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8-21.闘技場での戦い(3)

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8-21.闘技場での戦い(3)

※9/15 誤字修正しました。

サトゥーです。テーブルトークRPGというものがあります。その世界の住人になりきって遊ぶゲームですが、欧米人と違って日本人は恥ずかしがり屋なので、割りと事務的な会話に終始する事が多いようです。

もう一度いいます、日本人は恥ずかしがり屋が多いのです。

◇

闘技場の向こうから鳥人族の偵察隊が飛んできた。

どうやら公爵軍がようやくやってきたようだ。マップで確認すると、鉄のゴーレム10体と騎士団3000人が闘技場を包囲しているようだ。移動砲台も何両か来ているらしい。

「ちっ、今頃来やがったぜ」

悪態を吐く勇者に別れの言葉を告げる。そろそろ退場しないと面倒だしね。

「勇者、ボクはそろそろお暇させてもらうよ。あまり、権力者の近くには行きたくないんだ」

すみません、本当は既に権力者サイドです。

「その気持ちはわかるぜ。見えているだろうけど、俺様はハヤト・マサキ。紛らわしいがマサキが苗字だ。あんたも日本人――いや、その髪は転生者だな。元日本人なんだろう?」

「日本人かどうかなんて、言わなくても判るんじゃない? ボクは『名も無き英雄』のナナシ。いつか戦場で会うこともあるかもね」

自分で英雄とか――無いわ~ 思わず床をゴロゴロと転がりたいぐらい恥ずかしいな。中二語変換ツールとかスマホにインストールしておくんだったよ。

本当に 無表情 ( ポーカーフェイス ) スキルがあって良かった。

「待ってくれ! 一緒に戦ってくれないか? 魔王との戦いで君が欲しいんだ」

キモっ。

せめて「君の力が欲しい」と言ってほしい。ロリ以上にホモは無理だ。

「それはプロポーズ? せっかくの誘いだけど遠慮しておくよ。後ろで怖~い、お姉さま方が睨んでいるからね。じゃあね、色男さん」

何が「色男さん」だ! 誰かオレを止めて。中性的なセリフを意識したせいか、変なキャラ付けになっている。

オレを連想させないキャラというのはクリアしているが、キモすぎて死ぬ。

◇

闘技場の客席に侵入してきた斥候部隊がオレを見て「ヤマト」コールを始めた。

なんだ?

自分の姿を見て納得した。

13枚に分割した聖剣クラウソラスが昔のシューティングゲームのオプションやビットのように、オレの周りに浮遊している。

その様子が、博物館にあったヤマトさんの絵画に似通って見えたのだろう。

しかし、ヤマトさんは2メートルの大剣を振り回す大男だろう?

さすがに中性的な今のオレの容姿では、同一視するのは無理があると思う。いや、兵士たちと距離があるから背丈はわからないか、と思いなおした。

さて、退場前に、瀕死の王子達の怪我を少し治しておこう。このまま死なれてもMPKしたみたいで後味が悪いからな。

魔物の残骸に埋もれた王子達を助けだすのが面倒だったので、残骸をストレージに回収して、地面に残された王子達を水魔法で治癒する。少しだけのつもりだったのだが、全快してしまった。白髪や老化は治らなかったが、そこまでは面倒を見る気が無い。後で神殿に行くなりしてほしい。

2人とも破壊されていた装備は魔物の屍骸と一緒にストレージに回収されてしまったらしく、半裸だ。誰得な気がしたので、以前に盗賊から回収したマントを体の上に掛けておく。

「またね、勇者」

「ああ、今度は魔王との戦場で会おう!」

しまった、魔王を倒したのを言い忘れたな。そのうち神様から神託があるだろうから、別にいいか。

天駆で数百メートル上昇してから、風魔法: 大気砲 ( エア・カノン ) で加速して空の彼方へ飛び去る。前に試したら時速100キロを超えていた。そのうち最大速度の実験をしてみよう。

空の彼方へ消えるとか、気分は昭和のヒーローだな。

◇

公都の上空にいるうちに確認したが、アリサ達は、ちゃんと館の地下室に避難しているようだ。セーラも無事に救出されたらしく、アリサ達と同じ部屋にいる。前伯爵夫妻や使用人のみなさんも大丈夫らしい。

カリナ嬢や弟君、それに巻物工房の面々も無事なようで良かった。

適当な所で森の奥地に着地する。

勇者の仲間か公爵の配下かはわからないが、監視の魔法で見られているようだ。一旦、密林に着地して自身に「 魔法破壊 ( ブレイク・マジック ) 」を使う事で監視を解除できた。

天駆が解除されると困ると思って、着地したのだが、破壊したい魔法を指定できるようなので無用だったようだ。

森の上ギリギリを飛行して公都に戻る。公都から見える距離まで近づいたら地表付近まで降りて移動した。

前に公爵三男の部屋に侵入したルートを通って、公爵のお城に潜入完了。マップで確認したかぎり、公爵と王の影武者は同じ部屋にいるようだ。

勇者は、リーングランデ嬢とメリーエスト皇女の2人を引き連れて謁見の為に城に向かっているようだ。勇者の船や他のメンバーはマップ検索に引っかからないようなので、また亜空間に退避しているのだろう。

「突然の訪問をお許しください」

部屋にどうどうと入っていたのだが、オレが声をかけるまで警備の人達は誰も気が付いていないようだった。大丈夫か、ここの警備?

