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合法・背水の陣

シャングリラ・フロンティア〜クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす〜 — ncode.syosetu.com · All chapters

合法・背水の陣

覚悟とは! プロットを粉砕して投稿寸前だった3000字を全消去する事だ!!

◇

「……………」

「あのー、シルバーさん?」

「あー……うん、ちょっとシルバーはガチ考察に入ったっぽいんで放っといてください。うん」

「そ、そうですか……でも、確かに今のは凄かったですね……こう、すり抜けるみたいに 機械群 ( メカニタン ) の間を走り抜けて、顔面でパンチを受け止めてから……えーと」

「地面を蹴って加速、浮遊で懐の中に滑り込んでから空中ジャンプ、プリズンブレイカーの身体を柱代わりにポールダンスみたいな動きで腕をひねり上げて銃撃」

「え?」

「あ……あー、すいません。口に出しちゃってたか……後で問い詰めればいいや、解説に戻りましょうか」

「は、はぁ……」

先ほどまでの愛想はどこへやら、目を細めて黙り込んでしまったシルバーを余所にいち早く愛想を取り戻した慧が画面に表示されたゲージを指して解説を始める。

「ターゲットエネミーの乱入、超必殺の撃ち合い、そこからピクシーの脱落……単純に見れば顔隠しの方が力負けしたようにも見えますけど、実際これ相当こんがらがってます」

「どういう事でしょうか?」

「まず「大佐」の乱入は多分般若の方が仕込んでました、ダストを倒してから殆ど移動してませんでしたから……ディスプレイで大まかな座標と進行ルートを予測してたんだと思います」

「つまり……顔隠しさんが最初から釣られていたと?」

「そうなりますね、ピクシーは確かに俊敏だけど「大佐」が引き連れている機械群はデカいですから、どれだけ取り繕っても邪魔な障害物です。さらに……あ、コメントでも指摘されてる方がいますね。そうですね、アメリアじゃないけど般若の力量なら「大佐」を撃破吸収する狙いもあったと思います」

「えー、つまり般若さんは「ピクシーの動きを封じる」「ターゲットエネミーの撃破」の二つを狙っていた、と?」

「そうなります、ただここに顔隠しの方の目論見が入り込んできます。厳密にどっちなのかは後で問い詰めないと分からないですけど……顔隠しの狙いは超必殺の合計発動回数を四回にする、なんじゃないかな?」

「五回ではないんですか?」

「むしろ逆ですね、般若が理詰めのゲーマーなのは顔隠しも知ってますからウルトクリスタルという不確定要素をチラつかせる事で超必殺の発動を封じるつもりなんでしょう」

取得すればゲージを最大まで獲得する、それは一つしかない。即ち只でさえ複雑な三つ巴におけるさらなる不確定要素たるウルトクリスタルの出現条件はプレイヤーによる六回の超必殺発動である。

「ピクシーの超必殺も大概面倒ですけど、顔隠しの大トリはカスプリですからね……シルバ……んん゛っ! シルヴィア・ゴールドバーグ相手に引き分けたプリズンブレイカーを無償降臨させるリスクなんて僕でも背負いたくないですよ」

「つまり顔隠しさんは超必殺の撃ち合いをする狙いだったんですね」

「般若もそれを承知してたんでしょうけど、丁度のタイミングで「 大佐 ( カーネル ) 」がよりにもよって「 戦乙女 ( ヴァルキュリー ) 」引き連れてきましたからね、どちらにせよ脱獄を使わざるを得なかった状況になっちゃったのが般若側の想定外その1ですね」

恐らく、般若の当初の狙いはカースドプリズンのままティンクル・ピクシーの対応をしつつ機械群の乱入で三つ巴に持ち込むつもりだったのだろう、と慧は「機械群」を相手に戦っている方のカースドプリズンを指して推測を言葉にする。

「でもピクシーの方が予想外に粘った上に、ダストの置き土産のせいで数的有利がほぼ無いくらいに追い詰められたのが想定外その2ですね。他キャラの武器は使えるけど威力減衰するから生き残りこそしたものの、逆に小パンで死ぬような体力だけ残ったせいで般若は死ぬに死ねないし「大佐」を倒さざるを得ない状況になっています」

「……あ! 顔隠しさんの最終キャラがカースドプリズンだから!」

「その通り、「 大佐 ( カーネル ) 」を放置すればターゲットエネミー撃破ボーナスと「大佐」という素材を顔隠しに奪われかねないですから、放置するという選択肢はありません。でもミリ体力なのでまず確実に倒されるわけで……ターゲットエネミーを倒す事で得られる恩恵がほぼ無駄になったんですよね」

それでも「大佐」を倒した時点でキャラの入れ替え……つまり自らカースドプリズンの体力をゼロにしないのは多分「カースドプリズンvsカースドプリズン」の構図を諦めてないからだろうなー、と慧は心の中で呟く。

