プロローグ:退役。
プロローグ:退役。
ここ、オキノの町は南方で暖かい。淡水だが、恐らくある程度の深さが有る巨大な湖のお陰だ。何せ、海と見間違えるほどの広さだ。その為このランギーニ領では近年まで氷を見たことが無い人間も居た。イネスからの手紙では王都は未だ雪が残っているとの話だ。しかし、この手紙の日付は20日前なのでもう解けているかもしれない。未だ軍務中の俺は南の大湖の畔で単身赴任のやもめ生活だ。(愛人は居る。)今日は朝から天気が良い。俺は朝から書類仕事を片付けている、そんな 私室 ( オフィス ) に珍しい来客が有った。カールとジョンだ。あの”ストラポルタ周辺の戦い”が終わり測量を終え。王都に戻り測量地図の完成を見る前に俺の魔法中隊は解散した。残務作業が製図仕事が主だったのと、優秀な魔法使い達を図面作成で時間を消費するのを軍が許さなかった。各将軍が実戦経験の多い士官を手元に欲しがったのが理由だ。士官、下士官の引き抜きは褒められたもので無いが…。魔法学園出の兵が多いので、出身地の貴族からや、血縁での勧誘では仕方がない。お陰で折角、俺の育てた兵と下士官の殆どが取り上げられてしまった…orz。解散した中隊の面々はその後、時々仕事で顔を合わせた。「よう。オットー、元気そうだな。」敬礼の後、握手を交わす。カール少佐は相変わらずだ。「オットー変わり…無いな。」ジョン大尉とも握手を交わす。ジョン…俺の頭を見ながら話すな。両人とも、もう既に、襟の紋章が王国軍でない事を示している。「退役したのか?」「ああ、オットーその為の挨拶周り中だ。」胸を張るカール、胸に付いた勲章の数が歴戦の少佐であった示している。苦笑いのジョン退役大尉。「もっと早く退役する筈だったんだが…。」ジョンが呆れた声だ、以前にボヤいていた。カールが意外と出世するので辞めるタイミングを無くしたのだ。実際、街道の復旧で王国軍は忙しかった。怪我の治癒できる魔法使いは行軍に必須だ。平時でない時は 飴 ( 階級と勲章 ) を用意して軍も引き止める。戦争はしていなかったが…。過酷な自然環境が敵だった。「そうか…。寂しくなるな。」ソレも終わりが見えた…。来年の冬はもっと暖かい。「正直。ココまで出世出来るとは思わなかった。少佐だぞ?門閥貴族で無いのに現役少佐での退役は大出世だ。年金も違う。」「カール、一応俺達は英雄なんだ。オットー感謝している。」「ジョンそう言うな…。俺達で掴んだ戦果だ。」「フェルッポが一番の大出世だがな…。」カールが溜息を付く。「ああそうだなカール、まさか、フェルッポがランギーニ伯に入り婿とは…。」編成上は俺の部下のフェルッポは結婚しても未だ軍に居る。しかし、住処はこの駐屯地を出ている。嫁さんの 実家 ( 領主の屋敷 ) からの通いだ、 オキノ ( この ) 駐屯地にある工兵大隊の大隊長で大尉だ。専門は築城で橋梁建設と堤防構築が得意だ。完全に 土木建築屋 ( ドボッキー ) である。あの、縦巻き髪の嫌味女史リリー・ランギーニと何処かで知り合って結婚するとは思わなかった。まあ、ランギーニ伯に男子は居ないので、フェルッポが次期ランギーニ伯で家同士の話は付いているという話だ。フェンデリック家の家柄共に問題ない。軍で、最低でも中佐までは約束されている。ミソッカスの中で一番の大出世だ。「マルコとは王都で合ってきた。もう子供も生まれた。」「そうか。エミリーは元気か?産まれたのは男だと聞いたが」「ああ、男の子だ、元気そうだ。」「俺は南に居たからマルコとエミリーの結婚式に出られなかった…。 妻達 ( マルカとベスタ ) が代理で出たが。アレックスも来たと言ってたな。」あいつら、いつの間にか包囲された 城の中 ( ストラポルタ ) で良い感じに成ってやがった!まあ、別に怒らないが…。(コ゛コ゛コ゛コ゛コ゛コ゛コ゛コ゛)「アレックスは結婚しなさそうだ。師団長の娘の…。良い感じに成ってたが。」「カール。アニスだ、アニス・アルヴィナ。近衛の上層部だ。特定の貴族と血縁関係は避ける相手だ。」なるほど…。確か赤毛のヤラレキャラだ。