LNCrawler

あなたの為のオーケストラ 其の五

シャングリラ・フロンティア〜クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす〜 — ncode.syosetu.com · All chapters

あなたの為のオーケストラ 其の五

ラスボス倒せなさ過ぎて藤原竜也みたいな事になってる

なんで……? なんでどいつもこいつもしれっと飛び道具使うの……?

裏ボスは倒しました(マジで倒した時踊った)

条件を満たさなければ延々と続く演劇ではあるが、条件を満たしたら満たしたで巻いていくんだよなオルケストラ……

回復アイテムで餌付けした再現「傷だらけ」のセンターヘッドに咥えられた俺はなんかもう気持ち悪いくらいその形を歪める劇場が形成した坂道を登り、元の形になったコロシアムへと戻る。そしてそこにはすでに最終形態である赤い竜巻を背負った再現貪る大赤依がこちらを待ち受けており……

『───駆け抜けて、炎の、道を!!』

「ナパームロード開通!!」

ここは覚えている、俺の左右を迸るナパームの炎が作る道を駆け抜けて再現貪る大赤依へと肉薄……守りに入った胸部の大口に攻撃を叩き込んでいく。

確かあの時もこうやって煌蠍の籠手で……あれ? いや待て違うぞ、あの時は確か……

『───二つ姿、闇に身を包み、乙女は墓標携え死を悼む……』

「だぁーっ! しまったァーっ!!」

己の記憶に騙された! 煌蠍の籠手で大ダメージを与えたのはブライレイニェゴの方じゃねーか! ちょ、ちょっとタンマ! あ、ダメ?

「舐めんな!!」

ガンガン殴っていた大口を足場に跳躍、空中で跳躍しつつ聖杯を使って性転換。随分と細くなった足で「傷だらけ」の背中に着地してさらにウィンドウ操作、使い捨て女用装備を纏いつつR.I.P.を起動させる。

「変身完了……!」

この姿の俺が携える墓標、即ち 別離なく死を想ふ ( メメント・モリ ) を取り出し構、え……おっも!! え、なんでこんな重……あっ、キルスコア稼げてねーのか!!

「うお、ちょ、待っ」

そしてもう一つうっかりミス。別離なく死を想ふは使用者が体感する重量を軽減する能力を持つ。つまり俺自身が軽く感じ、軽く振ったとしても俺以外の存在からすれば人の膂力では持ち上げる事すら困難な特大剣そのままということだ。それは攻撃される相手へのダメージというメリットに繋がるが、今回に限っては「傷だらけ」の背中に突然超重量の重りが載せられるというデメリットとなってしまった。

「 傷だらけ ( スカー ) 」が煩わしいと言わんばかりに身体を激しく揺らす。当然俺の身体は奴の背中から転げ落ち、ジュラシックタップダンスから逃げるためになりふり構わずに転げ回ることになった。

「ちょ」

顔の直ぐ隣に爪! こっちに回避!

「ゔェ」

ワンテンポ早かったら上半身と下半身がサヨナラしてたぞ、こっちに回避!!

「ひえっ」

拝啓父上母上、男に産んでくれてありがとう。ガニ股に抵抗があったら下半身が押し花にされてました……離脱離脱離脱ぅう!!

「あ、あっぶねぇ……」

誰がタップダンスされる床の体験をしたいなんて言ったよ、だが困った……別離なく死を想ふを持ったまま回避なんて出来るはずがない、つまり捨て置いたのなら拾いに行かなければならない。そしてさらにもう一つ問題がある。

確かあの時俺は片手で扱えるくらい軽量化した別離なく死を想ふとアラドヴァル・リビルドによる二刀流で戦ったはず……今の状態では別離なく死を想ふを片手で扱うことはできない。どこかでキルスコアを稼がなければならない、そしてオルケストラが状況再現させる性質を持つのならどこかにヒントというか救済策があるはずだ。だってソロ固定だし。

「やっぱあの竜巻か?」

貪る大赤依の正体は飛蝗の群れだ、その性質を完全再現しているとなれば本体の背中から発生している竜巻は実質的に大量の当たり判定とMob判定を持っているわけだ。

爆炎と魔力光が乱舞する中で、即興だが確信を持つに値するチャートを組み上げていく。拾って、前に、斬りつけて………よし、あとは実行あるのみ! ミスがなければ最速それがRTAってなぁ!!

