0212 <<幕間>>
0212 <<幕間>>
本日は二話投稿です。
21時に、「0213 最終章 序」を投稿します。
連合執政オーブリー卿は悩んでいた。
連合によるインベリー併合後、王国に逃れた元インベリー公国民らの、公国への戻りが想定以上に低調なのがその理由であった。
理由はひとえに、王国東部の治安の悪化である。
戦争中に、公国から王国へ逃れた者たちは、いわゆる難民として、王国に受け入れられた。
そのほとんどは、まず王国東部に逃れたわけだが、当時すでに、王国東部の治安は悪化しつつあったため、東部に留まらず、北部、南部、あるいは王都のある中央部にそのまま進んだ者たちが、かなりいたのである。
そんな者たちは、いざインベリーでの戦争が終結し、戻れる状態になったとしても、間に治安の悪い王国東部があるために故国に戻りにくい状況にあった。
「だいたい、当初の想定の二割といったところです」
オーブリー卿は、補佐官ランバーの報告に、小さくため息をついた。
「俺が難民だったとしても、あの東部を抜けてインベリーに戻ろうとは思わんな、確かに」
「ですね……」
オーブリー卿も補佐官ランバーも、頭で理解はしていた。
だが、それでも、想定の二割というのは少なすぎる。
「これも、全て、皇帝の掌の上か……」
「まさか、これすらも、ルパート陛下のせいだと?」
「そう考えるべきだろう。少なくとも、王国東部の混乱は、後ろで帝国が糸を引いているのは確実だ。そのおかげで、難民が戻ってこれないというのであれば、そこまでが皇帝の想定内だと考える方が自然だろう?」
「しかし、なぜ皇帝は、インベリーの難民を王国内に留め置くような策を?」
「さてな……」
ランバーの疑問に、さすがのオーブリー卿も簡単には答えることができなかった。
「ランバー、難民が押し寄せてきた場合の、最大の問題はなんだ?」
「それは……やはり、治安の悪化でしょう」
難民の増加による治安の悪化。
これは、どれほど整った統治機構があっても、避けられない問題だ。
地球においてもそうであったように、『ファイ』においても、同様。
「しかし、人が増えれば景気は良くなるでしょう? 王国の景気が良くなって、そこに帝国のメリットがあるとはとても思えませんが」
ランバーが、そんな質問をした。
「……我らのインベリー併合以降、王国の景気は上向いているか?」
「……いえ……確かに、その傾向は全くありません」
「そうだろう? 難民を受け入れるだけでは、国の景気は上向かん。彼らを、きちんと国の商業と、徴税機構に組み込まん限り、景気はよくならんのだ。そして、今の王国の統治能力では、難民をスムーズに国家経済に組み込むことは出来なさそうだ」
難民が増えれば、国の景気が勝手に良くなると考えるのは、ただの愚か者である。
増えた人が、稼ぎ、金を使い、税金を納めて、初めて国の景気に貢献するのだ。
その組み込みを、意図的に国が行わない限り、『難民の受け入れ』は誰も幸せにしない……。
難民は、ただ安価で使える経済的奴隷になってしまう……。
難民たちだって、人であり家族もある……そんな状態をずっと受け入れ続けるわけがない。
そして、リーガルな方法では状況が改善しないとなれば……イリーガルな方法をとることになる。
暴動に代表される、暴力による解決。
それは、治安をさらに悪化させる。
そのことを理解している人間が、国家中枢にどれほどいるか……。
残念ながら、王国には、理解している人間が足りていなさそうである。
「皇帝の狙いは、単純に、王国の混乱、更なる治安の悪化か……?」
「そうなると、当然、何のために?ということになりますな」
オーブリー卿が呟き、ランバーがその呟きを拾ってさらに問う。
「精鋭部隊だけでも、国境付近に移動しておくか。何か起きてもすぐに動かせるように」
オーブリー卿の呟きに、ランバーはただ頷いた。
「治安の悪化……一番めんどくさいわ」
連続幕間、終了です。
本日21時投稿予定の「0213」より、ついに最終章が始まります。
さすがに、これまでのどの章よりも長いです。
以前書きました通り、『第一部 中央諸国編』の最終章ではありますが、次の『第二部 西方諸国編』の再開は、かなり先になります。
『第二部 西方諸国編』『第三部 東方諸国編』まで書くのは、筆者の中では決まっていますが、それがいつになるのかは不明です。本業の方もありますので……。
ですので、だからこそ、読者の皆様には、この『最終章』を楽しんでほしいなと思います。
詳しい「この先」については、『活動報告』の中で報告していきます。
活動報告は、ページ上部の『作者:久宝 忠』をタップしていただいて飛んだ先。
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