LNCrawler

Who is that ?

シャングリラ・フロンティア〜クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす〜 — ncode.syosetu.com · All chapters

Who is that ?

手が滑った

「のおおおおおお!!?」

カッコよくキメた代償は落下死の宣告……!!! くっ、ふざけんなここで死んだら末代まで【ライブラリ】に映像保管されるぞ!?

「ああああ頼むぞへそくりファイナル!!」

【ライブラリ】から貰った最後のへそくり! 絶対使う事になるとは思ってたがまさかこの最終局面とは!!

頼むぞ 使い捨て魔術媒体 ( マジックスクロール ) !!

「【エア・クッション】!!」

ぼむんっ、と俺の身体を核に全身を緩く押しつぶすような感覚。頼むぞ対衝撃緩和魔法! 落下ダメージを軽減できるって話ですよね!!?

ぼむん!(崩壊するハイウェイの柱に激突)

「おぐぇっ」

ぼぼぼぼぼっ!(瓦礫の粒がエアクッションの耐久を削る音)

「ちょまままま」

べしゃんっ!!!(落ちたスライムみたいに地面に叩きつけられる)

「ぶっ」

い……いきて、る? 体力は……嘘だろ一割残ってる、エアクッション凄くない!? これは「買い」だな、間違いな───

ゴッ!!!!

「ぺぶっ!!?」

視界に星が散る、完全に虚を突かれた一撃。エアクッションがその耐久の全てを費やしてダメージを軽減してなお頭に直撃した拳骨大のアスファルトは俺をスタンさせるに十分な衝撃を与えた。

「くお……」

スタンはよ終われはよ終われはよ終われ……ひぃい! ヤバイヤバイヤバイここにきて圧死とか嫌過ぎる!!

「ナ、ナムサン……」

だが、救いの神は意外なところから手を差し伸べてきた。巨大な柱が俺を潰さんとする寸前、致命的な崩壊に至った世界が突如として消え去った。

燃え尽きるとか灰になるとかそういうレベルではない。文字通り全てがなんの前触れも余韻もなく綺麗さっぱり消え失せたのだ。

砕けた空も、テクスチャ剥き出しの地面も、摩天楼も、ハイウェイも、そして……「サンラク」も。

この場に残っている存在は四つ。俺、サイナ、隕鉄鏡……そして、地面に落ちている「サンラク」が装着していた妙な仮面。

「お、おおぉ……スタン復帰」

「 契約者 ( マスター ) 」

「ようサイナ……どうやら、今度こそ忖度無しに決着のようだぜ」

「歌姫」……エルマ・サキシマの姿はどこにもない。あの世界と一緒に消えてしまったのか、それとも「サンラク」の敗北と共に消えたのか。少なくとも先程まであれほど盛り上がっていた歌はもう響いてはいない。静かだ。

「疑問:初期の状態とはまた異なる風景への変質」

「そうだな……まるでどこぞのバーって感じだ」

成る程、これが 最後の謎 ( ・・・・ ) って訳か。

最初にオルケストラの領域に入った時の劇場型コロシアムのような広々とした空間ではなく、当然歌合戦の結果広がった仮初の夜景でもない。電気の点いていない薄ぼんやりとしたこの場所はまるで閉店しているバーのようだ。

「まぁ座れよサイナ、どの席にも座り放題だ」

「……いえ、しかしあの仮面は」

「まぁ待てまぁ待て、急いては事を仕損じる。分かりやすい近道は大抵行き止まりって相場が決まってるんだ」

これ飲み物並んでるけど飲めるのかな……あっ、掴めるし開けれる。よーしじゃあサンラクさんちょっと張り切ってカクテル作っちゃうぞー。

「まずこのジョッキに一番高そうなボトルの酒を注ぎます」

「指摘:カクテルと定義するには困難かと」

「ファミレス・カクテルだ。ファミレス・ドリンクバーという男が編み出した技法でな……まぁ全部嘘だけど」

「 店主 ( マスター ) 、鈍器としての適性の高いボトルを一本」

「ドンペリアタックやめろ」

どうせゲームなんだから飲酒もクソもない、なんか適当に選んで適当に混ぜて適当に飲んでみる………うーん、もう少し鉄臭かったら鯖癌風味だったかな。

「さて、本題だ。此度のオルケストラ攻略において重要なのはオルケストラが何を主軸として動いていたかって事だ」

「解答:神代以前人類の遺志では?」

「正解、でも30点だな。それはオルケストラを構成する上で三分の一でしかない……まず神代のさらに先、古代を超えて現代に生きる者たちの生き様を見る、ってのが第一の意思」

これは偽典ルートからも推測できる、オルケストラの分岐に共通するのはプレイヤーを戦わせるって事だからな。動機は知らんが神代以前人類達はそれを見たがっている事だけは確かだ。

「では二つ目、多分だけど……アンドリュー・ジッタードール本人の意思」

アンドリュー・ジッタードール。度を超えたドルオタではあるがその本質は「文化の保全」に命をかけた神代の天才、その一人だ。

ジュリウス・シャングリラ然り、アリス・フロンティア然り、エドワード・オールドクリング然り。神代の天才達はやたら噛ませっぽいエドワードですら何かしらの形で現在に影響を与えている。

征服人形が必須である点、所有者として名を連ねている事を差し引いても明らかな「贔屓」を感じさせるシュテルンブルームの残影……少なくともオルケストラが音楽という形でプレイヤーに試練を課すこのシステムは奴の影響が入っている。

「で、本題がここから……三つ目の意思、オルケストラの正体だ」

「オルケストラの、正体……まさか、」

「はいサイナ、答えをどうぞ」

「解答:エリーゼ・ジッタードールの意思、ですか?」

サイナの答えに俺は鳥面の下でニンマリと笑顔を浮かべる。がぱっと開けた嘴からファミレス・カクテルを流し込んで上手いこと口の中に入れて空気と混ざって炭酸が効きすぎた炭酸水を飲んでる気分になりつつも俺はタメにタメて一言。

「不正解っっっっ!!!」

「……!?」