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403. 帰れるぞー

お気楽領主の楽しい領地防衛 〜生産系魔術で名もなき村を最強の城塞都市に〜 — ncode.syosetu.com · All chapters

帰れるぞー

「……ヒュドラの頭、か。これはディー殿の逸話がまた一つ追加されたか?」

もう大丈夫と判断したのか。パナメラが腕を組んで優雅に歩いてきた。視線はヒュドラの切断された首に向けられている。

「はっはっは! なんの、なんの! 皆がヒュドラの動きを止めていたからこその成果ですぞ!」

と、ディーは呵々大笑しつつも謙遜する。しかし、それにはオルト達も呆れ顔だ。

「ヒュドラの首を落としたなんて話は聞いたことないんですがね」

「あっしはもうディー様が人間かどうか怪しんでますぜ」

「本当に、味方で良かったわ」

最後に苦笑交じりで口にされたプルリエルの言葉に、思わず大きく頷いて同意する。ディーに関してはアルテの人形二体を同時に相手にしても勝ちそうだ。対人間での戦争ではアルテの人形が最強戦力かもしれないが、大型の魔獣を相手にした時はディーの方が強いに違いない。

アーブやロウ、カムシンもかなり強くなってきたが、それでも三人がかりでディーと互角に戦えたら拍手喝采は間違いない。

ディーの超人っぷりに疑問を持っていると、海面から顔出したラルグス達が口を開いた。

「今、暴王は去った。もうこの近くには来ないだろう」

「本当? よかったぁ……」

海中から様子を窺っていたらしい。ラルグス達からの報告を受けて、ホッと胸を撫でおろす。

「うむ。それでは、人間たちの国へ戻る手助けをしよう」

「え? いいの?」

ラルグスの言葉に、思わず聞き返してしまった。なにせ、島の反対側に連れて行くことが交換条件だったのだ。すでにラルグス達はそれを果たしてくれている。そう思ったのだが、リルダが目を細めて頷き、答えた。

「……暴王の一人の首を落とした。それは勇者の力」

「え? ディーが勇者?」

リルダの言葉に驚き、ディーに視線を向ける。そこには大剣を軽々と肩に担いだディーの姿があった。どちらかというと昔のハリウッド映画の主役のようなマッチョヒーローだが、もしかして勇者なのか。

「……ディーには青い鎧を準備しようかな」

「青ですかな? ふむ、それも良いですな」

適当なことを言ったのだが、ディーは意外と乗り気である。しかし、大剣だとイメージが違う気がする。うむ。ディーには専用の勇者の鎧を準備するとしよう。

「竜討伐士に続き、非公式ながら勇者の称号か。ディー殿はいずれ伝説になりそうだな」

腕を組み、肩を揺すって笑うパナメラ。その言葉にアルテ達も笑っていた。皆の笑顔を見ると、危機を乗り越えたという実感が湧いてくる。

「よし! それじゃあ、トリブートに帰ろうか!」

そう声を掛けると、皆が歓声を上げて喜んだ。しかし、アルテの言葉で現実に戻される。

「あ、でも、ヴァン様? 船が……」

「あ」

アルテの言葉を聞き、海に浮かぶ船の残骸を見た。これは、今日中には直せないだろう。

「……明日出発! 皆は木材を伐り出してね!」

「はっ!」

指示を出すと、つい今まで笑っていたセアト騎士団の面々が素早く返事をし、木材の調達に動き出した。命がけの戦闘後でもキリキリと働く皆を見て、気持ちは分かると深く頷いた。

やっぱり、そろそろ帰りたいよね。

結果、船は三時間ほどで完成した。ありがたいことに一番苦労した船底部分がすべて残っていたので、それを再利用したのである。

おかげで夕方には船作りではなくバーベキュー大会に変わっていた。皆で食事をして、ゆっくり休んだら、いざ航海である。

「今回は安心すると良い。我々が魔獣を寄せ付けないからな」

「おぉ、助かります!」

ラルグス達からの頼もしい助力の申し出に素直に感謝する。海に詳しい彼らが助けてくれれば鬼に金棒である。

「それでは、出航するよー!」

「はっ!」

甲板の上に集まった皆を振り返って、出発の合図を送った。それにディー達が返事をして、桟橋に繋いでいた係留ロープを解く。風の魔術を扱える魔術師は、風の魔術を行使して追い風を生み出した。

なんと素晴らしき風の魔術。船はすぐに加速して、ついでに牽引している巨大な浮桟橋を運ぶ。

もちろん、その桟橋にはヒュドラの首が載っていた。こんな最上級の素材を置いていく筈がないではないか。はっはっは。

「ご機嫌ですね、ヴァン様?」

「……やっと帰れますからね」

ティルとアルテにそう言われて、笑いながら頷く。

「そうそう。すごいお土産もあるしね。あー、早く帰りたいなぁ」

そう言って甲板から船の向かう先を見ると、二人も釣られたように海の先を見た。

周りには金髪の人魚達が並んで泳いでいて、水面は太陽を受けて光り輝いている。

その景色は、凶暴な大型の魔獣が巣食う海だとは思えないほど綺麗なものだった。