176 幼馴染
176 幼馴染
胡桃沢 ( くるみざわ ) 灯里 ( あかり ) は、数年前まで家が隣だった、いわゆる幼馴染だ。
家族同士の仲もよく、一緒に遊ぶ機会が多々あった。
どちらかといえば、俺よりも華と仲がよかった印象だけど。
実際、中学時代とかはそこまで話した記憶がないしな。
そんな彼女だが、数年前に引っ越して以来、疎遠になっていた。
……まあ、当時は色々とあったからな。連絡を取る余裕もなかった。
なんにせよ、こうして顔を合わせるのはかなり久しぶりだ。
せっかくだし、感動の再会とでもいきたいところだったんだが……
「まさか数年ぶりにみる幼馴染の姿が、公園で四つん這いになっているところだとは思いもしなかったよ……」
「うっ! や、やっぱり見てたのね! 今すぐ忘れなさい!」
灯里は顔を真っ赤にしながら、必死にそう言ってくる。
そのやりとりに懐かしさを感じた俺は、思わず声に出して笑った。
「な、なに笑ってるのよ……」
「いや、そういや昔もよく、こういうやりとりをしてたなって思ってさ。なんにせよ、久しぶりだな、灯里」
「……そうね」
ここから誤魔化すのは無理だと察したのだろう。
灯里は諦めたように深く息を吐くと、訝しむかのような視線を向けてきた。
「どうかしたか?」
「……ううん、別に何でもないわ」
「? そうか」
少し気になったが、無理に掘り下げるほどの話題でもないだろう。
むしろ、今話したいのは別のことだ。
「それで話を戻すけど、灯里は剣崎ダンジョンを攻略したかったのか?」
「そうよ。興味のある情報を一つ入手してね。それなのに、もうなくなっちゃってるだなんて思いもしないじゃない!」
「なくなったのは結構前だぞ。しかもその時は迷宮崩壊が起きて大変だったんだからな」
「やけに詳しいわね。アンタ、もしかして……」
「ああ、冒険者だ」
その答えを聞いた灯里は、目を丸くした後、優し気な笑みを浮かべた。
「そういえば貴方、昔から冒険者になりたいって言ってたわね。よかったじゃない、本当になれて」
「? 灯里にそれを話したことあったっけ?」
「直接はなかったかもね。けど、普段の言動を見ていればそれくらい分かるわよ。アンタ嘘つくの下手だったし」
「それをお前が言うのか……」
「どういうことよ?」
「いや、昔うちに泊まりに来た時、華と一緒に……いや、やっぱやめとくか」
「変なところで切らないでくれる!? めちゃくちゃ気になるじゃない!」
そんな風に軽口を叩き合い、数年ぶりの会話を楽しんだ後、俺は提案する。
「まあ、積もる話はまた後でするとして……とりあえず、剣崎ダンジョンを攻略したかった理由についてもっと詳しく教えてくれないか?」
おおよその察しはついているが、念のためそう問いかける。
情報経路について、きちんと確かめておきたいからな。
「……うん。確かにこの辺りで活動している凛なら知ってるかもしれないわね。実は――」
そう前置きをした後、灯里はここに至るまでの経緯について話し始めるのだった。
零「大丈夫。幼馴染は負けフラグ」
由衣「えっ?」