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Side_Digest:災禍は廻り、人は動く

シャングリラ・フロンティア〜クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす〜 — ncode.syosetu.com · All chapters

Side_Digest:災禍は廻り、人は動く

センの古城お前マジお前……本当お前……更新遅れてすいません、ちょっと腐れ村でクソッタレなバカンスをね

◇

「おーい農民、生産依頼が来たぞー」

「いやいや、農民じゃなくて超農民ね? ここ超大事」

「具体的には?」

「強そうじゃん?」

そういう問題なのか……と情報屋ゼニス・ゲバラはため息を一つつくと、あたり一面を眺めてにまりとあくどい笑みを浮かべる。

「こう、なんだろうな……自分が情報を独占していて、それを自分が発信できる快感ってのは凄いな」

「ゼニちゃんそーゆーの好きそうだよねぇ、裏方作業全部俺だけどね」

「あー、あれだよ、経営コンサルタントとかそういうあれだ」

「独占販売なんだからぼったくってこーぜぇ?」

あくどく笑うゼニス・ゲバラに同じく笑い返すは超農民。全プレイヤーの中でも滅多に見つからない職業「農家」をメインジョブに設定するある意味では生粋の生産職である。

新たな作物の可能性を見出した樹海を彷徨う中で未知のアイテムを見つけ出した超農民、掲示板では続く話題に流されたそれに注目したゼニス・ゲバラは密かに超農民と接触し……果たしてその予想は正しいものであった。

植物型モンスター……否、 モンスター型植物 ( ・・・・・・・・ ) とでも言うべき「ヒューマンドラゴラ」はこの場にいる二人は知る由もないが、とあるプレイヤーが紆余曲折を経て契約した 征服人形 ( コンキスタ・ドール ) と似たシステムを備えている。

それ故にゼニス・ゲバラはこの情報の秘匿独占を目論み、その共犯者として超農民を懐柔したのだ。

「大体さー、カネ目当てなら発表すべきは今でしょ? クリスマス商戦前に発表するからクリスマスに売れるんだし、クリスマス後に発売したってカネの尽きた客しかいないじゃーん?」

「んなこと言ったってなぁ、当初の予定じゃ適当な色竜相手にデモンストレーションするとこだったのが一斉にここに来てんだからしゃーねーだろ」

「イェァア……」

「お、サンキューなマンディー」

「そちら、今朝 獲れた ( ・・・ ) 新鮮なカルバリンメロンの絞り汁でございますってなー」

私が作りました、と言わんばかりに両の親指を自分に向けるパワー型ヒューマンドラゴラの姿も最早慣れたもので、ゼニス・ゲバラは木のコップに注がれた柑橘のそれとは異なるオレンジ色の果汁を舌の上で転がす。

「美食舌万歳、って感じだなぁ」

「高品質な食材を自前で食えるのは生産職の醍醐味だよねぇ……おーよしよし、ご飯の時間だぞー」

ワサワサと揺れる苗木達へと赤子をあやすように語りかけながら超農民が歩いていくのを見送りながら、ゼニス・ゲバラはその光景を見つめる。

来たる決戦の日に備え、最終調整段階に入った大量のヒューマンドラゴラを。そして一言。

「……悪の生産工場みてーだな」

「今更ぁ?」

◇◇

「双剣の! 無双の双剣 ( モラ・ベガルタ ) のディルナディアよ! やはり彼奴め、洞窟のどこを探しても見つからなんだ!!」

「ブリブリニャンニャンめ、我らが武威に怖気付きおったか!!」

のしのしと地を揺るがしながら騒々しく報告にやってきた二人の戦士を眺め、その女は腰の後ろに吊るした二振りの剣を撫でて溜息をつく。

「白竜ブライレイニェゴは定期的に小竜を狩らねば何もかもを食い尽くしてしまう、故にこそ我らは武器と共に闘ってきた……」

しかし、白竜ブライレイニェゴの姿は消え…… 小さな来訪者 ( ・・・・・・ ) は東の果てに竜の災禍を予見した。

「しからば、竜の災い在りし場所こそ我らが地。異論のある者は剣を立てよ、我が双剣が相手をしよう」

それが彼女達の流儀。長の方針に異を唱えるならば、それは言葉ではなく武器でこそ語られるべきであると。果たして異論はなく、ただ爛々と戦意に漲るいくつもの眼差しが女を映す。

