6話
6話
「ん」 紙袋を木野崎に向かって突き出した。「え!?今度は琉人から!?」 赤城の戸惑いのような野次が飛ぶ。「なに?コレ」 木野崎は一応、聞いてくる。「カラー」「カラー!?」 またしても反応するのは木野崎ではなく赤城である。「なんで琉人はそんなもん光輝にあげんの!?」 赤城、こいつはいつも痛いところを突いてくる。 俺だけが木野崎に縛られてるんじゃ物足りなくて、俺も木野崎に首輪を付けることにした。 互いが互いを縛れるように。他の奴らが木野崎に近付かないように。 それが俺の心の内だが、そうとは言えるわけもなく。「俺のカラー選んでくれたお礼だよ」 涼華にした説明と同じことを言う。「見たい。今付けていいか?」 聞く木野崎に、俺はチェーンに通してネックレスにした鍵を見せた。「いいけど、鍵は俺が持ってるから、付けたら外せねーぞ」「良い」 木野崎は紙袋からカラーを取り出し、まじまじと見つめる。「俺のイメージって、こんな感じ?」「似合ってんじゃん」 涼華が答える。 ラインが入った円のデザイン。運動神経のいい、木野崎に合ったスポーティなデザインだ。 カラーを嵌めた木野崎が、首とカラーの間に指を通しながら「思ったより重いな」と感想を口にする。「えーっ、てかさーっ。そしたらこん中でカラー付けてないの、俺だけじゃんっ」 赤城の言う通り。 普段からカラーを付けることにした涼華に合わせて、うららはモデルの時にサンプルで貰ったのだというレース柄のカラーを付けてきていた。 俺は木野崎以外カラーが外せないので付けっぱなし。 木野崎も、俺が贈ったカラーを付ければ、この5人の中じゃうなじを晒して生活しているのは赤城のみとなる。「寂しい……俺も今日女の子とのデートでカラー買いに行くわ」「別に無理して、一緒にせんでも」 止める俺に、「一緒が良いの!」と叫ぶ赤城。「てか、琉人と光輝はなんでお互いの鍵持ってんの?普通鍵は自分で持っとくんじゃないの?」 赤城が痛い質問をする。 俺と木野崎の間じゃ、お互いでしか鍵を開けられないカラーが首輪の役割を果たしているが、普通は、家の引き出しにでも鍵を大事に持っておくもんである。「……なんかあった時に自分の首に鍵ぶら下がってちゃカラー外されて首噛まれて終いだろうが」 木野崎がもっともらしいことを言う。「あー……まぁそうか」 それでスッと騙されてくれるあたりが赤城である。「じゃあ俺もカラー買ったら琉人か光輝に鍵預けるわ」「オメーは自分で持っとけ」「なんで!?」 木野崎がぴしゃりと言い放った。「まぁ、カラーは付けとくに越したことねーよな」 呟いた木野崎に、うららが反応した。「……確かに。私みたいなのは、特に何が起こるかわからなくて……」「どうした。なんかあったか」 聞く赤城に、うららが恥ずかしそうに目を伏せた。「……私、高校生にもなって、まだヒートが来ないの。病院にも行ったけど、大人になるまでヒートが来ない人もいるから大丈夫だって言われて……いつどこでヒートになるかわからないから、怖くて……」 確かに高校に入学してからというもの、うららが休暇制度を使っているところを見たことが無い。 赤城と涼華はヒートで休んでいるが、うららだけは休んでいるところを見たことが無いのだ。 聞いたことはあれど見たこともなかった特殊体質のΩが、こんなところに居るとは。芸能人で、ヒートがまだ来なくて、ということはヒートに任せてセックスなんかもしていないであろう清純なΩ。属性盛り盛りである。そんな奴、ほんとに存在すんのかよ。いや、ここに存在した。「つってもなー。ヒートって、毎回来るようになりゃ感覚で分かるようになるけど、初ヒートはどんなもんか感覚じゃわかんねーよ」「だよなー。俺なんか中一の時教室でいきなりなって最悪だったわ。まぁ教室全員Ωだから別に良いんだけど」 木野崎と赤城がうららに話してみせる。「アーシは昔αのカレシと一緒の時に初ヒートなったからラット騒ぎになってちょっとした事件になった」 涼華も話す。そう、初ヒートが来た時にαと一緒に居たりなんかしたら、抑制剤を飲んでいても何が起こるかわからないのである。「俺は……Ωの子とセックスしてる途中に初ヒートなったから随分盛り上がったな。無理させたけど」「お前は昔からアホだったんだな」 俺の回想に木野崎がツッコむ。「なんか……身体がゾクゾクするのが収まらなくなったりとか、熱っぽいとか、下っ腹痛てぇとか、そういうので大体わかるようになるけど……」 木野崎の言葉に、うららが今一つピンと来ていない表情をする。「てか、仕事は?芸能人って、Ωも多いけどαも多いっしょ。αと一緒んときに初ヒートなんてなったら大惨事じゃん」「うん……そうなの。現場に迷惑かけるわけにはいかないし……」 涼華の心配に、うららが項垂れる。「初めてのヒートは、誰でもわかんねぇからな。高校卒業まではバースごとにクラス別れてるし、それまでにヒート来ればいいんじゃね?」 そういう俺に、うららはおずおずと頷いた。「だ、だよね。高校卒業までには、来るかもしれないし、心配しすぎだよね」「まぁ、仕事場じゃしゃーねーけど、学校じゃなんかあっても俺らが一緒に居るからさ」 赤城がカラッと明るくフォローした。