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1. 喪われたモノ

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喪われたモノ

あの離の剣が任務に失敗した

瞬く間に十翼内に広まったこの噂

厳密にいうと、応援にいった別の剣がモノノ怪を斬ったため目的ははたされたのだが、それよりも深刻な問題がおきてしまった。

離がモノノ怪に喰われたという

今回のモノノ怪は離とは相性が悪かった

最初のうちは何時もの様に三様を揃えるための証言を集めており、そこから形が判り、真も判った。後は理がもう少しで揃う所で

モノノ怪が暴走した。

最初のうちは御札でなんとか抑えていたが、周りの人や物、御札まで取り込まれてしまい、神儀の力をもっても祓えるかという所まできてしまったのだ

神儀の力で応援を呼べたが、現場に着いた八卦が見たものは、半分以上モノノ怪に取り込まれた離の姿だった。

急いで引き剥がしたものの、息はあるが離の瞳には光はなく、呼び掛けにも反応がない

3振りで何とか祓えたが、離が失敗したというのは他の薬売りにとってもかなりショックなことだった十翼に戻り傷等は癒えたが、喰われた心は戻らない

定期的に八卦のみんながお見舞いにくるが何も変わらず時間だけが過ぎて行く

ここで不思議なのが、モノノ怪に心を喰われたのに、神儀とは繋がったままなのだ。神儀の呼び掛けにも何も返ってはこないのに、未だに離の神儀の半身はこの男なのだ

あれからどれくらい経ったのだろう

毎日誰かしら来てくれて、最近あった事を話してくれたり、マッサージをしてくれたり、いつ離の心が戻ってきても良いようにお世話をしてくれていた

ある日坤が最近行ったお勤めの話をしていると、今まで何の反応も無かった離の瞳から涙が流れていたのだ直ぐに残りの八卦を呼び、各々声を掛け続けた

空虚だった瞳に僅かだが光が戻り、何も発しなかった口からは、乾いた声が聞こえた

急いで太極様に伝えて見て貰うと、まだほんの少しだが心が戻ってきたようだ

泣く事のない八卦が全員泣いた

恥ずかしげもなく大きな声で泣いた

それを見て、離もまた泣いた

月日は過ぎ、簡単な任務なら問題なく行ける所まで回復した

八卦としての記憶なら体が覚えている

ただ、仲間の事は覚えていない

素直にそう言うと、我先にと自己紹介をしてきた

誰が最初に言うかで揉めてたら、離が笑いながら

お師匠様が沢山いて、幸せです

最高の笑顔で爆弾を落としていったのだ

あの離があの笑顔で俺(あっし・私・我)のことをお師匠様って…

急に変な動きで悶えだした師匠達に、若干ひきだした離を神儀が連れ去って行ったのを気付くまであと少し