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406. 夢の素材

お気楽領主の楽しい領地防衛 〜生産系魔術で名もなき村を最強の城塞都市に〜 — ncode.syosetu.com · All chapters

夢の素材

「どうして駄目なんだ?」

ひとしきり笑い終わった後で、パナメラがそう聞いてきた。それに腕を組んで不服であると態度で示しながら答える。

「だって、ヒュドラの頭ですよ? ロッソ様も仰ってましたが、これまでヒュドラが討伐されたことはないんでしょ? それなら、あの素材は唯一無二のものです。ドラゴンはたまに出てくるから素材が手に入るかもしれないけど、ヒュドラはそうもいきません。僕の夢のヒュドラ装備を作るんですから」

そう告げると、パナメラは再び声を上げて笑い出した。まぁ、一緒に討伐したから三分の一くらいはパナメラの取り分かもしれないが。

そう思ってパナメラの返事を待っていると、目じりに涙まで浮かべるほど笑ったパナメラが首を左右に振った。

「そこまで嫌がるなら仕方ないな。ヒュドラの首を落としたのはディー殿だ。少年がそう言うなら、従うとしよう」

意外とパナメラはあっさりと引き下がってくれた。それにホッとしながらも、理由が気になる。

「……ちなみに、何故ヒュドラの素材が欲しいんですか?」

そう聞いてみると、パナメラは鼻を鳴らして肩を竦めた。

「気にするな。フィエスタ王国に我が国の力を見せておいた方が後で有利に働くかと思っただけだ。まぁ、下手に強大過ぎると思われたら警戒されるからな。迷っていたところだったから、ヒュドラに関しては撃退したという話だけをしておこう」

「あ、なるほど。ヒュドラの首を渡して、持って帰ってもらおうと思ったってことですね。でも、超貴重な素材だから、多分陛下がお認めにならないのでは?」

パナメラの言葉に疑問を持つ。すると、パナメラは軽く頷いてから答えた。

「そうだな。だから、少年から許可を貰ってから陛下へ陳情できるか考えようと思っていたんだ。まぁ、断られる可能性も考慮していたから、気にするな」

パナメラはさっぱりとした物言いでそう口にする。なるほど。フィエスタ王国の船の秘密を研究する為にも、もっと親密になって調査をしたいというのが正直なところだ。しかし、ヒュドラの素材も惜しい。こんなに色々試したい素材があるのに、それをあげるのは勿体ないではないか。

「う~ん……とりあえず、別のことを話し合いましょう。ヒュドラの首は保留で」

「別のこと? 何か議論するものでもあるのか」

話題を変えたところ、パナメラが不思議そうな顔をした。まぁ、僕からこういうことを言うのは珍しいからね。ただ、僕が声を上げないと誰も言い出さない議題だろうとも思うのだ。

そう思い、パナメラとアルテの顔を交互に見て口を開く。

「ロッソ様が、僕とパナメラさん。それとディーに報奨を与えようって話をされてましたよね」

「ふむ、そうだな。陛下が来られても同じことを仰ると思うぞ」

何が言いたいのか分からない。そうパナメラの顔に書いてあった。それに苦笑しつつ、自分のことを指差して答えた。

「そうですよね。なので、僕とパナメラさんで、今回の救出に関係してくれた人たちに報奨を与えたいなって思ったんですよ。ほら、命を助けられたのと同じようなものですし」

そう告げると、パナメラは腕を組んで頷く。

「なるほど」

パナメラが納得の声を上げ、首を捻って考えるような素振りを見せた。一方、アルテは手放しで喜ぶ。

「良いですね! 今回だけじゃなくて、皆さまにはいつもお世話になっておりますし……」

我が事のように喜ぶアルテに微笑みつつ、人差し指の先をそちらに向けた。

「もちろん、アルテもだよ。パナメラさんとディーの力は確かに大きいかもしれないけど、アルテもとても重要な働きをしたと思う。だから、アルテも含めた皆を褒めたいんだ」

そう口にして笑うと、アルテは目を大きく見開き、すぐに照れたように視線を下げた。そして、動揺を隠せずにそわそわと体を動かす。

「え? そ、そんな、私なんて……それに、わ、私は、ヴァン様にそう言って、いただけるだけで、どんなに……」

わたわたと手を動かしながら謙遜するアルテ。その様子を見て、苦笑しながらパナメラに視線を移す。

「アルテがどれだけ重要な役目を担ってきたか……ねぇ、パナメラさん?」

話を振ると、パナメラは口の端を上げ、鼻を鳴らして笑った。

「その通りだ。無人島に限らず、アルテ嬢は先の戦争でも大きな働きをした。貴族の当主や騎士団長が真っ先に名が挙がるが、その働きは勝るとも劣らないはずだ。気にせず、報奨を受けるが良い」

パナメラが太鼓判を押すと、アルテは動きを止めて目を瞬かせた。そして、少し涙ぐむ。

「おいおい、まだ報奨を受け取ってもいないのに泣くなよ?」

パナメラが笑いながらそう言い、ベッドから腰を上げてアルテの頭を片手で撫でる。動作は豪快なのに、その頭を撫でる手は優しかった。

「あ、ありがとう、ございます……」

涙声のアルテの声を聞き、パナメラは優しく微笑んでアルテの頭を撫でまわしたのだった。