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407. 皆を褒めたい

お気楽領主の楽しい領地防衛 〜生産系魔術で名もなき村を最強の城塞都市に〜 — ncode.syosetu.com · All chapters

皆を褒めたい

翌日、パナメラと話した内容をロッソに伝えに行く。元々フランクな性格のロッソなので心配はしていなかったが、予想外の反応が返ってきた。

「ほう、それは良い話だ。今回はヒュドラ撃退という素晴らしい戦果があるのだから、通常よりも大々的に表彰をするとしよう。陛下がお見えになったら改めてパナメラ伯爵とヴァン子爵、ディー騎士団長の表彰をすれば良い」

と、ロッソは前向きに提案してきた。元々、今日お触れを出し、明日にでもトリブートの住民を集めて表彰をしようという話にはなっていたのだが、それに追加でアルテ達も加えてくれるらしい。つまり、身内で表彰式を追加で行おうとしたら、運営が大々的にやってくれるという話になったのだ。正直、パナメラや自分が表彰するよりも、侯爵であるロッソ自ら表彰してくれる方が嬉しいだろう。

「ありがとうございます!」

喜んでロッソの提案にお礼を述べる。それに笑いつつ、パナメラが頷いて答えた。

「どうせなら、褒賞も凝ったものにしましょう」

「ほう。凝ったもの……通常であれば、爵位を持たぬ者には金銭が多いと思うが」

ロッソが不思議そうに疑問を呈すると、パナメラは笑みを浮かべてこちらを見た。

「良い物があります」

良い物と言いながら見ているのは、間違いなく僕だ。まさか、賞品はヴァン君だよ、みたいな話だろうか。どうしよう。お婿に行くことになるかもしれない。

パナメラの笑みを見て、僕は恐怖に打ち震えることとなるのだった。

そんなこんなで一日半で色々と準備を終え、何とか表彰の時を迎えることができた。いや、ちょっとくらい働くのは問題ない。僕が言い出したことだから、むしろお世話になっている皆に色々してあげたいという気持ちは大いにある。

とはいえ、流石に準備に費やす時間が少な過ぎた。もう、寝る時間以外を削って働いたと言えよう。ちなみに睡眠は八時間は取れている。個人的にはベストな睡眠時間だ。睡眠大事。

さて、トリブートの広場には多くの人が集まっている。まだロッソは姿を見せていないが、恐らく、住民は殆ど揃っているだろう。それだけではなく、パナメラの騎士団やセアト村騎士団、冒険者たちなども並んでおり、大きな祭りくらいの賑わいをみせていた。

今日はヒュドラ撃退の褒賞を授与する式典があるというお触れが出ている為、皆はそわそわしながら待っている。一昨日、港でヒュドラの首を見た者もいるだろう。だが、希少な素材ということでロッソの邸宅に保管されていた為、まだ見ていない人も多かったに違いない。

そんな異様な盛り上がりを見せる表彰式で、大きな幌付きの馬車が登場した。明らかに異常な大きさであり、不自然に周囲から見えないような作りになっている。その異形の馬車を見た途端、住民達が騒ぎ出した。

「おお……!」

「あれが……」

ざわざわと騒ぐ住民達の前に、馬車に続いてロッソが姿を見せる。近衛の騎士を連れたロッソが現れると、皆が静かになる。嬉しそうに待つ住民達をゆっくり見回し、ロッソが近くに立つ騎士に視線を送った。すると、騎士が大きく頷き、口を開く。

「それでは、ロッソ閣下の名の元、此度の褒賞の発表を行う! まずは、これまでわが国でも数度、海に面した街を崩壊させた海の王、ヒュドラの撃退について功労者を表彰する!」

騎士がそう宣言すると、住民達から拍手が巻き起こる。おお、盛り上がっているぞ。見ている方もお祭りみたいな気分になってそうだ。

そんな盛り上がる会場で、別の騎士がついに馬車の幌の部分を取り払った。すると、馬車の上に載っていたヒュドラの首が露わになった。その瞬間、住民たちの驚愕の声が響き渡る。

海や甲板の上で見た時も思ったが、広場の中でどんと置かれているとまた更に巨大に見える。動かなくても凄い迫力だ。頭部だけでこの驚きだから、ヒュドラ本体を見たら腰を抜かすに違いない。

そんなことを思いつつ眺めていると、ロッソがこちらを確認してから口を開いた。

「それでは、ヒュドラ撃退の第一の功からだ。第一の功はセアト騎士団の騎士団長、ディー!」

ロッソがそう口にすると、ディーが歩いていき、ヒュドラの首のすぐ隣に立った。堂々とした態度でヒュドラの首の横に立つ姿は、まるで物語に出てくる英雄のようである。住民達からはもちろん大歓声だ。その様子に微笑みつつ、ロッソは大きな声でディーの偉業を称える。

「ディー殿は大剣一振りでヒュドラの首を切り落とした! 海の王とも呼ばれるヒュドラを撃退したことは勿論、ヒュドラの首の一つを切り落とすという偉業は前人未到のものである! その恐るべき剣術は我が王国最強の剣として名を馳せることだろう! よって、ディー殿には褒賞として白金貨及び最上級の剣を授ける!」

ロッソがそう宣言すると、住民達から驚きと歓声が半々で聞こえてきた。一方、ディーは目を輝かせてこっちを見てくる。

「大丈夫。僕が作るよー」

手を振りながら答えると、ディーは背中に背負った大剣を空に向かって突き上げて喜ぶ。その姿を見て、広場は大歓声に包まれたのだった。