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写し身の蛇よ、燃え上がる叫びを聞け

シャングリラ・フロンティア〜クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす〜 — ncode.syosetu.com · All chapters

写し身の蛇よ、燃え上がる叫びを聞け

600話なので本来は今章のエピローグに出そうかなと思ってた設定を1話丸々使って出しちゃおっかなって

つまり実質本編がゲロ、後書きから本編まで侵食しだしましたよこいつ

シグモニア前線渓谷は新大陸のほぼ中央に存在するエリアだ。ここから前線拠点へと向かうなら超えるべきは砂漠と樹海……すなわち、現在も多くのプレイヤーを阻む樹海と砂漠を逆方向に走破する必要がある。

とりあえず最低限のレベルは確保したとは言え依然としてクソザコヘタレなウィンプという足手まといを連れた状態での強行軍は不可能なのか? 否、否である。俺たちにはあのお方がいる、長らくあのどヘタレを介護してきた実績を持つレジェンダリーヘルパー………そう、サミーちゃんさんだ。

蛇という生き物の身体は砂地であっても問題なく這うことができる。足が砂に捉われないというだけでも莫大なアドバンテージだというのにサミーちゃんさんは密やかに、そして迅速に行動するステルス・ミッションのエキスパートでもあらせられる。そして何より背中にウィンプだけではなくエムルも乗せられるってのが最高だ。

え? 俺とサイナ? 俺は封雷の撃鉄・災使えばいいしサイナは征服人形の共通装備で長距離飛行を可能としている。うん、むしろサミーちゃんさんが遅いまであるのだが俺やサイナはステルスできないがサミーちゃんさんはステルスできる、つまりサミーちゃんさんが上位互換だ。

「砂漠、あんまり強いモンスターいないのか?」

「補足:存在します。潜砂寄蟲アニサピカイアン・ワームなどが比較的地上に出現する傾向の高いモンスターではありますが他にも蟲人族が「砂海の蛇王」と呼称するモンスターも存在します」

「蛇だってさ、仲良くできねーの?」

「……あいつ、いっかいわたしのことたべようとしたからきらい」

蛇的に上下関係とか……無いんですか? いや、多くは聞くまい。

こいつの苦労話を聞き始めると朝になっても終わらない気がする。しかも大体敗北と逃走の歴史なので気分がガンガン沈んでいくという追加効果もある、拷問か何か?

「とはいえ砂海の蛇王が出現することはないかと……変温性のモンスターなので」

ああ、夜だもんね……まぁいい、見てみたかったが無駄なエンカウントをしないならそれに越したことはない。カナブンの親玉みたいなでかい虫が俺の姿を見た瞬間爆速で逃げていくのを眺めながら俺達は砂漠を越えていくのだった………まぁそんな風に楽に越えられたら苦労はしない、このあと俺達は背中にサボテンを生やした陸戦型ヤドカリによって地獄の逃走劇を繰り広げることになったわけで。ええい、針を飛ばすな針を!!

◆

「あれ、ウィンプは?」

結局戦うことになり、殻代わりに被っている岩の上に生えたサボテンを全て伐採してやってようやく撤退していったサボテンヤドカリを見送りつつ、俺は姿のなくなったウィンプを探して辺りを見渡す。

おかしいな、サミーちゃんさんはそこにいるのにあのヘタレだけ姿が見えないってのは……おやサミーちゃんさん、喉の辺りが膨らんでませんか。

「あー………エチケット袋いる?」

でろぉ……

「ふくものがほしい……あとふく」

韻踏んでんじゃねーよラッパーかよてめーはよぉ!!

なるほど確かにサミーちゃんさんのステルスは厳密には実際に身体が透明になってるわけじゃない、多分原理はカメレオンとかそういう擬態系列だ。再現度と気配の消し方が上手すぎるので勘違いしがちだが、その体内に隠れたならばその恩恵を受けることができる、が……

「いいかウィンプ、お前は何事においてもまず最初にプライドをかなぐり捨てるがな? プライドってやつは調味料だ」

「はぁ?」

「あったほうが美味いってことだ」

勝利に変わりはないができるドヤ顔の度合いが変わってくるんだよ、だからプライドは大事。なりふり構わずに勝ってもその必死さを笑われることがあるからな、正々堂々勝って相手が切断するまで煽り倒す………これが対人の 風情 ( ・・ ) というものだ。

「別に戦えとは言わんが、逃げるにしてももう少し慎みをだな……」

「つつしみぶかくにげてるじゃない」

そういう奥ゆかしさは求めてないんだよなぁ……まぁいいや、護衛対象が無傷なら護衛ミッション的には好都合だし。クソッ、"戦災孤児"との戦いから補給ができてないからやったらめったらに無茶が出来ない……壊される可能性の方が高いが、一応セーブポイント作っておくか。

「五秒寝てよしオッケー」

さて、邪魔は入ったが到着したぞ砂漠と樹海の境目。ここからは砂漠とは段違いの危険地帯だ……よくよく考えるとなんで最初のエリアの方が危険なんだ。

「夜行性のモンスターを警戒しつつ朝日が昇る前に目的地まで辿り着く、行くぞ………」

「ね、ねぇ」

「なんだよ」

「あしたに……しない?」

………はい?

