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竜よ、竜よ! 其の九

シャングリラ・フロンティア〜クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす〜 — ncode.syosetu.com · All chapters

竜よ、竜よ! 其の九

ディプスロの台詞考えるのは鉄骨渡りに似たスリルがあって困る

出会う赤色の怪物と、傷だらけの帝王。共にカテゴリは異なれど「竜」に縁を持つ二体のモンスターが互いに牙を剥いて対峙する。

かたやレイドモンスター「貪る大赤依」、だがそれに対する三つ首ティラノ……確か名前は「ドラクルス・ディノサーベラス」だったか。奴は実際に多人数パーティを数多撃退しているという実績を持つ。

MvMの様相を呈してきた森人族の里にて、脆弱なる人類種達は戻ってきたトットリを含めた三人での緊急対策会議を開いていた。場所はいつもの廃屋、既に放課後に集まるファミレスじみた「いつもの」感を感じる場所になりつつあるな……

「 早 ( そう ) ろ」

「アラドヴァル」

「おっと待ったサンラクくん、今体力やばいからマジ勘弁」

マジかよ滅殺のチャンスじゃん、だがまぁ今はそれどころではないか。

「とりあえずトットリがとんでもない奴を引っ張って戻ってきたわけだが……兎にも角にも戦線に参加する以上はトットリにこっちの情報を共有させる」

その上で対策会議だ、第三形態に関しては検証するべきことがあまりに多いからな。

「……まぁ、怪しいのは結晶体だよねぇ」

「結局はそこに帰結するわな」

第三形態の出現と同時、この森人族の里の至る所に出現した謎のクリスタル。宝石と持て囃すにはいささか邪悪過ぎるそれは現在対策を練っている俺達のすぐ隣に一つ存在している。つーか屋内にも生えるとなると捜索が面倒だな。

「これさ、どう見ても地面から生えてるよねぇ?」

「中に何か いる ( ・・ ) な」

「自発的に出てこないって事はプレイヤーが破壊する前提だよな」

「「「………」」」

明らかに「壊してください」と言いたげな複数出現オブジェクト。

明らかに「入ってます」とでも言いたげな謎の生物的シルエット。

明らかに「壊すと何か起きるよ」と言わんばかりの戦闘フラグ臭。

見えてる地雷をそれでも踏めと、あの手抜き着色野郎はそう言いたいのか。

「 森人族 ( エルフ ) がこれに対処できるか知る為にも、まずは私達で味見しなきゃならないねぇ……」

「シルエット的に……鳥?」

「いや鳥にしちゃ妙な形というか……」

───と。

「どうやら我らが三つ首君も戦いを始めたらしいな」

「どうでもいいけどあれメスだったら単純計算で七人くらい相手できるね」

「七人……? いや、七人どころか十五人でも余裕で撃退したんじゃ」

「こんな時まで下ネタに持ち込むのマジでやめろよ……」

「え、今の下ネタなのか?」

「えっ」

「えっ」

にまぁ、とディープスローターの口が笑みの形になる。こ、こいつ……っ!

「ミ、ミーム汚染……!?」

「サンラクくぅん……すけべぇ……」

「くっ……頼む焼き清めてくれアラドヴァル!!」

「あばばばばば!!」

クソが、深淵を覗く時深淵もまたこっちを見ているとでも言うのか……!? 馬鹿な、くそ、やはりこいつを殺して滝にでも打たれるべきか……!!

「死ねぇ!」

「はいバぁリヤー」

しゅるり、と それ ( ・・ ) の裏側へ回り込んで盾とするディープスローター。馬鹿め、その程度の硬度でアラドヴァルの熱量に対抗できるわけが……あっ

「………」

「………」

「………」

両断、とまでは行かなかったがその太さの半ばまでをばっくりと溶断された血色の結晶が静かに震え始める。

俺達(+エムル)は何を言うでもなく、ファミレスで一通り駄弁った後にレシートを持ってレジに行くような気軽さで廃屋から……

「トットリ! よくもこの私にあんな危険な囮なんてさせ」

「Qigryyyyyyyyyyyyy!!!」

「きゃああああああああ!!?」

ええい緊急脱出!!

爆ぜる血結晶、ツンデレ全開で扉を開けた ツンデレ ( ヘーシュ ) が超速で背を向け逃走するのに追従して俺達は廃屋から脱出する。

次の瞬間、既に崩れかけの屋根が内側から吹き飛ぶ。そしてそれを為したであろう赤い質量が大きな翼を広げて空へ飛び出した。

「QyaLaaaaaaaaaaaaaa!!!」

それは鳥や虫とは異なる飛膜を持つモンスターだ。全身真っ赤ではなく黒であればカラーリング的にぴったりであっただろう。

いや? 「血」と関連付けるならむしろ相応しい色なのか?

