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あなたの為のオーケストラ 其の一

シャングリラ・フロンティア〜クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす〜 — ncode.syosetu.com · All chapters

あなたの為のオーケストラ 其の一

忍者の体幹ガバガバかよお前……

ゼノサジをボコって「俺は強くなりすぎた……」と万能感を補給しなければ早期段階で青ニートになりかねませんよこれは……(自分は心が折れてないという事を証明する為の更新)

システム的に再現されたブラックアウト、というのは分かっているがなんだか不安になるんだよなぁ。転移というシステムがそういうもの、と設定しているのかもしれないが………で、相変わらず前準備無しでボス戦に突っ込んでくれやがった。

「しかも強制ソロとか聞いてねーぞ……?」

……とはいえ、いきなりオルケストラ(詳細不明)が襲いかかってくる、というわけではないらしい。いやに静かだ、そして薄暗い。

「シンボルエンカウント?」

薄暗いが周りの景色が見えないわけではないという絶妙な光量、そして強制戦闘突入でないのなら辺りを観察する余裕がある。

見た限りの印象は、やはりというか「劇場」だろう。装飾に重きを置いた作りの柱や床、しかしながらそれらは主役ではなくあくまでもこの後に来る本命を引き立てるための舞台だ。

とはいえ戦うことが前提であるためか、よくある劇場型ではなくコロシアム型……不自然な程綺麗に整地されている正方形のフィールドは人型であろうと怪物型であろうとその全力を出すのに何ら支障をきたさない。

ますますその正体が分からない……今のところ物語らしい物語のないゴルドゥニーネですらもう少し設定の輪郭くらいは分かるのに、こいつに関してはここに来てほとんど何も分かっていない。そしていつまで経っても何も起きない!!

「何かトリガーがあるのか? 観客席?」

コロシアムの中には何もないし、となると怪しいのは……ん? 壁に何か埋まってる?

「なんだこりゃ?」

一瞬壁の模様か何かかと思ったが、薄暗い中でもよくよく見てみればあまりにもこの場の装飾から浮いたフォルムをしている。小さな金属塊だ、とはいえ何かのパーツと言うよりもこれ単体で完成しているような……そう、例えるなら小さなデバイスが物理的に壁にめり込んでいるような。

というか目を逸していたが俺はこのフォルムに激しく覚えがある、厳密には父からの話で聞いて調べたことがあると言うべきか。

今でこそ携帯端末で大体のことができる世の中だが、昔は音楽のためだけに使うデバイスなんてものもあったらしい。つまり、その、なんだ………今の状況を言語化するなら、そう。

「何故壁に音楽プレーヤーが……?」

不釣り合いとかそういうレベルではない、誰だってカレーの中にカレー味のスナック菓子が入ってたらおかしいと思うだろう。海の中にビニールプール沈めてまでビニールプールで泳ぐ価値はあるのか? ないだろう、海で泳げよカレーを食えよ。

バトルフィールドとは言えこんなに豪華な劇場で音楽プレーヤーを使う理由はない、何せこれから戦う相手は冥響のオルケストラ、名前からしてオーケストラ的な敵だろう。

とは言えこの場所において唯一の場違いなものだからこそ、ゲーム的思考から調べずにはいられない。

「やっぱり地球とつながりがあるのかね、アイコンからして地球規格だ……」

丸に縦棒突き刺したような電源ボタンを押せば、ホログラム的なウィンドウが音楽プレーヤーから発生する。

選択できる項目は一つ、プレイリストの名前は……

「エリーゼ・ジッタードール……ジッタードール?」

あれ、さっき聞いたような。でもあっちは名前からして男だったような……んー?

「まぁ何年経とうがここら辺のUIが劇的に変化するとも思えんわな」

ボタンを押さなきゃ次には進まないのだ、エリーゼ・ジッタードールなるプレイリストを開いてみればそこには一曲だけ……

「Your Orchestra……」

あなたのオーケストラ? ドンピシャだな、これがバトルスタートのフラグだな? 無音の劇場で「あなたのオーケストラ」なんてタイトルの曲を自ら流す、なんかホラー的なものを感じ始めたが……いいね、いつまでも開演前の劇場で時間を潰していられるかよ。

「再生っ……うぉわ!?」

バン! と四方八方からのスポットライトに俺の全身が突然照らし出される。おいカメラ止めろ! 半裸をピックアップすんな放送事故だぞ!!

