412. 他国の情報
他国の情報
結局、まだまだ僕の作る船では沖にまで出ることができないことが分かった。現状は小型の水棲魔獣が近寄れない城壁のような使い方くらいだ。後は、初めて大型船に乗ってテンション爆上げするピスタが見られたくらいか。子供らしい喜び様にホッコリしてしまった。
それはさておき、造船研究である。完全に行き詰まってしまった。
船の開発について悩んでいると、ロッソの下へ衛兵が走ってきた。そして、小さな声で耳打ちする。
「ほう、それは……」
ロッソは報告を聞き、目を僅かに見開いてからこちらを見た。
「ヴァン子爵に商業ギルドの使者が訪ねてきたとのことです。ヴァン子爵。我々も同席するが、構わないかね?」
「あ、大丈夫ですよ。誰でしょう?」
「アポロという者らしい。知っているか?」
「おお、アポロさん! 久しぶりですね」
そんなやり取りをして、ロッソは陛下に一言伝えてから衛兵に伝令を頼んだ。すると、すぐに町の方から一台の馬車が向かってくる。
「おお、アポロさん!」
「お久しぶりです!」
アポロは手を振りながら、笑顔でこちらに向かってきた。そして、少し離れた場所で馬車を止め、ロッソを見て、そして陛下とアペルタを見て固まる。
「ほう。商業ギルドのアポロか。久方ぶりではないか」
「おや、イェリネッタ王国との戦争時以来ですな」
二人がアポロの姿を見てそんなことを言うと、アポロは恐縮した様子で一礼した。
「これは、まさか陛下がいらっしゃるとは……アペルタ様も、お元気そうで何よりです」
そんな王を相手にしているとは思えないフランクな挨拶をしつつ、アポロは全員を順番に眺めてから、最後にこちらを見る。
「これは、ちょうど良い時に来ることができたのかもしれません」
そんな言葉に、首を傾げつつ聞き返す。
「陛下が同席している方が良かったってことかな? 何かあったの?」
どうやら、新しい商売の話ではなさそうだ。アポロの口ぶりに、そんな雰囲気を感じ取った。それは僕だけではなく、ロッソや陛下、アペルタも同様である。
「面白い情報のようだな?」
陛下が低い声でそう口にすると、アポロは顎を引いて口を開いた。
「はい。商業ギルドの掴んだ情報となりますが、フィエスタ王国という海上の島にある国があるとのこと。そして、スクーデリア王国やイェリネッタ王国、ソルスティス帝国と交流が持たれていると聞いております」
「……その情報には間違いないな」
確認するような言葉にロッソが頷くと、アポロは真剣な顔で答える。
「はい。それで、フィエスタ王国は第二の調査を行ったようですが、あえて同じ場所に現れたのはスクーデリア王国とソルスティス帝国の二国だけのようです」
「……つまり、フィエスタ王国が注目するのは我が国と帝国の二つということか。両国と同盟を結ぶのであれば良いが、もしどちらかとのみ同盟を結ぶつもりなら、厄介なことになるな」
陛下は煩わしそうにそう告げる。元から予想していたことではあるが、帝国と比べられると不利な状態であることは間違いないのだ。
それに関しては商業ギルド側も同意見らしく、アポロが否定することは無かった。
「はい。各国で得た情報や、中央大陸の我がギルドの担当員による調査結果では、恐らくフィエスタ王国は資源を求めて西大陸か中央大陸への進出を考えているものと思われます」
「……なるほど。その後ろ盾が欲しいわけか。それは、かなり現実的な話だな」
「フィエスタ王国の領地がどれほどの島かは不明ですが、確かに資源の埋蔵量は大国には勝てないでしょうな。そう思うと、やはりソルスティス帝国の方が優位に感じられますが」
陛下とアペルタがそう口にすると、アポロは頷いてから、更に話を続ける。
「問題はそこです。確かに、フィエスタ王国はソルスティス帝国の中央だけでなく、北部と南部にも使者を送ったようなので、現状はソルスティス帝国に歩み寄っていると思われます」
そんな情報に、陛下とアペルタが顔を見合わせる。そして、アペルタが眉根を寄せて口を開いた。
「……我々にとって中央大陸の情報は貴重なので有り難いですが、そのような重要な情報を簡単にお話して良いのですかな?」
アペルタがそう尋ねると、アポロは困ったように笑いつつ、こちらをちらりと見た。
「我々は特定の国に肩入れするようなことはありません。なので、商売の話をしている時に、話題としてそんな話が出た、くらいに思っていただけると助かりますね」
アポロがそう言って笑っていると、陛下が片方の口の端をあげ、力強い笑みを浮かべた。
「なるほど。ならば、こちらも雑談程度の話題だが、面白い情報を教えてやろう」
陛下はそう口にしてから、僕とパナメラに目を向ける。
「先日、パナメラ伯爵とヴァン子爵が海の王と呼ばれるヒュドラの撃退に成功した」
「え!? ヒュドラを、撃退……!? それは、ソルスティス帝国でも困難な素晴らしい偉業ですよ! この話をフィエスタ王国に伝えることができれば、関心を得ることができるかも……」
驚愕するアポロに、陛下は頷いてパナメラを見た。
「もちろん、証拠もある。是非、それを確認していってもらおうか」
「証拠、ですか? もしかして、ヒュドラの鱗……!? それなら、是非とも我が商業ギルドで買い取らせてもらいたいのですが……!」
超希少な素材が手に入るかもしれないと思い、アポロは興奮した様子でそんなことを言っていた。
その後、町中に響き渡るような驚愕の声があがったのは、言うまでもない。