第2回 2026年10月30日 公開
第2回 2026年10月30日 公開
◆Opening02◆不知火蒼牙
H市高校、その日の放課後。
蒼牙と晴虎は人だかりを前に、唖然としていた。
ここは三年生、蒼牙の姉・不知火真白がいる教室の前だ。
なおリッカは「ソウちゃんたちのプレゼントを買う!」とダッシュで学校を出て行った。
蒼牙:なんだこの人だかり。もしかして……。
晴虎(GM):「全員、真白さんを祝いにきたんだろう。真白さんの魅力を考えれば、全校生徒が集まってもおかしくはないからな」
蒼牙:なるほどな……。確かにそれは納得できる話だ。
リッカ:なんで!? 全然納得できないよ!?(笑)
晴虎(GM):「蒼牙、行くぞ! 絶対僕たちが祝い勝つんだ‼」
蒼牙:おう、わかった! 俺たちが勝つ!
リッカ:祝い勝つってなに!?(笑)
GM:蒼牙と晴虎が人をかき分けて、教室に入ると――。
それは童話の世界だった。
周囲に置かれた色とりどりの、プレゼントとおぼしき箱の真ん中で少女は微笑んでいた。
どこからか入り込んでいた小鳥たちが、彼女の頭や手にとまり、頬ずりをしている。柔らかい微笑み、陽光を受けて煌めく金色の髪。
「絵になる」を通り越して、どこかの宗教画のように見える。実際に、囲んでいる連中の全員が、この光景に魅了され、息を呑んでいた。
蒼牙:…………。
リッカ:…………え? これなに?
蒼牙:きっと、姉ちゃんの誕生日を祝いに、小鳥もやってきたんだろう。
リッカ:そういうことなの!? ていうかそれでいいの、ソウちゃんは!?(笑)
蒼牙:姉ちゃんのカリスマをもってすれば、そういうこともある!
リッカ:言い切っちゃったよ……!(笑)
GM:真白は蒼牙を見ると、にっこりと笑いかける。
真白(GM):「あ、蒼牙! 晴虎くんも。来てくれたの?」
蒼牙:おう、姉ちゃん。すごいことになってるな。
真白(GM):「あはは、ありがたいよねえホントに。私はこんなにしなくていいのに。で、蒼牙はどしたの? 互いにお祝いする?」
蒼牙:いや、今は付き添いなんだよ。晴虎がどうしても祝いたい、って言っててさ。
晴虎(GM):「はい! 真白さんのために! ラブソングを作ってきました! 生徒大会長のあなたをたたえる意味も込めて!」
リッカ:大会長、ほんとにいたんだ……(笑)。
晴虎(GM):「聞いてください! 『愛情~言葉にしたくても~』」
GM:と言って、バイオリンで十五分くらい歌い上げる。
蒼牙:なげえな!? 俺の時とだいぶ違うぞ!?
リッカ:晴虎くんの、ライクとラブの違いなんじゃないかな……(笑)。
GM:歌い上げた晴虎に、真白がパチパチと拍手をする。
真白(GM):「すごい! 大作だった! ……うーん、私も歌いたくなってきた! じゃあみんなにラブソングを返しちゃおう!」
即興で歌い始める真白。
GM:その歌は天上から降ってきたかと思うほど素晴らしい。世界が色づく、というのを実際に体験している気分だ。
蒼牙:おお……。
GM:しかし、晴虎は険しい顔で言う。
晴虎(GM):「不味いぞ、蒼牙……! このままじゃ真白さんの愛に飲まれる!」
蒼牙:ん? なんかまずいか?
晴虎(GM):「ふたりの力を合わせて真白さんに対抗するんだ!」
蒼牙:何を言ってんだお前!?(笑)
晴虎(GM):「僕が演奏、蒼牙が歌う。そう、ダブルラブソングだ!」(笑)
蒼牙:話聞けよ!(笑) ええい、やれば良いんだろう! 歌うよ!
GM:じゃあ、せっかくだし判定で決めようか(笑)。
蒼牙:わけわかんない流れに乗せたのはGMのクセに!(笑)
リッカ:歌だから、〈芸術:歌〉とかになるの?
GM:いや、愛の深さだから〈意志〉にしようかな。
蒼牙:げえ、一番苦手なところ! ……とりゃ!(ダイスを振る)
机の上を転がったダイスは、2を上にして止まった。
蒼牙:ぐあー、しょっっぼい出目!!
GM:では、歌い終えて満身創痍で膝を突く蒼牙と晴虎。だが真白は無傷……!
蒼牙:つ、強い!
晴虎(GM):「真白さんと僕では、生徒会長力にこれだけの開きがあるか……!」
リッカ:バトルものじゃん、描写が(笑)。
蒼牙:っていう馬鹿な話はともかく。誕生日おめでとう姉ちゃん。
真白(GM):「うん、蒼牙もね」
蒼牙:じゃあ後はこのプレゼントの山を持って帰るだけか?
