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103 兄妹

世界最速のレベルアップ ~無能スキル【ダンジョン内転移】が覚醒した結果、俺だけダンジョンのルールに縛られず最強になった~ — ncode.syosetu.com · All chapters

103 兄妹

『102 略奪者』にて2020/9/26に修正更新を行っています。

そちらをまだ読んでいない方は、そちらからお読みいただけますと幸いです。

柳に背を向けて歩く傍ら、俺はステータス画面に浮かぶ『MP:3680/29490』という表記を見て顔をしかめた。

「……結果的には俺の圧勝だったかもしれないが、実際はかなり危なかったな」

今回、俺が新しく得た2つの力―― 魔奪剣 ( グリード ) と、 瞬間転移 ( タイム・ゼロ ) 。

魔奪剣で魔法を奪う際はその魔法発動時と同量のMPを、瞬間転移は一回につき一律で100MPと、ともに大量のMP消費を必要とする。

もう少し戦いが長引くか、もしくは柳が魔法を連続で使用してきていたら、危ないことになっていたかもしれない。

「まあ、柳は俺に魔法を奪われるのを恐れてそうしなかったんだろうし、仮にされたとしても対応は考えていたが……」

なんにせよ、無事に勝つことができて本当に良かった。

優れた思考を持つ敵はそれだけで厄介だ。

力量差だけなら 纏雷獣 ( てんらいじゅう ) なんかと戦っている時の方が強く実感したが、それとはまた違う異質な強さだった。

……それが対人戦の怖さというものだろう。

人と戦うのが初めてである俺は、その怖さもまた初めて知ることとなった。

ふと、とあるチンピラ共の姿が脳裏をよぎったが、きっと気のせいだろう。

それよりも、だ。

「華、大丈夫か?」

華の前で片膝をつき、そう尋ねる。

すると、

「――お兄ちゃん!」

「おっと」

緊張から解放された安堵からか、全力で飛びついてきた。

それを受け止めると、華は震える声で言う。

「……怖かったよ」

「そっか。ごめんな、俺が来るのが遅れたせいで、華を危険な目に遭わせた」

「そうじゃないよ! 私が助けを呼んだせいで、お兄ちゃんまで死んじゃうんじゃないかって……すごく怖かったの」

「……華」

俺は、華の頭を優しく撫でた。

「もう全部終わったから。心配かけて悪かった」

「ううん。無事なら、それでいいよ」

「ありがとう。けど途中、怖い目に遭わせちゃったな。短剣が当たったところは大丈夫か?」

「うん。お兄ちゃんのおかげで、ぜんぜん平気だよ。えへへ」

確かに、華の体に新しい傷はできていないようだ。

俺はほっと胸を撫で下ろす。

…… 纏壁 ( てんへき ) が、他人にも使用できるスキルで本当によかった。

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纏  壁LV1:MPを消費することにより、対象者を包み込むような魔力の壁を生み出す(強度、持続時間はスキルレベルにより変動)。

クールタイム:60秒

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スキルの説明にあるように、このスキルが発動できるのは対象者に対してであり、スキルの発動者だけとは限定されていない。

だから俺はここに来てまず、華に対して纏壁を発動した。

俺自身に使ったのは、柳と会話をして60秒が経過した後だったというわけだ。

本当は華を狙わせないほどにまで圧倒できればよかったのだが、柳は最後まで自分が生き残るための策を打ち続けてきた。

改めて、厄介な敵だった。

「ねえ、お兄ちゃん」

「ん?」

そんなことを考えていると、華が呼び掛けてくる。

「お兄ちゃんって、本当は凄く強かったんだね」

「……隠してて悪かった」

「ううん、謝らなくて大丈夫だよ。私もこんな目に遭ったからもう分かるもん。そうするだけの理由が何かあったんでしょ?」

「……ああ。家に帰ったら、全部説明するから」

「うん」

こうなった以上、華には全てを説明するべきだろう。

俺がここまで歩んできた道のりを。

だけど今だけは、華が無事であることを喜びたい。

心から強く、そう思うのだった。