416. 初めての黒色火薬
初めての黒色火薬
本日の投稿が遅れてしまいました…!_:(´ཀ`」 ∠):
一時間ほどしてパナメラが自ら確認に向かう。一番に見に行きたかったが、今回も陛下に止められてしまった。
「実験はパナメラ伯爵がやってくれるから、落ち着け」
「しょ、承知……」
気になり過ぎて良く分からない返事をしてしまった。それにアペルタが苦笑し、椅子に座ったまま黒色火薬のサンプル作成現場を眺める。
「イェリネッタ王国が使っていた黒色玉は確認しましたが、少量なら実験しても危険はないでしょう。こちらに持ってきてもらいましょう」
アペルタはそう言って、近衛騎士の一人に声を掛けた。すると、騎士は黒色火薬作成現場まで走っていき、パナメラに声を掛けてから何かを受け取ってくる。
「こちらです」
「うむ」
騎士は木のお皿で少量だけもらってきたみたいである。それにウキウキで着火準備を行う。
ウッドブロックでテーブルを作り、その上に皿を置いてもらった。皆が離れた状況で、パナメラを呼んで火の魔術を使ってもらう。
「 火の粉 ( エンバーズ ) 」
パナメラが人差し指と親指を擦り合わせながら一言呟くと、指先から小さな火の粉が舞った。指先ほどの小さな火の粉がひらひらと飛んでいき、テーブルの上に着地する。
その瞬間、皿の上に置いていた少量の黒色玉に引火し、大きな炎が発生する。少量だったのに、テーブル上だけでは足りないほどの炎が瞬時に発生したのだ。
これは、想像以上である。周りで護衛する騎士達からも騒めきが起こった。
「……恐ろしい威力だな」
「しかし、量産できなければ効果は見込めませんぞ」
「つまり、ソルスティス帝国はそれを属国に流せるくらい量産しているということですか……」
陛下達も火薬の威力を見て、改めて脅威として認識していたようだ。まぁ、今後は大砲の研究が戦争の勝敗を決めることになるかもしれない。
そこに船のアドバンテージも得られたら鬼に金棒だ。
「ついでだから、大砲も作ってみましょうか」
「大砲か。しかし、帝国が誇る最新兵器を独自に作るとなると、中々時間がかかりそうだな……イェリネッタ王国との戦争で手に入れた大砲も研究しているが、黒色玉がなくなってしまった為、途中で止まってしまっている」
「イェリネッタ王国では火砲と呼ばれておりましたな。一台、こちらに持ってくれば良かったですな」
陛下とアペルタが眉根を寄せてそんなことを言う。なので、その辺りは問題ないと説明した。
「あ、それは大丈夫です。仕組みはわかっているので、後は頑丈な砲身さえ作れれば何とかなると思います」
そう言ってから、材料を準備して鋼鉄の砲台と砲身を作ってみる。火薬の量が少ないので小さめだ。
砲身は長さ三メートルほどで、口径は十五センチほどにしておいた。金属の厚みは五センチから二十センチ。砲身の根本は内部で火薬が爆発するのでかなり厚くしてある。
そして、砲台は衝撃に耐えられるように地面に半分埋まった状態で作成している。これなら、お試しの砲撃を一、二回しても大丈夫だろう。
「お、おぉ……これはまた、王都の研究者達が腰を抜かすような物を……」
「見事な大砲ですが、実用に問題は?」
驚きを通り越して呆れた顔になる陛下と、出来上がった物がどうなのか気になるアペルタ。その様子を見て、出来たばかりの大砲の砲身を手のひらでぺちぺち叩いた。
「試してみましょうか」
そう告げると、ロッソが不安そうな顔になる。
「……戦争の報告は受けているが、大砲は魔術師の魔術と同等以上の脅威だと聞いた。海に向かって撃ったとしても、下手をしたらせっかく作った船が壊れてしまうのではないか?」
「いや、恐らく大丈夫でしょう。それに、壊れても直せば良いので」
そう告げると、ロッソは噴き出すように笑い、肩を竦める。
「はっはっは! ヴァン卿だからこそ言える言葉だな」
ロッソは笑いながらそう言って、陛下を見る。
「余計な口出しをいたしました。申し訳ありません」
「うむ。気にするでない。それでは、我が国で最初の大砲がどのようなものか、見てみるとしようか。ヴァン子爵、頼むぞ」
陛下のその言葉に頷き、頷きつつ作ったばかりの大砲を眺めた。そういえば、見本で作った物を除けば、これがスクーデリア王国で最初の大砲になるわけだ。感慨深いものを感じつつ、大砲の上部を確認した。大砲の上部には内部に通じる導火線が設置してあり、ぴょんと上に飛び出ていてなんだか可愛らしい。
「……まぁ、失敗は成功の父とか母とか言うからね」
少し緊張しつつ、自己暗示のようにそう呟いてから、パナメラに声を掛ける。
「ごほん……それでは、パナメラさん。お願いします!」
「そこの紐の先に火を点ければ良いのか?」
「その通りです!」
そう答えると、パナメラは笑みを浮かべて口を開いた。
「了解した」
パナメラは返事をして、火の魔術を発動させる。