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そして猫と騒動の風が吹く

シャングリラ・フロンティア〜クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす〜 — ncode.syosetu.com · All chapters

そして猫と騒動の風が吹く

性懲りもなくまーーーーーた予約ミスった大バカ野郎はだーれだ?

私 で す

はい、連続投稿します、はい。

「こ、こりゃあコーティング剤の覇王と言われちょるアロンカレス瑠璃硬晶……こ、こっちは天蓋の一等星ラピステリア星晶体……ま、まさかっ、ローエンアンヴァ琥珀晶? このサイズを? こんなにも……こ、ここ、こりゃあ、アムルシディアン・クォーツ……ほ、本物……?」

「 水晶群蠍 《 クリスタル・スコーピオン 》 の素材各種もあるぞ…………針以外は」

「なんで針だけ無…」

「やめろエムル、それ以上言えば俺は全身から体液を撒き散らして爆散する」

「うええ!?」

いつか、リベンジ、カチコミ、かける。

全く違う方向性の性格だと思っていたが、やはりこの兎達は同じ父を持つ姉妹なのだろう。エムルそっくりな興奮っぷりで俺が取り出した素材の数々を見つめるビィラックを俺は思わず笑みを浮かべながら眺める。

「これらを使って武器とか作れたりする?」

「わちは今、全ケット・シーの夢を叶えちょるんじゃな……宝石になんぞ素材以上の興味が持てんかったが……はぁぁ、ただの石っころに頬擦りするだけでこんなにも幸せになれるんじゃなぁ……」

自身の顔とほぼ同サイズの、夜空のテクスチャをそのまま貼り付けたような宝石に頬擦りするビィラック、流石に微笑ましいを通り越して引くレベルでトリップしてやがる。そのうち口の中に入れて飴みたいにしゃぶりだすんじゃないだろうな。

「…………わっ!!!」

「わびゃああ!? お、おどりゃ何するんじゃ!!」

「明後日の方向に飛びかけてた理性を戻してやったんだからむしろ感謝しろよ……じゃなくて、これで何か作れるか、って聞いてるんだが」

しばしの沈黙。ビィラックは取り出されたアイテムから幾つかを仕分けるとこちらへと向き直る。

「 水晶群蠍 《 クリスタル・スコーピオン 》 の素材と、これらの鉱石は武器を作るんに使える。じゃがこっちは武器防具には使えん……こいつらは 鍛治匠 ( スミス ) じゃのうて 宝石匠 ( ジュエラー ) の領分じゃき」

「 宝石匠 ( ジュエラー ) ?」

「武器や防具じゃのうて身につけることで効果を発揮するアクセサリー、その中でも宝石を用いたものに特化したアクセサリーを作る者のことじゃ」

成る程、格納鍵インベントリアもカテゴリ的にはアクセサリーであるし、武器防具だけではない自身の強化という点では重要なファクターであるわけだ。

今の今までラビッツ以外では半分世捨て人のような行動ばかりだったから、アクセサリーを調べたりなんてロクにしていなかったな。だけとインベントリアで枠が潰れているから今更アクセサリーなんて……いや、よくよく思い返せばペンシルゴンの奴、インベントリアをつけた上であの花飾り装備してたような。もしかしてアクセサリーって一個以上装備できるのか?

「じゃあラビッツにいるアクセサリー職人に……」

「この国にはアクセサリー職人はおるが 宝石匠 ( ジュエラー ) はおらん」

「……マジで?」

その場合アクセサリー用鉱石がただの換金アイテムになるんだが、と心なしか宝石達の輝きがくすんで見え始めたその時、何故か顔を顰めながらビィラックは言葉を続けた。

「じゃがな、宝石匠のツテが無いわけじゃあない……わちらヴォーパルバニーと盟友の誓いを結んどる 猫妖精 ( ケット・シー ) になら、飛びっきり腕の立つ宝石匠がおる」