家を失ったことで早急に寝床の確保が要されるウィンプは少なくとも砂漠渡りには異議を唱えなかった、だが今のウィンプはその逆だ。なんなら今から引き返してもいいと言わんばかりの様子で樹海を見つめている。

「訳を聞こうか?」

「け、けはいがするのよ……わたしじゃない、わたしのけはい……」

「成る程?」

そっと頭を抱える、マジかぁ…………

「どういうことですわ?」

「この樹海に少なくともこいつ以外の「ゴルドゥニーネ」がいるんだとよ」

「ま、まさか あの ( ・・ ) ……ひ、退くですわ?」

いや、それはないだろう。 あの ( ・・ ) ゴルドゥニーネ単体で動いてるならともかく、龍蛇が誰にも気づかれずに四体も移動できるとは思えない。つまりいるとすればそれ以外……ゴルドゥニーネのEXシナリオの性質とラビッツの地下で見た経験から察するに、抜け殻から「個」を見出したゴルドゥニーネがいる。

確か【ライブラリ】が大量の蛇を従えた女を見かけたとか言っていたな、そいつか? ここで引き返す選択肢は取りたくない、EXシナリオの発生条件がプレイヤーとのパーティ編成であるならゴルドゥニーネ達がプレイヤーと接触しやすい場所に移動している可能性が高い。

つまりここで引き返す選択肢はない、いつまで待ってもこの樹海にいるらしいゴルドゥニーネが移動するとも思えないのだ。可能性としては誰かプレイヤーがEXシナリオを発生させて移動する目もあるが、その場合最悪前線拠点でかち合うことになる。それならこちらが先に拠点を確保したい。

「………進むぞ」

「え……」

「だがもし仮に他のゴルドゥニーネに遭遇したなら、逃走一択だ。お前をサミーちゃんさんの口の中に突っ込んで俺が盾になってる間に東……あー、太陽が昇る方向に全力で逃げろ。エムルは会敵した時点で転移で離脱、前線拠点か征服人形の拠点に飛べ」

「は、はいなっ」

「わ、わかったわよう……」

そしてもう一つ、蛇の蠱毒と化した樹海を進むにあたって、俺にいい案がある………外見だけが全てとは言わないが第一印象は外見に因る、つまりそういうことだ。

◆

樹海に足を踏み入れて十分程経ったか。いやにモンスターと遭遇しない薄暗い中をプレイヤー補正、ピット器官補正、センサー補正によるノー 照明 ( ライト ) 強行軍で進んだないた俺達であったが、ここで遂にウィンプが能面の様に微動だにしない表情で小さく呟いた。

「───みられてる」

小さく、だがこの場にいる俺達にはしっかりと聞こえる音量で呟かれた言葉に頭の上の毛玉がぴくりと震えた。

耳を澄ませてみたが俺には特に何も聞こえない、だがゴルドゥニーネが「いる」と言うからには同一の同族故の直感とかがあるのだろう。

「……数は?」

「わからない、でも……」

ひとつじゃない、その言葉に思わず顔を覆いたくなるが我慢。折角ウィンプのやつが上手くやっているのに俺がボロを出したら目も当てられない。できればやらないに越した事はなかったのだが……プランBを使う時が来たようだ。

予め決めたハンドサインで作戦の開始を通達、姿を消しつつも俺達の近くにいたサミーちゃんさんがウィンプのすぐ隣まで移動してきた事をウィンプの 腕組み ( 合図 ) で認識した俺は、プランBに移行すべくウィンドウを開いて……ん? なんだこりゃ、通知?通知なんて概念がこのゲームに存在したのか。

「これは……彷徨う大疫青の報酬か?」

ああそうか、暫くインしてなかったから報酬受け取りが後回しになってたのか。そういえば"戦災孤児"と戦った時もなんかアイコンが出てたようなそうでなかったような……まぁ今すぐ行動しなければならないわけでもないので受け取ってみる。