取り合えず祝う。モゲロ、ハゲ益せ。「ジョン、そうだが、アレックスは庶子の子だ。乱暴だが平民と言っても通じるだろ。」高機動型アレックスにお似合いだな…。きっと子供は逃げ足の速い子になる、メタルなんとか並みに。「ソレなんだが、オットー。ワイヤードは由緒ある貴族で元々剣士の家系だ。王国でも随一の剣士アレックス・ワイヤードを アレックスの親兄弟 ( ワイヤード家 ) は手放す気が無い。王太子の王子に剣を教える様に働きかけている。」ジョンが変わりに答える。ややこしい事に成ってるなアレックス。アレックスの家は折角剣士が出たのにアルヴィナ家に取られるのが嫌な様子だ。その為、いずれ国王になる王子の剣の師匠と言う名誉を欲しがっているのだ。アレックスなら王子におかしなコトを吹き込みそうだ。師が アレックス ( アレ ) なら弟子はロクデナシ王子に成るだろう。「オットー、もう直ぐ春だ。この長い冬も終わる。俺達は親父の跡を継ぐ事になった。国王陛下も交代するからな。」カールが誇らし毛に言う。「そうか…。国王陛下も。」そのウワサは随分と前から有った。健康的な問題では無く、宮中でのウワサでは”王太子が居るし。長いからもう良いだろ?隠居させろ孫と遊ぶ。(意訳)”とか”ワシ、引退したら冬は南で釣りをして夏は北で猟して過ごす。(意訳)”的な事を言っている。ソレに合わせて各貴族も世代交代の話が出ている。「帰ったら 俺 ( カール ) とジョンは結婚式だオットーは未だ ココ ( オキノ ) に居るんだろ?是非来てくれ。親父も喜ぶ。」「ああ、話は聞いている、酒を飲みつくしに行ってやる。」ジョンとカールは未だ合った事は無いが、親が決めた相手と結婚することに成っている。帝国軍の侵攻で最後まで生きのこったカールとジョンの 実家 ( 家臣団 ) は周囲の村々の生き残りを集めて広大な土地を受領した。戦いの後、長い冬が始まる前に大量の帝国兵捕虜で広大な荒野を開拓した。帝国軍捕虜は3万8000人を越えた。大の大人が4万弱、食べさせるのも大変だったが。街道の普請や荒野と森の開拓。水路の整備で長い冬を乗り切る為、必要な農地面積の目標を十分に達成した。本格的に冬が始まると 捕虜交換 ( ボーナスステージ ) で俺達の年金貯蓄が天文学的な数字に跳ね上がった。結局、冬が終わるまでに捕虜の殆どは帝国に帰ったが…。「そうか。酒は沢山仕込んで在るから安心しろ。麦も王都に送る量も減らせと言って来ている。」流石カールの実家。全て無くなった村々の面倒を見たのだ。農地の広さと 配下 ( 同盟 ) の騎士だけなら門閥貴族に負けないだろう。去年の秋は王都周辺でも麦が収穫できたと言う吉報だ。確実に冬は終わりに近づいている。その為南方の麦の輸送量を減らせとの通達だ。軍の輸送計画もソレに準じている。「そうか…。さびしい話だな。」「ああ。麦の値段が落ちたら王都の連中は喜ぶだろうが。どうすべきか…。」「休耕にして牧草にしろ。家畜を育てろ。何処も人口が増えている、食料は必要だ。衣服もな。」「そうなのか?オットー。」「おいおい、カール。税収統計数字見てないのか?」税収の人頭税は上がっている。何せ冬は家に閉じ篭りだ、春を待つまでやる事は無い。男女が居れば秋には子供が増える。やったね翔ちゃん兄弟が増えるよ!「いや、見ていない。」見ろよ新米領主。「カール、目を通せ。数字の増減時は大概裏に何かが在る。領主の務めだ。」カールお前はコレから領地運営で書類と戦うことになるのだ…。「解ったよ、オットー。」「流石賢者だな。」おう、俺は何時でも賢者モードだ…。ベッドの上以外でもな。「俺も年内に退役して領地をもらう。放棄される予定のビゴーと言う村が貰える。その周りの廃村と森だ。」「おお。そうか!」喜ぶカール。同じ領主同士になる。俺の領地は名前すら決まって無いが”ビゴーニュ”にしようと思っている。「ビゴー?何処だ?」対照的に眉を潜めるジョン。「王都の西北西だ…。」果たして主人公は居るのだろうか?居たら悪魔の討伐に使ってやる。「凄いな王都の隣か?」素直に驚くカール。「カール、イヤ待て…。