リッカ:待ったーーーーーー!! そこで教室の扉をバーンと開ける!
ぜいぜいと息を切らしたリッカが、ずんずんとやってくる。
リッカ:待ってて、って言ったのに! プレゼント用意してきたんだから! はいソウちゃんこれ!
蒼牙:お、おお。え、マジで買ってきてくれたのか!
リッカ:そう言ったじゃん。それで、お姉さんにはこっち。……ええと、ソウちゃんのクラスメイト、春巻リッカです。はじめましてだけど、誕プレ渡していいですか?
真白(GM):「えー、わざわざ!? すごい嬉しいー! はじめましてー! リッカちゃん、って呼んでいい?」
リッカ:わー、あたしも嬉しい! こっちも、ええと真白さんだから、マーちゃんって呼んでいいですか!
真白(GM):「いいよいいよ、敬語もやめてよー!」
リッカ:わー、マーちゃん、わー!
蒼牙:速攻で距離詰めたな……!(笑)
リッカ:女の子同士だからね! いいからほらプレゼント開けて開けて。
蒼牙:お、そうだったそうだった。
蒼牙へのプレゼントは、シルバーのピアス。
真白へのプレゼントは、白色のシュシュだった。
真白(GM):「わわ、可愛い! さすが、センス大爆発!」
蒼牙:おお、マジか! こっちもかっこいいな!
リッカ:ホント? お世辞言ってない?
真白(GM):「言ってない! 晴虎くんのラブソングくらい嬉しいよ!」(笑)
リッカ: 改めて……二人とも誕生日おめでとう!
真白(GM):「ありがと~、リッカちゃん!」
蒼牙:ありがとな! リッカの誕生日には必ずお返し用意するから、待ってろな。
リッカ:えっ、お返し?
蒼牙:こんなのもらったら、そりゃなあ。
リッカ:そっか、お返し。えへへ、楽しみだな。
ふにゃっと笑うリッカ。
その様子を「おや」と真白は楽しそうに見ていた。
蒼牙:じゃ、改めて家に持って帰るか。この山を。
リッカ:大丈夫? 手伝おうか?
晴虎(GM):「僕も、いくらでも手を貸すぞ」
蒼牙:祝ってくれたみんなに、そこまでしてもらうわけにはいかねえよ。なあ姉ちゃん。
真白(GM):「うん。大丈夫。引っ越し業者さんのお手伝いしたときに、パッキングの奥義は得てるから、問題無いよ!」
リッカ:謎の技術がまた(笑)。……それじゃ、ふたりともまた明日ね。
蒼牙:おう、またな!
そう言って、蒼牙とリッカは分かれた。
今日と同じ明日がやってくると信じて。
この夜が大きな転機になるとも知らずに――。
◆Opening03◆不知火家の人々
プレゼントの山をどうにかこうにか家に持って帰った蒼牙と真白。
蒼牙は鍵を取り出そうとするが、ふと気がつく。
施錠した扉が開いていることに。
蒼牙:ん? 開いてるってことは……。
GM:リビングの向こうから、ドタドタという音が聞こえ、中年の男性が姿を表す。蒼牙と真白には見慣れた顔、父親の紅太だ。
紅太(GM):「会いたかったぞ! 愛しき息子と、超愛しき娘よ――!」
蒼牙:出てくるなり、愛情に差をつけんな!(笑)
GM:紅太は真白を抱えててクルクル回る。そして蒼牙を見て……(両手を広げる)。
蒼牙:やらねえよ!?
紅太(GM):「つれねえ息子だなぁ、蒼牙。見ろ、この筋肉。何のためだと思う?」
蒼牙:少なくとも、思春期の息子を抱えてクルクルするためとは思ってなかったよ!
紅太(GM):「しゅん……」
蒼牙:しょんぼりすんな! っていうかなんでこんな時間に家にいるんだよ。
紅太(GM):「ああ、着替え取りに来ててな。しばらく大学に泊まり込みなんだが」
リッカ:ん? 大学?
蒼牙:大学で教授やってるんだよ、ウチの親父。母親がもういないからか、やたら子供に甘くてなあ。
リッカ:それだけはすごいよくわかる(笑)。
蒼牙:(紅太に)泊まり込み、ってことは忙しいのか?
紅太(GM):「おう。ずーっと前から欲しかった研究資材が手に入ってな。大忙しのお祭り状態なんだよ」
蒼牙:ほーん、お祭りねえ。いいけど、はしゃいで羽目外しすぎんなよ。
紅太(GM):「おいおい、俺をなんだと思ってんだ。立派な大人だぞ」
蒼牙:立派な大人は高校生の娘と息子を抱き上げてクルクルしねえよ!