「見なよサンラクくぅん、六枚羽だ、セラフィック 蝙蝠 ( バット ) だぜ?」

「飛行モンスターはやめろ飛行モンスターはやめろ飛行モンスターはやめろ……」

「あっ、 短小 ( 近接 ) ……」

オイなんかニュアンスに無礼を感じたぞ。

だが分かったことがいくつかある、あの結晶体……さながらローエンアンヴァ琥珀晶のモンスター版とでも言うべき血琥珀を破壊すると中に入ったモンスターが出てくるわけだ。

それだけなら単なる固定シンボルのエンカウントにも思えるが……下ネタに妨害されこそすれ、今の俺はノッてるようだな。

「どうするんだいサンラクくぅん……奴さんの懐を不用意にまさぐるととんだ 怪物 ( モンスター ) が出てくるようだねぇ……そう、 股間 ( ポケット ) に潜む怪物が───」

「アラドヴァルビンタ!」

「 快感 ( んひぃ ) !」

「往復!」

「 悦楽 ( らめぇ ) !」

天誅!(※正しい使用法)

体力が一割を切ってビクンビクンしているディープスローターは捨て置き、世界観的見地から導き出された考察をトットリへと告げる。

「いいかトットリ、お前が来るまで胃の中空っぽで暴走してたやつがいきなりフルパワーになったんだ。単に発狂モードだからです、でこのゲームが片付けるとは考えづらい」

「お、おう……」

「あの六羽蝙蝠の手抜きカラーリングからして貪る大赤依と同質の存在である事は明らか、第一及び第二形態と同様の性質は保持していると考えるべきだ」

「お、おう……?」

………ふぅ

「全部壊して全滅させる、以上」

「最初からそう言ってくれよな」

インテリジェンスが足りてねーぞ勇者様、でも大丈夫だ人間頭蓋の中に筋肉搭載しておけば大抵なんとかなるって古今東西のゲームが証明してる。

「ほらスタンダップ変態、やることが山積みだ」

まずあの六羽蝙蝠を倒す。

次にこのエリア全域にある水晶全てを把握する。

んでそれらも同様に倒す。

そしてこれはある意味血結晶破壊以上に重要だが……

「三つ首ティラノの介護が必要だ」

「下手に死なれて食べられたらたまったもんじゃないからねぇ……」

貪る大赤依に関しては、優れた名刀を奪われる可能性を視野に入れなければならない。たしかにあの傷だらけの帝王は強いのだろう、だが相手はレイドモンスターだ。

もしも三つ首ティラノが負けたら? あまつさえ食われて奴のキメラ分身として奴の味方になったとしたら?

「流石に 無理 ( クソ ) ゲー極まりすぎだ、寄生プレイヤーを上位ティアに出荷するように丁寧な介護が必要だ」

「人数が足りないねぇ……血結晶の捜索は森人族を使うにしても、倒すところまで含めるとぉ……」

キメラ分体の強さは正直個体ごとにまちまちだ、ティラノパーツを使ってるやつはタフネスだったし、ラプトルメインのやつはあっさり倒せた。プテラ翼持ちは死ね、二度と蘇るなクソが。

「……エムル」

「【マジックエッジ】!!」

うーん、俺の思考を読んでるんですかね? だが最高効率だ、いいね。

飛翔した魔力の刃が余裕ぶっこいて滞空していた六羽蝙蝠の顔面に命中する。

さぁ戦闘開、始……?

あっさりと身体から力が抜け、撃墜された六羽蝙蝠の姿に俺達はしばし沈黙する。

え、まさか一撃……いや生きてる、うん! いや流石にね! そりゃね!

「っしゃ往生せい!」

だがしかし、追い討ちで六羽蝙蝠の顔面を 煌蠍の籠手 ( ギルタ・ブリル ) で殴っただけだと言うのに、既に瀕死状態の六羽蝙蝠の姿に「あれ? これ実は弱いんじゃ……」という疑惑が俺たちの間に漂う。そしてアガートラムの補正込みの鉄拳を受けてその形を崩壊させた六羽蝙蝠の姿を見たことで疑惑はほぼ確信へと至る。

「何よ、この程度なら私にだって倒せるじゃない!」

「いや待て、まだ一体だけでそう結論づけるのはまず……」

「まぁ見てなさいって、このヘーシュ様が華麗に倒してあげるわよ!」

あ、おいそんな土台からしっかりとした堅牢なフラグは……

三十秒後。

「Bmooooooooooooooo!!!!」

「いやぁぁぁぁぁ助けてトットリぃぃぃ!!」

「凄いよ、即堕ちまで一分切るってリアルじゃ見れないねぇ!」

「 森人族 ( エルフ ) って……」

「なんか、ごめん」

牛とライオンとゴリラを混ぜたような怪物、まぁ一言で言えば鬼のようなモンスターに追いかけられるヘーシュを見ながら、どうやら出現モンスターの性能はランダムであることと、森人族がどうしようもなくヘタレということを再認識したのだった。

ク、クソザコイキリツンデレランチパック……

第三形態はこのクッソグロテスクなモンスターボールの中にいるポケ……モンスターを全体撃破しないと酷いことになります

ちなみに六羽蝙蝠さんですが聴力が良すぎたせいで遠くにいる傷だらけ君のマジ咆哮直撃して半分気絶してたのであっさり撃墜されましたとさ