だからこそ 意味不明 ( ・・・・ ) なことをしているアホはともかく、アメリアがしようとしている 無茶無謀 ( ・・・・ ) は理解することができたのだ。

「……そうよね、いくらアメリアでも「 戦乙女 ( ヴァルキュリー ) 」相手にノーダメージは難しいでしょうし、二体目のターゲットエネミー撃破ボーナスの「HP回復」を狙うなら「 総帥 ( コマンダー ) 」を狙うしかない、か」

「シルバー? 素で本名出すのやめよう? 多分ほぼ全員分かってるけど言わないようにしてたじゃん?」

「うっちゃりうっちゃり?」

「何? リキシオン使いにでもなるつもり? うっかり、ね」

今、三角形の街には二人のカースドプリズンがいる。1Pカラーの 呪鎧 ( 般若 ) は風前の灯な体力のまま「機械群」の本拠地へと突撃を仕掛けている。

では、もう一人のカースドプリズン……派手なオレンジカラーの 呪鎧 ( 顔隠し ) は、一体何をしているのか…………?

◆◆◆

瞑想をしている。

いや迷走しているわけじゃない、ちゃんと目的あっての瞑想だ。

「…………」

久々に鯖癌時代のメンタルで暴れて分かったが……今の俺は、ゴミだ。

テンションそのものはそこまで悪くないがやはり明確に目的が定まっていないが故にナメくさった動きしかできていない気がする。

「…………」

座禅、暝目、そして意識を集中させる……幸い場所が場所だ、五分程度なら見つかることもないだろう。外野からは舐めプと思われるかもしれない、だが俺と戦うためだけにどれだけの手間をかけたのだろうアメリア・サリヴァンを満足させるカースドプリズンを用意するために必要な儀式なのだ、勘弁してほしい。

ライオットブラッドの多重服用によって高揚した頭をあえて落ち着かせて、俺は新たなテンションを構築する。

何のために戦うだとか、そんなものはどうでもいい。強いて言うなら報酬と勝利の美酒で 酔う ( ドヤる ) ため、 傭兵 ( 助っ人 ) が戦う理由なんてそれくらいでいいだろう。

「…………」

ならば思考を逆転させよう、何のために戦うのかではなく戦うために何をするべきなのか……そう、答えはライオットブラッドだ。

戦うためにライオットブラッドを飲んだのではなく、ライオットブラッドを飲んだからこそフルパワーで戦う…… 暴徒の血 ( ライオットブラッド ) は既に全身を駆け巡っている。

ならば今この瞬間、俺の全身はエナジードリンクで満たされていると言ってもいい。ライフイズカフェイン、心臓爆発するんじゃねーの? おっと集中集中。

「…………」

中ど……ヘビーユーザーはライオットブラッドをキメて己の深奥に向き合い、大宇宙と交信するという。ミドルユーザーたる、まして合法に堕ちてもいない俺にそこまでのトチ狂いは望めないが、それでも瞑想の果てに見えるものがあるはず。

内なる心に広がるエナドリの海、精神統一によって波一つない凪の水面に……………

…………

……そういえばそろそろ二十分過ぎた?

「見えた!!」

見えたぞ血の一滴! ライオットブラッドユーザーが心の奥底に飼う暴徒の魂!!

稲妻の如く脳裏を駆け巡る思考が既にフルスロットルなエンジンにさらなるニトロを注ぎ込む。

俺の中を駆け巡る燃料が二十分の経過を迎えたことで化学反応を起こす。ミックス、アクセル、そしてジョイント……カフェインをカフェインでカフェインした多重連結が効果切れの寸前に一気呵成に燃え上がる。

「我、天啓を得たり……!!」

そうか、ライオットブラッドにハチミツとドライイーストを入れて発酵させれば……いや違法じゃねーか! おのれアメリア・サリヴァン! 向こうから喧嘩ふっかけてきたくせに勝ったら全世界にドヤ顔勝利報告するつもりだな! SNSとかで!(被害妄想)

そしてそれをネタに末代まで煽ってくる外道共の顔が見える……!(幻覚)

誰が舐めプボコられ変質者だと!?(幻聴)

「許せねぇ……!!」

上等だコラ、そっちがその気ならこっちにも考えがある。くれてやるよ俺の今日一日分のテンションを……!!

瞑想は成った、今こそ ダストの遺産 ( ・・・・・・ ) を使う時……!

・瞑想

ライオットブラッドを服用して精神統一を行う事でおのれの心と向き合う上級者向けの嗜好法。合法に堕ちた者ともなれば、星の海より瞳を授かることも出来るとかなんとか。レッツリゲイン!

ライオットブラッドに世界を変える力はないが、その手助けをすることは出来る……一歩踏み出せない貴方にこそ、届けたい。

ライオットブラッドシリーズ、好評発売中。

新発売! 即効イグニッション、リボルブランタン!!