撃できるからね。海岸を移動しながら攻撃してほしいんだ。あ、でも主力のバリスタと魔術による攻撃は続けるから、ヒュドラをこの周辺から逃がさないように注意してね?」

武器の説明と陽動方法を伝え、なおかつ注意点も言っておいた。すると、オルトとクサラが真剣な顔で口を開く。

「……む、難しそうなんですが」

「……追加報酬はあるんですかい?」

お気楽領主の楽しい領地防衛10巻!

発売日です!ヾ(≧▽≦)ノ

良かったら、是非チェックしてみてください!(*‘ω‘ *)

https://store.over-lap.co.jp/products/EC2894