だが曲は既に再生されている、停止ボタンを押そうにも音楽プレーヤー自体が目を離した隙に跡形もなく消えている。つまりクリアするか途中で死ぬか、終わらせる方法は二つに一つ!!

「いいぜ来いよ! 獣か!? 人か!? 袋叩きも拒まねーぞ、無双ゲーなら得意分野だ!!」

果たして、現れたのは……一人の女だった。コロシアムのフィールド上じゃない、観客席の方……いや、観客席じゃない? 薄暗いのとあまりにキッチリした設計だから勘違いしてたが、これ四方の内三面が観客席で、残る一面が「舞台」なのか?

「……なんだあれ」

通常NPCのような肉体のある存在ではない。どちらかと言うと、遠き日のセツナやホログラム「勇魚」のような実体のない幽霊みたいな、明らかに物質的な 重さ ( ・・ ) を感じさせない奇妙な女が「舞台」の壇上に現れていた。

正直に言おう、基本的に美男美女がデフォルトなゲームにおいて(そりゃ意図的にパッとしない顔だったり不細工もいるだろうが)ユニークモンスターという目玉コンテンツでここまで パッとしない ( ・・・・・・ ) 女が現れるとは思わなかった。

恐ろしいまでのモブ顔だ、一晩経ったら絶対顔が思い出せないようなモブの鑑のような顔をしている。醜いわけではないが美しいわけでもない、最初の村で木こりの妻とかやってそうな顔としか形容できない。

魔物襲撃で三番目くらいに死にそうな……と、そんな風にNPC相手じゃなければ相当失礼な事を考えていた俺だったが、続けて起きた出来事の数々にそんな余裕の思考は跡形もなく吹き飛んだ。

まず最初に、「女」……恐らくエリーゼ氏の出現に続くように何かを持った人型……目鼻も口も、髪もないマネキンのようなのっぺらぼうが現れた。

最初は武器を持っているのかと思ったが……違う、あれはバイオリンだ。

そして次に、現れた人型バイオリニストが手に持った楽器を弾き始め……モブ顔の女、いいやこの場における「歌姫」が開いた口から発せられた綺麗なソプラノボイス。

機械音声ではない、恐ろしく精巧に再現された上手い歌声が静かに歌を歌い始めた。

そしてさらに、歌姫の歌とバイオリニストの旋律に引っ張られるように次々と人型が現れる。ある人型は巨大なコントラバスを、またある人型はシンバルを。コーラスが現れ、フルートが、ヴィオラが、ホルンが、トランペットが……いつしか歌とバイオリンだけだった旋律がフルオーケストラに変わっていく。

そして最後に、 それ ( ・・ ) は「舞台」ではなく「コロシアム」に現れた。

「………は?」

人型だ、知っている。

武装している、それも知っている。

中世ファンタジーでは異質な和風の鎧だ、知っているさ。

だってお前は、テメーのその面は……!!

『【サンラクの紡いだ物語】第一楽章……「墓守は憩う」』

「ウェザエモンだと……!!?」

幻影のような、ホログラムのような不安定な姿だがあの特徴的な鎧はたった一度の交戦だとしても忘れるものではない。

というか待て、今壮絶に嫌な予感がしている。

貴方の為の歌、 俺 ( サンラク ) の紡いだ物語、第一楽章、吟遊詩人、英雄譚

そこから算出される答えは………

「今までに戦ってきた相手を、再げ──────」

「 断風 ( タチカゼ ) 」

そこで思考は消し飛んだ。

冥響のオルケストラ

プレイヤーのログを参照して歴戦値の蓄積率が高かったエネミーを再現する。要するに「お前という物語における強敵を抜粋したボスラッシュ」

あれれー? やたら強敵とのエンカウントが多い半裸がオルケストラに挑んだらどうなるのかなぁー???? 答えはCMの後