418. 【別視点】フィエスタ王国内
【別視点】フィエスタ王国内
【トラン】
ソルスティス帝国の情報を収集する為、中央大陸と呼ばれる大陸の端を調査してからフィエスタ王国へと戻ってきた。謁見の間で、国王であるトーラス・エクス・カージ・フィエスタを見上げる。五十代後半とは思えない、見事な筋肉を誇る男だ。白髪交じりの髪を後ろに撫でつけ、豊かな髭を蓄えている。
そして、その斜め前にいる身長の高い男は弟のドーガ・エクス・カージ・フィエスタで、トーラスに比べて細身だが、身長が高く、鋭い目をしていた。
「……このように、ソルスティス帝国の北部。今回は西大陸に近い地域へ到着しましたが、そこはもとはボネビル王国という別の国だったようです。今ではソルスティス帝国の一部となり、ボネビル地方という扱いとなっていました」
地図を用いて調査結果を報告すると、二人は真剣な顔で頷き、口を開く。
「ボネビル地方、か……国として存続すらさせてもらえなかったということだな」
トーラスがそう口にすると、ドーガが眉根を寄せて唸った。
「……それで、暮らしぶりはどうなのだ? ソルスティス帝国の中心部はとても栄えていたとのことだったが、市民の暮らしぶりは?」
「栄えています。それに、ある程度の自治を認め、それまでの文化、教育、言語なども大半は認めているとのことです。そのお陰でしょうか。国は失われても、市民は帝国に反感を持ってはいなさそうでしたが……」
ドーガの質問に私見を交えて答えると、二人は面白くなさそうに息を吐いた。
「祖国が失われても、生活が変わらなければ良い、か」
「年数が経てば、そのようなものかもしれんな」
王家の血筋を重要視している二人にとって、帝国の一部になってしまった王国の在り方が面白くないようだった。それに関しては軽はずみなことも言えず、黙って頷くしかない。
静かに言葉を待っていると、ドーガが腕を組んで口を開いた。
「それで、中央大陸と西大陸を繋ぐ海峡についてはどうだった」
「はい。二つを繋ぐ海峡は驚くほど近く、深さもそれほどないということでした。恐らくですが、二つの大陸は地続きだったのでしょう。地形の変化によって、二つの大陸の間に海ができたと思われます」
「なるほどな。大型の魔獣が現れないから海峡を往来できるということか。ならば、そのような海峡があっても我らの優位性は損なわれんな」
ドーガは報告を聞き、ホッと息を吐いた。
大陸間を繋ぐ船の存在。その技術に関してはフィエスタ王国としても注目していた。トーラスやドーガも顔には出していなかったが、その造船技術が気になっていたのだろう。
他の艦隊長の報告を聞いて再認識することになったが、我が国の国力はソルスティス帝国やスクーデリア王国に比べると劣っていると認めざるを得ない。だからこそ、我がフィエスタ王国が誇る造船技術は国の生命線だと言っても過言ではないのだ。
二人の表情が少し柔らかくなったのを見計らい、自分なりの意見を口にする。
「……中央大陸と西大陸。両方を見てきた結果ですが、圧倒的な武力で周囲を呑み込んでいくソルスティス帝国に対して、まだスクーデリア王国の方が柔らかい統治をしていると思われます。自ら攻撃を仕掛けてきたイェリネッタ王国には重税を課しましたが、他の国は同盟国が殆どで、一部戦争後に属国にされた国があるくらいでしょうか」
「つまり、自国に攻め込んできた国には容赦しないということか」
「いや、戦争の発端はスクーデリア王国側かもしれん。それに、属国の扱いはどうなのだ」
「スクーデリア王国の属国の扱いに関しては調査不足で……今回の調査で西大陸の南部に行った者がおるかと思いますが、そちらの報告を待つ方がよろしいかと」
そう答えると、二人は揃って考え込んだ。ソルスティス帝国の強大さを知ると共に、その危険性も知ってるからこその沈黙だ。つまり、ソルスティス帝国ではなく、スクーデリア王国との同盟も選択肢として残っているということだろう。
そう思い、どうにかスクーデリア王国との同盟の話が進まないかと頭を巡らせる。
そんな時、謁見の間に新たな人物が現れた。ノックを数回程度して扉を開けたのは、評議会の議員であるダバド・トーライだった。迫力のある隻眼の男だ。
「ダバド。今は帰還した艦隊長の話を聞いている最中なのだぞ」
ドーガが眉根を寄せてそう告げると、ダバドは険しい顔で頭を下げた。
「失礼いたしました。しかし、急ぎの報告がありましたので」
「……なんだ?」
ダバドの言葉に何かを感じとったのか、トーラスが低い声で尋ねる。すると、ダバドは顎を引いて静かに語った。
「……モンデオが、ソルスティス帝国と同盟について話し合うと約束していたようです。帝国からは評議会議員や艦隊長と同等の地位である西部委任統治者と将軍が参加し、同盟を結ぶ為の準備を進めているということでした」