「行くぜ理論値!!」

前へ、踏み潰されているなんてことこそないが拾うのになんら苦労しないかと言えばそうではない。それに踏み潰されない保証があるわけでもなく、であればここで選ぶべき手段は最速最短で拾うこと!!

一気に距離を詰め、ただ動きの余波として揺れるだけでこちらを吹き飛ばしかねない「傷だらけ」の尻尾をスライディングで回避、立ち上がりつつ手の届く距離まで来た別離なく死を想ふの柄を両手で掴んで担ぎ上げる。

「っ!」

おのれ、再現されても俺を狙うか尻尾頭! だが甘い! 最速チャートだからこっちが先手! 次のターンも俺! エクストラターンとキルスコア寄越せコラぁ!!

「運動エネルギィィィ!!」

全力の投擲、投げ飛ばされた別離なく死を想ふの行き先を見る前に回避!

多頭モンスターの厄介なところはそれぞれが独立した眼を持っている事だ、それと同時にそれらは一個体である事だ。全ての目から投げ切らねば視線を遮ることは基本的に不可能、一度避けたところで捕捉されている限りは追われるしそもそも奴の攻撃はビームタイプだからそのままホーミングしてくる!

「だが回避すればそれでいいのさ!!」

欲しいのはもう一手打つ為の時間だ、ウィンドウを操作して取り出した 冥王の鏡盾 ( ディス・パテル ) でビームを受け流すように傾けて構える。簡単な理科の実験だ、レッツ・リフレクション!!

「手応えあり!!」

体力が回復する、それはつまり投げ飛ばした別離なく死を想ふがキルを稼いだということ。武器が仕留めれば防具が応える、地面に落ちた特大剣を拾いに行くべく円盾を構えながら走り出す。

冥王の鏡盾ならブレスは防げるがその場で踏ん張る必要がある、つまりロスだ。ならやはり回避安定、あえて再現貪る大赤依へと距離を詰めていく!

「背中を借りるぜ大赤依!!」

意図せずして背中コンプか? いやそれはどうでもいい。重要なのは尻尾頭は本体の背中、厳密には尻付近……腰? を転がるように盾を押しつけながら飛び越える俺に対してブレスを撃たないって事だ、自分に当たるもんなぁ?

落ちた 別離なく死を想ふ ( メメント・モリ ) を拾い上げる、いいね片手で持ち上げられる。条件は満たした、あとは詰めていくだけだ。

お望み通り英雄譚の再現をしてやるよオルケストラ!!!

◆

貪る大赤依が溶けるように崩れ落ちていく。ただあの時と異なる点があるとするなら飛蝗が塵のように消えるのではなく紐のように光に解けていくってことか。

そして、この場において本物は俺だけだ。当然再現された「 傷だらけ ( スカー ) 」も消えていく。

「サンキュー兄弟」

さーて……そろそろフィナーレを見せて欲しいもんだがね。オーケストラって十も二十も演奏やるもんなの? ボスラッシュ的に五、六くらいで勘弁して欲しいが。

『【サンラクの紡いだ物語】第四楽章……「悲劇の終幕を、死後に改め」』

「むっ」

R.I.P.が解除された? というか、男に戻っているだと? んな馬鹿な、死ぬまで解除されないはず………まさか、システムレベルでオルケストラが優先されている? そして、貪る大赤依の後に何が来るかと身構えていたがあのタイトル………難易度は段階というわけではない? と、なると…………

何か今、ものすごく嫌な予感が脳裏でちりついたが気にしている場合ではない。

「これの攻略法は流石に覚えてるんだよなぁ……」

今はこの ボーナスタイム ( ・・・・・・・ ) を速攻でクリアした方がいいだろう。

本編の息抜きに掲示板を書き、掲示板の息抜きに本編と同じ真理書を書く

無限ループ……!!