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龍よ、龍よ! 其の十

シャングリラ・フロンティア〜クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす〜 — ncode.syosetu.com · All chapters

龍よ、龍よ! 其の十

一日に三回も更新するなんて……っ! 一日二回ならともかく、三回も……っ! 一日一更新を守らないばかりか、俺は……俺はなんて事を……っ!!

大気が切り裂かれるような風の中、ノワルリンドとジークヴルムが縦横無尽に空を飛翔する。

追う側であるジークヴルムはただノワルリンドを追うだけだ、それはまるで僅かでも足を止めればその瞬間に叩き落とすとでも言いたげな高慢で、されど力ある者にのみ許される慢心のようで。

「ノワルリンドさん! 一瞬減速を入れて後ろを取れませんか!?」

『我に命じるなっっ! 元よりそのつもりよ!!』

全速力での宙返り、僅かな一瞬とはいえノワルリンドがジークヴルムの背後を取り、その瞬間を逃さず黒竜のブレスと秋津茜の手裏剣が叩き込まれる。

『効かぬわ!』

『おのれェ……!』

「いいえ、ノワルリンドさん! 多分効かないのは角が光ってる時だけです! そして、物理的な攻撃なら通ります!!」

『ならば叩き落としてくれる!!』

秋津茜の見立ては正しい。ジークヴルムのアクションの一つ「 輝ける龍王 ( トゥーパック=アマル ) 」はジークヴルムの角を起点として全身に付与される強化状態である。

高濃度の魔力を衣のように纏う事で外部からの魔力的干渉を 溶かし混ぜる ( ・・・・・・ ) 黄金の闘気は物理的干渉に関しては効果を示さない。

尤も、ジークヴルムの肉体は物理的な追加補強を必要としない、という理由もあるが……少なくとも、光輝に包まれたジークヴルムを攻略するためには物理的な攻撃こそが肝要となる。

