LNCrawler

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青と空と君と。 — fujossy.jp · All chapters

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6限もホームルームも終わり、帰り支度をしていると後ろから八雲に声をかけられた。「拓矢、今日どうする?」「どうするって?」「今日木曜だろ、どっか寄りたいとこあるかって話だよ」「ああ!そっか!」毎週木曜日の放課後は先生たちの会議があるらしく、生徒が校内に残ることが禁止されていた。そのため毎週木曜日は俺も八雲も部活がない。まぁ八雲も木曜日は部活がないというか、八雲はバスケ部のほぼ幽霊部員みたいなものなので、もともと火曜日と金曜日以外は練習に参加していなかった。俺は比較的真面目なので部活のある日はちゃんと参加している。スポーツ強豪校というわけではないので、朝練とかは存在せず、放課後にみんなで楽しく和気藹々と部活動を楽しんでいる、といった感じだ。八雲のプレー姿は本当にかっこいいが、俺自身も部活があるので試合を見に行けたことはほとんどない。練習に真面目に参加してるわけではないのに、かっこいいなんて反則だろう、と俺は常々思っている。そんなわけで、俺も八雲もフリーな木曜日はどこかへ寄り道して帰る、なんてのが毎週の習慣になっていた。俺と八雲の二人だけの習慣、だったんだ。「あー、俺は別に特に行きたいところないからどこでもいいよ!」「お、マジで?なんか乃来がクレープ食べたいらしいから行こうぜ。俺甘いのダメだけど、拓矢は大好きじゃん?」「え?」まるで当たり前の如くあがったその名前に、俺はシンプルに動揺してしまった。八雲と乃来ちゃんは付き合っているのだから、ごくごく自然で当たり前のことなのだ。でも、俺は今日も八雲と二人だと思い込んでいたから。だって、八雲と二人きりだったらギリギリ耐えらえるって思ったから。「どうした?クレープの気分じゃないとか?」「あ、や、いや、そうじゃなくて!俺がいたらお邪魔なんじゃないかなー?って思ってさ!」「木曜は拓矢と遊ぶ日なんだから、拓矢はいていいんだよ。むしろ俺の方がごめんな、乃来がついて行きたいって聞かなくてさ」「いいよいいよ!俺が邪魔じゃないんならそれで!」いや、邪魔だ。俺じゃなくて、乃来ちゃんが。一瞬でもそう思ってしまった自分が憎らしいことこの上なかった。俺ってこんなに性格が悪かったのだろうか、それとも恋愛は人の性格まで変えてしまうのだろうか。大丈夫、大丈夫だ、これでいいんだ、これが当然なんだわかっていたじゃないかと言い聞かせながら、グッと涙を飲み込んだ。八雲に彼女ができて、邪魔なのは俺なんだから、受け入れなきゃいけない。八雲の“普通“の友達にならなきゃいけない。泣き言ばかり言っていられないのだ、俺は出雲を好きになるんだ。正門前で乃来ちゃんと合流し、クレープ屋さんへの道のりを歩く。当然のことながら八雲の隣には俺、ではなく乃来ちゃんがいる。楽しそうに会話している二人のことがどこか遠く感じたし、会話も耳がシャットアウトしているのか全然入ってこない。気持ちも沈み切っている俺は二人から二、三歩下がってとぼとぼと歩いていた。足取りが嫌に重くなって、二人との距離がどんどんと開いていった。一緒にいたくない、一緒にいるところを見たくない。楽しそうな二人とは裏腹に俺の気持ちはドロドロと暗く黒い感情に塗れていった。「拓矢?」一人離れて歩く俺を不審に思ったのだろう、前を歩いていた八雲が立ち止まり俺のことを呼んだ。「何?」「何じゃねーだろ、なんでそんな距離あけて歩いてんだよ、もっと近く歩けって」「あ、うん、ごめん、ぼーっとしてた」「いや、別にいいけど、なんかあったのか?」二人の元に駆け寄ると、二人は俺に心配そうな顔を向けた。あぁ、二人は優しいな、俺の心の中はこんなにドロドロと醜い感情で溢れてるというのに。今日はもう二人といるべきじゃない、いたら余計なことを口走ってしまいそうだ。「徹夜したせいかな、なんか腹痛くなってきたから、今日はクレープ遠慮しとくわ!」「だ、大丈夫ですか?」「大丈夫大丈夫!大したことないけど、ここにクレープはキツいかな〜って思ってさ!」「送っていくか?」「ば、馬鹿!彼女置いて幼なじみ送ってくやつがあるかよ!」口ではそんなことを言いながら、内心は送って欲しい、彼女と二人にならないで欲しい、そう思っていた。あぁ、二人といるとどんどん自分の性格の悪い部分が見えてきてしまう。「本当に大丈夫か?送ってくぞ?」「帰って寝れば平気だから大丈夫!じゃあな!」「ん、わかった、また明日な」「また明日ですー!」笑顔で手を振ってくれる二人に手をふり返し、家まで全力で走った。腹が痛いとか言ってたのに全力疾走してしまって、嘘がバレていないだろうか。いや、そこまで俺のこと気にしていないか。色んなことを考えながら走っていたからか、家までの距離をやけに長く感じた。ドアを開け家の中へと駆け込む、ドアが大きな音を立ててしまったがそんなことはお構いなしで部屋へと続く階段をバタバタと上がる。「あら、拓矢今日早いのね?いつもは八雲くんと一緒なのに」「腹痛いから今日は帰ってきたの!」リビングから顔を出しながら声をかけてきた母親に対して、適当に返事をして部屋に駆け込んだ。ごめん母さん、適当な返事して、でも今の俺にはそんな余裕が一切ないのだ。勢いよく部屋へ駆け込み、大きな音を立ててドアを閉めて鍵をかける。母さんの静かにドアを閉めろという文句に返事をする余裕もなく、ドアにもたれ掛かり、そのままズルズルとしゃがみ込んだ。しゃがみ込むと同時に涙がぶわりと溢れ出した。一体何度泣けば気が済み、この涙は枯れるのだろうか。いっそ、この涙と一緒に八雲への気持ちも流れ出てしまえばどんなに楽だろうか。その日は夕飯を食べる気になれず、夕飯だと呼びに来た母さんに今日はいらないと伝えると、もっと早く言いなさいよ、と怒られた。本当に申し訳ない、明日の朝にでも食うから許してくれ。体調が悪いのかと心配されたけど、泣いているのだけはバレたくなくてなんでもないと精一杯明るい声で返事をした。その夜、出雲から『明日からよろしくね』と笑顔のマークのついたメッセージが届いた。本人はきっと真顔でこれを送ってるんだろうなぁと思うと少しだけおかしかった。俺は出雲からのメッセージを恋人としてよろしく、という風に解釈したので『こちらこそ』と同じく笑顔のマークをつけて返事をした。そこから特段やり取りが盛り上がるようなこともなく、なんとも出雲らしいメッセージだな、と思いながら出雲に感謝した。ほんの少しだけ八雲のことを忘れられたからだ。これからは、もっとちゃんとこの気持ちに蓋をして、出雲ことを意識しないといけないのだから、俺はもう泣いている場合ではないのだ。