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第3回 2026年10月30日 公開

ダブルクロス The 3Rd Edition リプレイ カタストロフ — kakuyomu.jp · All chapters

第3回 2026年10月30日 公開

蒼牙:……は?

GM:研究員たちは微動もだにしない。苦悶の表情を浮かべ、体には重機などで傷つけられたのかと見まごうほどの、大きな傷跡。部屋中に血のにおいが充満している。

蒼牙:ちょ、待て。サプライズがバレてるからってさ。趣味悪過ぎんだろ、親父……。

真白(GM):「蒼牙、あれ……!」

GM:真白が指を指したそこには――。

ごそり、と固まりが動く。

目をこらせば部屋の隅に、巨大な昆虫のようなものがいるのがわかった。

ひび割れた岩のような外角、刃のように鋭い六本足。

そして大きさは――大型犬ほどもある。

蒼牙:なん、だよ、あれ……。

GM:昆虫のような何か――異形の虫は、研究員の体に突き刺していた足を引き抜く。ギョロリと蒼牙たちの方を見た……気がした。

蒼牙:に、逃げるぞ姉ちゃん! 手を引いて、研究室から飛び出す!

真白の手を引いて、暗い廊下を走る蒼牙。

背後から、雨だれのような足音が響く。

GM:どこからか無数の虫が集まってくる。

蒼牙:一匹じゃねえのかよ! クソ……舌噛むなよ姉ちゃん!

真白(GM):「蒼牙……きゃあっ!?」

蒼牙:階段を飛び降りて、一階の出口に行く。このまま出られるか!?

GM:出口の前にも、あの虫が何匹かいる。

蒼牙:クソ! そいつに見つかる前に隠れる……!

GM:〈知覚〉で判定を。

蒼牙:振れるダイスは2個。頼む……!(ダイスを振って)出目は8!

GM:ではなんとか隠れることはできた。

パーテーションの裏に隠れ、息を殺す。

無数の足音が近くを通り抜けていく音が響き……やがて遠ざかっていった。

蒼牙:なんだあいつら。いったいなにが起きてるんだ……?

真白(GM):「あれって……」

蒼牙:姉ちゃん、何かわかるのか?

真白(GM):「……う、ううん。でもお父さん、どうなったんだろう」

蒼牙:さっき倒れてた人の中に、親父の姿は?

GM:無かった。

蒼牙:そっか。とにかく姉ちゃんを助けなきゃ。俺はどうなってもいいから……。ちくしょう、なんでこんなことになってんだ。今日は誕生日だぞ?

涙が出るのを必死に堪える。

あまりの不条理に、思考を放棄したくなる欲求が首をもたげる。

そんな蒼牙の手を、真白がぎゅっと握った。

真白(GM):「大丈夫だよ蒼牙。お姉ちゃんが絶対に守ってあげるから」

蒼牙:バカ、それは俺のセリフだよ姉ちゃん……!

真白(GM):「じゃあふたりで、ううんお父さんと三人でここを出よう」

真白は笑った。恐怖で少し引きつってはいたけれど。

弟を心配させまいと。

蒼牙:姉ちゃん……。そうだな。出る時は三人で、だ。

真白(GM):「約束だよ」

蒼牙:それじゃまず親父を探さないとな。……その場を出て、隠れながら親父を探す。

GM:では〈知覚〉で判定を。

蒼牙:得意じゃねえが……。(ダイスを振って)やった! クリティカルして13!

GM:それでは――。

真白をかばいながら、静かに研究棟を探る蒼牙。

しばしの探索の結果、蒼牙の耳は遠くの異音を察知した。

それは異形の虫の鳴き声。蒼牙たちを襲う時に発していた音。

蒼牙:誰かが襲われている! そっちに行く!

GM:では廊下の一角で、紅太が虫に襲われているところに出くわす。紅太は傷だらけだが重傷ではない。手に持った銀色のアタッシュケースでなんとか防御をしているが、今にも虫に押し切られそうだ。

蒼牙:このやろう! 全力で体当たりする!

