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光

死に戻り聖女は兄の願いを叶えたい〜気づいていないけど無償の愛に包まれています〜 — novelba.com · All chapters

光

「お兄様、お話しがあります」

「なんだい?」

月明かりに照らされレオンが優しく微笑んだ。

「お兄様に単刀直入に聞くわ。女神様とは本当はどんな契約をしたの?」

レオンは口角を上げたまま微笑みを崩さず、そのまま黙ったままだ。

きっと兄は最後まで教えてくれない。

その時だった。洞窟の中からガヤガヤと捜索に出ていた者達が戻ってきたのだ。ノアはレオンとアグネスに気づくと少し難しい顔をして、駆け寄ってきた。

「レオン、外の見張りをありがとう。洞窟の中にはやはり空間が歪んでいそうな怪しい箇所があった。危険で近寄ることも難しい」

レオンは「やはりそうか」と言うと、アグネスからの質問を聞かなかったかのように平然とし、ノアから洞窟の中の様子の報告を聞いている。

そして、ノアはレオンの横で報告を聞いていたアグネスを見た。

「アグネス、魔獣はこの洞窟の中で異界と現世が繋がっているところから出てくると思われる。その繋がっているところを閉じ、この洞窟の入口も塞いで欲しい。出来れば空気の浄化をお願いしたい」

アグネスは許可を取るように横にいるレオンを見ると、レオンはアグネスには無言を貫いたまま、ひとつ大きく頷いた。

「わかったわ。この場合は「光魔法」しか方法がないと思うの。でも、わたしは光魔法だけが使えない。出来るかわからないけど精一杯やってみる。必ず成功させるわ」

アグネスが緊張気味の表情で力強く言い、震える手を落ち着けるように自分の胸にそっと手を当てた。

洞窟の入り口の真正面に立ったアグネスは深くゆっくり息をした。すぐ横にノアが、少し後ろに兄とセレーネが見守ってくれるようにいる。

副団長や他の騎士達は少し離れたところから、アグネス達の動向を見守る。

——きっと大丈夫。出来ると自信を持つんだ!

アグネスは奥の方は真っ暗で見えない洞窟を見つめた。

ヒュューと生暖かく気味の悪い風が奥から吹いてきて、アグネスの金髪の長い髪が風になびく。

瞳を閉じて全神経を両手に集中させると、アグネスは天に向かって両手を広げた。

まるで天に乞うように、そして持てる全ての力を天に押し上げるかのように。

アグネスの手のひらが熱くなっていく。

「センペル ポルタ クラウディア」

(永遠に城門を閉じよ)

ひとつひとつの呪文に力を込める。

すると、天に向かって両手を広げているアグネスの周りに白銀の光がキラキラと落ちてきて、アグネスを包み込む。

(あともう少しでできる——)

全ての光が降りてきたとアグネスは直感で感じた瞬間、その光を全てを洞窟の奥に送り込むように、アグネスは両手を洞窟に向けた。

白銀の光は矢のような速さで洞窟の中に流れるように入っていくと、洞窟の奥が白銀の光で溢れはじめた。

誰もが洞窟の奥のその光のきらめきに目を奪われる。

「空間の繋ぎ目が閉じたようだな」

少しその光が落ち着いてきた時にレオンが冷静に呟いた。

続いてアグネスは、間髪入れずにもう一度両手を天に向かって広げようとした時、左手をノアに掴まれた。

「次は俺も一緒にさせてくれ」

「——ノア!」

優しい眼差しでノアがアグネスの手を強く握りしめた。ノアの大きく剣ダコでゴツゴツとした手から、ノアの温かい感情が伝わってくる。

アグネスは心が満たされていくのが自分でわかった。

「さあ、最後の仕上げを手伝うよ。アグネスも本当はわかっているんだろう?自分に足らないのは何なのかを。いまのアグネスになら克服できるのでは?」

「お兄様!」

レオンがアグネスの右手を取った。その横にはセレーネがいる。セレーネは満面の笑みでアグネスに目配せをした。

「お兄様、セレーネ様、ありがとうございます。わたしに足らなかったのは「自分を信じる」ですね。自分の力を自分の存在を信じてみます」

4人で手を繋ぎ、白銀に光る洞窟の正面に並び立った。

そして、全員で勢いよく天に両手を上げた。

「アミカテラス サルス!」

(生きとし生けるものに癒しを!)

アグネスが天に届くかのような力強く張りのある声で呪文を唱え、精一杯の胸を張って天に向かって叫ぶ。

この時のために、いままでどれほど祈ったか。

いまだけでも光魔法を!

ノアや兄、セレーネと繋ぐ手からいま、無償の愛が伝わってくる。

アグネスは天を仰ぎながら、手から伝わってくるみんの優しさに自然と笑顔になった。

天に向かって満面の笑みをすると、瞳から一筋の涙が溢れた。

月明かりと星の僅かな光しかなかった辺り一面に金色の光が降り注ぎ始めた。

死体の山々にも労わるように光が降り注ぐ。

そして、その優しい光はこの世界の全てを包み込むように舞い始める。

「——綺麗」

「ああ、そうだな」

アグネスとノアはお互いが繋いだ手を更にぎゅっと握りしめる。

その横でふたりの様子を見ていたレオンとセレーネが互いに目を見合わせると微笑み合った。

「これが光の魔法——」

レオンは誰にも聞こえないような小さな声で呟くと、はらはらと流れ出る涙も拭わずにずっとずっと天を仰いでいた。