「ケット・シー……」

ケット・シー。喋る猫、二足歩行の猫の大体はファンタジーではこれにカテゴライズされるというのが個人的イメージだ。

それなりの数のゲーム……例えクソゲーでも数をこなして来た俺だ、当然ケット・シーを題材にしたゲームはあったし、時に仲間として、時に敵として何度も見て来た。だがこのゲームでケット・シーを見た事はない。

俺の頭の上で小振りな宝石でお手玉をしているエムルや何故かどんどん顰めっ面が酷くなっているビィラックを見る。兎ですらこれなら、このゲームで猫が喋って二足歩行で歩いたらどれだけの破壊力が……何故か脳裏にアニマリア氏の顔が思い浮かんだ。

「…………わち個人としては あいつ ( ・・・ ) に会うのはひっっっじょぉぉーーーーに不本意じゃが、この宝石達を腐らせる事は、鍛治職人として……物を作る者としてのプライドが許さん。ちょい待ちぃ、今呼んじゃる」

「え、今?」

いやそんな隣の部屋にいるやつを呼ぶような気軽さで呼べるようなもんじゃあ……

「おう馬鹿猫、ちょっと来いや」

「嗚呼っ! 麗しの黒き乙女よっ! 君に呼ばれればこの僕は例え千尋の谷の奥底に落ちども瞬時に君の元へと舞い戻ろう……っ!」

なんかめっちゃキャラ濃いのが来た。

おそらく転移魔法の類で現れたそれを一言で表すなら「 長靴 ( ブーツ ) をはいた猫」であろう。

ビィラックとほぼ同じ大きさ、つまり俺の腰に頭が届くかどうかの大きさの黒猫は、見事な二足歩行の立ち姿に銃士風の服をぴっちりと着こなした猫銃士とも呼ぶべき姿。腰にはレイピアと思しき細剣を佩いているが、何より目立つのはやはり 長靴 ( ブーツ ) だ。

他の装備が見た目よりも実用性を優先したものであるのに対して、ブーツだけが宝石や金属で派手派手しく装飾が施されている。

「むむっ! 君は確か我が愛しの乙女の妹君だったね!」

「エムルですわ。んでこの人がサンラクサンですわ」

「むむ? 何故ラビッツに 鳥人 《 バードマン 》 が? いや、腕の形が違う……もしや 人間 ( ヒューマン ) ? いやしかし鳥の顔をした人間など聞いたことが……」

「多分 人間 ( ヒューマン ) で分類は合ってるぞ」

多種族から人間がなんて呼ばれてるかなんて知らないから確証は出来ない。俺の言葉に猫銃士はしげしげと眺めると、突然何やらポージングをとる。

「であるならばっ! 我が名を告げねばなるまいっ! そう我こそは剣聖! 吹き荒ぶ旋風 ( ワイルドウィンド ) 、 猫妖精 ( ケット・シー ) の国「キャッツェリア」が誇る「長靴銃士団」副団長! アラッッ……ミィィィィス!! 」

紙吹雪でもまぶしてやれば良いんだろうか。

レイピアを抜き放ち、天へと突きつける姿は堂に入ったものではあるがなにぶん猫であるからして、格好良さよりも愛らしさの方が上回ってしまっている。

何故かアニマリア氏の声が頭の中で再生された。

「バカミースで覚えちょけばええ、カッコつけちょるが中身は 悪童 ( ワッパ ) じゃ」

「ああっ! 乙女よ貴女の言葉はいつも氷柱の如く冷たく鋭い、だが貴女の燃え盛る炉の火の煌々たる熱に我が心はまさに雪解けの氷柱が如く……」

ダメだ、これ放置すると延々と漫才を繰り広げるタイプの会話だ。

「あー、自己申告で剣聖って言ってるけど肝心の宝石匠は?」

「ん、おいバカミース。ワリャに……そう、頼み事が、ある」

顰めっ面が極まりすぎて殺気すら漂い始めたビィラックと対照的に太陽が如く顔を輝かせる黒猫……多分名前はアラミース。

「勿論! 勿論だとも乙女よ! 君の頼みとあらば、僕はあのリュカオーンにすら挑んで見せよう!」

いやぁ、流石にリュカオーンに挑んだら死ぬんじゃないかな……ソースは俺。

正しく飛び上がらんばかりに喜びを表現するアラミースにビィラックは深い深い溜息をつくと、己の顔ほどもある宝石をアラミースへと差し出す。

笑顔が熱量を持つのなら太陽と同等な程にニッコニコスマイルを浮かべていたアラミースだったが、ビィラックが両手で抱える宝石を目撃した瞬間、真顔から呆然へと瞬く間に表情が切り替わる。