『頭装備を変更します』

「むぇ?」

◇

「 お嬢様 ( ・・・ ) 、あの……あー、半裸の男の隣にいるのが?」

「あんまリ声を立てるンじゃないわよォ……間違いナい、「始まりの八」だわァ……」

「あれが、始祖たる一から枝分かれした八体の内の、一人……」

神代にその存在を成立させたという始まりの蛇、一番目のゴルドゥニーネ。始祖個体が脱皮し、自我を獲得した中でも二番目から九番目までの一桁個体を「お嬢」や二桁以降のゴルドゥニーネ達は始まりの八と呼ぶ。

その事を二日前ながら既に郷愁の念が強い砂浜で聞いていた男……シユーは息を潜めつつもプレイヤー補正でなんとか姿の見える一団に視線を向けた。

「お嬢」のしもべであるアンフィはこの場にはいない、あいにくアンフィは隠密というものが苦手である為に別の場所で待機しているのだ。始めの頃は随分とナメられた態度を取られたものだが、最近では下僕としてのある種シンパシーを感じるまでに関係構築ができたとシユーは自認している。

「随分とまァ、 ふんぞり返っタ ( ・・・・・・・ ) 態度ねェ……」

「一桁にもなると、見た目通りの強さとは限らないってことか……」

視線の先、暗闇が軽減されたとて距離まではどうにもならないので 遠見の筒 ( 望遠鏡 ) で一団を見ているシユーであったが、向こうもこちらに気付いているだろうに無防備にすら見える傲岸不遜な表情で腕を組む少女をレンズの中に収める。

何の因果か自分の新しい一面を見出した 主人 ( NPC ) とよく似た要素を持つ少女は笑顔を崩さないままに歩き続ける。己の力が他の何者よりも優れているという自負か、それとも己が下僕の才能を信じているが故か。視界に収めただけではそれを知ることはできない。

「どうしますかお嬢様、なんなら僕だけが突撃して威力偵察することもできますが」

「そうねェ……どう「処理」するカでこれかラの対応を見るのもアりだけどォ……シユー、あれと戦えるノかしらァ? あの不吉な夜ヲ纏った人間にねェ……」

「どうでしょう、それこそ向こうの対応次第って感じですが………ん?」

吐息が聞こえた。反射的に浮かんだその結論にシユーはこれ以上ない違和感を感じた。

声が聞こえた、なら分かる。だが吐息が聞こえた、というのは妙だ。肉眼でも見えないわけではないがそれでも望遠鏡がないと顔が分からない距離にいるにも関わらず、息を吐く音が聞こえるはずがない。

だからこそ、この場にいる「協力者」達の中でシユーが一番最初に それ ( ・・ ) に気付けたのは 神阪 ( こうさか ) 紫夕 ( しゆう ) という男のリアルでの立ち位置故だったのだろう。

「お嬢様、耳を塞いで!!」

「は? 何を……」

次の瞬間、深夜の樹海を粉砕するかのような───

◇◇

女が二人いる。

「ねぇねぇイスナちゃあん、私的には無理して喧嘩売る必要ないと思うな、ね?」

「あァん? ガタガタぬかシてんじゃねーわよ。始まりの八だけでもウザったいのに周りの雑魚まで相手してらんネーのよ、先に潰スだけじゃない」

だがどうやら、二人の女は視線の先にいるとある男を攻撃するか否かで意見を対立させているようだ。

攻撃を主張する女は腕に巻きついた奇妙な形をしたキングコブラのような蛇を……そう、さながら狙撃銃のように構えながら片目だけを異常なほどに見開いて視界に一人の男を収めている。

それに対して様子見を主張する女は、なんとも癖のある喋り方で蛇の女を諫めつつもチラチラと同じ男に視線を向けていた。

「いやだからさっきから言ってるよね? ね? あの半裸の変態さん、「サンラク」って人に間違いないよ〜って、ね?」

「知らねーわヨそんなの、頭トばせば死ヌに決まッてるでしょ」

「どうだろう……きょーごくちゃんの話的に こっち ( PK ) も普通に行けるって話だしぃ〜……ね? イスナちゃん、やめとこ? 芋砂じゃ勝てないもん……」

「だったらヒイラギ、アンタが戦いなさイよそん時は!」

「きょーごくちゃんにもまだ勝てないのに人力剣聖とかやる人に勝てるわけないよ〜……ていうか最近きょーごくちゃん、不意打ちに強くなっててズルい……私は私が 楽 ( たの ) しく 楽 ( ラク ) してPKしたいのっ!ねっ、分かる!?」