紅太(GM):「あ、そうだ蒼牙。ちょっと耳貸せ」
蒼牙:なんだ?
紅太(GM):(小声で)「今日、お前たち二人の誕生日だろ? へへっ、実はサプライズパーティの準備をしてるんだ」
蒼牙:それ俺に言ったらサプライズじゃなくない!?
紅太(GM):「バカ、真白をより祝いたいからお前にはバラしとくんだよ」
蒼牙:本音がすぎるぞこの親父(笑)。
紅太(GM):「いいか、パーティは20時決行だ。時間になったら真白を連れて研究室まできてくれ。あ、お前もちゃんとビックリしろよ? なにせサプライズだからな!」
蒼牙:無茶苦茶言うなよ、クソ親父……(笑)。
真白(GM):「なになになーに? 二人して内緒話?」
紅太(GM):「あー、なに、何でもない! じゃ、俺は大学戻るから! 蒼牙、わかったな!」
GM:と、不器用なウィンクを連発して紅太は出て行く。
蒼牙:バレバレだって!(笑)。……あー、そのー、姉ちゃん。
真白(GM):「お父さん、なんかパーティでもしてくれるの?」
蒼牙:うげ、わかってたか。
真白(GM):(クスクスと笑って)「あれだけあからさまならね」
蒼牙:20時に大学の研究室だって。でもサプライズのつもりらしいからさ。がんばって驚いてやろうぜ。
真白(GM):「そうだね。練習しておかないと」
笑い合って、蒼牙と真白はプレゼントを家の中へと運ぶ。
大量の荷物を運び、一息着く頃にはもう出発の時間だ。
星が見えつつある空の下、姉と弟は肩を並べて父の元へと向かう。
真白(GM):「そういえば蒼牙、私からの誕生日プレゼントは何がいい?」
蒼牙:んー? 特に考えてなかった。あ、俺のプレゼントは家に帰ってからな。
真白(GM):「えっ、さっき歌ってもらったのに?」
蒼牙:あれは晴虎に巻き込まれただけ(笑)。ちゃんと用意してあるよ。姉ちゃんからのプレゼントは……、祝ってくれればそれでいいかな。
真白(GM):「えー、それじゃあ私が不満だなあ。えーと……あ、これなんてどう?」
GM:そう言って、真白は胸元に下げたペンダントを見せる。
それは「星をちりばめた」と表現するのがふさわしい一品だった。
透明な宝石の中に、いくつもの小さな煌めきが浮かんでいる。
GM:コズミック・インクルージョン・クォーツ。真白が昔から大事にしていたものだ。
蒼牙:おいおい姉ちゃん。それ、ずっと大事にしてたやつだろ? もらえねえよ。
真白(GM):「大事だよ? 大事なものだからこそ、プレゼントになるでしょ」
蒼牙:気持ちは嬉しいけど、ただ誕生日ってだけじゃもらいづれえよ。せめて、もっとすごいことした時でもないと。
真白(GM):「じゃあ五教科テストで525点取った時とか?」
蒼牙:満点超えてるけど!?(笑)
真白(GM):「ふふふ、私取ったことあるよ」
蒼牙:あるのかよ! さすが姉ちゃんだ!(笑)
リッカ:疑うことはないんだね、ソウちゃん……(笑)。
真白(GM):「蒼牙もやってみれば?」
蒼牙:悪いけど、全然取り方がわかんねえから無理だよ姉ちゃん(笑)。
真白(GM):「そうかなー。こう、えいっ、ってやれば取れるよ?」
蒼牙:それは姉ちゃんだけだ(笑)。……ま、525点は無理でも、俺が胸張れる何かを成し遂げたら受け取る、ってのでどうだ?
真白(GM):「いいよ、それで約束。それじゃあ誕生日プレゼントは別に用意するね」
GM:そんな会話をしながら、ふたりは大学の研究棟へとやってくる。
蒼牙:こんちはーっす。
GM:……中は暗い。
蒼牙:ん? これ部屋に入ったら明かりが付くパターンか?
真白(GM):「じゃあ、明るくなったら驚く演技しないとだね」
蒼牙:とりあえず、親父の研究室まで行こう。
GM:了解。では――。
研究棟の中はすべての明かりが落ちている。エレベーターも動いていない。唯一非常灯だけが薄く不気味に周囲を照らすのみだ。
蒼牙:なんだ? さすがにやりすぎじゃないか? スマホの電灯を頼りに進むぞ。
GM:真白も少し不安そうになっている。そしてふたりは暗い中階段を上り、研究室前へとやってきた。
蒼牙:……研究室に入る。
GM:ふたりが入ると、明かりがパッとつき、スピーカーからハッピーバースデーの曲が流れ始める。部屋には目一杯の装飾がしており――。
そして、床には何人もの研究員たちが血だまりの中に倒れていた。