「ならば立て勇士達よ! 大いなる力携えし同胞よ! まだ見ぬ友に伝えよ!! 我ら 巨人族 ( ギガント ) ……否、 無双の双剣 ( モラ・ベガルタ ) は竜災の嵐を討つべく東へ向かうと!!」

一般的な人類とはかけ離れた巨躯の数々が腹に力の入った呼応の叫びをあげ、ビリビリと空気が揺れる。

今この瞬間、巨人族の移住クエストのフラグが立ち……そして誰もそれを受ける者がいないが故にオート進行でそれは動き始めた。

◇◇◇

「おさ様! 空が怖いよう……」

「おおよしよし……じゃが、これは看過できぬなぁ……」

小さな雛鳥が盲目の梟へとしがみつく。梟は見えぬ目で空を見上げ、そして視覚以外でそれを感じ取る。

大いなる空を竜に奪われどれほどの時が経ったか、一度竜に見つかれば「生意気である」と群ごと滅ぼされる危険性を孕む限り、彼らは憂いなく空を飛ぶことができない。

木を避けることばかりが上手くなったとて、空に木など生えてはいないのだから。

「むぅ……」

翼なき訪問者の言葉を思い出す、流浪の狼達の言葉を思い出す。

隠れ伏す時は終わったのだと、海の果てより現れた翼なき者達は、全ての竜と戦うつもりなのだと。

梟は争いを好まない、だが好悪は事実を覆すだけの力を持たない。であるならば、己の言葉が若き翼を地に堕とすやもしれない恐怖をそれでも 飛び ( ・・ ) 越えねばならない日が来たのだと、梟は覚悟を込めた溜息を吐く。

「…… 雛 ( ぼう ) や、 拳闘鶏 ( デスペラード ) を呼んで来てくれるかのう?」

「う、うんっ!!」

───たとえ飛べぬ翼を授かろうとも、この心まで折ったつもりはない。

恐怖の 錘 ( おもり ) で地に縛り付けられようとも、飛ぶ事自体は可能な彼らの中で稀に生まれる生まれつき飛ぶ事そのものが不可能な忌み子達。

卑屈の果てに道を違える者が多い中、確たる意思を 翼 ( こぶし ) に宿す若者を梟は想起する。

今や、飛べぬ忌み子の一大集団を結成するに至った彼らこそが 鳥人族 ( バーディアン ) の命運を授けるに相応しいと信じて。

◇◇◇◇

彼らは、戦いをこそ求めている。

誇りを求めて? ───否。

己の強さを示すため? ───否。

では何のために?

それは、彼らが そう ( ・・ ) 生まれたが故の「宿命」なのだ。

「で、どうするんだ?」

「どうもこうもあるまい、竜を倒してなんになる? 俺たちの牙はそんな事のために研いでるわけではない」

竜達による災禍を そんな事 ( ・・・・ ) と切り捨てた己達を 導く者 ( リーダー ) の言葉に、問いを投げた者は何か言葉を伝えようとし……耳を萎縮させて口を噤む。