蒼牙の気配を察知していなかったらしき虫は、渾身の体当たりでごろりと倒れる。

蒼牙:親父! こっちだ!

紅太(GM):「蒼牙!? 真白もか!」

GM:驚きつつ、紅太はふたりのいる側に逃げてくる。

蒼牙:全速力で虫から離れる!

GM:了解。では横合いの廊下まで逃げてきた。

蒼牙:親父、一体コレはどういうことだよ。なんなんだあいつらは……!

紅太(GM):「わからん! ヤツら急に出てきやがってな! とにかく逃げまくってたんだ!」

蒼牙:ったく。生命力のある親父だよ、ホントに。でも、生きてて良かった。

真白(GM):「うん、お父さん無事で良かった」

蒼牙:姉ちゃんとも約束したんだ。三人でここを出るって。

紅太(GM):「はっ、強い息子と娘だ。もちろんみんなで出るぞ。お前らの誕生日も祝い直さないとだしな」

蒼牙:当然。じゃ、行くぜ姉ちゃん、親父。

GM:研究棟をよく知る紅太の先導で、別の出口が見えてくる。虫の姿は見えない。

紅太(GM):「俺が先に行く。蒼牙は真白を頼む」

蒼牙:任せろ。

先導する紅太に続き、真白の手を握りながら進む蒼牙。

あと少し、あと少しで出口に辿り着く――その直前。

GM:ぞわり、と三人全員に悪寒が走る。

蒼牙:!? 周囲を確認する!

GM:蒼牙と真白の真後ろに、いつの間にかひとりの男が立っている。

まともな人間には見えなかった。

確かに長身の男性、ではある。

しかし肌は土気色で、全身がひび割れ、中身は鈍く光っていた。

なによりも恐ろしいのは目だ。目には感情の色どころか、生命の輝きすら見えない。異質という言葉だけが頭の中をこだまする。

蒼牙:なんだ、こいつ……!

GM:じろりと“ひび割れた男”が蒼牙を見るだけで、キミは動けなくなる。

蒼牙:ぐ!

GM:“ひび割れた男”はゆっくりと蒼牙に手を伸ばす。その時――。

「俺の息子に手ぇ出すんじゃねえ――‼」

紅太がアタッシュケースを男に投げつけた。しかし、微動をだにしない“ひび割れた男”。

紅太は体ごとぶつかり、男を蒼牙から強引に引き剥がした。

蒼牙:お、親父!

紅太(GM):「蒼牙! 真白を頼むっ!」

GM:しかし“ひび割れた男”は無表情に、紅太に手を添える。そして。

〝ひび割れた男〟に触れられた紅太の体が――粉々に砕け散った。

あっさりと、血すらこぼさずに、紅太だったものが崩れていく。

蒼牙:は……?

真白(GM):「いやあああ!! お父さあああああああああん!!」

GM:“ひび割れた男”は淡々とその手を蒼牙に向ける。手に、光が灯る。

蒼牙:やべえ……!

GM:蒼牙の体はまだ動かない。男が手を振ると、衝撃波が放たれ、廊下を破壊しながら蒼牙たちに向かってくる。……そこに、真白が立ち塞がる。

蒼牙:姉ちゃん!

「――ダメ! 蒼牙は絶対にっ!」

両手を開き、盾になる真白の小さな背中。

その姿に何かを叫ぼうとした瞬間。

衝撃波がふたりを飲み込み――蒼牙の意識は途絶えた。

◆Opening04◆血まみれの決意

ゆっくりと、意識が戻ってきた。

ぼやけた視界に映るのは、粉々になった建物の残骸。

周囲に無事な建物はなく、木もすべてなぎ倒されていた。

蒼牙:なんだ、これ……! さっきの衝撃波のせいなのか? いや姉ちゃんは!?