「…………あー、乙女よ……ええと?」

「そこん鳥の人が取ってきたローエンアンヴァ琥珀晶じゃ。それ以外にも……ほれ」

鳩が豆鉄砲を食ったような顔をする猫、とはなかなかにレアな光景ではないだろうか。

震える手でビィラックが抱える琥珀を受け取ったアラミースはそれをペタペタと触り、頬擦りし、舌を出して舐め……

「やめんか阿呆!」

「はっ!? 僕としたことが、つい我を忘れて……っ!」

「アラミース、ワリャんとこの宝石匠……ダルニャータにアクセサリーの製作を頼みたい。そんもただのアクセサリーじゃのうて、 最高傑作 ( ・・・・ ) をじゃ」

「それは……また……一体この人間は何者で?」

「夜の帝王に認められ、永劫の墓守を打倒した オヤジの舎弟 ( ・・・・・・ ) じゃ」

その言葉をビィラックが口にした瞬間、アラミースの目の色が変わる。それは今までの「ラビッツにいる人間」に対してのものではなく、「サンラクという一個人」を見るものだ。

「……しからば、不肖の身ではありますが長靴銃士団副団長「 吹き荒ぶ旋風 ( ワイルドウィンド ) 」アラミースの名において、必ずや至高の装飾を作ると誓いましょう」

「鳥の人、こん宝石全部使っちゅうことんなるが……ええか?」

「構わんよ、どうせ使わないなら売るくらいしか使い道無かったし」

アラミースが諸々のアイテムを持って転移していき、この場に俺とエムルとビィラックしかいなくなったのを確認し、俺は諸々の疑問を一気に晴らすことにする。

「……キャッツェリアって?」

「ケット・シーの王国じゃ。とはいっても国っちゅーにはちぃとばかし「適当すぎる」んじゃがな」

「ちなみにアラミースとのご関係は」

「……昔、あん馬鹿に武器を作ってやった。そんだけじゃ」

「ちなみにあのアラミースってどんくらい強い?」

「わちよりゃ強い」

そっかー……そうだよなー……ビィラックとタメ張れそうな時点でそんな気はしてた、剣聖とか言ってたし。

「……うん、ちょっと寝てくる。晩くらいからいよいよ古匠を取るための魔力運用ユニット探しだ」

「ワリャ、前々から思っちょったが色々忙しないの……」

「目的地までは全力疾走する派なんだ」

ストーリーを進めながらこつこつレベルアップするよりも、集中して一気にレベルアップするのが性に合ってるもんでね。

「あー疲れた」

時間は……四時くらいか、軽く食事と仮眠を取ってから攻略再開するかな。そんなことを考えながら携帯端末を手に取ると、メールが届いていることに気づく。

未開封は三件、そのうち一件は昔やってたゲームのニュースメールなので気にしなくていい、そして残る二件は……

件名:ちょっと聞きたいことがあるんだけど

差出人:モドルカッツォ

宛先:サンラク

本文:君今どこにいる? 早急に合流したい案件があるんだけど

件名:サンラク君に質問

差出人:鉛筆戦士

宛先:サンラク

本文:サンラク君今どこにいるかな? ファイヴァル? ちょっと直接会って話したいことがあるんだけれども、今晩とか空いてる?

