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414. ついにキタ!

お気楽領主の楽しい領地防衛 〜生産系魔術で名もなき村を最強の城塞都市に〜 — ncode.syosetu.com · All chapters

ついにキタ!

アポロと陛下、ロッソがソルスティス帝国とフィエスタ王国について話をしている。どうやら、商業ギルドの方針はソルスティス帝国を優先しつつ、フィエスタ王国と直接取引できるようにしたいようだ。

しかし、ソルスティス帝国がフィエスタ王国との取引を独占しようと動いているらしく、フィエスタ王国の使者には会わせてもらえていないとのこと。まだフィエスタ王国の船の秘密は帝国も手に入れていないようだが、今のままだといずれはソルスティス帝国がフィエスタ王国の造船技術を手に入れるだろう。それが商業ギルド側が分析する現状のようだ。

アポロはそういった情報を提供してくれた。そして、更に面白い物を持ってきてくれていたのだ。

「ヴァン様には以前よりご依頼していただいていた物をお渡しさせていただきます」

「そ、それは、もしや?」

アポロの言葉に顔を上げ、聞き返す。すると、アポロは馬車の幌を取り、荷台のものを見せてくれた。

「こちらが、黒色玉の材料となります。ソルスティス帝国では、淡黄石、木炭、塩鹸と呼ばれているようです。火山地帯で採れる淡黄石という石と、木炭と、塩鹸という古い時代に体を洗う為に用いていたものを混ぜ合わせることで黒色玉ができるとのことでした」

そう説明しながら、アポロは順番に木箱に分けられた素材を紹介していく。淡黄石は恐らく硫黄だろう。しかし、塩鹸はなんだ? 石鹸っぽい言い方をしているが、正直あまり綺麗な見た目はしていない。乳白色の泡が固まったようなザラザラした代物だ。黒色玉の材料と聞き、陛下達も前のめりで馬車の中身を見にきた。

「淡黄石と木炭は分かるけど、この白っぽいのって鉱石ですか?」

そう尋ねると、アポロは困ったような顔をしつつ、口を開く。

「中央大陸の一部で採れる鉱石のようですが、人工的に作る方法もあるとのことです。それが、魔獣の糞と死体を穴に入れて、枝葉を上に乗せて、そこに尿をかける必要がある、とのことで……」

「え?」

アポロの言葉に目を見開いて顔を向ける。アポロは微妙な顔で苦笑いしている。

「え? うんちと死骸? それにおしっこかけて作った塊?」

あまりの衝撃に、思わず上品が服を着て歩いているようなヴァン君が汚い単語を口にしてしまう。それは陛下達も同様だったようで、唖然とした顔で白い塊を見下ろした。

「……誰だ、そんなことを考えつくのは」

「鉱石を人の手で作り上げるという執念にも驚きましたな。最初にそれを成した人物は何を考えてそんなことをしたのか」

「誰かを呪う為か、特殊な毒でも作ろうとしたのでは?」

陛下達も信じられないものを見たような顔で塩鹸を見ている。それを見て、アポロは苦笑しつつ答えた。

「どうやら、偶然の産物のようですね。魔獣の死体を外に残しておくと、より強力な魔獣が死体を食べに集まってくるかもしれないと地面に埋めたことが切っ掛けと聞いています。ただ、この方法だと埋めてから何年もしてようやく塩鹸が作れるようで……」

「時間が掛かるってことですね。なるほど」

アポロの言葉に頷き、腕を組んで唸る。

実験したいこともあるし、火薬はいっぱい欲しい。なにせ、開発は簡単ではないのだ。機械弓を作った時以上の回数実験をしなくては兵器として運用などできないだろう。

「……これだけあったらどれくらい黒色玉を作れますか?」

そう尋ねると、アポロは真面目な顔で頷き、答えた。

「イェリネッタ王国で運用されていた物でいうと、黒色玉百個程度でしょうか。ただ、この材料は商業ギルドでも提供可能ですので、定期的に販売させてもらえたらと思っております」

「え? 本当ですか?」

アポロの言葉に、驚いて聞き返す。なにせ、ソルスティス帝国の秘術に近い代物だ。火薬の製法もそうだが、材料も簡単に手に入るとは思えなかったのだ。しかし、それにアポロは首を傾げて笑う。

「それが、お恥ずかしいことに、これまで西大陸でも塩鹸が採れる場所はあったのです。ただ、それを活用する方法を知らず、殆ど売ることもできずにいました。なので、買い取っていただけると助かります」

と、アポロは述べる。いやいや、今なら火薬の製造法と一緒に信じられないような高値で売りさばくことができるようになるだろう。そう思ったが、アポロの微笑みを見て、意図を察する。

「……それじゃあ、内緒で黒色玉作りをしてみようかな。アポロさん、ありがとう!」

そう言ってお礼を口にすると、アポロは深く頷いて答えた。

「はい。フィエスタ王国の件にしてもそうですが、たとえソルスティス帝国と戦争になってしまったとしても、私個人はスクーデリア王国を応援しております。出来る限りの助力をお約束いたしますので、ご期待ください」

アポロは恭しく一礼しながらそう告げると、黒色玉の材料を全て置いてまた旅立っていったのだった。ちなみに、材料全て格安だったが、それでも原価を考えると十分な儲けが出ているとのことだった。神様、仏様、アポロ様である。