「知るか! だからシウコで仕留めルっつってんでしょ!?」

「イスナちゃん雑魚狩りかいいとこ取りばっかしてるのにいきなり大物狙いなんてできるわけないじゃーん!!」

額に青筋を浮かべた蛇の女……イスナがヒイラギと呼んだ女に(比喩表現として)噛みつく。それに対して気弱を装いつつもその実は毒の滲む言葉で反論するヒイラギ、いつしか狙撃手とは思えない大声での口論に発展する二人であったが、幸か不幸かその大声が他の者達にバレる心配はしなくていいようだ。

なにせ、二人の声よりもさらに大きな───

◇◇◇

「キヒヒッ、イイヨ許スヨ。アレハ近づキタクないモンネ」

地が蠢いている。否、それは丸太程の太さのある何匹もの大蛇が地面に敷き詰められるように広がっているのだ。

そんな蛇の床の上にあぐらをかいて座る一人の女がいた。

何か獣の皮に穴を開けてそのまま纏ったかのようなワイルドな格好をした女は、肉眼では到底見えないはずの遠距離でありながらも正確に樹海の中を歩く彼等を捕捉していた。

「他ニモイルね、バレたラ面倒面倒……キヒヒヒヒッ、バレタラ見捨てルカラネ」

その言葉にぴくりと震えたのは地面に敷き詰められた蛇の胴体の中の一つ……だがその胴体は奇妙な事に、ある程度伸びた先から物理的にその身体がぷつりと途切れていた。だというのに肉の断面からは血の一滴も落ちる事なく、何かを恐れるように震える胴体を同情の眼差しで他の蛇達が見つめていた。

「古イ、古いワタシダネぇ……強イのカナ? 隠レテる子ガイルケドワタシニはバレバレダネェ……デモ隣ノ奴も気ニナルネ?」

女自身の目が見ている世界ではなく、切り離し独立行動している頭の一つが見ている景色を遠隔で眺めている女は傲岸不遜な態度を崩さない古い「自分」の様子を伺う。

いけすかない武器兎や過去に何度か空から襲ってきた妙な「物人間」も気になるが、一番目を引くのはやはりあの裸の何者かだ。

あの忌々しい狼、夜闇をモノともしない「目」を持つ女をして未だ夜を恐れる原因。憎悪でも侮辱でもない、強いて挙げるなら好奇心のみでこちらを殺しにかかってくるあの狼の形をした夜の行動のいちいちが女を苛立たせる。だが今の女では勝てぬが故に逃げるしかない。

そんな忌々しいアレと同質の気配を漂わせた人間、無視するにはあまりにも異質すぎる。過去何度か「臭う」奴を見たことはあったが、ああも濃い気配を漂わせた者はそうそういない。

「ケシカけテミヨうカナ?」

何故だかちょっかいをかけてみたくなる、本能的な衝動をこれまで生き延びてきた警戒心が押し留める中、女の視界に突如として眩い光が生まれた。

「!?」

女は今、眷属の目を通したものを見ている。そしてその「目」は普通のそれとはものの見方が異なる。

対象に注視するのではなく、対象以外の背景、景色、環境を見る事で逆説的に対象を浮かび上がらせる特殊な目は魔力によって成立している。

即ち、その女の目を眩ませるというのは巨大な魔力が突如として発生したということで───

◇◇◇◇

「イヤあの、別に喧嘩を売るトカじゃなくてチョット見に行くダケだし……」

「危ないなら見に行っちゃダメ! そんなのジョーシキよっ!」

ぎゃんぎゃんと叫ぶ二人がいる。内訳は身長2メートルはあろう巨躯の男と、その長身と並ぶと本来の身長以上に小さく見える女だ。男の方は着るだけでも相当の筋力を要求されそうな重装甲を纏っており、逆に女は陰気そうな顔とは裏腹にやけに明るい色ばかりが使われた防御力の薄そうな服を着ていた。

騎士と女、見ようによっては何かの英雄譚のように見える………問題は、妙に甲高い声でへっぴり腰な男の方が陰気漂う女の腕にしがみついているという見た目台無しな状況であることだろうか。

「………アンタが暗いノ怖がってるダケでしょ」

「そ、そんなことないしっ! オー様も言ってたもんっ! 「筋肉があれば大丈夫!」って!!」

※オー様:ハリウッドスター、オーガスタス・オルティスの事。制作決定した実写版ギャラクシアヒーローズでカースドプリズン役にキャスティングされた。

「だから、オーサマってダレだって……あーモウ、脱ぐなっ! 変なポーズすんなっ!!」

「ふふーん、ニーネちゃん知らないんだ? これはね、モスト……モスト……そう! モスト マヨネーズ ( ・・・・・ ) って言うのよ?」

「 王我星 ( オーガスタ ) ……アンタが自信マンマンに言うヤツ、大体違うジャナイ……」

正しくはモストマスキュラーなのだが、ゲーム内NPCである女が知った事ではないし、男が気付くこともない。そして前線拠点側の樹海入り口で遅々として進まない歩みを繰り広げているがためにその喧騒がサンラク達に聞こえることもない。