警備の人達が、天井を突き破って降りてきたり、隠し部屋から転がり出てきた。

対応が面倒なので「 理力の手 ( マジック・ハンド ) 」で近くに来られないようにする。

「何者だ」

「ナナシと申します」

公爵さんの問いに答える。公爵さんがジェスチャーで指示すると護衛の人達は、元々隠れていた場所に戻っていった。巫女長さんから聞いていたのかもしれないが、護衛無しに不審者と同室とか肝の太い人だな。

公爵さんの家令の人だけが残っている。マンガとかだと手練だったりするけど、この家令さんは内政タイプの人のようだ。

「用件を聞こう」

「大した用ではありません。これを返しに参りました」

そう告げて布に包まれた聖剣クラウソラスを渡す。

どうやって手に入れたか聞かれたので、過程を素直に話した。なぜか聖句を唱えて、剣が13枚に分割した話をしたら驚かれた。

「 俄 ( にわ ) かには信じられぬ」

「王祖以降、聖句を唱えて剣を『踊らせる』事ができる者は幾人もいたが、真の姿を解き放つ事ができる者はいなかった」

本当にできるか実演しろといわれたのだが、影武者とはいえ王様の前で剣を抜かせるのはまずくないか?

「心配は要らぬ。巫女長から話は聞いている。魔王を倒したという話が本当なら抜刀せずとも我を殺せよう」

酷いよ、公爵さん。事実だけど、護衛の人達の面目が丸つぶれじゃないか。

クラウソラスに充填していた魔力は、すべて別の聖剣に移した後なので、もう一度魔力を注ぐ。500MPくらいでいいだろう。

聖剣が膨張するのを見て、公爵さんや影武者さんだけじゃなく、隠れて護衛している人達も驚いている。

「《踊れ》」

クラウソラスが、先程と同じように、13枚の剣に分かれて体の周りに浮かぶ。

「なんと、伝説は真であったか!」

「美しい、あの絵は創作ではなかったのだな」

驚きすぎ。

影武者さんとか、今にも痙攣しそうで怖い。興奮するのも、ほどほどにね。

十分観賞したようなので、励起状態を解除して元の1本の剣へと遷移させる。充填したMPを回収して、剣に布を巻きなおして影武者さんに差し出す。

「そのまま所持するがいい」

「王都の方に了承を得なくて宜しいのですか?」

ちょっと、影武者さん、本物の許可もなくそんな事言っちゃダメでしょ。少しぼかして本物の許可は要らないのかと確認してみる。目をやると公爵さんも頷いている。

「王祖ヤマト様の御心だ」

よく判らないのだが、何か遺言でも残したのか?

便利な剣だが、無くてもそんなに困らないんだよな。適当に理由を付けて返そう。

「王都の防衛に必要ではないのですか?」

「構わぬ、王都には、もう一振りの聖剣がある」

ああ、あの鋳造聖剣か。

俺も同じようなのを作ってみたから分かるが、あれはジュルラホーンと比べても威力が低い。下級魔族ならともかく、上級魔族とは戦えないだろう。

自分には既に佩剣があるからと、断ったのだが、一度主人を決めると誰かが剣を抜くだけで、主人の下に帰ってしまうらしい。普通は、専用の儀式で主人を確定させるので、今回のような事例は非常に珍しいそうだ。

やはり、魔王を討伐できる人材が欲しいのか、聖剣を与えられて断り辛い雰囲気にしてから、仕官や爵位云々の話がでた。もちろん、その気がないので、やんわりと断った。もう十分です。王女を嫁にやるとかいう話には心が動いたが、婚約者が決まっていない王女の年が9歳と聞いて、その気が失せた。そういう話はハヤトにしてやってくれ。

ただで聖剣を貰うのも悪いので、シガ王国で有名な聖剣をトレードで渡すことにした。

「こ、これは17年前に魔人に奪われた聖剣ジュルラホーン!」

「おお! 神よ! 王祖ヤマト様が鍛えられた聖剣が再びシガ王国に帰ってくるとは!」

まさか、ここまで喜ばれるとは思わなかった。もっと早く返してあげれば良かったかもしれない。魔人ってやっぱりゼンなんだろうな。

勇者達が城に着いたので、オレは暇乞いをする事にした。

闘技場がボロボロなので、決勝は1ヶ月後に順延されたのだが、晩餐会自体は上級魔族討伐という名目で執り行われた。大怪魚は魔族の使った幻覚という事になったようだ。

その日の深夜、地下迷宮の一角で片手剣サイズのクラウソラスを型取りした鋳造聖剣を作った。鞘は、ストレージ内にゴミと一緒に回収されていたクラウソラスの鞘があったので、見た目をそっくりに複製する。

>「贋作スキルを得た」

>称号「聖剣の鍛冶師」を得た。

>称号「贋作師」を得た。

明け方に、影武者さんの寝室に忍び込んで枕元にレプリカを置いておく。

レプリカと一緒に「贋作を用意したので有効利用されたし」と書置きを添えておいた。これでうるさ方の門閥貴族相手にも、ごまかしが利くだろう。いくら王や公爵が許可したとしても、国護の聖剣が行方不明じゃ責任問題だろうからな。

だが、どうせ忍び込むなら美女の寝室が良かった。

晩餐会は次回です。

仮面の勇者では無く、サトゥーと勇者のファーストコンタクトの回の予定です。

※クラウソラスの贋作を枕元に置くシーンを修正しました。

※感想の返信について

感想返しが追いつかないので、個別返信ではなく活動報告で一括で返信させていただいています。

本日の活動報告に、SSを1本投下しておきました。王子の末路のIFバージョンです。