最速の世界
最速の世界
水ゾでたあああああああああ
GRANBLUE FANT
ASY
「……それはぁ、「 同調連結 ( ハイコネクション ) 」っていうのよぉ?」
「こねこね?」
「エムル俺の頭を捏ねるな」
「あはひほほっへほほひぇへるひとははひひってるへふわー!」
エムルの頬にイースト菌を注入したらさらに膨れて……それおたふく風邪じゃね?
「で、そのハイコネクションってのは何が凄いんだ?」
「そうねぇ……まず最初にぃ、同調連結では一度に連結できるスキルの数に上限がないのよぉ?」
マジですか。
「それにぃ、スキル同士の兼ね合いも考えなくていいのぉ。攻撃スキルと防御スキルだって連結できるわぁ」
マジですか!
「そしてぇ……連結したスキルは好きな時に解除することができるわぁ」
マジですか!?
「本来はぁ、秘法を付与するためには相応の経験を喰ってしまうのだけれどぉ……なぁんとぉ? 私は別の方法で「同調連結」を使うことができるのでぇーす」
マジですかぁぁぁぁあ!!
「今ならなんとぉ……スキル一つにつき一億マーニで連結しちゃいまぁす」
……え、マジ? 金銭で解決できるの? 最高かよ。
「つまり仮に三つ連結するなら三億?」
「そうなるわねぇ」
「おねーちゃん! 流石にちょっとボりすぎですわ!?」
「いやエムル、スキル一つ二億でも割と安いぞ」
「ですわ!?」
何せゲームだ、積み重ねればなんだって出来るが経験値と金のどちらが減って困るかと言えばやはり前者だ。
金は使うものだが経験値は貯めるものだからな、少なくとも五連結とか十連結の大台に入れば持っていかれる経験値は一や二では済むまい。
それにウェザエモンのレベルダウンフィールドを見るに、ステータスにも影響が出るとすれば直接的なパフォーマンスそのものにも影響が出る。
だが金銭であれば話は大きく変わってくる。まぁ時価だったり経済だったりと色々しがらみはあるが、レベル1のプレイヤーが売る宝石もレベル100が売る宝石も価値は同じだ。
そしてレベル1と100、どちらがより効率的に金を稼げるかなど考えるまでもない。
リアルとは違い、ゲームはアバターのデータさえ残っていれば所持金0でもなんとかなるものだ。
「億となると金メインで稼ぐ必要がある、やっぱり水晶巣崖が最高効率か……? いや、しかし……」
「ああそうだぁ、「同調連結」にはもう一つ条件があるのぉ」
「というと?」
「本来スキルの剪定はぁ、その者のマナの流れを変える技なのぉ。それまでの限界を超えた強さに至った子は容量が増えるんだけどぉ、その分当人がより強く技をイメージしないと「同調連結」はうまくいかないのよぉ……」
五秒かけて会話を脳で処理し、さらに五秒かけてその内容を理解せんと努め、そしてもう五秒でおおよその結論をつける。
十五秒ほど考え込んだ俺はエルクの台詞の七割ほどを思考からシャットアウトした上で残り三割を噛み砕いて得た結論を口にした。
「つまり欲しいスキルのお手本になるようなものを見てこい、と」
「せいかぁーい! はいこれご褒美ぃ」
・100マーニ
銭ゲバめ…………でも貰う。
「……ふぅん」
「弟子は師を超えるものですが、それ以前にその背中を追うものです」
故にこそ、手本とするならば他の賞金狩人達にあのルティアの「 超速 ( マッハ ) 」の上位互換、とまで言わしめる「 超越速 ( タキオン ) 」とやらこそ相応しい。
エルクの話は抽象的というか、ゲームのシステム説明文としては曖昧な部分が多かったのでなんとも言えないがただ単純に手本を見ればいい、という訳ではなさそうだ。
「賞金狩人最速の背中、今の自分でどれだけ追いかけられるか……それを知りたいと、そう考えてしまうのです」
「……いいよ」
やったぜ、切り札的なものだろうし見せてもらえるか不安なところもあったのだが、賄賂作戦が上手くいったか。
「マスター、ケーキを 一切 ( ひとき ) れ」
「畏まりました」
……? 何故ケーキを? いや、あくまでも見せて欲しいだけなので剣を抜かなくてもいいんだが……にしたって何故ケーキ?
「サンラク、ちょっとそこに 立 ( た ) って」
「え? はい」
よく分からないがとりあえず立つ。そこでようやく自分が半裸のままだったことに気づいたので服を着る、まぁ三分くらいで済むだろう。
…………
…………
「あだぁっ!!?」
「うおっなんだ?」
キャリアウーマンの服を着たウーマンじゃないマン……グリッチが突然仰け反って椅子ごとひっくり返った。
さっきからチラチラこっちを見てたのは気づいていたが、男としての情けで見逃していたのだが……ちなみにマスターは顔色ひとつ変えずに接客していた、なんか単純な戦闘力とは別枠で強キャラだな?
