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2-4.兵士さんとデートな午後

デスマーチからはじまる異世界狂想曲( Web版 ) — ncode.syosetu.com · All chapters

2-4.兵士さんとデートな午後

※2/11 誤字修正しました。

※6/23 少し加筆しました。

サトゥーです。勇者よりも魔法使いになりたいサトゥーです。

詠唱 ( 滑舌DTM ) という無理ゲーに心折られそう……。

ゼナさん達の女子トークに少し癒されました。

◇

「騒いじゃって、ごめんなさい。悪い子達じゃないんですけど、私が男の人といるのが珍しかったみたいで……」

上目遣いに聞いてくる。最初の悪戯っぽい感じじゃなく、今度はおどおどとした感じだ。

「楽しい方達でしたね。別に不快に感じたりはしていませんよ」

「そう言ってもらえると助かります。

そういえば魔法屋の前で困っていたようですけど、どうかなさったんですか?」

「ええ、魔法の詠唱で躓いてしまって。詠唱の練習の仕方について書かれた本が無いか聞きたかったんですが、見ての通りお休みのようでして」

「サトゥーさんって、え~っとサトゥーさんとお呼びしても?」

「もちろん良いですよ」

こちらは勝手にゼナさんと名前で呼んでるしね。

「サトゥーさんは身軽な商人さんなだけじゃなく魔法使いの修行もしているんですか? そういえば今日は派手な服じゃないんですね~、そっちの方がお似合いですよ」

身軽なのに拘るな、この人。

「生活魔法が使いたくて勉強しているんですが、どうも詠唱が上手くいかなくて……」

「そうですね~ 風魔法だと大抵 ■■■■ から始まるんですけど、無理に言葉にしようとすると、りゅ~リぁ(略)ラ~るれりら~オ ってなるんですけど初めての人にはまず唱えられないんですよ。暗記までは大抵の人ができるんですけどね」

ゼナさんは小首を傾げて、どう説明したらいいのか思案顔だ。

「リズム。うん、さっきのゆっくりした詠唱をリズムで刻みながら歌にするんです。そしてリズムを保ったまま拍子をどんどん早くしていくと ■■■■ になる! はずです」

なるほどね~ しかし、今のって簡単に言ってたけど、極意とか門外不出という程じゃないないにしても人に教えてはいけない類の話じゃ?

「リズムですか……。なるほど御教授ありがとうございます。その練習方法で頑張ってみます」

「はい、お役に立ててなによりです」

にっこり微笑むゼナさん。

何かお礼をせねば。

◇

ゼナさんが西街にあるパリオン神殿に向かうそうなので途中まで一緒する事にした。

「そういえばゼナさんは風魔法が使えるまで、どのくらい修行したんですか?」

「本格的に修行をしたのは3年ほどですけど、今になって思えば、日々の生活の様々な習慣が魔法使いになる為の準備みたいな感じでしたね~」

どんな事をしたんだろう? ……気安く聞かなければ良かった。

「魔法史の歴史を子供向けの絵本にしたものの朗読から始まって、音楽に詩吟、滑舌の練習に、腹式呼吸……。魔法の流れを感じる遊び道具。習い事から遊びまで全部が魔法使いを育成するために」

ちょっとゼナさんに陰りが……。

「別にそんな風に育てた両親に他意は無いですよ? 魔法を使えるのは楽しいですし、いつか空を飛ぶっていう目標もありますしね」

でも他の道は最初から無かったと……。

「サトゥーさん。サトゥーさんはどうして生活魔法を練習しているんですか? 商売に役に立つからですか?」

「いえ、宿に風呂が無いので生活魔法があったら屋外で行水しなくて済むかなと思って……」

あ、呆れられた。

ちょっとジト目を向けられた後、ゼナさんが吹き出す。

そんなに面白いだろうか?

「あははははっ! そ、そんな理由で魔法使い目指す人なんて初めて見ました!」

ゼナはツボに入ったのか笑いが止まらないようだ。

「そんなに変ですか?」

わりとまともな理由だと思うんだが? 不便な物は便利にしようとするもんだよね?

