408. 皆を褒めたい2
皆を褒めたい2
ディーの表彰が終わり、ロッソはこちらを見てから口を開く。
「パナメラ伯爵、ヴァン子爵。両名ともこちらへ」
名を呼ばれて、パナメラと二人でディーの隣へ移動する。ちょっと緊張しながら歩いていたのだが、セアト騎士団やパナメラ騎士団から歓声が聞こえてきて、少し余裕が出来た。皆に手を振りながら前に出る。
「それでは、次の功労者を表彰する。まずは、パナメラ・カレラ・カイエン伯爵。王国屈指の火の魔術の使い手として見事、ヒュドラ撃退の援護を果たした。これはヒュドラ撃退において、極めて重要な行いであり、一流の魔術師でなくてはできないことだっただろう。そして、ヴァン・ネイ・フェルティオ子爵。パナメラ伯爵と同様に、多くの兵器を用いてヒュドラ撃退の援護を果たした。ヴァン子爵の兵器がなくては、この偉業は達成できなかっただろう。よって、両名に第二の功として褒賞を授ける」
ロッソの口上を聞き、住民達から大歓声が巻き起こった。両手を振って応える。気分はアイドルだ。ちなみに、パナメラはクールに片手を軽く挙げて笑みを浮かべていた。さては表彰され慣れているな。
そんなことを思っていると、ロッソが微笑みを浮かべてセアト騎士団の方へ視線を向けた。さぁ、追加してもらった表彰が始まるぞ。自分が呼ばれる時よりも緊張しつつ、ロッソの言葉を待つ。
「次に、第三の功に値する功労者を表彰する。ヒュドラ撃退だけでなく、数多くの戦いでその力を発揮し、我が王国を支えてきたフェルディナット伯爵家令嬢、アルテ・オン・フェルディナット! アルテ嬢は幼いながら、どのような局面でも冷静に行動し、毅然とした姿を見せてくれた。それは、まさに貴族として手本となる見事なものである」
ロッソがそう宣言すると、アルテは肩を震わせて俯いた。少し離れた場所でティルやカムシンたちと一緒にいるが、ティルとカムシンが微笑ましそうにアルテの横顔を見ている。ここからでは良く見えないが、泣いているのかもしれない。
大丈夫かなと思っていると、ロッソが続けて口を開いた。
「今回のヒュドラ撃退。これは歴史に残る大事である。故に、第三の功も複数人となった。それでは、アルテ嬢に続き、第三の功労者を表彰する。セアト騎士団、カムシン!」
名を呼ばれて、カムシンが驚いて顔を上げた。まぁ、伝えてなかったからね。なんなら隣に立つティルやアーブ、ロウも目を丸くしている。
通常、騎士団であった場合、余程のことがない限り騎士団長のみの表彰となる。褒賞を受けるのも一人だけだ。なので、カムシンたちは名を呼ばれることはないと思い込んでいたに違いない。
「カムシン殿はヴァン子爵の護衛として、勇猛果敢に大型魔獣に挑み、見事に務めを果たした! その勇気や騎士としての技量は目を見張るものがあり、此度のヒュドラ撃退においても十二分の活躍であったと判断し、第三の功とする!」
ロッソがそう宣言すると、大歓声がカムシンに向けられる。セアト騎士団にいたっては大騒ぎだ。ロッソ侯爵による表彰式だというのに、カムシンの肩や背を叩いて声をかける騎士の姿もあった。まだカムシンは驚いて目を丸くしていたが、段々と理解ができてきたのか。腕で顔を隠し、俯く様子が見られた。騎士として、一生忘れられない思い出になったなら嬉しい。
泣くカムシンの背を叩く一人はアーブだ。自分のことのように嬉しそうにカムシンにちょっかいを掛けていたが、そこへロッソの次の言葉が響く。
「同じく、セアト騎士団より副騎士団長のアーブ、ロウ! 両名の騎士はヒュドラ撃退及び、パナメラ伯爵とヴァン子爵の捜索でも大きな働きをしてくれた。主君の為に尽くすその姿は、まさに騎士の鑑となるものである。この功はパナメラ騎士団、セアト騎士団に与えられるべきものだが、代表として、アーブ、ロウの両名に褒賞を与える。褒賞はヴァン子爵の作成した武具である!」
と、ロッソがアーブとロウ、そして両騎士団を表彰する。これにセアト騎士団の全員が跳びあがるほど喜ぶ。パナメラ騎士団は上品に拍手をして喜びあっていたが、セアト騎士団はサッカーでゴールを決めたくらい喜びを表現していた。アーブとロウはもみくちゃにされているが、恐らく、喜んでくれているだろう。
微笑ましく眺めていると、ロッソが最後の功労者を発表する。
「さて、最後の功労者の発表だ。異例のことだが、その功労者は家臣として長きにわたって影で主君を支えており、その働きにより、幼いヴァン子爵が多くの戦いを乗り越えることができたと言える。その働きは家臣として何よりも素晴らしいものであり、過酷な環境であっても己を犠牲にして主君に尽くす姿勢は見事である。よって、最後の功労者に褒賞を……む? ヴァン子爵。これは間違いではないのか?」
「大丈夫です! 合ってますよー!」
メモを確認したロッソが聞いてきたので、両手で丸を作って答える。すると、ロッソは軽く頷いてから再度口を開いた。
「そうか……それでは、最後の功労者として、ヴァン子爵の侍女、ティル嬢を表彰する! 褒賞は金貨及び希少な食材と調味料、最高級茶葉。また、ヴァン子爵より希望に合わせたメイド服を新たに贈るものとする!」
ロッソがそう宣言すると、驚きと歓声が響き渡った。ティルに顔を向けると、両手で口元を隠して驚く姿があった。
「ティルー! いつもありがとー!」
歓声に混じって、両手を振りながらティルに感謝の言葉を叫ぶ。すると、ダムが決壊したようにティルが号泣してしまう。その姿に感動したのか。アルテが泣きながらティルに抱き着いていた。おお、いかん。サプライズをした側である僕まで泣きそうだ。
少し騒がしくはなってしまったが、表彰は大成功といえるだろう。僕はホッと息を吐き、皆に向けて拍手をしたのだった。