何も無い場所なのでは?森の中だぞ」ジョンは相変わらず慎重だ。「ああ、そうだ。今回の長い冬で北方の多くの村が放棄された、人と領主は居るが多くが王都に避難していて転置を申請している者が多い。かなり厳しい環境だったからな。」「そう聞いてる…。餓死者は出なかった様子だが…。」「ああ、餓死者が出る前に放棄した。国王も許可している。恐らく今は荒野だ。」俺は荒野を目指すのだ。「そんな場所で良いのか?オットー。」「そうだな…。どうせ次の長い冬まで60年もある。ソレまでに開拓するさ。」寒さに勝つる方法はある、ソレまでにビニールハウスを開発しよう。「そうなのか?だが、一から全て作ることに成るぞ。」「ああ。そうだ。先ずは領民を募る。国王からも開拓した分全て俺の領地にして良いとの言質も取った。」俺に取って一番Eヤツだ。何せ森の中には悪魔のダンジョンが在る。「帝国領までか?」カールもウキウキ顔だ。コイツ領主の仕事の重責を未だ体験してない様子だ。「さあな。何せ国境は決まっていない、うっかり帝国まで開拓するかもしれん。フハハハハ。冗談だが。」「オットーならやりそうだな。」ジョンはあきれ顔だ。「何か有ったら言ってくれ。俺も兵を出す。」はい、 新領主 ( カール ) の言質取りました。「ソレはありがたい。しかし帝国と小競合いが出来るのは俺の息子の世代だ。」富国強兵政策で産めよ増やせよ大地を攻めよ…。「オットーは息子は多いだろう。誰を継がせる心算だ?」「未だ決めて無い。現国王の考えは俺を帝国の防壁に使う心算だ。嫁と息子達は王都に残す約束だ。恐らく次の次の国王と仲の良い子に継がせる。」「妻子は人質なのか?」「酷い扱いだな…。オットー」途端にドン引く地方貴族。王侯貴族では良くある話だ。「そうでもない。子供達は王宮に上がれる様に成っている。新国王の産まれたばかりの王子の取り巻きとして、悪魔で次世代の融和策だな。」俺は沢山居る子供達の為に、所領を広く切り取らなくては成らない。子供達に未来を託す為だ、最高の環境を用意してやる。帝国は目障りだが、相手も長い冬からの復旧でしばらく大人しいハズだ。コレRTA内政ゲーム始まります。「話が随分と進んでいるな…。」「おう、新領地を受領した暁には開拓団の募集を掛ける。カールの所にも行くかも知れん。頑丈な男を沢山寄越してくれ。」「おいおい、頑丈な男は…。無理だが三男四男なら沢山居る…。だが頑丈になるのは10年先だ。沢山喰わせて鍛えないと。」ジョンが言う。流石次男。「そうだ、そう言う事で。何だかんだ言って食料の需要は在るが…。麦ばかりでは駄目なのだ。豆や蕎麦。芋。市場価格を良く見て作付けしろ。手間が掛かった物は高く売れる。酒や飴に加工しても良い。」「ああ、何時かの領主は物の値段を把握しろと言う話だろ?」納得する 新領主 ( カール ) 。「そうだ、カール。学園では習わない事だが大事なことだ。」「そろそろ時間だ。他にも回る予定だ。」ジョンが終わりを告げる。「そうか…結婚式楽しみにしている。」別れの握手だ。この先、次の握手が何時か解らない…。と言う宣言だ。もう既に、友とは別の道を歩んでいる。「ああ、嫁さん達を紹介するよ…。美人だと言う話だ。」「そうだな。俺の嫁さん達も美人だそうだ。」困った顔のカールに何も感じないジョン。「達?」「そうだ。一応俺は郷土防衛の英雄で、大貴族の新領主だそうだ。親父に任せたら。断りきれなかったそうだ。」微妙な顔のカールが言う。続けるジョン。「帝国の侵攻で多くの弱小貴族が滅亡した。偶然、王都やストラポルタ、 南の港 ( オキノ ) に居た貴族の子弟は生き残ったが行く先が無い。」無論、貴族にはその様な状況下での生きのこり戦略は張り巡らされている。だが、 間 ( タイミング ) の悪いヤツは何処にでも居る。戦後、路頭に迷った貴族の子弟も居るだろう。「なるほど…。子が産まれたら元領地を回復させて家を興すと言う約束か?」くっ!イケメン金持ちはハーレムこれ異世界の常識。「そうだ…。実際。帝国兵捕虜での開墾は元の村、領地関係なく手当たり次第に開拓した…。