GM:真白の姿は無い。そして今、蒼牙は自分に鉄骨が突き刺さり、縫い止められていることに気がつく。貫かれているのは心臓だ。

蒼牙:う、そだろ……。

GM:そして動いた気配で、少し遠くにいる“ひび割れた男”が蒼牙を見る。

蒼牙:いたのか、こいつ。

GM:しかし、なんの興味もないとばかりに目を外した。

蒼牙:ゴホッ。すぐ死ぬヤツはどうでもいい、ってことか。

GM:そして、“ひび割れた男”は何かを探しているように見える。

蒼牙:探す? 何を? 親父のアタッシュケースとか? いや、まさか姉ちゃんか……!?

GM:(答えずに)もう少しでキミの命は途切れるだろう。さてどうする?

蒼牙:鉄骨を引き抜く。そしてヤツを止める……!

朦朧とした意識の中、蒼牙が背後から突き刺さっている鉄骨を掴んだ。

一歩、前に出る。信じられない激痛と、大量の血液が傷口からこぼれた。

痛みと寒気が、蒼牙の全身から力を奪ってゆく。

GM:では〈意志〉判定を。目標値は7。

蒼牙:(ダイスを振る)8で成功。

『――ダメ! 蒼牙は絶対にっ!』

頭の中に、自分を庇った真白の叫び声が聞こえる。

『――蒼牙、真白を頼むっ!』

父の最後の言葉が聞こえる。

蒼牙:こんなところで寝てる暇はねえ……!

GM:ふと見れば、紅太のアタッシュケースが見える。その隙間から光が漏れている。まるで蒼牙の意志に呼応するように。

蒼牙:なんだ? いや、なんでもいい。ヤツを止められるなら……。

GM:まだ鉄骨は抜けていない。

蒼牙:無理やり、一歩前に踏み出す……!

GM:肉どころか骨が裂ける。

蒼牙:だから、どうした……!

GM:さらに血を流し、手足の感覚が無くなる。

蒼牙:姉ちゃんに、守られたままじゃ……終われねえッ‼

GM:蒼牙は鉄骨を抜いた。しかし肉体の限界だ。できるのはあと一度の行動だけだろう。

蒼牙:…………アタッシュケースを開ける。

銀色のケースに入っていたのは、光を放つこぶしほどの石。

その光はうっすらと炎を連想させた。

蒼牙:その石を、手に取る!

GM:触れた瞬間、石は光の粒子となって蒼牙の胸に吸い込まれてゆく。胸が、傷が再生していくのを感じる。

蒼牙:!!

GM:それだけじゃない。蒼牙の体内を恐ろしいほどの熱……いや、炎が駆け巡っている。暴発しそうなほどの炎が。

蒼牙:……“ひび割れた男”はどうしてる?

GM:蒼牙の様子に気がついたようだ。こちらに向かってくる。

蒼牙:こちらから踏み込む。俺の炎を、やつにぶつけてやる!

GM:了解。では――。

無意識のうちに、蒼牙は左胸――あの石が吸収された場所に手を当てていた。

ずぶりと手が沈み、胸から一本の刀を取り出す。

蒼い炎に彩られた漆黒の刀。同時に蒼牙の髪もまた、蒼炎を纏い、逆立つ。

蒼牙:おおおおおおっっっ!!

GM:初めて“ひび割れた男”の目が見開かれる。手で刀を防御しようとする。

蒼牙:一切気にせず、全力で斬る!

GM:刀はほんの少しの抵抗だけで、男の体を易々と切り裂く。

肩口から脇腹にかけて、男は両断されながら。

「――そうか、お前が」

そう言葉を発した。

蒼牙:?

GM:両断されているのに、男はまだ動く。切り裂かれた手を、ばんと地面に叩きつけた。

蒼牙:なっ……!

GM:直後、大地震が起きて地割れが四方八方に広がる。“ひび割れた男”は蒼牙をにらみつけながら、その粉塵の中へと消えてゆく。

蒼牙:待て、姉ちゃんを……!

追おうとした瞬間、左胸に激痛が走る。

全身から力が失われ、膝が落ちた。

握っていた剣すらも取り落とし、剣は溶けるように虚空へと消えていく。

蒼牙:待て、ちくしょう……っ!

地震は止まらない。

必死の叫びは地鳴りに飲まれ、消えてゆくのみ。

もう“ひび割れた男”の姿はどこにもなかった。