「……どうした? なにかあるなら言ってみろ」

「い、いや……なんでもねぇ。だけどよう、一応あいつらには伝えた方がいいんじゃねーかぁ?」

獣人族 ( ビーストマン ) は現在、三つ……厳密には四つの勢力に分かれ、内ゲバを繰り広げている。

「力による繁栄」を掲げ、腕自慢の強い支持を集める獅子の獣人族レラールを頂点とした「獅子心衆」。

「知による繁栄」を掲げ、様々な策略を張り巡らせる狐の獣人族ノネを頂点とした「狐火の会」。

「富による繁栄」を掲げ、独占供給する食糧などを足掛けとする象の獣人族ダッドダッドを頂点とした「豊象軍」。

「獣人族として生まれながら、その意義を放棄して下らない頂点争いをする連中などどうでもいいが……これから先、我らが同胞の生まれ出ずる芽を潰すわけにもいかん、か」

そして最後に犬と狼の獣人族のみで構成され、彼らが畏怖と崇拝を込めて讃えし「獣王」との戦いをこそ望む狼の獣人族ウォーアを頂点とした「戦狼隊」。

隊長であると同時に「 導き手 ( リーダー ) 」でもあるウォーアは心底億劫そうに溜息をつくと、隊員の中から犬の獣人族三人を選び出すとそれぞれに言伝を託して走らせる。

「我らの目的は獣王……偉大なるリュカオーンただ一つ、竜などという些事で足を止めるわけにはいかんのだ」

七つの最強種が一つ、最強の「狼」たるリュカオーンは彼ら戦狼隊にとっては打倒すべき頂の象徴であり……旗にその姿を刻む程に焦がれる崇拝の対象でもある。

数多の世代を経て、なおその残滓を追うしかない狼達の道が急転するのは、もう少し先のこと……

◇◇◇◇◇

争いの火種が、必ずしも高尚なルーツを持っているわけではない。たった一人の少女が仲介をしただけで長きに渡る諍いが終わりを迎えることもある。

自由とは境遇ではなく、自身の意思とそれに基づく行動にこそある。その結論にたどり着いた竜の片鱗を帯びた人々は、己が意思に従って黒竜と少女を助けることを決めた。

『ふン、我が片鱗を授かる栄誉を受けながら、随分とノロマな事だ』

「誰だって最初は弱いものですよ! そこから強くなっていくんです! あ、ノワルリンドさんは最初から強いからもっと強くなるって事ですかね?!」

『ククク……世辞としては及第点だな。良い、貴様の塵芥が如き媚を我は許そう』

「塵も積もれば山となるですよノワルリンドさん!」

『………? む、そうだな、うむ』

一瞬だけ、空を 遅く ( ・・ ) 飛ぶ黒竜の威圧感が揺らぐが、気を取り直したのか再び傲岸不遜な威圧感を纏い直す。

「私の……えーと、お友達? 仲間? の人達から聞いたんですけど、ジークヴルムだけじゃなくて、他のドラゴンさん達も来るみたいです」

『老害に、小者に、気狂い、あの高慢ちきは屍を晒したのだったか……ふン、所詮はただ生を貪るだけの雑魚に過ぎん。我が狙うはジークヴルムただ一つ』

「そうですね、目標を絞るのは私も賛成です。でもでも、ノワルリンドさんは前線拠点の方々から結構恨みを買ってるみたいだし……私達が手助けをするんです!」

応、と親鳥を追いかける雛鳥のようにノワルリンドの後を追って空を飛ぶ黒い竜人族達が呼応する。

ノワルリンドのように常に飛び続けることができない彼らは定期的に地面へと落下しては木や岩などを踏み台に再跳躍する事で低速かつ低空で飛ぶノワルリンドに追随している。

『まぁいい、この我に 集 ( たか ) る蛆を進んで駆除するというのならば我が後塵を拝する栄誉を与えてやっても良いというものだ』

「ふふん、最良の状態で挑んでこその挑戦ですからね! ノワルリンドさんはジークヴルム戦に集中してください!」

『……ふん』

黒竜はそれっきり何を言うでもなく前を向いた。

しかしその背に乗せた少女を振り落すこともなければ、その背に続く小さな影を振り払うこともまたなかった。

光属性に浄化されてツンデレ化したドラゴンがいるとかマ?

色々描写したかったけどさっさと展開進めたかったのでダイジェスト集の術!!