「すげぇ、食虫植物だってもうちょっと上等な罠を張るぞ」

これを直訳すると「厄介事に巻き込まれたので貴様も引き摺り込む」と読み取ることができる。

場所を指定するのではなく、俺の居場所を聞いている辺りがどうにも クサい ( ・・・ ) 。他ゲーならともかく、このゲームでの「面倒事」と言うと、十中八九プレイヤー絡みなんだよなぁ……

「PvPの気分じゃないので旅に出ます探さないでください、あと場合によりインベントリア内の武器一個使い潰してもいいですか……送信」

さて、軽く食事を済ませて寝て……着信音。

とはいえ返事が来るのは予想していたので開いてみれば、片やブチギレ片や苦笑と言ったところか。

件名:ふざけんな!

差出人:モドルカッツォ

宛先:サンラク

本文:やべー目をした奴らに取り囲まれて延々と「兎を」「サンラク氏にアポイントメントを……」って嘆願され続けてる恐怖分かる!? 俺無関係じゃん! お前を生贄に快適なプレイを再開するんだから疾く速く居場所を吐くがよろし

件名:いやぁそれがそうもいかなくてね

差出人:鉛筆戦士

宛先:サンラク

本文:流石に「黒狼」の団長様が最大火力ちゃん同伴で直々に交渉持ち込んできたら断れないんだよねぇ

容赦無く上司権限濫用するので居場所を吐きなさい

「んー………………よし」

見なかった事にしよう!

アロンカレス瑠璃硬晶

鉱石としての硬度はむしろ低く、軽く叩くだけでもヒビが入るほど。ただしコーティング剤として武器や防具に塗装した場合、極めて高い魔法抵抗力を武器に与える。通称「コーティング剤の覇王」「英傑の一撫で」「うっかり屋に運ばせてはいけない鉱石」

摂取ではなく塗装しなければ効果を発揮しないため、料理をしない主義の水晶群蠍からは不評。

ラピステリア星晶体

星空をそのまま固めたような美しい宝石。宝石内に瞬く星が多ければ多いほどに蓄積する魔力量が高くなるという特性を持っており、「一等星」クラスともなればピンポン球サイズで小国が買える。通称「天蓋の一等星」「掌の星空」「デレないツンデレ」

極めて多量の魔力を蓄積しているが他の魔力と混ざらない&変換されないという特性があり、摂取しても体内の異物にしかならないため、健康志向の水晶群蠍からは不評。

ローエンアンヴァ琥珀晶

厳密には鉱石ではなく太古の昔の樹液が固まって出来た琥珀。ただの琥珀ではなく「煌炎樹」と呼ばれる既に絶滅した樹の樹液で出来たものを指す。ごく稀に琥珀内に太古の魔力や生物が封じ込められており、優れた宝石匠であれば封じられた太古の力を現代に蘇らせることができる。通称「琥珀色の煌炎」「太古からの贈り物」「メープル味ではない」

そもそも鉱石ではない上に下手に摂取すると中に封じ込められた魔力などで内側からダメージを受けるため、危険なギャンブルはしない水晶群蠍からは不評。

アムルシディアン・クォーツ

必ず完全正六角形で形成される鉱石の中でも最高峰の硬度を誇る漆黒の鉱石。ドラゴンが踏みつけようがブレスを浴びせようが噛み砕こうとしようが傷一つつかなかったという「実績」を持っており、生半可な鍛冶屋では加工以前に傷をつけることすらできない。しかしごく一握りの優れた「匠」と呼ばれる者たちであれば解けた飴細工よりも容易く加工することができると伝えられている。

その名の由来は 竜人族 ( ドラゴニュート ) の英雄「アムル」と彼の永遠の相棒とされたドワーフの名匠「シディアン」から取られているが、今の人間の記録からは風化し消失してしまっている。全竜人族とドワーフの憧れであり、彼らはアムルシディアン・クォーツを眺めているだけでご飯が進む。通称「覇槍の穂先」「名工の証」「最高のおかず」

味がしない、舐めても溶けない、噛み砕けない。そんな飴玉に価値はありますか? そのため、あくまでも鉱石は食べ物と認識する水晶群蠍達からは食べ物に似た非常に紛らわしいものとして不評。

どうしよう、本文書いてる時よりアイテムの設定考えてる時の方が楽しいぞ?