『ノワルリンドめ、貴様に格闘戦の基礎を教えてやろう……爪と言うものは、手と拳のような動きは出来ん!!』

『な、ぐぉ!?』

肉食獣のような四足歩行のドラゴンベースたるノワルリンドに対してジークヴルムはほぼ人型と言っていい二足歩行のドラゴンベースだ。

その喉に食らいつかんとしたノワルリンドの首をジークヴルムの両手が掴み、そしてそのまま渦を巻くかのように黄金が漆黒を投げ飛ばした。

『ぐぉあぉあ!?』

「わわわわ……刃隠心得! 【 鼯衣 ( むささびのころも ) 】!!」

宙に投げ出された秋津茜であったが、地に激突する寸前にパラシュートの如く布を広げる事で落下の衝撃を軽減する。

「ふぎゅっ」

とはいえ完全なゼロとまでは行かず、なんとか受け身を取って着地した秋津茜の体力が半減する。

「ノワルリンドさん!」

『ぐ……ぬぅう……』

素人の背負い投げのような形で地面に叩き落とされたノワルリンドが呻きを上げ、顔を上げた秋津茜はマズイ、と慌てて走り出す。

「……どうする?」

「倒せるとは思えないけど……削ったほうがいいのか?」

「いやでも、ジークヴルムのヘイトを受け持ってるのはデカいよ?」

「こまけーことは良いんだよ、前に前線拠点を半壊させた借りは返さねーと」

プレイヤーの注意が、ノワルリンドに向いた。

元より前線拠点を襲った前科持ちだ、そうでなくともシナリオクリアの条件に組み込まれている時点でノワルリンドもまた攻撃に晒される可能性はあった。

今まで狙われなかったのは単純にプレイヤーの射程圏外で戦っていたからに他ならない。地に伏し、隙を晒している今狙われるのは至極当たり前のことと言えた。

「ま、待って待って待ってくださーい!!」

ノワルリンドを囲まんとするプレイヤー達が武器を握る手に力を込めたその時。

二つの「個」がノワルリンドへの袋叩きをその登場で中断させた。

『覚悟は決まったか、ノワルリンド……む?』

「悪いなジークヴルム、身内の縁ってやつでな……俺はこいつの助太刀なんだ」

黄金の龍王、ジークヴルムは威風堂々たる様子で地へとその足をつけた。

しかし、しかしだ。それに相対すべくノワルリンドの前に立った男もまた、七つの最強種に真っ向から立ち塞がって尚怯える素振りすら見せることなく。

「ウチの兄貴から「遠慮なくぶっ飛ばしてこい」と後押しされたんでな……」

『ほう、ほう、ほう! 知っている、知っているぞ貴様! 我が盟友ヴァイスアッシュが食客……リュカオーンに傷刻まれし戦士! 名は確か……エンラク!』

「サンラクです」

夜空に瞬く星々をありったけ詰め込んだかのような、尋常ならざる輝きを放つ「大剣」を携え、鳥を模した覆面と申し訳程度の腰装備以外はほぼ肌を露出した異様な格好。

素肌に傷の如き刻印を這わせ、単純な強さとは別方向の異様な威圧感を漂わせるそのプレイヤー……サンラクはただ一人、真っ直ぐにジークヴルムを見つめて傲岸不遜に告げた。

「ロールプレイをお求め? 宜しい、 決闘 ( タイマン ) 張らせて貰おうかジークヴルムっ!!!」

『く、くかか、ふははははは!! よかろう! よかろう!! 英傑よ、ならばその決闘受けて立つ!!!』

何が起きているのかわからないと言った様子でその光景を見るプレイヤーをかき分け、秋津茜がノワルリンドの傍にまでたどり着く。

「サ、サンラクさんっ!」

「よう秋津茜、遅刻したのは申し訳ないが……その分時間稼ぎは任せてもらおうか。そこの黒いのをさっさと立ち直らせな」

『なんだと貴様、虫如きが……』

「あ? ンだコラやんのか? 全身素材 ( ドラゴン ) が、我レベル145ぞ? 蜘蛛を散らす ( ・・・・・・ ) レベルぞ?」

『ぐ、ぬぅ……! 猪口才な』

首をかっくんかっくん動かしながらノワルリンドへとガンを付ける半裸の鳥頭、という壮絶に意味のわからない光景ではあるが【旅狼】は割とイロモノだらけのクランである。

そういうものだと特に気にするでもなく秋津茜はジークヴルムの様子を伺いつつも話を続ける。

「あの、サンラクさん……」

「いいか秋津茜、足止めっつっても多分 一分保たない ( ・・・・・・ ) 」

「え……」

「ペンシルゴンとオイカッツォに言伝を頼む、「ルスト計画をここで済ませる」ってな」

「え、あ、はい」

さて、とサンラクはジークヴルムへと振り返ると、何でもない風に一歩踏み出し、既に合体機能を発動した蒼耀月を携えながらジークヴルムを真っ直ぐに見据える。

「待たせて悪かったな、さぁ 一対一 ( サシ ) でやろうぜ」

『良い、許そう。足止めと宣いながら貴様……その剣の輝きにどれだけを費やした? この我をも両断せんばかりではないか』

「聞きたいか? 手持ちの成分結晶を全部叩き込んだスペシャルチューンだ……入れた数は百から先は覚えていない!!」

『いいだろう! 我が前にただ一人立つことを許す! サンラクよ、我が重力圏にてその輝きを見せるが良い!!』

誰が合図したわけでもない。ただ、ジークヴルムが天高く飛翔したのとサンラクが右拳で胸を叩いたのは全くの同時であった。

「ノワルリンドさん! ここは直撃コースですよ!」

『ふ、ふん……虫め、足止めの栄誉をくれてやろう!』

「うっせぇスカタンクロトカゲ!」

『スカ……っ!?』

「後に! 後にしましょう! ね!?」

既に両者共に相手を仕留めることのみに意識を集中させる領域に入った。

例えるならそれは至近距離で引き絞った弓矢を突き付けあうかのような。自らのダメージを完全に無視してでも、確実に相手へと致命の一撃を叩き込むと言わんばかりの、殺意と決意の衝突。

空中で宙返りを経て加速したジークヴルムが地を切り裂くかのような豪速で一直線にサンラクへと迫る。

黒雷を纏い、その目より残光を奔らせたサンラクが迫るジークヴルムへ自ら突撃する。

ほんの僅か、息を呑むほんのわずかな一瞬の空白、静寂。

激突の刹那、相対する一体と一人が同時に叫ぶ!!

「───晴天流【疾風】!!」

「─── 狂騒領域 ( Jazzy-Zone ) !!」

激突。

今日はここで更新終わりって言ったら怒りゅ?