だからこそ、彼等は 被害 ( ・・ ) が最も少ない陣営と言えたかもしれない。

ァァァァァァアアアアア…………

「ふひゅひいっ!!?!?」

「あだだだだだ! 腕っ! 腕締め付けっっ!!」

「怖くない!怖くなーいーー!! マヨネーズーーーーーっ!!!」

「あ゛ーーーーーっ!!(腕が捻られた事による絶叫)」

「あ゛ーーーーーっ!?(突然の絶叫による驚愕の悲鳴)」

訂正。

突然聞こえた地の底から響くような「音」へのリアクションで、最も被害の大きい陣営はここなのかもしれない。

◇???◇

「───感じるワ、何処かで ワタシ ( ・・・ ) 達が集まっていル……」

遠く、遠く。ここは新大陸最西端「コラデルソル巨界道」。 巨 ( おお ) いなる獣達が静かに、だが苛烈なる力を秘めて息づく新大陸 最大規模 ( ・・・・ ) の生態系が広がる場所。

憂いを帯びた溜息をつく少女が腰掛けているのは首の半ばから巨大な顎で喰いちぎられ、壮絶な表情で絶命した牛型巨大モンスターの角の上……そして胴体はと言えば、巨大な四体の龍蛇によってさらに細かく喰い千切られ、瞬く間に骨すら残さずこの世界から消失していく。

「不愉快、不愉快、不愉快ばかリ……目を閉じてモ、目を開いてモ……嗚呼、ワタシはいつまで不愉快の中でのたうつのかしラ?」

その目に浮かぶ感情を読み解ける者はここにはいない。それは燃え尽きた炎のようであり、溶けない氷のようであり、吹き続ける風のようでもあり……ただその眼差しが揺らぐ事はなく、遙かな過去に定められた意志は風化する事なく今なお昏く輝いていた。

「ワタシの可愛い子供達、もっともっと力をつけてネ………戦いは近イ、何もかもをぐちゃぐちゃにして、殺してしまいましょウ?」

人知れず龍蛇達は無尽のゴルドゥニーネは力を蓄えていく、その目が見据えた先は。

◆

プランBに備えてエムルが頭から降りていたのは幸運だったのだろう。彷徨う大疫青撃破に関わった事で獲得した報酬アイテムは貪る大赤依の時とは異なり、獲得した瞬間に装備される……世界観的にはプレイヤー自身の内側から滲み出すように現れた。

俺が獲得したのは装備枠である頭装備「 燃ゆる貌 ( シィンダー・ヘッド ) 」は装備というよりも現象に近い。なにせ装備された瞬間に何かを被るわけではなく……頭そのものが燃え上がったのだ。

「サ、サンラクサン!?」

「いや、問題ない……大丈夫だ。プランBを実行する、サイナっ!」

「了解:拡声ユニット起動、個体名エムル及び個体名ウィンプは耳を塞ぐ事を推奨します」

「そ、そんなやばいの?」

「最大音量です」

この俺を誰だと思っている? あまり誇れる過去じゃあないが、世界が滅びるまで歌い続けた 死鋼の魔術師 《 デスメタル・マジシャン 》 とは俺のこと……… 遠からんものは音に聞け、近くに寄ったら鼓膜が爆ぜるぜ! はい大きく息を吸ってェ!!!

「ヴァァァァァァァアアアアアァァァァァァアアアアアッッッッッ!!!!!!」

夜の静けさよ消し飛べと、高らかに 重低音 ( デスボイス ) ───!!

八番目のゴルドゥニーネ「ウィンプ」

眷属:サミーちゃん

協力者:サンラク

四十二番目のゴルドゥニーネ「お嬢」

眷属:アンフィ

協力者:シユー

十九番目のゴルドゥニーネ「 芋砂 ( イスナ ) 」

眷属:シウコ

協力者:ヒイラギ

六十三番目のゴルドゥニーネ「???」

眷属:オロチ

協力者:無し

百十七番目のゴルドゥニーネ「ニーネ」

眷属:オピオン

協力者: 王我星 ( オーガスタ )

ゴルドゥニーネ「名無し」

眷属:グラトス、ヴォレモス、サナトス、アベルシア

協力者:無し