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410. しっかり怒られた

お気楽領主の楽しい領地防衛 〜生産系魔術で名もなき村を最強の城塞都市に〜 — ncode.syosetu.com · All chapters

しっかり怒られた

「いいか、ヴァン子爵。卿は確かに子供かもしれない。しかし、自分が王国にとって重要な存在であり、王国の為に尽力すべき貴族であることを理解せねばならん。その責務を果たす為には、まずは自分の身の安全を第一優先にせよ」

陛下がそう言うと、アペルタも頷く。

「陛下の仰る通りですぞ。ヴァン子爵の身は卿だけのものではありませんからな。そういえば、我が娘に女児が産まれたのですが……」

「えぇい、アペルタ! 今はそんなことはどうでも良い!」

アペルタが何か不穏なことを言い出しそうになると、陛下が怒りながら立ち上がる。む? 今、さりげなく自分の孫を嫁に出そうとしなかったか。

「すでに、パナメラ伯爵にも厳重に注意をしておる。二人で反省するが良い」

「え? パナメラさんにも?」

陛下の言葉に、思わず聞き返してしまう。それにジロリと視線を向けられたが、これは許してほしい。陛下に説教をされて落ち込むパナメラさんという珍しい姿を見られるかもしれないのだ。

そんなことを思っていたら、タイミング良くロッソとパナメラが邸宅の方から歩いてきた。

あれ? いつもと変わらない雰囲気だぞ。

「陛下、そのように怒らずとも、ヴァン子爵ならば十分反省しているでしょう。その辺の貴族よりもよほど賢い方ですよ」

ロッソが苦笑しながらそう告げると、陛下は腕を組んで唸る。

「……分かっておる。しかし、今回のことは本当に肝が冷えた。侯爵、その方からの書状にしてもそうだ。もっと早く無事だったことを伝えられなかったのか」

「申し訳ありません。できる限り急いだのですが、あまりにも時間がなく……」

ロッソが真剣な顔で謝罪の言葉を口にすると、アペルタが呆れたような顔で口を開いた。

「陛下、八つ当たりはお止めください。侯爵は迅速に行動しておりますよ」

「……分かっている」

アペルタの小言に、陛下が鼻を鳴らして答える。どうやら、最初からロッソが最善を尽くしていることを疑ってはいなかったらしい。そんな様子を見て、アペルタは口の端を上げて目を細めた。

「ロッソ侯爵。陛下もそれだけ心配しておられたと思っていただければ助かります。なにせ、王都に早馬が到着してすぐに出発し、昨日の連絡を聞くまで殆どお口を開きにならなかったほどですからな」

そう言って笑いだすアペルタに、陛下は眉間に皺を寄せる。

「余計なことを言うな」

陛下が一言告げると、アペルタは笑みを浮かべたまま頷く。

「これは失礼を……」

それだけ口にして一歩下がるアペルタを一瞥し、陛下はロッソに向き直った。

「……今回の事態については把握しているつもりだ。先ほども話はしたが、ヴァン子爵が海に出ると聞いた段階で止めることもできただろう。今後は、十分に安全を確認した上で行動をさせるように注意しておけ」

「承知いたしました」

陛下の言葉にロッソは深く頷き、答える。それを黙って見ていると、ふとロッソの後ろに立つパナメラの顔が目に入った。

戦場で見るような真面目な態度ではあるが、特に落ち込んでいるようには見えない。

「……パナメラさんも怒られました?」

少し声を小さくして聞いてみる。それに、パナメラは片方の眉を上げ、わずかに首を傾げた。

「それなりにな」

一言だけだったが、その声はいつものパナメラの調子に比べると低かった気がする。

おぉ、あのパナメラさんが凹んでるぞ。

そんなことを思っていると、ロッソがそれに気がついたのか、苦笑しつつこちらにそっと歩み寄り、口を開いた。

「……パナメラ伯爵はこう言っているが、卿よりもずっと厳しく叱責されている。もちろん、私もだがね。下手をすれば領地の一部没収や降爵もあり得るというくらい、大変厳しいお叱りだ」

「え? そんなに、ですか?」

驚いて聞き返すと、ロッソは腕を組んで不機嫌そうにする陛下をちらりと見て、答えた。

「それだけ、陛下も肝を冷やしたのだ。つまり、パナメラ伯爵はもちろんだが、なによりもヴァン子爵。卿の身を案じておられるということを覚えておいてもらいたい」

「僕のことを?」

「そうだよ。陛下がこれほどお気に留めた臣下は記憶にない。だから、今後は本当に自分の身の安全を一番に考えてくれると有り難い」

そう言ってから、ロッソは困ったように笑った。

「……まぁ、正直に言えば、それは我々臣下が常日頃陛下に対して思っていることと同じなのだがね。なにせ、陛下は戦争になれば最前線まで出てきてしまうし、有効と判断すれば敵の目に御身を晒すようなことでもしてしまう。ある意味、ヴァン子爵に似ているかもしれないな」

ロッソが小さな声でそんな感想を述べて笑っていると、その背後に陛下とアペルタが立った。

「……侯爵? 面白い話をしているな」

「ロッソ卿。素晴らしいご意見でした。これはしっかりと王都でも議題にし、陛下を王都から出さないようにしましょう。それが一番安全ですからな」

「アペルタ、貴様……」

と、気がつけばアペルタが水を得た魚のようになって陛下を責め始めた。その様子に、怒られたばかりだが、噴き出して笑ってしまう。

コントじゃないよね?

もしコンビなら陛下アンド宰相。トリオならヘイカーシンカーズとかも良し。

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