飛び地も多い。」何故か無視される傾向が多いが、 村の結束 ( 自治体 ) が強い地元は自然災害でも、この先生きのこる場合が多い。だが、領主が死んで。村人だけ生のこっても運営は出来ない。汎人は村単位だけでは生活に必要な物を作れないのだ。領主の 家臣 ( 官僚団 ) が集団を纏める事で生活圏を作って補っている。「今は 俺の実家 ( バージェル ) に呑み込まれた旧貴族の領地も有る。家が無くなり流民に成った人々も吸収した。方々から後で返せと言われたが…。返してもそいつ等は耕作する民も土地を維持できる家臣団も居ない。」領地が壊滅して生きのこった貴族の子弟も…。翔ちゃんの世界でもそうだ。但し、あの世界は過酷杉だ…。原発災害やスーパー台風なぞ、この世界では 押さえ込む事 ( アンダーコントロール ) なんて不可能だろう。普通なら国が無くなる規模の大災害だ…。あの異世界チート人類は普通に十数年で再建する…。この世界の汎人では不可能だ。あの世界の流行り病程度で一瞬で村や町が壊滅する。幸いこの世界では、移動に時間が掛かるので疫病はその地域が全滅して終わるのでOKだ。今回の長い冬は 完全に制御下 ( コラテラルダメージ ) に抑えた、想定内だ。崩壊した村組織や貴族が国王に”土地を返せ!”と訴えても食料増産が優先でそんな妄言、鼻で笑われるだろう。「黙らせる為に義理の兄弟だらけだ…。全部面倒を見ることになる。」「しばらくは俺の年金もソレで消えるな…。」ため息を合わせる乳タイプ兄弟。国王から鼻で笑われたので手を変えてきたのか…。腹上死の脂肪フラグが立っている乳タイプ兄弟。 女に刺される ( ナイスボート ) フラグだ。「そうか…実は言ってなかったが、あの学園で渡した強化の指輪と鉄片だが…。」仕方がないので秘密を告白しよう。「何か在るのか?」「アレは家法だ…。」「別の使い方で…。何度でも女が抱ける。絶倫になる使い方がある。」「オットーそんな物だったのか?」「酷いな、いや、すばらしい家宝だ。」いやな顔する 父 ( チチ ) タイプ兄弟。そんな顔するなよ…。お父さん頑張ちゃわないと。贈り物はお嫁さんに付ける 安産のお札 ( 感度3000倍紋章 ) も用意しよう。夫婦仲が良ければ他の義兄弟も黙るだろう。100枚位送っとくか?「それじゃあなオットー日時が決まったら手紙を出す。」「皆に戦争の話をせがまれると思う。まあ、覚悟していてくれ。悪いが、たぶん 愛人 ( 未亡人 ) もねじ込まれるぞ。」なるほど、弱小貴族の同盟活動が激しいのか。異世界ハーレムは切実だな。「ああ、覚悟しておくさ。良い知らせを待っている。」旧友と別れ背中を見送る。もうお互い領主だ。昔の様に馬鹿な話を言い合う事も出来ない立場だ。青春は過ぎ去った、もう。学生には戻れない…。大人毛無いがもう大人なのだ。(光るひたい)お互いの肩を叩きあったのは遠い過去だ。俺の背負った物の重さを考え進むしかない。結局、国土を守り大量の敵兵の捕虜を取った結果。ロジーナ王国とカルロス帝国は国交を結んだ。捕虜交換と戦後処理の問題だ。未だ仮想敵国同士だが。帝国は王国を国と認め大使が王都に派遣された。帝国内の情勢は不安定で停戦条約は有効だ。王国が受取った戦時賠償代わりの 身代金 ( 金 ) は 食料と資源 ( 物 ) だった。その為、帝国との間に多くの商業活動が行われた。商業活動は人同士の信用の積み重ねだ。帝国の外征は無いという情勢判断と大冬を乗り切ったことで、王国軍は緩やかな軍縮と改変を行っている。人類は過酷な環境を耐え抜いたのだ、コレから人類は繁栄期に入る。国土を豊かにする時だ。経済活動と国土の開発だ。影を落とす悪魔の軍団に対抗する手段が必要だ。 魔王 ( 悪魔 ) を倒す為に独自に領民軍を編成するのだ。王国に置ける 新領地 ( 辺境伯 ) を背負う俺の前途は明るい。ただし…、心残りがある。マルカ、すまん。君の復讐を履行するのが難しい状況だ。だが、俺は諦める気はない。俺は必ず皇帝カルロス13世の首を取って見せる。それが君と俺との 契約 ( ゲーム ) なのだ。