「変ですよ!」

即答された。

「だって、生活魔法を覚える労力や資金があるなら、家に風呂を作った方が早いじゃないですか? それに風呂を沸かす労力だって下働きを雇うなり奴隷を買うなりすれば問題ないですし」

そういうモノなのか~。

できることは自分で! とか思ってたけど、こっちでは労働力を雇うのもその範疇なのか。人件費も安そうだしね。

◇

「旦那様、お花を買ってください」

西街に入ってすぐ、花が入った小さい手提げの編み篭を持った小さな女の子に呼び止められる。

幼女は小さな花を差し出した姿勢で止まっている。今までも見かけていたけど声をかけられたのは初めてだ。

女連れだと買ってくれる人が多いのだろうか?

幼女なのによく考えている。

「いいよ、幾らだい?」

「一束、賤貨1枚です」

賤貨と交換に花を受け取る。幼女は嬉しそうにお礼を言って次の客候補に駆けていく。

花はそのままゼナさんにプレゼントする。

意外そうな顔をするゼナさん。

いや、それ以外の選択肢ないでしょ?

「あの貰ってもいいんですか?」

「はい、貰ってもらわないと困ります」

捨てるわけにもいかないしね。

ゼナさんはニヨニヨと喜びをかみ締めている。

あれ? そんなに嬉しいものなのか?

……まぁ、喜んでくれる分にはいいか。

「そうだ、サトゥーさん。この後何か用事があったりしますか?」

「いいえ、詠唱の練習くらいしかする事はありませんけど?」

……錬金もあるが、別にいつでもいいしな。

「で、では露店通りを通って神殿に行きゅませんか?」

「ええ、良いですね。できれば、この街の名物なんかも教えてもらえると嬉しいです」

ゼナさんは自分から誘った経験がないのか顔を真っ赤にしながら寄り道を提案してくる。オレ相手に、噛むほど緊張しなくていいのにね。

そういえば、いつのまにオレも神殿まで行く事に? 詠唱のコツを教えてもらった恩もあるし、女の子とデートするのに文句を言うのも違うか。

「名物ですか? 任せてください!」

自信ありげだ。コレは期待できるかも。

◇

「これは甘芋揚げって言って、ふかした甘芋を漉して作った餡をパンに練りこんで揚げたモノなんです。昔からあるセーリュー市の名物なんです」

サツマイモっぽい芋を練りこんだ菓子パンか。やっぱり微妙に和な気配が……。

「こっちはコウモリの羽を揚げて黒味噌を塗ったモノです」

料理の名前はゼナさんも知らないようだ。口篭ったのを見かねた店主さんが教えてくれた。……竜翼揚げというそうだ。

縁起がいいとされている食べ物らしい。

「これはリリオが教えてくれたとって置きなんです。あ、リリオってさっきの三人の一番小さな子です」

少女の名前はともかく。

ゼナさんが勧めてくれたコレは……茶色で透明な? ……なんだろう?

とりあえず露店のオッチャンに銅貨を2枚渡して2人分買う。

オッチャンは取り出した2本の棒を茶色の液体に差し込んでグリグリ回して取り出す。

水飴か!

「水飴でしたか。懐かしいですね~」

「ご存知でしたか~」

ちょっと残念そうだ。驚いてあげた方がよかったか……反省。

「私の知っている水飴は無色透明なものだったので、はじめは何かわかりませんでした」

「貴族様、無色透明なのは米と砂糖を使った高級品でございますよ。これは庶民向けなんで芋とガボの実と麦芽を使ってるんで茶色なんでございます」

オッチャンが超反応で割り込んできた。

誰が貴族か。ゼナさんに言ったわけでもなさそうだし。

「オヤジさん、私は平民ですよ。昔知り合いに貰ったものが透明だったんです。高級品とは知りませんでした」

だって縁日で200円だったしね。

その後も、色々露店を冷やかしながら人ごみを楽しむ。いい午後だ。

食べ歩きはナディさんとの予定が……。

茶色い水飴は麦芽水飴です。砂糖を使わないでも作れます。

幼女成分が足りないとリクエストを受けたので、ほんのり加えました。

花売り少女の今後の登場予定は……たぶん、ありません。

加筆箇所はゼナさんが、セリフを噛んだあたりです。