「あれ? 頬にクリームがついてた」
妙だな、口から遠いこんなところにクリームがつくなんて……うん、甘い。
「………… 仕方 ( しかた ) ない」
「へ?」
「サンラク、スキルを 使 ( つか ) って「 全力 ( ぜんりょく ) 」で 私 ( わたし ) を 捕 ( つか ) まえて」
「え? ここで?」
「そう、 遠慮 ( ・・ ) はいらない。 酔 ( よ ) ったトゥールが 暴 ( あば ) れてもここは 壊 ( こわ ) れない」
それに、と先生は口の端を吊り上げながら宣言する。
「どうせ 後手 ( ごて ) でも 私 ( わたし ) の 方 ( ほう ) が 速 ( はや ) い」
上等だ、そういうことなら……よし、やってやるか。とはいえ切った張ったがトリガーのスキルもあるので今できる組み合わせなら……
重律踏覇 ( エクシードグラビティ ) 、鞍馬天秘伝、 無重律の恩寵 ( スペースチャージ ) 、ヘルメスブート、 宿命の狼兆 ( ウルフェイト・サイン ) 、ブラッドバーンバースト、そして 封雷の撃鉄 ( レビントリガー ) ・ 災 ( ハザード ) ……そして最後に 真界観測眼 ( クォンタムゲイズ ) を使って全速力だ。今なら空だって走れるってな。
「いざ……!」
正面からは突っ込まない、若干軌道をズラして右斜めから先生の頭に手を置く!
足に力を込め、 真界観測眼 ( クォンタムゲイズ ) の効果が宿った目でルートを描き、前へと踏み出……
「 超越速 ( タキオン ) 」
(………はい?)
身体が動かない。
一番最初に考えたのはVRシステムがイかれたことによるフリーズだ。とはいえこの場合、二重三重に搭載された安全機構でログアウトされるので問題はない。
だが違う、VRシステム側の問題である場合は即座に通知ウィンドウが出るはずだ。つまりこれはシャンフロというゲームの想定内ということだ。
そして一秒ほどの混乱を経て俺は気づく。これは身体が動かないのではなく、スローになっているかのような……そう、まるで思考だけが加速しているのに身体は置いてけぼりにされたような。
「…………な」
そこで気づく。俺の認識だけが等速で、俺の体も含めたそれ以外の全てがスローの……止まってしまったかのような世界で。
もっしゃもっしゃ
なんて事ないかのように 等速で ( ・・・ ) ケーキをパクつくティーアスがいることに。
「 視 ( み ) えてはいるんだ……じゃあ、」
瞬間移動……いや違う、この状況下で更に加速したティーアスが俺の目の前に立つ。くっ、目は動くが遅い。
「おすそわけ」
ひょいと伸ばされた細い手とそれに付随する指が持つフォークの先端、ケーキにトッピングされたリンゴのひとかけらが若干開いた俺の口に放り込まれ……
そして時は動き出す。
「えっ、あっ……ふぎゃん!?」
「え、なんで俺……ぎゃああ!?」
目の前にいないティーアス、気が抜けたことで手放される肉体の制御、つまづく足、転ぶ身体……あれこれデジャヴ?
自慢ではないが友達との球技大会でバスケ、バレー、野球、サッカー、ゴルフ、アメフトと大概の球技における球の経験を積んだと自負する俺ではあるが、ボウリングのピンではなく球の経験は初体験だ。
二回転ほど地面を転がり、尻からグリッチの顔面に突っ込んだ俺が椅子や机を吹っ飛ばしながら派手な音を立てる。
「 感想 ( かんそう ) は?」
「 一生ついていきます ( マジリスペクトっす ) 幼女 ( ティーアス ) 先生」
そりゃ最強の賞金狩人ですわ……フル発動ではないとはいえ、三桁スキル複数使用して辛うじてサンドバッグを自覚できるだけ、とか勝てる気がしねぇ。
ふんす、と誇らしげに切り分けたケーキの最後の一欠片を口に放り込む 幼女 ( ティーアス ) 先生の姿を見つつ、場合により仇討人となる為にこれと戦わなくてはならない後続の仇討人志望達に同情の念を抱くのであった。
同調連結はヒュララララ!やリノ……!を合体させる感じ
Q.これ勝てるやついるの?
A.ティーアスがエンストするまで耐えるだけのタフネスがあればワンチャン、なおエンブレム起動でノーチャン。ゾンビ作戦なら勝てるけどまぁそれは言わないお約束